ハァハァ4兄弟   作:いちごケーキ

5 / 7
目標だった、感想5件を頂いたので連載にします!


エース

 

 

 

 

「クソ案山子!テメーはクォーターバックを無謀にも狙いに行って殺られ続ける役だ。ショートパスまで警戒した挙げ句、良い感じに自爆しろ!

ま、ホントに取れちまったらラッキーつうトコだな」

「カッコ悪い役回りじゃねーか、やだよそんなん」

 

 殺られ続けるザコ敵ムーブをさせられるのか、嫌だな。どうせ負けんだし、もうちょいマシな役割にしてくれよ。

 悪魔には逆らえないから仕方ないと内心は既に諦めつつも、一応抵抗はしてみた。

 

 だってやりたくね〜よ、そんなカッコ悪いポジション。

 だってそんな事したら……自他共に認める天才である俺がよ、自称天才になっちまうじゃねーか!

 

 

「いや、そうはならねぇ。テメーは不甲斐ないライン勢のせいで振り回されてるだけに見えるだろーよ」

「うーん、それならまぁ」

 

 言った瞬間、奴に大層キレられるかと思い目を逸らしたが、意外にも怒っていない様だ。

 頭脳派組長系の悪魔は、怒りをコントロールする力に長けているのかもしれない。

 

 俺はヒル魔の言葉に納得しかけたが、ある重大な事に気付いてしまった。ふざけんなよ騙しやがって、一瞬納得しかけちまったじゃねーか!

 

 

「……つかそれじゃ、一輝達が悪いみてーじゃねぇかよ!ふざけんな!!」

「うっせぇ!実際弱ぇんだから仕方ねぇだろ!練習もしてねぇ素人が王城とマトモに戦えてんのが奇跡なんだよ!」

 

 まあ、うん。脅されて駆り出されて屈辱を味わうっつう事を除けば、奴の言う事に一理はあるな。

 

 

「ハ?」

「ハァ?」

「ハァ゙?」

『ハァーッ?!』

 

 一応ダチ達に合わせてキレてみたが、当然の様に悪魔に無視されている。凄く嫌だろうと、やられ役を一輝達はやり切るしか無い様だ。

 

 ったく、この試合が終わったらアメフト部のパシリなんて辞めてやる!瀬那は結局怪我してなかったんだ、もう脅しも無効みてぇなモンだしな!

 寧ろここまで試合に付き合ってやったんだから、感謝しやがれよコンチクショー!

 

 イライラしながらも、一応俺は諦めてしまった。

 ダチ達もヒル魔に逆らう気はねぇようだしな、俺だけ抵抗しても仕方ねぇだろ。

 

 

「アイシールド21、テメェが作戦の肝だ!先ずはショートパスを防ごうとしろ。

で、案山子の執拗なディフェンスに耐えかねた司令塔が桜庭にロングパスを出した瞬間、カットしろ!」

「ええーっ?!」

 

 主務モドキが悲鳴を上げてやがる。

 まぁ、人気アイドルからボールを奪うヒール役をやれっつうのはキツいわな。同情しなくもねぇわ。あいつの評判なんて、俺にとっちゃクッソどうでも良いけど。

 

 アイドルの桜庭春人をファンの前で倒さなきゃいけないなんて、ある意味公開処刑みたいなモンだ。瀬那に対して、アンチが大量に付くだろうな。

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。ジャリプロと王城のエース、桜庭春人くんの登場でーす!」

『桜庭♡エース!!桜庭♡エース!!』

 

 耳鳴りがする程の大声で、口々に観客が桜庭の名前を呼んでいる。あーあ、まじで煩ぇ!マジで一旦黙ってくれ!

 一応ここはアメフトの試合会場だぞ、アイドルのコンサート会場じゃねーっつの!

 

 

「レフェリータイムアウト!」

 

 

___ピーッ!

 

 審判が手を広げた後に交差させ、ホイッスルが鳴った。

 

 ええと、これは確か……試合中断の合図だな。

 大方、観客の声が煩すぎてマトモな試合になんねぇって判断されたんだろう。

 

 そりゃそーだ。アメフトは頭脳戦で、司令塔の指示が重要なスポーツだ。こんな爆音が響いてちゃ、あのヒル魔だって命令出来ないだろうぜ。

 

 

「クゥリータァ……!へへへへ」

 

 試合が止まった瞬間、向こうの60番がやって来て栗田にいちゃもんをつけようとしている。良いぞザマアミロ、もっと盛大にやってくれ!

 

 

「フンッ!フフフフフ」

 

 奴はヤードインジケーター*1を手に取ると、両端をガッシリと掴んだ。

 

 

___ギギギギ、メキッ!メキメキッッ!!

 

「ガハハハハ!」

 

 そしてソレを何故かメキメキと捻じ曲げて、楽しそうに笑っている。何だ?力自慢でもしてぇのか?

 残念だがな、それくらい鍛えてねー俺でも出来るぞ。

 

 やっぱバカっぽいな、コイツ。

 監督からも「バカは黙って突っ込め!」みてぇな指示が飛んでたし阿呆なんだろう。無駄に機材を壊しやがって。

 

 

「あぁ、うーーん」

『うわ、えぇ……?』

 

 栗田は腑抜けた声を出しながら、グニャグニャに曲がっていた鉄パイプを真っ直ぐに直しやがった。

 これは流石に、天才の俺でも出来ねーわ……そう思ってしまって、少し悔しくなった。

 

 60番のやった事も、あながち的外れじゃ無かったんだな。他の奴でも割と出来るって事を除けば、パワー自慢で自信を喪失させるって手は意外と悪くねぇ。

 

 

「ブッ、アッハハハハハ!」

 

 その後、何故か60番は偉そうに笑いながら去っていった。栗田の方がスゲェ事をしたって気付いてない様だ。

 やっぱり脳筋の馬鹿なんだろうな、アイツは。

 

 

 

 

 

 

「Set! ……?」

 

 俺達は悪魔の指示通り、まだセンターラインからのスタートにも関わらずゴールラインディフェンスをした。

 後ろがガラ空きになるからパスが防げなくなる。これじゃ、長距離パスを通し放題だ……そうやって悪魔は、司令塔の判断ミスを誘ってる訳だが。

 

 ヤベェ、チョー天才的な発想だ!

 俺、俺より頭が回る奴を父親以外で始めて見たぜ。

 

 

「Hut!」

 

 

___ガシィッッ!!

 

 スクリメージ*2で、栗田のブロックによって60番が押し倒された!

 この展開なら、ガチでサック*3を狙っても良いんだろ?ヒル魔……初っ端からこんなビックチャンス到来とはな!決めてやる!!

 

 流石は悪魔、こんな無茶な作戦を一発で決めるとはな。

 

 

___スタタタ!

 

 俺は3番のクオーターバックに突撃した。

 

 

___ブォン!ズザザザッ!

 

 だがしかし、奴の投球にギリギリ間に合わず、長距離パスを投げられた。……なんてな、ざまぁねぇぜ優等生!悪魔の策略に、見事引っ掛かりやがった!

 パスがちょっと乱れてやがる。そのコース、主務モドキならギリ届くぜ!

 

 

___シュタタタタ!

___ガッッ!

 

 瀬那は全力で走り切り、桜庭へのパスをカットした。

 キャッチは出来なかった様だが、もう関係ねー!うちの悪魔が、これを見越して走ってやがるからな!!

 

 俺は全力で、王城のエンドゾーンに向かって走り出した。勿論、サックを狙う時の比じゃねぇガチ走りでだ。

 

 あん時は別に、俺が決める必要が無かったからな。当然体力の温存位はさせて貰ってた。

 残念ながら両面出る必要があるからなー、俺達は。*4

 でも今回は俺がロングパスを受ける必要性がある。だからスタミナ配分とか無しで、全力で走るしかねぇんだ!

 

 まあ俺、今まで一度もスタミナ切れを起こした事がねーから、自分の限界すら分かってねぇんだけど。

 

 

___バシッッ!

 

 上手くキャッチした後も、俺はヒル魔の決めたルートツリーに従って全力で走り続けた。

 タックルしてくる雑魚もいるみてーだがな、俺には関係ねーんだよ!

 

 

___ガッ、スタタタ!!

 

 コイツら程度の雑魚にタックルされようと、俺は止まらねぇ。だって天才だからな。全ての能力を高水準で持つ俺を止めるには、テメーらの才能が足んねぇんだよ!

 

 

「タッチダウン!!」

『ギャアアアアッッ!!』

 

 俺達はタッチダウンを決めた。超ビックプレーだ!*5

 これで13−0、いや俺がトライフォーポイントを決めりゃ14−0!現実的に考えても勝利が見えてきたぜ!

 

 

 

 

___ズドンッッ!!

___ピーッ!

 

さっきのヘナチョコ紛れキックとは違い、今回は綺麗な回転を描いてゴールに決まった。

流石は俺!天才だから少しやりゃ上達するんだよな〜!

 

 

 

 

 

 

「Substitution!*6

 

 俺達が圧勝している場面、遂にあの40番が出陣した。

 王城のエース、進。奴は恐らく、俺や瀬那並の速さを持った上で、アメフトに熟練した優秀な頭脳と俺に近いパワーを持っているバケモン選手だ。

 

 

「___ちっ、やっぱ出てきやがったか」

 

 あの悪魔ですら舌打ちしてしまう、異常に優れた選手。

 いくら俺が天才と言っても限度がある。ド素人の天才じゃ、努力し続けてる天才には敵わないだろう。

 

 

「やっぱスゲェ選手なんだな、進 清十郎。

で、どうすんだ悪魔。奴をどうやって攻略するんだ?」

 

 俺は横目で悪魔を見ながら攻略法を聞いた。

 マジでどうするんだよ、アイツをどうやって止めるんだ?……今更勝てませんなんて無しだぜ?せっかくここまで頑張ったんだ、博打上等で良いから勝ち筋を見せろや!

 

 

「簡単だ。___お前が0.5秒、奴を止めろ。

それでアイシールドが決める、それだけだ」

「ええぇ……」

 

 んな無茶な。ド素人にそこまで求めないでくれねーかな、出来なくても怒んなよ?!テメーがマジギレしたら、手に負えねぇよ。つーかここまで無意味に協力したんだ、それ以上は求めんな!

 

 

「ほーらライバル様のご登場だ、挑発でも決めて来い!」

『ええぇ……』

 

 俺は渋々40番に向かって歩き出し、嫌がった主務モドキはヒル魔に蹴られて転び、40番に衝突した。

 

 

「あ゙〜___俺達でお前に勝つ。そんだけだ」

「ひいぃぃ」

 

 俺は適当に宣戦布告したが、主務モドキはビビって何も言えてねぇ。なんか少し位は言えや、俺にだけ面倒な事を押し付けんじゃねーよ!

 

 

「日本最強VS謎の天才&アメフトの名門ノートルダム大のエース!こりゃ見ものだぜ!!」

 

 ヒル魔が無茶苦茶な事を言い放ったせいで、表情を取り繕う事にかなり苦労した。

 こいつが名門校のエースって、そりゃねーだろ!どう見ても、ド素人にしちゃ素質があるってだけじゃねーか!

 

 

「えーっ!アイシールドさんって、ノートルダム大のエースだったんだ!」

「そりゃスゲーや!!」

 

 助っ人達は、何故か無茶苦茶な嘘に騙されていた。

 いやいやおかしいだろ、そんな奴がこんな弱小校にいるの!それにそんな奴がボールもマトモに持てない訳ねーだろ、なんで騙されてんだよ!

 

 俺は脳内でツッコむ事に疲れ始めていた。

 悪魔のハッタリってスゲェな。これだけ無茶苦茶な嘘でも、色々騙しまくれるんだからよ。

 

 ハァ……俺も騙されたんだよなぁ、あんなデタラメに。

 

 

*1
サイドラインに設置され、ファーストダウン更新までの残りのヤード数を知らせる道具

*2
センターのスナップによって始まる通常のプレー

*3
クオーターバックがパスを投げる前に、ディフェンス選手がクオーターバックをタックルして、ボールを保持している状態で地面に倒すプレー。

*4
普通はオフェンスとディフェンスで選手を変えるが、弱小校の泥門は選手が居ない。

*5
サックも長距離パスも凄いプレー、野球で言うなら2連続ホームラン。

*6
選手交代




瀬那が怪我していない事をハァハァ三兄弟は知りません。
ヒル魔に逆らわないと言う判断は、伊川の早とちりです。

ベンチプレス
大田原誠(60番) 135kg
伊川始        140kg
栗田良寛       160kg
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。