次回はストーリー準拠、次々回から開戦かな?
感想・高評価ありがとうございます。めっちゃ励みになります。
「……ナギサの件は本当にすまないと思っている」
「んだよ藪から棒に」
明後日は泣いても笑っても特別試験最終日。
補習授業部のメンバーが二次試験妨害の士気低下を乗り越え、何なら満点取ってやるぞコンチクショーという気概を持ちながら、安定して模擬試験でも8割~9割を叩き出せるようになった。
ロクな勉強すら受けさせてもらえなかった元アリウス分校生の白洲さんも、自身の勉強の出来なさを嘆いていた下江さんも、小学校で学ぶ範囲ですら怪しかったアイリスも、そんで阿慈谷さんもハナコも、全員が第三次試験のために勉強三昧の日々を送っていた。
俺も白洲さんや下江さんの勉強を見て、彼女らのモチベーションが上がるような食事を提供し続けた。先生も寝る間を惜しんでアイリスの学力向上に尽力してくれた。
残りの時間も勉強に費やすのは確定事項だが、90点以上が合格ラインである以上は予断は許さない。
そんで夜は夢ん中でセイアと情報交換会。
俺の脳みそは果たして休めているのだろうか。全然眠いと思ったことはなし、特に疲れた様子もなく、しかしながらセイアとの記憶は細部まで覚えている。俺の身体はいつの間にかキヴォトス仕様になったんかねぇ。
「ティーパーティーに所属する者として、二次試験の妨害の件を謝罪するべきだと思っただけだよ。無論、今回の件が終わり次第、補習授業部の部員に正式に謝罪するつもりだ。君と、君の友人にも迷惑をかけたからね」
「……そうだっけ?」
今回は居間で読書をしていたセイアからの謝罪に、俺は心底困惑する。
そんで記憶をほじくり返し、んなこと言ってたなぁと結論に行きつく。
「謝りたいんなら俺達じゃなくて、一番の被害者の
「……そ、そうか。いや、君たちも例の件に憤っていただろう?」
「そりゃ悪態の一つや二つくらは口から出るさ。でも別にマジで怒ってるわけじゃないぞ」
セイア的には俺たちキチガイ共の逆鱗がどこにあるのか分からず、それに触れようものなら
気持ちはめっちゃわかる。なのでフォローを入れておく。
「つか逆に考えてみ? カネサダが桐藤さん相手にガチでキレてたら、今頃は聖園さんが望んでいる地位を得られているだろうよ。俺たちが吐いたのは不満の範疇だっての」
「それなら良かった……」
あくまでも俺たちの認識では「やりやがったよアイツマジで許さねえーからなガハハハッ!」の類であり、クレイジーなフォックスのセイアが気にするようなことじゃない。薩摩兵子は『敵』には言葉より刀を向けるほうが早いって知ってるからな。
俺も桐藤さんの立場なら、おそらくだがセイアでもドン引きするような手を打つだろうし、同行してたカネサダに至ってはキチガイ共の中でも一番温厚な説ある。
それに、対補習授業部の件で言えば、俺たちキチガイ共にはアイリス除いて全員が負い目があるからな。知ってて、黙って見逃がしている的なアレ。やったのは桐藤さんなので俺たちに補習授業部を害した責任はないにしても、要因の観点で見るのなら俺たちも無関係とは言えない。
「そうだな、例をあげるとすれば」
「ん?」
「キチガイ共の中で、桐藤さんの疑心暗鬼の過ぎた失政や、聖園さんの暴走、ゲヘナの老獪共のクソムーヴ、アリウス分校の非道を散々文句を言ってるわけよ。あくまでも
「言われても仕方のないすれ違いが横行していることは否定できないがね」
「でもさ──
「………」
「なんでだと思う? あぁ、別に答えなくていいよ」
俺の記憶の中から答えを導き出したのか、セイアは視線を逸らす。
アリウス分校が『マダム』と呼び、ミライやミナが『ベアトリーチェ』と呼ぶ者。薩摩兵子らはエデン条約編における元凶の名を過剰に貶さず、それ以外の生徒たちに厳しめの言葉を向ける。
なぜなのか。そりゃ簡単だ。
邂逅した瞬間に排除すると決定されている者に、これ以上議論する余地は微塵もないからだ。
出会ったが最後、一切の手加減もすることなく首めがけて刃を振り下ろす。殺したら詰むと原作知識持ちが言ったものの、調べていくうちにその声は聞かなくなった。こいつはもう殺すから、死ぬから、何も言うこともないという総意。結局のところはそれに帰結する。
ぜひストーリーが詰まないよう、
「さて、余計なこと聞いてスマン。話を変えるとしよう」
俺がちゃぶ台にトリニティの地図を広げる。
セイアも立ち上がり、俺の多面から地図を覗き込んだ。
「ストーリー準拠と仮定して、明日明後日、それこそ日付が変わった後が補習授業部の動くタイミングだと思われる。相手は聖園さんとアリウス分校の半数。桐藤さんの排除に動いているであろうアリウス勢力を、体育館に集めるのが第一段階」
「ミカはああ見えて『パテル派』の首長だ。確かに政争向きのタイプではないが、決して
「今のところはその予兆はねぇかなぁ。聖園さんの動向と、アリウスの動きから推測して、まず気づかれていないと思う。警戒はするが」
トリニティで情報を少し集めた限り、やはり聖園さんの為政者としての能力を疑問視する声は耳にする。本人ですらそれを肯定するのだから、おそらく彼女は『腹の探り合いとかそんな面倒なことが好きではない』人種なんだろう。気持ちはめっちゃわかる。
だからと言って、彼女の指揮系統能力を軽んじることは決してしない。
あんだけセイアや他キチガイ共に啖呵を切ったのだ。これで惨敗したらリアル切腹案件である。
「実際に話をしたことはないが、聖園さんの性格を鑑みると、もし俺を警戒しているのなら、とっくにトリニティ学園全体に戒厳令を敷いていてもおかしくないんよ。
「正義実現委員会を当日に動かす可能性は?」
「ないとは言い切れないが……それだと彼女が俺のやろうとしていることが本当に理解できているのか分からなくなる。だって──
それもこれもセイアのお陰だ。
彼女がいなければ、作戦のギリギリの段階まで俺は聖園さんを十二分に警戒していたであろう。まぁ、それでも作戦に支障がないように動かせてもらってるが、難易度が違う。
「白洲さんと、報告相手である……えっと、誰だっけか? 錠前さんだっけ? そっちとの会話も盗聴させてもらっているが、俺を警戒している内容は出てきてない」
「つまり相手方に君の行動は知られてないと」
「ミナにも盗聴内容を精査してもらって、周囲の音の分析から別手段で意思疎通をしていたと報告もない。俺の行動も『形だけは』警戒してるんじゃないか? 『ヘイローを持たない一般人』として」
キヴォトス外の人間基準って、先生がスタンダードだからな。
銃弾一発受けただけでアウトが普通であり、薩摩兵子と薩摩神話生物が異常なだけである。
「俺の動向を観察したところで、何も情報なんざ出て来ないよ。だって、俺の準備ってトリニティ自治区外で完結してんだから、あとはそれを自治区内に全部送るだけ。もうね、準備に死力を尽くしてくれた連中には感謝しかないわ」
今回はスピード勝負だしねぇ、と俺は吞気に笑う。
セイアも笑う。若干引きつってるように見えるが。
「お次はアリウス分校にご在籍されている、パテル派大将に表向きは協力している皆さんの装備。銃マニアじゃねぇから詳しいことは分からんが、そこそこ良い装備をしてらっしゃるのは確認できた。トリニティに潜伏していいるアリウス生の装備も、調べたものから変更なし」
「そ、装備?」
「んで、指揮系統、勢力規模だが──」
俺が脳内に叩きこんだ情報をつらつらと述べると、セイアの引きつる顔も、徐々に驚愕へと塗り替わっていく。顔が「そこまでするの?」と物語っている。
「別に調べちゃいけないって道理はねぇし、聖園さんは遥か前から今回の計画を立ててんだぞ。初動で遅れているのは事実であり、少しでも判断要素を増やすのは『合理的』だと思うんやけど……」
「……そういうものなのか? すまない、私は
「他は知らん。だが、突発的な戦闘じゃねぇんだから、準備はしてナンボやろ」
「それにしても……アリウスの思想教育って何なん?」
「詳細を聞かせてもらいたい」
「黒服さん経由で教えてもらったことなんだが、アレは
だが、と俺は続きを口にする。
「本当に勿体ねぇなって。アレ、彼女らを『恐怖』で縛ってんだとよ。そりゃ反抗されることがないよう、身体に教え込むって意図もあんだろうが、自身を『大人』と豪語するには全然なってないなって」
「確か……君の友人からの情報だな。自身の生徒に虚無感と憎しみを植えけ正当化し、幸福を望むこと、夢や希望を抱くことを『悪』とし厳罰化する。唾棄すべき所業だが、使い捨ての駒としか見てない彼女なら然るべき言動なのでは?」
「『恐怖』で縛った先にあるのは究極の指示待ち人間だぜ? 自身で考えることを放棄するからな。加えて、彼女らの行動方針が『怒られないこと』に定められる。ましてや、『恐怖』による圧政は、より大きな『恐怖』やら『暴力』ってモンに淘汰されやすい。あんまり良い手段じゃねぇと思うんよなぁ」
それとも、アレにはそれ以外の理由があるのか。
考えようかと思ったが、今のところは特に必要のない思考だと判断したのでやめた。
「もし、もしもの話だ。ベアトリーチェの立場で考えたとして、『恐怖』以外でどうやってアリウスを縛る?」
「信仰」
俺の答えは単純明快かつ、少々極端だった。
「自身を神格化するも良し、別の何かを信仰の対象にするも良し。とにかく『信仰』という形で、彼女らに救いを見出させて、自身の為に死ねる組織を作りだす。クソ害悪的な『大人』として、使い勝手の良い駒を作り出すんなら、俺ならそうする」
「………」
「信仰って名前の洗脳の一番厄介なところは、信ずる何かの為に命を簡単に捨てられること、そして洗脳を解くことが非常に困難であるという点だ。まーじで厄介」
白洲さんの言ってたラテン語のやつ……バニタスうんたらって言葉も、極限状態で生きてきた一種の洗脳とも言えなくないが、んなの普通の女子高生としての青春三昧を提供すれば、その洗脳を解くことはそう難しいことじゃない。先生に頑張ってもらおう。
しかし、シスターフッドの歌住さんに改宗を促したり、救護騎士団の団長に『救護』をやめるよう説得させると仮定しよう。絶対に無理やろ? 俺は匙を投げる。ヒンメルでもそうする。
『三国志』で有名な曹操が率いたとされる『青州兵』も、黄巾の乱で『太平道』を信仰していた連中を鎮圧した際に抱え込んで再編した精鋭やし、神の為に死ねる兵って強いんよ。
軍の損耗率9割でも撤退せず大将首をブン獲りに来る連中を相手にするって考えるだけで嫌やろ? あ、ウチの祖先が率いてた軍の話なんすけど。薩摩兵子の死生観念も、見方を変えれば信仰みたいなもんだしな。
サンクトゥス派の惨状は知らん。
「話が大きく逸れたな。悪い」
「いや、知識としては勉強になった」
「参考にしちゃアカンことしか言ってないけどね」
それもセイアは分かっているだろう。
サンクトゥス派の惨状は知らん。
「あとは……現場で、
「事が終わった際には、かかった費用は我々が負担しよう」
「俄然やる気が出てきた」
俺はニヤニヤ笑いながら──セイアに爆弾を投下するのだった。
「10億から先は数えてなかったんだ。ごちになりまーす」
「……は?」
【簡単な自己紹介】
サンクトゥス派:
Q.各話にサブタイトルって必要ですか?
-
いる。そっちの方が見やすい。
-
いらん。数字だけでOK。