キチガイ共の蒼い空   作:十六夜やと

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 時系列だとハナコに『試験失格だと全員退学』がバレるところっすね。
 アズサと星空眺める回です。
 次回、某セクシーフォックスが大変なことになります。



 高評価・感想ありがとうございます。励みになります。
 低評価もありがとうございます。キチガイ共を派遣しときます。お覚悟を。


014 ハハッ

 月夜の晩というものは、なぜか清々しい気分になる。

 元々がド田舎出身だっただけに、星空が見える環境が身近だったため、こうして上を見上げれば満天の星空なのは安心すら覚えるものだ。さすがにトリニティ近郊だと、周囲の光のせいで見えづらくなってしまうだろうが、離れの合宿所だと違和感なく楽しむことが出来る。

 しかし──やっぱり地元の夜空とは違う。まぁ、なんか変な円状の線が浮かんでいるし、星の配置がまるで違う。ここは俺の知る故郷ではない。

 

 まぁ、そんなことは置いといて、俺は合宿所の中庭で同じく空を眺める生徒に近づく。

 同じ補習授業部のメンバーであろうと、アビドスのおやっどん程の交友を育んでいないので、相手にも分かるように一切の隠密行動はせず、無警戒を装って歩く。

 

 

「……オウカ?」

 

「良い子は寝る時間だぜ。明日も勉強三昧で疲れんのに、よくもまぁ哨戒までやれんなぁ」

 

 

 驚いたように目を見開く少女──白洲さんは、俺の登場を予想してなかったのだろう。

 自身の銃を握りしめていた彼女は、敵でないと判断したのか肩の力を抜く。俺がキチガイ共に同じ状況下で声をかけられたら、逆に警戒を強めるだろうなぁ。

 

 

「敵はいつ襲撃してくるか分からない。夜だからと言って、その警戒を怠るわけにはいかないから」

 

「ふーん」

 

 

 彼女の意気込みを聞きながら、俺は無警戒モードで隣に座る。

 ある程度はミライのド阿呆からストーリーの流れは聞いており、今の時期だと……ハナコが先生や阿慈谷さんから『補習授業部』の創設された理由を聞かされる頃だろうか?

 先生から少し話を聞いたが、どうやら昼頃に聖園さんと会ったらしい。先生は口にしなかったが、原作通りであれば、俺の隣にいる少女が『トリニティの裏切り者』だと聞いたはず。知ったところで、先生が白洲さんに危害を加えるとは全くもって思ってないが。

 

 しかし、残念ながら白洲さんの隣にいる男は、先生のように優しくない男。

 俺は彼女の言葉に相槌を打ち、爆弾発言をブチかます。

 

 

「想定している敵ってのは誰なん? 矛を交えた正義実現委員会?」

 

「それは──」

 

「──あとは……本来の暗殺目標だったティーパーティーの百合園 セイア? それとも、同胞たるアリウス分校の面々か?」

 

「!?」

 

 

 元アリウス分校の少女は、かつての経験で培った技量で相手を制圧しようと試みる。相手はヘイローを持たない人間だが、この距離は自身の愛銃を使うには難しい間合いでもある。それよりもナイフで動けないように──なんて考えたんだろう。

 白洲さんは刹那の身のこなしで銃を捨て、ナイフを用いた近接格闘に持ち込もうとした。

 

 が、

 

 

「なんつーか、やっぱ同世代の女の子が陸自顔負けの動きすんの、違和感しか感じないんだよなぁホント。なのに動き()()良いって感じるの、どーしてなんだろ? 上手く言語化できないわ」

 

 

 俺は彼女のナイフの()()()()()()()を素手で掴み、彼女の行動そのものを制限する。ナイフを捨てれば良かったんだろうが、彼女の『相手はキヴォトス人ほど頑丈でも強くもない』という先入観が仇となり、ナイフを取り戻そうと力を籠める。

 だが、ナイフはびくとも動かない。手の平は切れて、血も滴っているのに、目前の男はナイフを離そうとしないし、奪い返すことも叶わない。彼女の表情に焦りが見える。

 彼女の焦りの僅かな時間が、俺が言葉を重ねる時間を奇跡的に作り出す。

 

 

「俺も暴力が全てを解決する派の脳筋キチガイなのは認めるが、もう少し冷静に物事を考えてみようか。なぁ、白洲さん。俺は君にとって『敵』か?」

 

「………」

 

 

 そこで白洲さんもようやく、目前の男が場から一歩も動いてないことに気づく。

 少しの間だけ睨み合いが続き、俺が何のアクションも起こさない状況を確信し、ようやくナイフから力を抜いた。つまりナイフは俺の手に渡ったわけだが、俺はそのナイフをくるっと一回転させ、グリップの方を白洲さんに向けて返す。

 ……いや、少しだけ「このナイフの形状めっちゃ好み」って思ったけど。どこに売ってるやつ使ってるんだろう? それともアリウスの標準装備なのかな? それなら他アリウス生から奪わなきゃ。(使命感)

 

 

「しっかし、良か動きやねぇ。アリウス生ってみんな白洲さんみたいな動きすんの? えー、そうなると()()()()()()()いけなくなるんだが」

 

「私が言うのもなんだけど、手のひらの止血は早めにした方がいい。えっと、ハンカチは──」

 

「あぁ、包帯を常備してっから気にせんくてええよ」

 

 

 懐から取り出した白色の清潔な布で手をグルグル巻きにする。応急処置にしては杜撰の一言であり、すぐに包帯から血が滲んで来るが、あとで部屋に帰ったときにちゃんと手当てするので問題ない。

 この程度の怪我でギャーピー騒ぐような教育は受けとらん。こんな痛み、俺がやってたソシャゲのデータがキヴォトスでは使えない事実に比べたら屁でもない。

 

 

「で、話は戻るんだけど」

 

「……いくら常識知らずの私でも、ナイフで自身を傷つけた相手に何事もなかったかのように会話を続行するのは、普通に考えておかしいと思う」(ド正論)

 

「じゃあ俺が普通じゃないんだろうさ。白洲さんが毎日合宿所の周辺哨戒をするのって、アリウスの……あー、何だっけか。そうそう、アリウススクワッド……だっけ? その人と定期報告するためなんでしょ?」

 

「知ってて私を止めないの?」

 

 

 白洲さん的に俺は未知の化け物に見えるだろう。自身が『トリニティの裏切り者』であり、アリウス側に情報を流すスパイだと知っており、そのうえで自分を泳がすつもりのトリニティ生なのだから。

 原作知識の恩恵を受けている身としては、別に今の段階で白洲さんを引き渡すと余計に面倒なことになるので、放置するのが吉って認識なんだけどね。俺の言動が不気味と言われれば、それはそう。

 

 

「別に俺に君を止める必要性を感じないからなぁ。正直どっちでもいい」

 

「………」

 

「詳しくは言えないが、俺にも俺の目的があり、それに則って今回の補習授業部に参加してるわけ。そこにトリニティがどうだとか、アリウスがどうとか、ぶっちゃけどうでもいいんよ。だから放置。そんだけ」

 

 

 だって、俺のエデン条約編での目的って、ヴァルキューレ警察にお縄にされることだし。しかし、本当のことを言ったところで誰も信じてくれないと思うので、目的を公言はしない。

 濡れ衣を自分から着に行く阿呆なんざ聞いたことがねぇぞ。(壮絶なブーメラン)

 

 

「俺のことが信じられないのなら、アリウス側に俺のことを報告だけでもしといたら?」

 

「……それだとサオリはオウカを排除するかもしれない」

 

「その判断を下すのはサオリ……さんって人だから、そん時はしゃーない。敵対するなって言っても、最初から全方位敵だと認識している奴は刃向けてくんだから」

 

 

 逆に俺のことを知ってて黙ってたって事実が露見したら、それこそサオリって人に怒られない?と白洲さんを気遣う。アリウスが俺を認知して排除するというのであれば……相応の対応をするしかない。

 ……なんか余裕綽々な態度で返したはいいけど、サオリさんとやらはキヴォトス人だよな? まさかタックル対策をタックルで全破壊する霊長類元最強格とかじゃないよな? 流石の薩摩隼人(キチガイ)でも、あの御仁には勝てんのだが。

 

 白洲さんは少し悩んだ後、俺の隣に腰を下ろす。

 銃をちゃんと携帯しているのは……俺をまだ警戒しているのか分らん。いっつも特殊部隊並みに周囲を警戒する子なので、これがデフォルトとも言える。

 

 

「私は……確かに元アリウスの人間だ」

 

「知ってる」

 

「でも、補習授業部のみんなを傷つけたくない」

 

「そーなんだ」

 

 

 原作知識をミライやミナから聞いてはいるけれど、それを抜きに『補習授業部』のサポーターとして白洲さんを見ていた俺には、彼女が今の生活を心底楽しんでいるのは薄々勘付いている。あぁ、楽しんでんなぁって。

 しかしながら、アリウス側の目的はトリニティとゲヘナを潰すこと。彼女はアリウスにも『友人』と呼べるような人がいるのか知らんが、彼女は今の立場と本来の目的の板挟みに悩んでいる時期なんだろうか。

 

 

「ヒフミは『モモフレンズ』を教えてくれた。私にも親身に接してくれる」

 

「自称凡人を名乗ってるけど、普通にコミュニケーション能力高いもんなぁ」

 

「コハルは一緒に勉強を頑張る仲間だ」

 

「ツン要素多いけど、真面目に勉強してるし良い子ってのは分かる」

 

「ハナコは私の分からないことを教えてくれる。勉強以外のことも」

 

「勉強以外ってのは日常生活の常識的なやつね。えっちじゃない方」

 

「アイリスは……何考えてるのか分からないけど、私のことを信頼してくれてるのは伝わる。合宿所のトラップ設置も協力してくれた」

 

「そのトラップ痛かったぞ。めっちゃ」

 

「ヒフミも、コハルも、ハナコも、アイリスも、みんなみんな、私にとっては大切な仲間なんだ」

 

 

 そして視線を俺に向ける。

 

 

「もちろん、先生も──そして、オウカも仲間だ」

 

「………」

 

「オウカの作るご飯とデザートは美味しかった」

 

「作った甲斐があったな」

 

 

 だから、とアリウスの少女は言葉を続ける。

 

 

「みんなを裏切るかもしれないことが、怖い」

 

「なるほどね。今の生活は楽しいし、『補習授業部』で生まれた友情を大切にしたい。でもアリウスのスパイであることに変わりはなく、自身の行動次第では皆を傷つける可能性もある。それが怖い……ってところか?」

 

 

 俺が彼女の言葉をまとめただけなのだが、白洲さんは目を見開いて称賛の言葉を紡ぐ。

 

 

「オウカは凄いな。私の心を読んだみたいだ」

 

「そんな特殊能力は残念ながら持ち合わせてないぜ」

 

 

 どこぞのセクシーフォックスじゃあるまいし、と続けようとしたところで、白洲さんが興味深く懐かしい台詞を吐く。

 

 

Vanitas vanitatum(全ては虚しい、) et omnia vanitas(どこまで行こうとも全ては虚しいものだ)

 

「……ん?」

 

「全ては虚しい。こうやって悩むことも、結局は無意味になるかもしれない。それでも、私は諦める理由にはならないと……オウカ?」

 

 

 旧約聖書『伝道の書/コヘレトの言葉』にあった一節。

 キヴォトス人がいきなりラテン語でその台詞を口にするのだから、俺は思わず疑問符で聞き返してしまった。おかげさまで、白洲さんが何か良いこと言おうとしてしまったのを邪魔してしまったのだ。

 

 普通なら旧約聖書の言葉なんぞ一介の高校生である俺が知るはずがないのだが、どっかのロリコン野郎がガチャで爆死するたびに言うものだから、個人的に調べたことがある故に覚えていた。

 どうしてユダヤ教徒でもキリスト教徒でもない白洲さんが?と自問したが、ロリコン野郎がばにばにしてたのってコレが理由か?と自答する。つまりミナの癖はブルアカ(ココ)が元ネタであり、わざわざ旧約聖書から一丁前に引っ張ってきたわけではないと。

 ちょっとした疑問が解決して満足する俺だった。

 

 

「あ、ごめん。少し考え事してた。続けて?」

 

「あ、あぁ。私は全てが虚しいとしても、諦める理由にはならないと()()()()。オウカはどう思う?」

 

 

 俺は彼女の問いに即答する。

 

 

「そりゃそうやろ。そう考えること自体が虚しいわ」

 

「……うん」

 

 

 白洲さんが全てが虚しいと前置く理由も、俺に同意を求めてくる意味も、アリウス関連を大まかにストーリー上をなぞった程度にしか知らない俺には分からん。

 それでも、彼女は俺が同意をしたことに少し安堵しているようにも見える。

 

 

「その虚しいって思想がアリウス由来のものか分らんけど、白洲さんがそれを『認められない』って思うんなら、それに従って動いたらいいやん。そうだな、とあるゲームの言葉を借りるなら──」

 

「借りるなら?」

 

「『鍵が導く心のままに』、ってことかな。心が命じたことは、誰にも逆らえないんだよ」

 

「………」

 

 

 俺は寝っ転がって空を眺める。

 

 

「鍵が導く、心のままに……」

 

 

 彼女が言葉をかみしめるように呟く中、俺は満点の星空に想う。

 ──これ、D社に訴えられたらどうしよう、って。

 

 

 

 




【簡単な自己紹介】

島津(しまづ) オウカ:今作の主人公にして、キチガイ五人衆の一人。ストーリーの流れを知っているものの、アズサが某お姫様との決戦で背中から刺さないかを見極めるために接触した。アズサの様子に「これは大丈夫だな」と思った様子。ハハッ

白洲(しらす)アズサ:最近トリニティに編入してきた生徒。主人公の最後の言葉に感銘を受け、今後ストーリー上でその言葉を口にし、主人公がD社の陰に怯える。

Q.各話にサブタイトルって必要ですか?

  • いる。そっちの方が見やすい。
  • いらん。数字だけでOK。
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