神話生物を久しぶりに出したような気が。
本作の時系列はエデン条約編1章前で、アビドス編は終了し、パヴァーヌ編は1章までは終わっている設定です。
皆さんは『ブルーアーカイブ』というゲームをご存知だろうか?
基本プレイ無料のスマホゲーム。
あらすじは、数千もの学園で構成されている学園都市『キヴォトス』が舞台となり、主人公は、学園都市を統括する連邦生徒会長が立ち上げた連邦捜査部『シャーレ』の顧問、要するに『先生』として赴任することになる。しかし、先生を顧問に任命した連邦生徒会長は行方不明で、学園都市で起こる問題を生徒と共に解決していく──という学園×青春×物語が織り成すRPG。
俺はプレイしたことないのでストーリーの詳細は知らないが、数か月前に俺たちはこの青春詐欺の物騒な世界へと転生……転移だろうか? いつ誰がどのように何の目的をもって等の一切が不明であり、とりあえずキヴォトスに流れ着いたことしか分らない。
幸いにも『ブルーアーカイブ』をプレイしたことのある友人と一緒に転移してきたので、紆余曲折あれど生活基盤を築くことに成功する。俺たちがココに着た時期は、ちょうどシャーレの先生が着任する時期に近かったこともあり、友人の知識をアテにしつつ『キヴォトス』ライフを謳歌しているわけだ。
……え? 未知の世界に対する恐怖? この作品のタイトルちゃんと読んだか?
閑話休題。
学校が終わった俺とアイリスはアビドス自地区の拠点へと足を運んだ。
超絶過疎地域で人が少ないという理由だけで選ばれた立地にある一軒家。余談だが、ミレニアムやゲヘナなどにも俺たちの拠点は存在し、状況に応じて転々としている。
やっていることが犯罪者のソレである。
「ただいまー」
「おっかえりー」
誰もいない想定で「ただいま」と口にしたが、どうやら先客がいたらしい。
リビングのソファーでアホ面を晒しながら横になっていたのは、先ほど電話をしていた相手。アビドス高等学校の2年生で『アビドス廃校対策委員会』に形だけ在籍している男──種子島 ミライだった。
俺はマイペースを極めたマイペースクソ野郎の対面にあるソファーに雑に腰を掛ける。
その横にアイリスはちょこんと座った。
「ロリコンとババ専は今日帰って来るん?」
「前者はシャーレの当番、後者は美食研とグルメ巡りって言ってた」
聞いておいてなんだが「あっそ」と短く返す俺。
「つわけで俺としてはワイルドハント芸術学院とか転校先として大変よろしいかと思うんだが」
「待って待って待って。え、数カ月しかたってないのに転校の話マジなん?」
「『どの学校に行くか?』って選択肢を提示したのはテメェとロリコンじゃねぇか。それに数か月在籍してりゃ多少は分かるって。俺、トリニティの校風と絶望的に相性悪いわ」
俺がトリニティに在籍することになった大半の理由は、いわゆる『原作知識』を持つコイツとロリコンの勧め。
メキシコ並みに治安が終わっているキヴォトスだが、シャーレの先生の着任が起点となって、様々な問題が湯水のように湧き出ると原作知識持ち勢は語った。ので、キヴォトス人とは違い非力な一般人である俺たちは話し合い、ストーリーの動向を監視することも含め、それぞれの学校に編入することが決まった。
故に俺とアイリスはトリニティの校章を背負っているわけだ。本来ならばアイリスはレッドウィンター連邦学園という思想強そうな学校に行く予定だったが、彼女の
そのような経緯もあり、俺はお嬢様学校を満喫し来るべきストーリーを待っていたのだが、来るまでの学校生活で俺は気づいてしまったわけである。
あ、俺ってトリニティに向いてねぇなって。
「つかお前が言ってた『エデン条約編』ってのが次の原作の流れなんだろ? トリニティとゲヘナの条約なら、ゲヘナ側に潜伏しているアホンダラがいれば動向を十分把握できるやん。俺やコイツがトリニティに居続ける必要がどこにある」
「確かにエデン条約編はトリニティとゲヘナの不可侵条約の話なんだけど、原作だとトリニティがメインなんだよね。これトリニティに領外追放された原作の第三勢力『アリウス分校』も関わって来るし。だからトリニティにも『目』が欲しいワケ」
「ならお前がトリニティ行けばよかったじゃん」
「嫌だよ、あんな権力闘争が面倒臭いところ」
コイツ今すぐシバき倒したろか、と素直に思った。
確かに学校選ぶ段階で「アビドスとミレニアムとゲヘナとトリニティ、どれがいい? あ、僕はアビドスね」と即座に進学先を選んだくらいである。同じく原作知識持ちのもう一人はミレニアム行ったし。
そんでゲヘナのアホンダラとジャンケンして──俺が惨敗してトリニティに籍を置いている。
ただでさえ今の段階で嫌な予感しかしないのに、これ以上トリニティのいざこざには巻き込まれたくないんだけど。俺を早く解き放て、俺はヘイローを持たぬ一般人だぞ!?
「ブルアカのエデン条約編って、トリニティの主要キャラ同士の対話不足による相互理解の欠如が最悪の結果をもたらしたお話なんよ。どっかのロボットアニメみたく、『言ってくれなきゃ……! 何も分からないじゃないか! 言ってくれなきゃ……!』的な。それをシャーレの先生が何とか奇跡的に留めた感じ」
「俺そんなヤベェ渦中に放り込まれてんの……?」
「いやー、あれは面白かったね。当事者視点じゃなければ」
ニヤニヤ笑う畜生の最後に付け足された言葉が全てを物語っている。
そりゃ捩じりに捩じれた話が大団円のハッピーエンドに繋がるのであれば、それはそれは面白い物語だと言えよう。俺も読者視点で見てみたいわ。いや、本当に。
「つかマジで裏切り者って誰だよ」
「元アリウス分校の生徒で、トリニティに編入してきた
「そいつがスパイってわけね。なら──」
「んで彼女を手引きしたのがティーパーティー所属で『パテル』派のリーダー、
「……は?」
「さらにさらに、実はミカちゃんもアリウス分校との和解を目的で動いているんだけど、そもそもアリウス分校側は和解する気は一切ない。エデン条約編の本当の黒幕は、アリウス分校の生徒会長を詐称する『ゲマトリア』の『ベアトリーチェ』。アリウス分校生は彼女のことを『マダム』って呼んでる」
「………」
贅沢は言わんから今すぐ転校の手続きを取ってもよろしいだろうか? 二郎系ラーメン食っても、ここまで腹は膨れんぞ?
「んぁ? ゲマトリアって……例の黒服さんトコの?」
「そそ」
「この前のアビドスの一件で、カイザーPMC理事をミサイルに括り付けて空にブッ飛ばすのに協力してくれた、あの黒服さん?」
「そそ」
アビドス高校での一件から仲良くなった、ゲマトリア所属の黒服さん。アビドス高校在籍の小鳥遊さんや、シャーレの先生は警戒を促してくるが、俺からしてみれば親切なパトロンのイメージが強い。
なんか『神秘』なるものを研究しているらしく、彼は俺の隣でぽけーっとしているアイリスの無駄に丈夫な身体構造に興味があるらしい。被検体のアイリス自身が研究の実験台になることにノリノリの様子で、時々呼ばれては黒服さんところへ一緒に顔を出している。黒服さんは紳士なので女の子に卑しいことはしない。
『フンッ』(木の棒でビルを両断)
『す、すげぇ……! よう分らん薬のお陰で、モノを素手で砕くことしか知らないアイリスが『斬る』知性を得やがった……! パねぇよ黒服さん!』
『ククク……何それ知らん怖っ……』
黒服さんには足向けて寝れねぇや。
「黒服さん経由でベアトリーチェ?とやらを止めることはできんの?」
「確かにベアトリーチェは『ゲマトリア』に所属しているけど、あそこは各々が目的をもって動いているから、横の繋がりって強固じゃないのよね。たぶん黒服さんが止めても、あのベアトリーチェは絶対に強行するよ。花京院の魂を賭けてもいい」
「楽できりゃ良かったんだがなぁ」
「それにストーリーの関係上、ベアトリーチェいないと最終編で詰む可能性があるのが厄介」
ほな物語の動向を見守るしかないか。
……起こる可能性の高い惨事を知っていながら静観とは、第三者から見れば俺が『トリニティの裏切り者』の位置だよなぁ。
「知っても知らなくても結果は変わらないから、心配する必要はないと思うけどね」
「そのココロは?」
「『アズサちゃんはアリウス分校からのスパイで、それを手引きしたのはミカちゃんです。アリウス分校のマダムをブッ潰しましょう!』……って言ったとして、誰が信じると思う? ましてやティーパーティーのナギサちゃんから絶賛疑われ中のオウカの言葉を誰が?」
「お前それ知っててストーリーの内容をバラしたな?」
せいかーい、と馬鹿にするように笑うミライ。
「どーせシャーレの先生が何とかしてくれるし、何とかしてくれないと世界が滅ぶだけ。それなら僕らは僕らで面白おかしくキヴォトスを堪能するに限る。僕はアビドスのストーリーを満喫したし、オウカも『補習授業部』の物語を楽しむといい」
「……はぁ、疑われるのは非常に癪だが、どーせスパイ確定されたら退学になるだろうし、転校を急ぐ必要もねぇわな。パーッと流れに任せてみるか」
「うんうん。あ、僕からのアドバイスだけど──」
瞬間、ミライの雰囲気が一変し、表情を引き締め、真剣な眼差しで俺を見据える。
ピリッとした殺意にも似た鋭い空気に、今までのようなふざけた内容の話ではないことは容易に想像できた。生死に関わることだろうか?
それともキヴォトスの友人に迫る危機への警告だろうか? トリニティ外には友人と呼べる存在が僅かばかり存在する。アビドスの小さき先輩、工務部の扇動者、アウトロー志願者、ビッグシスター、など。……俺が友達だと勝手に思っているだけかもしれんが。
俺はミライの言葉に耳を傾ける。
一言一句逃さぬように。
「──『補習授業部』の百合はいいぞ」
「俺の記憶領域にクソみたいな情報をインストールすんじゃねぇ殺すぞ」
百合の信奉者からもたらされた
まったく、俺の周りには性癖拗らせた野郎しかいないのか。女の子の友情(解釈多め)に心血注ぐアビドスの百合豚、幼女の為なら三千世界を股に掛けるミレニアムのロリコン野郎、妙齢の女性がいない世界で過呼吸気味のゲヘナの熟女キラー。
マトモなのはムチムチした太股と乳を愛する俺だけ。はー、つれぇわ。
「よくよく考えたら、非暴力平和主義の俺ってトリニティ以前にキヴォトスで生きるのに向いてねぇな? こちとら品行方正、成績良好なだけの一般高校生やぞ。平和だった元の世界に戻──」
愚痴っていると俺のスマホが鳴る。
いつものスマホではなく、ミレニアム製の逆探知不可な仕事用スマホ。電話の主を見て、目前のミライに断りを入れて電話に出る。相手は……アビドス高校2年生の
「もしもし、お久しぶりー。カイザーの件以来だっけ?」
『ん、オウカも元気?』
「あぁ、お蔭様で。そこそこ元気にしてるよ。今日はどういった用件で?」
『明後日、銀行強盗したヘルメット団を襲いに行く。ホシノ先輩に銀行強盗はダメって言われたから、強盗した連中を襲えば問題なし。オウカやアイリスも来る?』
「素晴らしい。ちょっと待って……えっと……あー、その日は大丈夫やな」
『放課後、アビドス高校前で待ってる』
俺はスマホのスケジュール欄に『銀行強盗強盗』と追加する。
すると、仕事用スマホが再度鳴る。ミレニアムの生徒会長、
「もしもし、オウカです」
『単刀直入で悪いのだけれど明々後日は開いているかしら』
「少々お待ちを……自分は特に予定ないですね」
『それは良かったわ。今後の計画に関して相談したいことがあるから、あなた一人でミレニアムに来て欲しいの。トキを案内に向かわせるわ』
「別に構いませんが……先に言っておきますけど、自分は病弱ハッカーさんとも繋がりがある人間ですからね?」
『でも今は
電話が終わった俺は大きく息を吐く。
明後日は強盗、明々後日はアドバイザー。補習授業部の件も踏まえると、全くもって忙しい学校生活だ。
「……オウカ」
「なんだミライ」
その様子を見たミライは、笑顔で中指を立てて言い放つのだった。
「二度と一般高校生名乗るなカス」
【簡単な自己紹介】
アイリス・ワルフラーン:キヴォトスに転移してきたキチガイ五人衆の一人。原作知識皆無。黒服とは仲良し。
黒服:諸事情によりキチガイ共とは誠実な関係を築いている。
Q.各話にサブタイトルって必要ですか?
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いる。そっちの方が見やすい。
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いらん。数字だけでOK。