3日後……無人島鎮守府近海
「提督達も大変ですね〜」
哨戒の為に出撃していた青葉を旗艦とする古鷹、木曾、弥生、暁、響の艦隊。
その途中で青葉はそんな事を口に出した。
「あぁ、例のサフラン号の話だろう?」
「提督達も何か掴んでいるのか、あきつ丸さんや那智、羽黒達と真剣な話をしていますね」
「なのに、なんで私に話してくれないんですかね〜」
((((それは貴女だからですよ))))
「…………」
古鷹、木曾、暁、響は内心でツッコミ、弥生は沈黙を守っていた。
「ねえねえ、響。レディとして、こう言った場合はどうすればいいと思う?」
「姉さん、今は私達が入る余地は無いよ」
「むう…響、もう少し真剣に考えてよ」
「もっと別の事にその思考を使おうね、姉さん」
レディを目指しているにしてはどうも変な方向に思考が行ってしまう姉の事が妹である響の最近の悩みだった。
そう言った時、後ろにいた弥生が肩を叩いた。
「…あれ、イ級」
「えっ?」
弥生の指差す方を見るとイ級が2隻、こちらを見ていた。
「あれが例の男の子を助けたイ級か?」
横で話を聞いていた木曾が暁の頭に手を宛ながら言った。
「では、イ級に一言…」
「青葉、イ級の言葉が解る? それ以前に敵に取材出来るあなたに呆れるけど」
……敵を目前にしながらこんな会話を交わす面々。
まあ、イ級2隻ならこの戦力では余裕で潰せるが……緊張感がない。
そんな中、響はイ級に向けて手を振りながら叫んだ。
「Спасибо(スパシーバ)!」
「な、なんて言ったの、響?」
「『ありがとう』って言ったのさ」
「ロシア語はさっぱり解らん」
暁の質問に響は答え、木曾が頭を掻きながら呟く。
すると、響の叫びが聞こえたのかイ級2隻は反転した。
すると………
「スクープの予感がします! 追跡!!」
そう言って青葉がイ級2隻を追跡し始めた。
「ちょ、青葉さん!」
「あ〜、これは追いかけないとダメだな」
「れ、レディが走るなんて…」
「姉さん、そんな事を言ってる場合じゃあないよ」
「……弥生、追尾開始します」
イ級2隻を追跡する青葉を追う為、古鷹達も走り始めた。
その頃………無人島鎮守府
「さて……問題は確証ね」
能義崎を筆頭にあきつ丸、鳳翔、那智、羽黒…と鎮守府の幹部達が集まっていた。
議題はもちろん…サフラン号の一件である。
憲兵隊等から仕入れた情報を総合したところ、海賊とその裏に居る黒幕を推測出来るところまできていたのだが……確かな証拠が無かった。
「パラオ鎮守府に頼んで、現場海域の調査を…」
「無理であります。文句を言ってきたパラオ鎮守府が調査などさせてくれる筈がないであります。まあ、させてくれても、証拠を隠滅される恐れがあります」
那智の提案をあきつ丸は今までの経験から否定した。
「なら、あの男の子の証言を…」
「そうなんだけど…まだ子供だからね…信憑性に問題が出てくるのよ」
羽黒の提案は能義崎が答える。
「そうなりますと…後は現場を抑えるしかないのでは?」
「まあ、それしか方法はないですね…今のところは」
それがかなり難しい……と言う事は口に出さずとも、能義崎の顔を見れば皆がわかった。
「はぁ……さて、どうしようかしら…完璧に手詰まりよね」
そう呟いた時、龍驤がドアを蹴破る勢いで入って来た。
「た、大変や、提督! 青葉が不味いで!」
「どうしたの!?」
「青葉のアホ、那智達が出会ったイ級2隻を『スクープの匂いがする!』って言うて追い掛けとるみたいや」
それを聞いた鳳翔達艦娘メンバーは誰もが呆れ顔で内心で嘆いていた。
((((あのバカは…))))
そして、こちらは…
「……いま、青葉達は何処に居るの?」
「えーと…まだウチん所の担当領域内やけど…」
「…………」
腕を組み、暫く考えた能義崎の判断は……
「……放っておきましょう」
この言葉に龍驤をはじめ、秋津丸を除いたメンバー全員が転けた。
「て、提督! そんな悠長に…」
「いいのであります、那智殿。能義崎殿には何か考えがあるであります」
「あきつ丸…いくら付き合いが長くても、喋り過ぎよ。那智、今回の一件の始まりは何だったかしら?」
「それは…単艦行動のイ級を我々が見付けたからだ」
「そうね、そして、男の子を回収、疑惑が出てきた……私が思うにイ級は何かを掴んでる。それを私達に伝えたいのよ」
「突飛な発想に聞こえるんはウチだけやろか?」
「いや、私も同じだ」
龍驤の言葉に那智が賛同する。
「まあ、それは置いといて…あきつ丸、残ってる子達を集めて。臨時の補給部隊を編成して」
「了解であります」
「提督は長期戦になるとお考えですか?」
能義崎からあきつ丸への指示に鳳翔が訊いてきた。
「長期戦と言うか…長距離移動にはなります。多分、真実はパラオ領域内にありますから」
「わかりました。誰か手伝って、皆のお弁当を創らないと」
「あっ、私が行きます」
鳳翔と羽黒が退出し、龍驤とあきつ丸は二・三言交わすと編成の為に出ていった。
「……提督、こう言うのは不適切かも知れないが…我々は何と戦っているんだ?」
「あら、天下の那智戦隊長らしくない言葉ね……難しいわ。ただ、憲兵として言える事は『人も敵になる』…と言う事ね」
「人も敵に…か…」
「大丈夫、大丈夫。私は絶対に『敵』にはならない。話は変わるけど、那智。貴女と羽黒も出撃用意をして待機よ。イザとなったら貴女達にも出てもらうわ」
「わかった。では、準備をしてくる」
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