感想ありがとうございます。励みになります。
時間的には第三次試験が開始されている頃合いだろうか。
あとは各々が全力を尽くすのみなので、試験を受けない俺からは声援を送ることしかできないのがもどかしい。まぁ、俺は彼女らが合格するであろうと
それより──目前の会話に思考を割くべきだろう。
今回で三回目となる、
やんごとなき茶会よりも、ポテチとコーラでパーティーやってる方が性に合ってる俺が、なんで英国風オホホな茶会に何度も呼ばれるのか本当に意味が分からない。心当たりがないとは言ってない。
めっちゃ高そうな紅茶に、めっちゃ高そうなクッキーやマカロン、めっちゃ高そうなロールケーキやショートケーキ。頭が悪そうな物の評価しか出て来ないが、経験に乏しいので許してほしい。対面の桐藤さんに反比例して、俺になんと似つかわしくない場所なのだろう。
これが緑茶や和菓子類なら、物の良し悪しが分かるのに。
一度目の茶会は交渉と割り切って耐えた。
二度目の茶会は軍略の一環と言い聞かせた。
しかし、今回呼ばれた理由が分からん。
ここにいる二人は互いに負い目がある。彼女は俺に対して、『トリニティの裏切り者』と疑い、退学させようとしたこと。俺は彼女に対して、『トリニティの裏切り者』と『セイアの生存』を知っていながら黙っていたこと。加えるのなら、ハナコのやらかしで俺が死んだと流言したことだろうか?
ちなみにだが、俺を茶会に呼んだのは某セクシーフォックスである。
夢の中で招待された。
「「………」」
流れる沈黙の時間。
彼女は口を開こうとするが、気まずそうに閉ざす。それを何回か続けている。
俺はそれを静観するのみ。別に俺の方から会話を振ることもできたが、不思議と俺の直感が『それはいけない』と告げているので、彼女が話を始める準備が整うのを待つ。
この時間が永遠に続くのではないかと思い始めたところ、扉を開き三人目がログインしてくる。彼女の同僚とも言える存在であり、俺の共犯者とも呼べる存在。
セイア(薩摩)だった。木刀をマジで引っ提げてるのでなんか泣けてくる。
「すまない、遅れてしまった。救護騎士団から逃──説得するのに時間がかかってね」
「お前救護騎士団から逃げて来たって言わんかったか今」
「気のせいだろう」
病弱体質が木刀引っ提げて病室から逃げ出したんなら、そりゃあ医療を司る組織が許すはずがない。つまり今回の茶会は制限時間付きということが分かった。
はよ寝とけや、という俺の視線に彼女はすまし顔で返す。
……そうだよな、
「こうやって
「……トリニティ総合学園2年、島津 オウカだ。初めまして、先輩。今さらだが確認したい。公式の場だし、敬った喋り方の方がいいか?」
「水臭いな。私と君との仲だろう?
「……随分と仲がよろしいんですね」
俺とセイアが夢の中と同じようなノリで会話していると、桐藤さんがやや不満げな表情で、若干言葉にトゲのある口調でセイアにぶつける。
彼女が不機嫌になる要素が見当たらないが、セイアは「気の合う友人だからね」と勝ち誇った笑みをホストに向けている。セイアが彼女に対してマウント気味な発言をする意味も分からない。
全てがわからないことだらけ。
もう帰ってもいいっすか?(切実な願い)
「私には他の目的があれど、ナギサはそれ以外にも彼に言いたいことがあるのだろう。私も……まぁ、諸事情により時間がないのでね(自業自得)。まずはそれを彼に伝えるべきでは?」
「そう、ですね」
彼女は神妙な顔つきに戻ると──俺に向けて頭を下げた。
「今回の一件、本当に申し訳ございませんでした」
「……その言葉は先生を含めた補習授業部の皆に向けて下さい。俺の方も、桐藤さんに対しての不義理を行っています。こちらこそ、申し訳ございませんでした」
仕掛けてきたのが向こうだったとしても、こっちも知ってて黙っていたことなどいくらでもある。無論、こちらにも事情があって言えないことが大半だったが、それとこれとは話が別。
そういう思いもあり、俺は頭を下げた。
目前の少年の対応をどう思ったのか、彼女は頭を上げて困惑したようにセイアの方を見る。
その様子をセイアは面白そうに茶化す。
おい、ロリコン野郎。お前が言ってたセイアの性格と目前のセクシーフォックスの性格、なんか違うんやけど。なんだこの末っ子感満載の狐は。
「ナギサ、私は言ったはずだぞ。彼は君の所業に怒っていないと」
なるほど、彼女は俺が怒っていると思ったのか。
……そんなに短気だと思われてんのかねぇ。割と俺は穏便な性格だと思うんだが。
「私はシャーレの権限であなたを退学処分にしようとしました。『トリニティの裏切り者』であると、冤罪であなたを罰しようとしたのです。恨まれて当然のことをした自覚はしています。トリニティのためと言い訳をすることは簡単ですが、私は──」
そこで言葉を切った彼女は俺の目を見る。
なぜ、どうしてと。
「──あなたを切り捨てようとしました」
「………」
俺は彼女から目を逸らし、目前の紅茶で喉を潤す。
少し長い話になるかもしれないと思ったからだ。
「……確かに、切り捨てられる側から見ればたまったもんじゃないとは思います。しかし、桐藤さんの立場として考えるのならば、その選択をした心境ってのは理解できなくはないんですよ」
「私の選択を、ですか?」
「あくまでも俺の想像ですけどね」
説明を求める二人に、俺は言葉を選びながら自身の考えを口にする。もちろん、的外れなことを言っているかもしれないと保険はかけておく。
これはセイアにも伝えなかった、彼女の疑心に関しての俺のスタンス。
「自身の命を狙う下手人が誰か分からない不安、心の底から信用できる者はおらず、一勢力の長としての責任、タイムリミットは僅か──そういった環境下であれば、
言わば『トロッコ問題』的なものだろう。
十の為に一を犠牲にする思考。民主主義的には完全にアウトだし、推定無罪の原則ガン無視の人権軽視の考え方なのは否定できないが、ここはキヴォトスで彼女は一国の主。彼女がトリニティの命運を握っている齢17の少女であることを踏まえると、仕方ないんじゃないかなぁってのは思ったりもする。
何度も言うが、切り捨てられた側の知ったことではない。その点だと、彼女は補習授業部のメンバーから批判されて然るべきだと思う。
「あと憶測の話になるんですが」
「はい」
「一般的に考えて──死ぬのって怖いじゃないですか。自分の命を誰かが狙ってて、身近な人物が亡き者になっている。次は自分かもしれない。これはもう本能的なモンなんで仕方ないです。そういう潜在的な自己防衛も、桐藤さんの疑心を大きく加速させたんじゃないかと俺は思うんですが……」
「………」
彼女は肯定も否定もしなかった。
頭が薩摩に侵食されたセイアも口にしていたが、桐藤さん自身に戦闘能力がないのも要因の一つだろう。俺の場合は裏切り者が出たとしてもチェストしに行くかぁ程度の心境になるが、彼女の場合だと反撃・防衛する手段が他人任せになる。死にたくはないが、他人が信じられないとなると、もう全てが上手くいくはずもなく。
「しかし、桐藤さんの考えは『理解はできる』ってだけの話です。アイリスも言ってたと聞いたんですが、身内だろうが親族だろうが、裏切るときは簡単に裏切ります。そんで、クーデターや謀反は偶発的なものなので、基本的に起こされたら後手に回るしかないんすよ。対応できなきゃ死ぬだけです」
「……オウカさんは、死ぬのが怖くないんですか?」
「ヘイロー持ってない俺がキヴォトスで生きていく時点で、俺はそう遠くないうちに死ぬんだろうとは思ってます。それがいつになるか分かりませんが、俺たちが仲間内で馬鹿騒ぎしてるのも、いつ死ぬか分からん物騒な世界で、悔いが残らんように生きてるってだけの話なんです」
死生観がバグってんですよ、俺たちは。
そう笑いかけるが、二人の顔は暗くなっていくばかりなので、話を元の軌道に戻す。
「疑心暗鬼になることはあります。慎重的な者ほど、それは大きくなります。俺も疑い深い人間ですからね。でも、俺は一人で何かを成せるほど万能でも超人でもないので、結局は他者を信じて任せるしかないんですよね。悲しいことに」
「……確かにそうですね。私も、万能や超人とは程遠い存在ですから」
「それでも不安っていうのなら──」
幼馴染に裏切られ、信じることをどこか恐れている少女。
そのうち矯正局に所属する身なれど、それまでの短い時間は彼女の味方であろうと考えた。
「俺なんかで良ければいつでも相談してください。話は聞きますし、悩みには可能な限り相談にのりますし、暴走しそうなときは諫言します」
むしろ某ミレニアムのビッグシスターから定期的に相談が来ているからな。俺は学校代表のサポートセンターではないのだが、相談相手が一人から二人になったところで変わらん。
理想としては、そこのセクシーフォックスとか相談相手にオススメだが、今のクレイジーフォックスは何を言い出すか分からん危うさがある。桐藤さんまで早朝に木刀振り回すようになったら、トリニティはマジで終わっちまう。
しかし、今の俺の言葉のどこに彼女の琴線に触れてしまったのか分からんが、彼女はパァっと微笑みながら、
「──はいっ。その時は、よろしくお願いいたしますっ」
食い気味に了承してきた。
どういうことだってばよ。
「……さて、ナギサの話はそのくらいにして、私の用件も話そう」
対して若干不服そうなセイアが強引に話題を変える。
「今回、トリニティは君に対して多大の迷惑と、容易に返しきれないほどの恩を受けた。ミカも自身の愚行を止めてくれたことに感謝しているだろう。私もナギサも、君の要望に添いたいと考えている」
そしてセイアは懐から数枚の紙の束を取り出す。
俺がミライと計算した結果生まれた、トリニティのクーデター鎮圧に使った費用の請求書。金銭的には最終的に約14億くらいだったか?
トリニティの資金力から鑑みれば、微々たる金銭だろう。
「その、だな。私も自身から宣言した約束を反故にするのは本意ではない。……が、減額などと世迷言を吐くつもりはないが……ぶ、分割は無理だろうか?」(震え)
冷や汗をかいているトップ陣に、俺は小さくため息をつく。
彼女らの言い分は不義理にも程があるだろう……とは思わん。むしろ、トリニティの政を担う者として、この請求書通りの金額を支払うのは難しいとは思っていたからだ。
いくらトリニティがお嬢様学校で、予算も潤沢だろうが、そう易々と支払いに応じることが立場上難しいのは想像に難くない。
理由は簡単だ。トリニティという三大校の一角を担う自治区が、自治組織を動かすことなく(1アウト)、外部の武装組織にクーデターの鎮圧を要請し(2アウト)、少なくない金銭をトリニティの名義で支払う(3アウト)。
んなの普通に考えればトリニティ内外から何言われるか分かったもんじゃない。外部からはクーデターも鎮めることのできない自治組織なのかと正義実現委員会の存在意義を疑われ、内部からは現在進行形で各派閥からティーパーティーの失態を問われていると聞く。
ウチにセイアが要請したってのもヤバい。
既に桐藤さんの『シャーレ』の権限を悪用した退学処分未遂は他派閥からの不信を招いているし、聖園さんはクーデター未遂の張本人。ただでさえティーパーティーの権威は揺らいでいると言っても過言ではないのに、これにセイアも外患誘致を疑われている状況で、その費用が
じゃあ、個人で支払えるかってなると、個人で約14億をポンと出すには厳しい金額だ。だからこそ、セイアは分割払いを求めているのだろう。
だからこそ、俺はセイアからの交渉が来ることは見越していたし、ミライと話し合ってどういった返答をするのかを決めてあった。
「あぁ、俺もその件でセイアと桐藤さんに交渉したかったんだ」
「そう仰っていただけると助かります……」
「うん。エデン条約調印式で俺たちもやりたいことがありまして。もしティーパーティーの皆様にも協力してもらえるのなら──その請求書、破棄してもらっても構いません」
「「!?」」
そりゃあ、一企業にとっては無視できない約14億のクレジットをチャラにすると言っているようなもんだ。彼女らが目を見開いて驚くのも無理はないだろう。
そもそも、今回の戦費は俺たちが個人的な思惑でエデン条約編に介入するために動かしたものであり、自分たちで負担する気満々だったからな。ましてや、調印式でキチガイ共が
というのがキチガイ共の総意である。
我を通すために軍事費に高コストかけ続けた島津を
「その、協力というのは……?」
「トリニティにとっても悪い話じゃない。まぁ、簡単に言うと──」
それは次の布石。
キチガイ共の戦争は終わっていないのだから。
「エデン条約調印式を狙って来るであろうアリウスを、ちょっとグチャグチャにしてやろうかと」
【簡単な自己紹介】
Q.各話にサブタイトルって必要ですか?
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いる。そっちの方が見やすい。
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いらん。数字だけでOK。