キチガイ共の蒼い空   作:十六夜やと

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 第二次試験です。
 例のキチガイが再登場します。あんまり活躍はありませんが、このキチガイはエデン条約3.4章が見せ場ですからね。
 あとセイアが実装されましたね。セイア(薩摩)も喜んでます。
 リオも実装されたとか。そっちは……まぁ、うん。キャラビジュや設定的に超絶ドストライクなキャラなんですよ、ミレニアムの会長さん。二親等と同じ名前じゃなければシコれたのに。




 高評価・感想ありがとうございます。励みになります。
 低評価ありがとうございます。ユメパイセンの『たのしいバナナとり』を持ってるよ、と嘘を吹き込まれた臨戦ホシノがそちらに向かいました。後は任せます。



018 二次試験の影

“お、オウカ? 釘バットを持ってどこに行くの?”

 

「えぇ、試験前日の夜に試験範囲を3倍にした挙句、テストの合格ラインを60点から90点に変更し、ゲヘナでテストを行おうとする、某トリニティ学園の某ティーパーティーの大将首を、ちょっと頂戴しに参ろうかと」

 

“コンビニに行く感覚で恐ろしいことを言わないで!?”

 

「あはは、流石に冗談っすよ。1割くらいは」

 

“9割は本気なんだ……”

 

 

 俺は笑顔で釘バットをしまう。

 しかしながら、俺の奇行に苦言を呈する者は先生以外にはいなかった。本来なら現ホストへの殺害予告を仄めかした時点で、正実の某エリートを自称する下江さんくらいは止めないといけないのに、彼女は半泣きになりながら「どうして……」と肩を落としている。

 事前にこうなることをミライ経由で知っていた俺ですら、あまりにもの理不尽さにブラックジョークが口から飛び出す。桐藤さん視点からすれば、邪魔するなら当然だわなって感想だが。

 

 前述したとおり、第二次特別試験の前夜、トリニティの公共掲示板で試験内容の変更が発表された。それは今日まで頑張って勉強してきた補習授業部を嘲笑うような変更であり、容易に合格させまいというホストの本音を代弁しているかのようだった。

 この時点で、三次試験まで受けて不合格であれば全員が退学になることが情報共有され、馬鹿なりに必死に勉強してきた下江さんは泣き崩れるのだった。もっと馬鹿なアイリスも、仏頂面ながら不機嫌な雰囲気を醸し出す。白洲さんも困ったように眉をひそめていた。

 彼女らの不満は当然のものだろう。俺でも試験範囲を3倍に増やされたら、90点を取るのは無理と断言する。ハナコぐらいじゃねぇかな、合格できんの。

 

 

「試験開始時間が『深夜の3時』になっている。今から出発しないと間に合わない。障害の多さに文句を言ったところで、状況が変わるわけじゃない」

 

「待て。少し調べたんだが、美食が脱走した関係かトリニティとゲヘナの境でゲヘナ風紀委員が検問敷いてやがる。トリニティ生である俺らが越境しようとしても、あちらさんに止められるぜ」

 

「……むぅ」

 

 

 白洲さんは可愛らしく悩み込むが、流石に別地区の治安維持組織をかいくぐりながらテストを受けるのは難しい。先生の権限を使うことも一瞬だけ考えたが、それをエデン条約締結前でギスギスしている風紀委員に通じるか分らん。

 ……そもそもの話、この検問している風紀委員だが、桐藤さんの息がかかっている可能性も否定できない。

 最悪の場合は、先生経由で空崎さんに連絡を取ってもらい、越境する手段を考えるくらいには、第二次試験会場に辿り着く手段を模索する。

 

 補習授業部の面々も頭を悩ませ、思考がまとまらない様子。

 ただでさえ時間がねぇのにな。ホントやってくれたよ桐藤さん。せめてゲヘナに協力者がいれば解決の糸口があるのだが、トリニティ生がそう簡単に、

 

 

「あ、そうだ」

 

「ゲヘナに行く方法を思いつきましたか!?」

 

 

 阿慈谷部長が俺の反応に食いつく。

 俺は素早くスマホを操作しながら、ゲヘナ所属で乱雑に扱っても心を痛める必要のないゴミに心当たりがあったので、協力を仰ぐことにした。

 スマホを耳にあて、補習授業部のメンバーにグッドサインを送る。

 

 

「ちょっとゲヘナの協力者に頼んでみるわ」

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「悪ぃな、車まで出してもらって」

 

「オマエ単体なら死ンでも御免だが、他ならねェ先生の頼みなら仕方ねェだろ。貸一つ」

 

「へいへい」

 

 

 不機嫌そうに小慣れた運転で車を走らせるゲヘナの男子生徒──カネサダに、助手席に腰を下ろしている俺は感謝の意を示しておく。ゲヘナの時点でコイツに頼むのは盲点だった、仲間意識の薄さが選択肢を狭めていた。

 後部座席には補習授業部+先生の計6人がぎゅうぎゅうに座ってる。まぁ、このハイエースみたいな車、本来なら6人乗りなのだ。それを8人で押し込むように乗ってりゃそうなるわ。ハナコが車に傷がつかないか心配してたが、この車絶対に正規の手段で手に入れてないから、心配する必要は皆無だったりする。

 

 キヴォトスでマイカーは絶対に買わない。

 車好きのミナが自身の高級車を買った当日に木っ端微塵に爆破されたところを目撃した俺たちの教訓である。

 

 

「この道あってんの?」

 

「当たり前だ馬鹿野郎。テメェらがトリニティ生なのを考慮して、人目につかねェ道を選びながら回してンだ。風紀の連中の目を盗むンなら、このルートが……『ゲヘナ自治区第15エリア77番街』の最適解だ」

 

 

 試験会場の場所に関しても土地勘があるようで、カネサダは迷う素振り見せず細い道を何度も曲がる。何事もなければ試験会場にギリギリ着きそうだ。

 不安材料でもある野良チンピラ共も、運転手であるカネサダの顔を見るなり逃げている始末。コイツも悪い意味で界隈から知られているらしい。

 

 

「こんな遅い時間に車まで用意してもらって、カネサダくん、本当にありがとうございます!」

 

「さっきも言った通り先生の頼みで車出してるだけだ。気にすンな、阿慈谷」

 

“助かったよ、カネサダ”

 

「こっちには超弩級の馬鹿に勉強の概念を叩きこンでくれた恩もあるからなァ。先生も気にする必要なねェぜ。あァ、他の補習授業部の連中もな」

 

 

 ふんと鼻を鳴らすカネサダ。

 こんなに他者から感謝されることが珍しいので、慣れない礼の数々に辟易としているのだろう。

 

 なーんて運転がてらの雑談をしていると、白洲さんから疑問の声が上がって来る。

 

 

「? ヒフミと……えっと、カネサダ?は知り合いなのか?」

 

 

 実はこの純粋な質問、『トリニティの裏切り者』として絶賛疑われ中の阿慈谷さんにとっては、水素爆弾並みにアカン質問なのだが、それを知らないカネサダは「あァ」と口を開こうとする。

 

 

「アビ「「カネサダ(くん)!」」……ンぁ?」

 

 

 思わず声が重なる俺と阿慈谷さん。

 ゲヘナのキチガイとトリニティの自称凡人との関係性を語るとなると、阿慈谷さんがアビドスのブラックマーケットにあったカイザーコーポレーション系列の会社を焦土にした超極悪人『ファウスト』と同一人物であることがバレてしまうのだ。

 明言しなくても、ハナコなら断片的な情報で辿り着いてしまう可能性も否定できない。

 阿慈谷さん=ファウストの構図を知っているのは、アビドスの生徒と、薩摩のキチガイ共、先生……あとは俺の記憶を図書館扱いしているクレイジーフォックスのみ。

 

 カネサダが何となくタブーな回答であったのかを悟ったのか、視線をさ迷わせながら軌道修正する。

 

 

「アビドス自治区でなァ。オレとコイツは、アビドス在籍のミライの手伝い目的だったンだが、途中でクソ鳥「カネサダくん?」……ペロロ様のグッズ買い目的の阿慈谷とバッティングして知った」

 

 

 そんで、お返しと言わんばかりに狂喜に表情を歪める。

 

 

「アビドスのスイーツ屋でロールケーキを馬鹿食いしてンのをオレが目撃したってワケ」

 

「か、カネサダくん!?」

 

「なるほど、ヒフミちゃんが隠そうとしたのも、それが原因だったんですね♪」

 

「昨日のハスミ先輩みたいに……」

 

 

 とりあえず阿慈谷さんの所業がバレることは阻止することが出来たが、かわりに阿慈谷さんは乙女として大事なものを少し失った気がする。デリカシーのないキチガイに知られたのが運の尽きである。

 あと羽川さんがスイーツを爆食いしていることも知ってしまった。……あれ? 昨日ダイエットするってモモトークで宣言してたはずだよな? 羽川さん?

 

 俺的には癖にド直球なボディを持つ羽川さんのダイエットの失敗が確定的に明らかになったところで、トリニティの退学者予備軍御一行は廃墟に辿り着いた。

 外観から見て、どう考えても試験を受けるには似つかわしくない会場なのだが、廃墟近くにトリニティで使われる榴弾砲の不発弾が残っており、弾頭からテスト問題がコンニチワしたので、場所自体は間違っていないようだ。色々とツッコミどころが満載である。

 

 テスト問題の他にも通信機が混入しており、

 

 

『──モニタリングはさせて頂いておりますので、そのことはお忘れなく。……では、幸運を祈りますね。補習授業部のみなさん。()()()()()()()()()

 

 

 中々に煽り度の高い声援が録音されていた。

 桐藤さんってFPSだと死体撃ち好きそうっすね。(ド偏見)

 

 

「ゲヘナのトップは馬鹿が服着ているようなアマだが、テメェン所のトップも大概だぞ。ブリカスモチーフだからって、ここまでするか普通」

 

「ノーコメントで」

 

 

 モニタリングされているということは、この会話も聞かれている可能性もあるので、今回は回答を差し控えさせてもらうことにした。

 俺は何も言ってないですよ。うん。

 

 

「んじゃ俺とコイツは待っとくから、試験頑張ってな」

 

「あら、帰りもカネサダくんが車を出してくれるんですか?」

 

 

 ハナコの質問に、カネサダは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

 

「どうやってテメェらが、未だに風紀が巡回中のゲヘナから脱出すンだよ。乗り掛かった舟、ここで投げ出すほどオレは無責任じゃねェ。ここまでお膳立てしてやってンだ、さっさとテストで最高点叩き出してこい」

 

 

 5色の感謝を置いて、補習授業部と先生は廃墟へと消えてった。

 スマホで現在時間を確認すると、カネサダから会話アプリの通知が入った。真横に本人がいるのだが、ホストからの盗聴を警戒してのものだろう。モモトークではなく、ミナが独自開発した秘匿性の高いトークアプリでの通知がそれを物語っている。

 

 俺は内容に目を通した。

 

 

『うんち』

 

 

 俺はとりあえずカネサダの頬を全力で殴り飛ばした。

 

 

『小学校低学年以下のメッセージ送ってくんなカス』

 

『事実だろうが。ここをテスト会場に指定した上を、クソと言わんでどうする』

 

 

 ロリに好かれやすい熟女好きの言い分も理解できる。

 普通に考えれば、ゲヘナでトリニティの試験を行うなど正気の沙汰じゃない。

 

 

『百合豚曰く、第二次試験も不合格になるらしい。対聖園さん戦に注力してて、第二次試験自体がどんなふうに失敗するのかは知らんが』

 

猪女(アイリス)は合格ライン超えてんの?』

 

『実は合格基準が大幅に上がってな。60点はギリギリ取れるが、90点は流石に無理』

 

『あの馬鹿いつのまに60取れるようになったんだ? 合格ライン抜きにして、半分取れてりゃアッチ(元の世界)じゃ祭り騒ぎの快挙だろ』

 

 

 確かにアイリスの60超えのテスト用紙なんて、霧島神宮に奉納できるレベルの縁起物扱いされそう。それだけアイリスが頑張ったのと、先生の教えの賜物だろう。

 だからこそ、カネサダは大きく舌打ちをした。

 

 

『どっちにしろ、第二次試験で全員合格は不可能か』

 

『そうやな。でもアイリスがいなくても不合格って話だから、何かしらのアクシデントが発生するのは確定事項のはず。一番の問題は、その方法なんだが……』

 

『原作知識持ちマウントしてくるクズ共が、全部余すことなく吐けばこんなことには──

 

 

 と、俺たちのヘイトが同族に向いたところで、鼓膜を破きかねん爆音と、廃墟()()()()()の破片と、俺たちの衣服を揺らす爆風が一帯を襲う。

 破片等で致命傷を負うほど薩摩兵子はヤワじゃないが、心配なのは先生の生存と──あー、先生って『アロナバリア』とかいう、タブレット端末(シッテムの箱)由来の防壁があるんだっけか? そうなると、テストの心配が最優先やな。テスト始まって時間は経ってないし、廃墟自体が御釈迦になったので、テストの継続は事実上不可となる。

 

 モモトークで補習授業部の全体トークを開き、生存の有無を問う。

 程なくして先生含む全員の生存が確認され、テスト用紙が爆破で木っ端微塵になったことを知る。爆心地にいたアイリスはもちろん傷一つない。

 

 

『テストよりも身の安全が最優先。ゲヘナの風紀委員や野次馬が集まる前に、可及的速やかに車に集合』

 

 

 まずは騒ぎに巻き込まれる前に離れることが重要。

 そうモモトークに入力した俺は、先に車の助手席に飛び乗った。カネサダもエンジンを吹かし、いつでも出発できるように車を動かす。

 

 

「やってくれたなァ……クソアマァ……!」

 

「もちっと言葉を選べ。ウチのトップぞ?」

 

「はンっ、知ったことか。オレがわざわざ運んでやった姦し娘共のテストを台無しにした阿呆を、ゲヘナ所属のオレが忖度する道理はねェぞ」

 

 

 テストを台無しにされた補習授業部よりも不機嫌なゲヘナのキチガイにより、俺たちは何の憂うことなくトリニティに戻ることに成功した。

 後に、温泉開発部が出所不明の情報に則って、温泉開発の為に廃墟を爆破したと知ることになる。

 

 補習授業部のメンバーはお通夜状態。

 特に、勉強が苦手ながらも一生懸命頑張った下江さんは限界を迎えようとしていたが、

 

 

「──天網(てんもう)恢恢(かいかい)()にして漏らさず。物事の善悪、各々の努力は天が必ず見てるってこったァ。小物臭ェ妨害に負けンじゃねェぞ。第三次試験の健闘を祈る」

 

 

 敵には一切合切の容赦はしない『伊集院家の暴力装置』は、落ち込む補習授業部──特に下江さんや白洲さんに発破をかけ、自身の自治区に戻っていくのだった。

 

 

 

 




【簡単な自己紹介】

島津(しまづ) オウカ:今作の主人公にして、キチガイ五人衆の一人。正実のNo.2から、またダイエットします!と宣言を受けて、チベットスナギツネみたいな目をした。

アイリス・ワルフラーン:キチガイ五人衆の一人。最近は勉強が楽しい。なおテスト範囲以外はさっぱり。

伊集院(いじゅういん) カネサダ:キチガイ五人衆の一人。キチガイ共以外の仲間には甘い。特にガッツ意識のある人間は好き。

阿慈谷(あじたに) ヒフミ:補習授業部の部長。天皇家と島津家当主以外に様付けしないカネサダに『ペロロ』を様付けさせた猛者。

白洲(しらす)アズサ:最近トリニティに編入してきた生徒。主人公に教えてもらった『鍵が導く心のままに』をスローガンに頑張る少女。うっかりその台詞を呟き、キチガイ共が怯えてた。

下江(しもえ) コハル:正義実現委員会のメンバー。みんなからの愛されキャラ。

浦和(うらわ) ハナコ:補習授業部のメンバー。さて、あの猫ちゃんをどうしてくれようか。

Q.各話にサブタイトルって必要ですか?

  • いる。そっちの方が見やすい。
  • いらん。数字だけでOK。
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