ハァハァ4兄弟   作:いちごケーキ

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1秒先を見る男

 

 

 前半終了で、21-8。点数的には爆勝ちだが、正直油断と隙を突いたとしか言いようがねぇ。

 

 こっから先は、あの進清十郎と俺のタイマンになる。

 天才とはいえ素人の俺じゃ、鍛え上げられた天才相手に勝てっこねぇと思うんだが、もうやるしかねー空気なんだよなぁ……

 こちとら、主務モドキが全部抜き去るのを、狙うっきゃね~んだからよ。ったく、めんどくせ~な!しかたね~からやってやるよ!

 

 

 

 

「アイシールドさん、マジ速いっすね~!」

「そうそう、あのホワイトナイツから、一度もタックル食らってないし✨」

「うっ、ウンんん。いや、この得点は皆の力さ。

君達のブロックが無ければ、最後まで走れはしなかった」

『おおおお……!!』

「うちの始の活躍も、忘れんなよ?」

「そ~そ~、それと俺らもな。」

「うん……君たちも、凄い選手だ。」

 

 試合に出てる奴らは、ベンチで休憩を取っている。

 が、俺は1人で佇みながら、何となく思いついた策の検証に入っていた。

 

 失敗して、接戦で負けて、悪魔に恨まれるリスクはある。

 それでも、勝つ確率を上げんなら、それしか無いような気がした。

 

 

 

 

 後半開始直前、俺は蛭魔に向かって指をピストルの形にして指した。

 奴が俺を見た瞬間、俺は指を俺に指し直した。

 

「なんだ、言え。」

「次のディフェンス――俺を自由(遊撃隊)にしてみるつもりはねーか。」

 

 悪魔は、口裂け女みてぇに嗤ってから、俺に近付いてきた。

 

「策があるんだろ?――言ってみろ。」

 

 奴は耳元で、どす黒い声色で囁きやがった。

 クソみてーな案だったら、許さなぇと脅されているのだろう。

 俺は、40番にタックルされた時よりも冷や汗をかきながら、それでも虚勢を張って嗤った。

 

「あのクオーターバック、見てたら()()()()()()()()、どのターゲットに渡るか予測が付くようになった気がする。そこを、俺単独で狙い撃ちにしてやる。」

「……試してみる、価値はあんな。」

 

 蛭魔はそう言い、俺に背を向けて、威風堂々とグラウンドに歩いていく。

 俺はなんつうか、コイツに勝てる気がしぇねと思った。

 ……マジで、二度と喧嘩を売りたくねぇぜ。ダチの為なら、するけどよ。

 

 

 

 

 

 

 後半戦、王城ホワイトナイツからの攻撃。

 俺は普通のラインバッカーより、1ヤード後ろを陣取った。

 多少到着が遅くても、俺の足なら追い付けるからな。

 

「SET!」

 

 向こうのクオーターバックが言った瞬間、両ガードが前傾視線の予備動作をし、目線がダチ達ディフェンシブラインに固定されている。

 多分、中央パスが来るな、こりゃ。

 

 SETから0.18秒後、クオーターバックのハムストリングス*1が収縮。ランニングバックへのハンドオフが濃厚。

 同時に、ランニングバックの右ふくらはぎが一気に張った。明らかに前方直進を意識している。

 

 恐らく、次の瞬間にラインは粉砕して、相手ランニングバックは中央右寄りを突破する。

 つまり俺は、味方の崩壊と同時に、相手ランニングバックをブロックすりゃいい。

 

 0.42秒後、ランニングバックの肩が見えた。

 カット動作無し、俺は直進する。

 

 0.68秒後、味方ディフェンシブラインが、豚マン以外崩壊。

 敵ランニングバックの、左足ハムストリングが完全収縮→次の踏み込みでトップスピードに入る。

 もう俺を隠す必要はない。敵に全力で突進する。

 

 0.80秒後、衝突寸前。

 俺の肩を、相手をぶっ壊すように配置。

 敵は防御姿勢を取っている。壊しきれない可能性大。

 

 0.90秒後、本気タックル。予測通り、味方ラインから1.5ヤード奥でヒット。

 天才の馬鹿力で、ランニングバックをぶっ壊そうとした。

 

「2ヤードゲイン!」

「おおぉ……」

 

 残念だが、慣性の法則と防御姿勢に勝てなかったが……次こそぶっ壊す。

 それとどうでもいいが、おっさんのうめき声がキモイ。

 

 

 

 

 司令塔の悪魔が近づいて来て、耳を俺の口元に寄せた。

 大方、再現可能なプレーかを聞いて来るんだろ。

 

「始――今の、どうやった。」

「筋肉の動きなんざ、見たら分かる。そういう事だ。」

 

 尖った耳が至近距離にあって、ウザい。

 だけど俺は、淡々と今のやり方を説明した。端折ってるが、奴なら分かんだろ。

 

 奴は目をかっぴらいて、瞬間、イかれた顔で……笑った。

 

「分かった。お前のソレ(詳細が不明な才能)を前提に、試合を組み立て直す――ぶっ殺す、それだけ考えてろ。」

「おう、やってやろうじゃねーか。」

 

 

 

 

 

 

 後半は、徐々にホワイトナイツに巻き返される展開。

 そりゃそ〜だ。見えてる範囲の数人だけ、どこ動くか分かってたって、止められね〜時は止められね〜よな。

 いくら天才でも、物理法則にゃ勝てね〜し。いや、場合によっちゃ勝つやつもいるかも?知らんけど。*2

 

 俺は、オフェンスでは瀬名の盾、ディフェンスでは40番を0.5秒止める役だ。

 アイツの腕を、身体全体の力を使ったタックル*3、マジで痛えんだよな。もう何十回食らいに行った?痛ってぇなクソ野郎!!

 

 

 

 

 イライラしてたら、遂に同点まで追い付かれて、暫くの時間が経過。同点延長が見えてきてるが、そしたら俺らの負けだ。

 主戦力もダチたちもザコも、既に満身創痍。

 疲れてねぇのは俺くらいだからな。

 

 マジムカつく。ここで負けたら、これだけバカスカ痛い目に遭った意味がねぇじゃねぇか!……あれ?そういや、脅されて渋々参加したような……?

 

 

「よーし、さっきと同じで行くぞ。アイシールド21がラインの右側を抜けていく。つーかライン共!しっかりブロックしやがれ!」

 

 ヒル魔がキレながらダチと助っ人に指示を出している。

 んな事言ってもなぁ、競技をマトモに知らないんだから無茶だろ。俺みたいな天才じゃねーんだからさ。

 

 

「そんな事言われても、パワー差あり過ぎるし」

「伊川が上手くやったじゃねーか、それで良いだろ」

 

 モブ共とダチ達が、妙に仲良くなり始めている。

 ずりぃぞ、俺をハブらないでくれよ!

 

 

「完璧なブロックなんざ期待してねぇよ。

0.5秒!各々、俺の指示したターゲットを足止めしろ。

その間に___アイシールド21が抜く!!」

『おおーっ』

 

 俺達は何となく関心して相槌を打った。

 なんか上手く行けそうな気がしてきたからだ。

 

 

「クソ案山子!テメーはキッチリ止めに行くんだよ!」

「えー……ういーっす」

 

 俺は0.5秒の時間稼ぎじゃ駄目らしい。チッ、面倒な事言いやがる。

 そう思いつつ、渋々俺は了解するしかなかった。

 

 

「ドンマイ伊川!」

「キツそうだが……頑張れよ」

「おー」

 

 悪魔の指示に従い、俺達は指定位置に向かおうとした。

 何故か、瀬那と栗田は動いていなかったが。

 一瞬俺達は、何事かと思って立ち止まってしまった。

 

「うわぁ、うわあぁ……!」

「瀬那くん、瀬那くん!ホワイトナイツのディフェンスは、多分日本一だよ。一人で抜こうとしたら大変だけど……だけど僕達ラインや伊川くん達を、盾だと思って!

僕達は君を守る盾になる。だから安心して走って!」

「た、盾。栗田さんとか伊川くん達が、盾……」

 

 なんかアイツら、こんな時に青春してやがる。そんな事言ってもさ、マトモにブロック出来る訳がねぇのによ。

 

 ……それにしても、盾か。

 仲間を守るっつうのは、ヤバい喧嘩の時と似てるな。

 まぁ、主務モドキはダチじゃねぇけどよ。

 

 

 

 

 

 

 残り九秒で、キックオフ時点から65ヤード*4進まなきゃ行けねぇ。俺の足がどれくらいの速さかは知らねぇが*5、直線に進めりゃ14秒位だな。*6

 大分押し込まれてんのに、無茶言うなよな。ヒル魔。

 

 つまり俺がボールをキャッチ場合、絶対に三秒以内に拾わなきゃなんねぇ。キックの時間を加味してだ。

 逆にヒル魔が拾っちまえば、アイツがミスらねぇ限りは絶対に勝てる。俺が走って行った所に、アイツが投げこみゃ良いんだからな。

 

「Set! Hut! Hut!!」

「フンヌラバ!」

 

――ガシッ!

 

 オフェンスラインが衝突し、瀬那が走り出した。

 なんつうか、奴の走りから恐怖が消えている感じだ。

 

 40番が、うちのエースに向かって突進しようとしている。

 俺を視界に収めながらも、瀬名だけを見ている。

 

 瀬名は相手ディフェンスの隙間を見据えているだろう。

 今までの傾向と大腿四頭筋の動きからして、右前3ヤード、左1ヤード、右前5ヤードのディフェンスを抜けていき、成功させるだろう。

 

 但し、右前5ヤードのディフェンスを囮にした、40番が瀬名に肉薄する。

 俺はそこで、0.5秒の盾になれば良い。

 ヒル魔はもっと止めろとほざいてるが……俺はこれが限界だ。それに、こんだけ止めりゃ、アイシールドが抜く。

 

――ピイイィ

 

「33ヤードゲインッ!」

「オラアアァァ!!」

 

 

 

 

 ゴールまで残り28ヤード、秒数は残り4秒、相手は歯を食いしばって悔しそうな顔をしている。

 ザマーミロ、俺達を舐めるからだ!

 

 

「飲まれるな!怖いのは99番と21番だけだ!」

 

 

――ガシッッ!

 

 俺は瀬那に向かって突っ込んで来た60番をブロックし、まるで奴が本当にボールを持っているかの様に見せかけた。これで相手ラインで2番目に怖えぇ奴を封じれたんだ、上手くやれよ、ヒル魔!

 

「泥門、8ヤードゲイン!」

『ヒイイイィィ!!』

 

 決まった!!ここで選択すんのは一択、俺のキックしかねぇ!!1点でもありゃ勝てんだ、+5ヤードくらいなら、決められる可能性はある!

 残り2秒しかねぇんだ、俺がやるしかね〜んだよっ!!

 

「ヒル魔っ!分かってんだろうな!」

 

 俺は咄嗟に、悪魔に向かって叫んだ。

 奴は何故か、苦悩の表情を垣間見せている……キック、俺に蹴らせたくねぇんだろうな。妙な思い入れでもあるんだろ。多分。

 

 奴は目を瞑り、ギラギラした表情をして俺に叫んだ。

 

「――決めろよ!案山子!」

 

 

 

 

 ホルダー兼任のヒル魔が、ボールを支えている。

 軸も固定されている。風向きを考慮もしている。

 

 ――悪くねぇ。これなら、今回も行ける!

 

「せ、」

 

 モブが叫び始めた。

 その瞬間、俺はキックのモーションに入る。

 

「セット!」

 

 ヒル魔がボールを離した瞬間、俺は―――

 

 

 

 

 

 

――ズドンッッ!!

――ピーッ!

 

主審が両腕を天に突き上げる。

 

「フィールドゴール成功!」

 

観客席のどよめきが大きくなる中、今度は腕を水平に交差させた。

 

「試合終了!」

『おっしゃーーっっ!!』

 

「俺たち勝っちゃったよ!あのホワイトナイツに!!」

「やーーっべ、マジで感動したわー!」

 

 ケッ。めーもん様、ザマァ見やがれ!俺たち雑魚の勝ちで〜す♪来年出直してくださ〜い♪

 ……ん?もしかして、まだ、試合が続くのか……?

 俺、やっちまったかも!!

 

 

 

 

*1
ハムストリングとは、太ももの裏側にある筋肉の総称で、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の3つの筋肉から構成されている。

*2
大和とかいう、どれだけタックルされても倒れない化け物が、原作にいる。

*3
スピアタックル

*4
約60メートル

*5
四十ヤード4秒4

*6
正確には13秒63




1秒未来視チート(瞬間予測視覚?)の制約
見えている範囲のみ。しかも数人まで。
但し、アメフトは1ターンで6秒くらいまでなので、十分すぎる。
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