女性憲兵提督の無人島鎮守府記   作:休日ぐーたら暇人

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題名通り、あきつ丸と能義崎との出会い(昔)話です。
本日も午後に二作目投稿予定。


5 あきつ丸と提督の出会い

3日後……無人島 東側の岸壁

 

 

『木曾水雷戦隊』が初出撃し、その後2日間、午前・午後に分けて出撃を繰り返した。

そして、今日は休息日と言うことでお休みになり、5人は岸壁に座って魚釣りに興じていた。

 

 

「……釣れないぽい」

 

 

「まだ始めて20分も経っていないのであります。諦めるのは早いでありますよ」

 

 

「まあ、ボクも釣りは初めてだからね」

 

 

「まあな〜、ウチの蛸狙いやけど…木曾はんの狙いは?」

 

 

「もちろん、大物だぜ」

 

 

こんな会話を交わしながら5人は釣糸を垂らしている。

 

「ねえ、あきつ丸。あきつ丸に聞きたい事があるんだけど」

 

 

「なんですか、夕立殿?」

 

 

「あきつ丸って、提督と付き合いが長いって言ってたけど、どんな風に会ったぽい?」

 

 

「えっ、自分と能義崎殿の出会いでありますか?」

 

 

「それはボクも興味があるね」

 

 

「ウチもやな〜。木曾はんはどうや?」

 

 

「うーん、まあ、確かに言われてみれば気になるな」

 

4人の視線があきつ丸に集中する。

これにあきつ丸も応えない訳にもいかなかった。

 

 

「……まあ、隠す様な話ではないでありますし……あれは3年前の事であります…」

 

 

 

 

3年前……横須賀鎮守府 とある提督の工厰

 

 

 

「…う、あ……丸か」

 

 

「は…、こ……3……です」

 

目覚めたばかりで覚醒していない意識の中で途切れ途切れながらあきつ丸に会話が聞こえてきた。

 

 

「本当……、別の艦…が欲……ったが……ま…、…い。あ……へ送り……う」

 

 

「辻……、あ……は……まで儲……気……か?」

 

 

「君…甘…汁を吸っ……るじゃ……いか」

 

そう言いながらその提督はあきつ丸の顎に手を宛て、クイッと自分に向ける。

ボヤけている目が僅かづつはっきりと見えてくる。

その提督の顔は……厭らしくにやけていた。

途端にあきつ丸の背筋が寒くなった。初めてではあるが間違いない……この提督は『危ない』と。

しかし、目覚めたばかりの彼女は生まれたての子鹿同様、走って逃げる事など出来ない。

 

 

「さて、このあきつ丸を頼んだよ」

 

 

「はい。我々にとっても大切な『商品』ですからね」

 

悪寒によってはっきりとした意識により、明確に会話が聞こえる。

だが、そんな事はあきつ丸にとっては身の危険が迫っている事を教えるぐらいにしか役立っていなかった。

その時……突然、前の扉が乱暴に開かれた。

 

 

「辻少将! 貴方とそこに居る人身売買人を『艦娘の監禁・拘束』並びに『違法利益収得』の疑いで逮捕します!!」

 

腕に『憲兵隊』と書かれた腕章を着けた女性が叫んだ。

 

 

「ええい、小娘1人に今までの富を失えるか! 殺れ!!」

 

素早くあきつ丸が暴れても大丈夫な様に配置されていた部下8人が女性憲兵を半包囲する。

そんな状況下にも関わらず、女性憲兵はニヤリと笑うと腰のホルスターの拳銃でも折り畳み警棒でも無く、背中に背負っていた軍隊用携帯シャベルを取り出す。

 

 

「どっからでも掛かって来なさいよ。それともこっちから行こうかしら?」

 

そう言うやいなや近くにいた部下に突撃した。

構えていたアサルトライフルをシャベルの先端で撥ね飛ばし、柄で右頬を撲った。

周りにいた2人の仲間が女性憲兵にアサルトライフルを向けるが、1人は勢いそのままに顔面に柄をぶつける。

そして、もう1人に間髪入れず腹に柄を叩き込んだ。

大の男3人を瞬く間に叩き伏せた女性憲兵に誰もが目をみはる。

しかし、女性憲兵はその視線を気にする事もなく、次々に部下を制圧していく。

 

 

「ええい! 小娘1人に…おい、これを見ろ!」

 

最後の部下を叩きのめした女性憲兵に向かい辻少将が叫ぶ。

辻少将はあきつ丸の頭に拳銃を突き付けていた。

 

「おい! この艦娘が…」

 

どうなってもいいのか……と続く言葉を遮ったのは女性憲兵が投げた携帯シャベルだった。

投げられた携帯シャベルは辻少将が持っていた拳銃を撥ね飛ばして壁に突き刺さった。

 

 

「あっ…」

 

 

「加えて公務執行妨害です。拘束します!」

 

逃げようとする辻少将を床に叩き付けて拘束する女性憲兵。

 

 

「ひぃ!!」

 

女性憲兵に睨み付けられた人身売買人は慌てて逃げ出すが、部屋の外に出た瞬間、駆け付けて来た憲兵隊が人身売買人を拘束した。

 

 

「ふう、骨の折れる奴らね…あっ、あなた、大丈夫?」

 

目の前でおきた事態を呆然と眺めていたあきつ丸に女性憲兵が声を掛けた為、漸くあきつ丸も我にかえる。

 

 

「え、あっ…だ、大丈夫であります」

 

 

「そう、よかった。私は憲兵少尉の能義崎歩弥よ。あなたは?」

 

 

 

 

「……これが能義崎殿との出会いであります」

 

 

「「「「………」」」」

 

あきつ丸の回想を聞いた4人は唖然としていた。

 

 

「えっ、何かおかしかったでありますか?」

 

 

「い、いや〜、司令はんって、結構凄い人やな〜、と思ってな」

 

 

「あ、あぁ、提督が憲兵って聞いてたが…凄いな」

 

 

「そんな提督さん、見てみたいぽい」

 

 

「ボクも気になるな…そう言えば、その辻少将って何をしていたんだい?」

 

 

「後で能義崎殿に聞いたのですが、あの場で捕まった人身売買人と共謀し、風俗営業をしていたとの事であります。その風俗は……お察しの通りであります」

 

 

「「「「うん、同情も出来ない糞野郎だね」」」」

 

全員が頷きながら言った。

 

 

「それで、あきつ丸は憲兵隊に?」

 

 

「えぇ、預かる所がなかったので憲兵隊所属で能義崎殿とコンビを組んだのであります」

 

 

「ふ〜ん、あきつ丸は良い提督と出会ったぽい」

 

 

「そうでありますね…あっ、黒潮殿! 竿が引いているであります!」

 

 

「え、あっ! ほんまや!!」

 

 

「急いで巻け!!」

 

 

「かなり引いてるぽい! かなりの大物ぽい!」

 

 

「黒潮、巻いて巻いて!」

 

 

仲間達の協力で必死に巻いて釣り上げた獲物は……大物の鮪だった。

その後、入れ食い状態となり、その日は大漁だった。

なお、黒潮は蛸を釣り上げ、たこ焼きを作ったのは別の話である。

 

 

 

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