可能を不可能に   作:瑠色の弾丸

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ネモは36巻のラスト以降、モリアーティ教授のことをモリアーティと呼びますが、書いてて違和感すごかったのでこの作品では教授としてます。

最新刊まで読んでる人少ないと思うので今回まで原作説明多め。


第1話:教授

「私は『モリアーティ』。これからよろしく、『可能を不可能にする女(ディスエネイブル)』ネモ・リンカルン君」

 

まさかここで教授と対面だとは…

流石に生前で教授とこの時期に対面したかどうか覚えていない。

ましてや、もし会ったとしていてもどのような反応を返したか等、見当もつかない。

 

…………いや、落ち着け、私。

私は記憶は違うが、ただ2歳の幼女。

それっぽい反応をしておけばいいだろう。

 

こんにちは(Bonjour)

 

どうだ……?

未来を予知する教授とそれを破壊することができる私の邂逅は一手違うだけで、違う未来になる可能性が高い。一手、一手が未来をかける重い一手なのだ。

 

どうやら私が挨拶を返してくるのは条理の内側だったらしく、私から目を背け、私にのみぶつけていたオーラを消した。どうやら、穏便に初邂逅は終えれたようだ。正解かどうかは未来にならないとわからないのだが。

 

ここで油断して私に背中を向けている教授にレーザーを撃て、という人が言うかもしれないが、それは無駄だ。

 

『ブラジルの一匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?』

 

これはバタフライ効果の語源となった論文のタイトル。教授は予知の領域まで高めた推理力、条理予知の応用で、このバタフライ効果を使い、運命のドミノを引き起こす。

教授が『蝶』の羽ばたきを起こすだけで、世界では竜巻が起きてしまうのだ。

その運命のドミノは『自分が殺されない』という物理的・魔術的なバリアを超える『運命のバリア』のような無茶苦茶なバタフライ効果を引き起こすことさえ可能だ。

例を挙げると『至近距離から拳銃の名手が撃った弾が全て不発弾のせいで明後日の方向に飛んでいって当たらない』みたいなことが起きる。

 

可能を不可能にする女()』と『不可能を可能にする男()』などの特異点はこの運命のバリアを弱体化させることは生前で実証済みであるが、運命に影響を与えたい対象との距離が近いとバリアが強化されるのも実証済み。身体能力が生前よりかなり弱体化している今の私ではゼロ距離でレーザーを撃っても当たらないだろう。

 

それに、もし仮に当てて殺せたとしても意味がない。

いや、意味がないことはないが…教授を現段階では殺しきれない。

なぜならば、教授は命が『8個』ある。

日本のゲームなどで例えると現在活動している1つの命+残機が7個ある状態だ。

これは死ぬ間際私と対面していた7人の女神から命を貰う契約をしているからである。

教授が中性的な見た目になっていることにもつながっていて、命を貰うと貰ったものは与えてくれたものに姿が似ていくらしく、そのため教授は7人の女神が混ざった姿形になってしまっているのだ。

8つの命を持つ教授とそして地球を1人で滅ぼすことが簡単にできる7人の異世界の女神。

どうやって対抗するかは転生後この2年間も思いついていない。

 

「娘は教授の役に立つのでしょうか?」

「娘さんは私にとってとても興味深い存在に成長しますよ。そんな存在は私が生きてきた限り世界に2人しかいない」

 

両親と教授が喋っているが、2人というのは私と彼だろう。生前エジプトで教授は彼をN(ノア)に招待したと聞いた。

教授は面白がっていたのだ、私たちを。

私たちは条理のドミノを並べて作った物事の運命を『本』と読んでいる。

生前『巻末』と言っていたのはそれの最後ということであり、その運命は基本的に変えようがない。

 

しかし、過去に私たちがむちゃくちゃにして『本』を書き換えてしまう事態が起き、条理を破壊するものだと認識した。

そこまで正常に書けていたはずの本に、私たちのトンデモなシーン(彼の方が数倍多いが)が書き加えられてしまう。私たちは真剣にやっているつもりだが、側から見ると起きるはずのない超展開が繰り広げられる(これもほぼ彼)。起きえない逆転劇が次々に起き、助からなかった人が次々と助かる。几帳面な作家ならそれを是とはしないが、教授はそれを面白がる。

生前と同じく、私を手放すことはしばらくないと考えられる。

 

それならば私も教授の側にいて、攻略法を探させてもらう。

 

 

☆★☆

 

日本語を完璧にマスターし、超々能力の力も進化もした5歳の頃、私はネモ一族先祖代々入っている組織、『N(エヌ)』に入った。

教授をリーダーとする組織であり、政治上はテロ組織ということになる。

このNという組織の表の目的は異世界・レクテイアとこちらの世界・地球との融和というものだ。

レクテイアからきたものは耳や尻尾、羽が生えていたり、カエルや人魚のようなものもいる。

彼のメイドの金狼『リサ・アヴェ・デュ・アンク』や星伽巫女の『星伽白雪』の超能力も本来レクテイアの力であり、それがこちらの人間と結婚して先祖代々伝わってきたものである。

その力を持つものはこちらの世界では生きづらい。

リサは金狼の力を隠しているし、星伽巫女も山深くに暮らしていると聞いた。

過去にも魔女狩りや異端審問会など行われている歴史を見るに、こういったマイノリティは排除され生きづらい。

見た目が人間と違うものなら尚更だ。

 

私はこの差別を排除するためにNで戦ってきた。

こちらとレクテイアは文明や文化の差も大きい。教育はしているが、こちらの人類もレクテイア人に対して歩みよらなければならない。そのために教授の条理バタフライ効果を使ってこちらの文明のレベルを下げようとした。

 

しかし、その目的は私を騙すための教授の嘘。教授の目的は別にあった。

教授の目的は戦争・この地球人とレクテイア人を戦わせるという裏の目的があった。

 

教授が『地球』と『レクテイア』、二つの世界を使って書こうとしている展開は2章構成になっている。

その結末となる第二章は私が目的としていた、この世界とレクテイアが融合した驚くべき新世界の始まり。

これを夢見て私はNで戦ってきた。

 

しかし、そこに続く第1章ではレクテイアからこっちへ莫大な人流が要される。

そして戦争ほど人流を激しく生じさせるものはない。

レクテイア人のこちらの世界への流入・『サード・エンゲージ』と呼ばれるものはそれ自体が戦争を意味している。

教授はレクテイアから地球への侵略戦争を起こそうとしているのだ。

 

生前はサードエンゲージを止めることはできなかった。教授がそう企んだらそうなってしまう、理不尽なほど強い条理バタフライ効果のせいで。

彼と会ってお互いを理解するまでは、私はそれに協力して加速してしまっていた。

私が世界の平和の可能を不可能にしてしまったら、それを覆すことは『不可能を可能にする男』でも無理であった。

 

だから今度は防ぐためにその運命のドミノを止める必要がある。

教授の可能を不可能にしなくてはならないのだ。『可能を不可能にする女』の名にかけて。

 

 

 

 

 

 

…………と、息巻いていたのはいいものの、じゃあどのドミノを止めればいいのかは分かっていない。

私自身で倒し、加速したドミノはあるが、教授自身で倒したドミノもあるだろう。

しかもそのドミノが最終的どこにつながっているドミノかもわからない。

 

ドミノドミノと言われてもよくわからないかもしれないので簡単な例をあげよう。

 

『風が吹けば桶屋が儲かる』

 

という日本の諺がある。

桶屋が儲かるためには風が吹けばいい。

つまり風が吹くことがドミノの最初。

桶屋が儲かるのがドミノの終点だ。

 

順に見れば

 

1.風が吹く

2.砂煙が上がり目が見えなくなる人・盲人が増える

3.盲人が増えると三味線で生計を立てる人が増える

4.三味線には猫皮が使われるので猫が減り、ネズミが増える

5.ネズミが桶を齧り桶屋が儲かる

 

こういう仕組みだが、普通の人間は風が吹いても桶屋がなぜ儲かるかはその時点では理解できない。この2〜5を推理できるのは未来を予知できる『教授(モリアーティ)』と『探偵(ホームズ)』ぐらいだろう。

このような桶屋が儲かりそうなことを教授は大小構わず世界各地で起こす。

はるか遠く遠くの結果のための世界各地で起こるドミノを止めることは、未来から来たという大きなアドバンテージを持つ私でも困難を極める。

 

 

私は教授をできるだけ観察しながら、前世のドミノの起点となりそうなものをさりげなく止めた。

何せ私がドミノを止めてしまっても教授はそれを喜ぶ。

全て止めれたわけではないが、一定の成果はあげられたと思う。

 

…………しかし、インド海軍からNに譲渡された潜水艦・ノーチラスの船長になってしまって止めれるものは減ってしまったが。

 

 

 

 

能力を鍛えることは怠っていないが、教授にバレないぐらい造反するぐらいであまり前回と変わらない生活を送って数年経った頃、ある噂が聞こえてきた。

 

『銃弾を素手で跳ね返す』

『ミサイルを殴って逸らす』

『死んでも生き返る』

 

等、人間が到底できる行為ではない『不可能』なことを『可能』にする男がいると。

彼は私と対の存在で『不可能を可能にする男(エネイブル)』と呼ばれていると。

 

私はそれを聞いて、胸が躍った。十数年ぶりに私の初恋である彼の活躍を聞けたのもそうだが、私の年齢が食い違ってる以上彼がこの世界に存在しない可能性も0ではなかった。

 

私1人だけじゃないと分かって嬉しかった。

彼の存在が私の力になった。

 

私はNの味方のフリをしつつも、教授の動きをできる限り止め、ノーチラス号にレクテイア人を前回より多く乗船させることや、他のNの船に乗る交戦的な者を説得する等、前回の逆・運命のドミノを鈍化させる動きをしていた。教授は不可解に思っただろうが、私がこれが2週目ということは流石に推理できないだろう。

 

それでも、それは一時的な策でしかなくて……

 

 

運命のドミノは再び倒れ始めていた。

 

 

☆★☆

 

 

……ダメだ。

歴史の分岐点、本人が意図しようとしとするまいと将来どう動くかで後世が大きく変わる『激甚のバタフライ効果』の起点のなる人物との接触は、N内での位が高い私が出撃するので以前とは違い、大きくドミノを倒すことを止めることはできているが1人では限界がある。

やはり少しずつ、サードエンゲージ・戦争に向かってしまっているのが実感できる程になってきた。

 

 

そして教授はさらに早めたいのか、ある1人の少女を同志として迎え入れるための指令を出してきた。

私がいるここはローマ。

仲間は私含め6人。

ターゲットの場所は教授の推理で知っていたが、教えられなくてもわかる。何せ2度目なのだから。

私はターゲットの一団を見つけると

 

「……ッ!」

 

ある人をみて思わず走りだしてしまった脚を理性で1歩で抑える。

 

「?」

 

不自然に脚を一歩踏み出した私を見て横の2人の仲間が『?』というような顔をしたが、その片方が宝飾店のウィンドーみるターゲットの一団の先に1人に近づいた。『指輪を返せ』のようなことを言っているのだろう。

後ろから話しかけられた()はビックリしながらも身構えた。彼の同行者も同様に各々警戒態勢をとる。

 

「ベレッタ、帰れ……!」

「いや帰らない方がいい。もう帰れないだろう」

 

探偵(ホームズ)と話す彼を見て、この一瞬で察した。

彼は私と同じように2週目の存在では()()と。

一縷の望みが打ち砕かれるが……まあそうではないかと推測していた。

 

「誰なの、この人たちは…」

 

怯える金髪少女(ベレッタ)の前に彼が立つ。

私から彼女を守るように。

私を見る彼の目は最大限の警戒をした目。

その目を向けられるのはあの無人島以来だな。

 

「同志たちよ、争ってはならない」

 

私がフランス語でそう宣言すると、少しいきりたっていた私たちの仲間はおとなしくなる。

彼も直感的に感じ取っているようだ。

私と彼が対の存在だということに。

 

 

とうとうこの時が来たかと思う。

少し………いやかなり楽しみにしていた自分がいる。

にやけ顔を抑えれているのだろうか。

今回の任務は

 

『ベレッタ・ベレッタの勧誘』

 

私を見る初恋の相手、彼・遠山キンジと初接触の任務だったのだから。

 




この作品では説明しない予定のキャラ超簡単解説
○リサ
キンちゃんのメイド
狼少女
困ったら大体登場する有能

○ベレッタ・ベレッタ(24巻のメインキャラ)
イタリアの銃技師
アリアの色違いみたいなキャラ
アニメオタク





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