キチガイ共の蒼い空   作:十六夜やと

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 今章ラストです。
 次回からエデン条約編3章となります。
 余談ですが本作のエデン条約編は5章まであります。5章は『キチガイ共VS他勢力&神話生物』になります。





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 あとストーリー進行には全然関係ない短期間のアンケートを用意しました。お気軽にご投票下さいませ。

 2025/2/9 誤字修正しました。


026 祝賀会

 俺はスイーツバイキングで有名な某店の扉を開ける。

 薩摩兵子には不釣り合いの、若い女性に人気がありそうな店だとは知っていたが、店員さんは俺の来店ににこやかに対応してくれる。

 育ち盛りの男子高校生がスイーツバイキング行く金があるんなら、迷わずに食べ放題の焼肉店とかの方に行くからな。よほどの事情がない限りは、こういった場所に出入りしようとすら思わない。

 

 その『よほどの事情』というのは──

 

 

「すまんすまん、遅れた」

 

「こっちですよー! もうドリンクも頼んでますが、アイリスちゃんがコーヒー選んじゃったんですが大丈夫ですか?」

 

「むしろ正解。ありがとう」

 

 

 補習授業部の全員が試験に合格したとのことで、こうやって祝賀会をスイーツバイキングで行っていたというわけだ。もちろんメンバーだけでなく、顧問をしていた先生もいらっしゃる。

 先生も“オウカもお疲れ様”と席から手招きしている。彼の表情から察するに、女性陣ばかりの環境で、ようやく同性が来たと喜んでいるように見える。俺も異性ばっかりの環境よりは、他のキチガイ共や先生といた方が精神的に物凄くありがたい。

 

 仲間が囲うテーブルに腰を掛けるが、既にテーブルには各々のドリンクと、たくさんのスイーツが鎮座していた。甘いものは好きではあるが、晩飯はガツンとした塩気のあるモノが食いたいなって思った。

 

 

「遅いわよ、あんたどこに行ってたの?」

 

「ナギサとセイアに呼び出し受けてた」

 

「なっ、呼び捨て!?」

 

 

 下江さんに「こんな大事なときにどこ行ってたのよ……」みたいな表情をされたので、隠すようなことでもないので素直に情報を公開した。

 セイアだけじゃ飽き足らず、ナギサも呼び捨てにしたのは、純粋に相手方からそう望まれたから。俺がセイアんことを呼び捨てにしてたのを指摘され、「私のことも『ナギサ』とお呼び下さい」と敬語禁止込みでせがまれたので、俺はティーパーティーの上位陣2名を呼び捨てにする不遜な男子生徒となってしまった。

 やけに自身の名前を呼ばせるフレンドリーな上級生が多いんやなって思いました。……そういや、『ブルアカ』を作った会社って韓国の企業だよな? 韓国って名前呼びが主流って風の噂で聞いたことがあるから、それが由来しているのかもしれない。知らんけど。

 

 と弁明すると、苺のショートケーキをもっきゅもっきゅ食ってるアイリス以外の補習授業部からからジト目を向けられる。先生は苦笑い。

 なぜそんな目を向けられないといけないのか。おいには分からん。

 

 

「……そういえば、補習授業部のみんなをハナコちゃん以外は苗字で呼びますよね」

 

「まぁ、前いたところはそれが当たり前だったからな。親しい人間だけ名前で呼ぶ的な? その癖が残ってるようなもんだよ。他のキチガイ共もそうだったろ?」

 

「……それなら私たちも名前で呼ぶべきじゃないか?」

 

 

 白洲さんの発言に全員が頷く。ハナコも微笑んでいるだけだが、雰囲気的には同調している模様。

 確かに先ほど俺が言った理論は、裏を返せば『そんなに親しくない人は他人行儀で呼ぶんですよね?』となり、約1週間以上寝食を共にし結束力を強くした補習授業部の面々からしてみれば、俺の対応は看過できるものじゃないんだろう。

 俺の言葉足らずの説明が悪かったと内心で反省する。俺の『親しい』って、生まれた時から付き合いのあるキチガイ共が基準やからな。故に、俺は親しくとも相手からの了承がなければ名前で呼ばん。例外はあれども。

 

 しかしながら、今さら言い出せる空気でもなく。

 エ駄死の対象にしているであろう下江さんですら「私たちはもう『仲間』なんだから、名前で呼ばないと許さないわよ!」と仰る始末。

 

 

「分かった分かった……えーと、ヒフミにアズサ、そしてコハル。これでいい?」

 

「あら、私の名前がありませんね♡」

 

「ハナコは前からやろがい」

 

「私は?」

 

「大人しくケーキ食ってろ脳筋」

 

 

 名前を呼びながら、内心は「やっぱ慣れねぇなぁ」と肩をすくめる。元の世界で名前を呼び合うこと自体が少なかったから、ここでは『文化が違う』と割り切って、『郷に入っては郷に従え』の気概で適応するしかないんだろうなと気持ちを新たにする。

 その点、カネサダとミナはんなこと言われたことがないらしいから、あいつらの立ち回りは本当に凄いなと思う。ミライは名前で最初から呼ぶから知らん。

 

 なお、カネサダが万魔殿所属の幼女のことを『イブキ』と名前で呼んでいることが発覚し、万魔殿から『カネサダ討伐隊』が編成されたと聞いて嘲笑った。ミレニアムのロリコン野郎も万魔殿に協力を申し出ていると耳にし、余計にカオスになってるらしい。

 

 

「ところで話は変わるんだけどさ」

 

「はい」

 

「俺の皿に盛られているペロロを「ペロロ様ですね」……ペロロ様を模したケーキを食すのは義「義務ですね」……そうっすか」

 

 

 俺が来ることを想定して事前に俺が食いそうなスイーツを盛ってくれたんだろうが、その中にはひときわ目立つラリった目をした鳥を模った白いケーキがあり、ヒフミ部長の圧にたじろいてしまう。

 周囲を見ると、他の面々の皿にもキチ鳥のケーキが配膳されている。例外があるとすれば、アズサの皿にある『スカルマン』とかいう黒いキャラのケーキだろうか。こういうコラボ企画も見越してココを選んだと思うと、()()()もやるなぁと感心するばかり。

 

 

「それにしても……ここのお店が『モモフレンズ』のコラボケーキを出しているなんて知りませんでした。SNSでも情報が出回ってませんし、本当に良かったです」

 

「招待してくれたオウカには感謝したい」

 

「それはカネサダに言ってくれ。補習授業部の全員が合格するって()()()()、事前にココを予約して金出したのはアイツだから」

 

「そ、そうなんですかぁ!?」

 

 

 俺含む他キチガイ共がアイツのことを『ファッション不良』と馬鹿にする理由の一つでもある。こういう気遣いとか、カネサダの野郎は自然と気配りが上手やからな。口がクソ悪いだけの優しい戦闘狂(バトルジャンキー)なんて言われてたなぁ。

 元々はドストライクのご婦人方を口説くためと言ってたが、それが生かせない世界に来てしまったもんだから、癖に正直になれないと迷走している結果、異様に幼女に好かれるツンデレ男に成り下がってしまった背景がある。同じことをやっても『何か企んでいるのでは?』と距離を置かれるロリコンは血の涙を流した。

 

 まぁ、あの不良のことはどうでもいい。

 今はスイーツを堪能しながら補習授業部の皆を祝おうではないか。

 

 

「改めて合格おめでとう。しっかし、これペロロ様の全体を上手に表現してるケーキやな」

 

「ありがとうございます。──そうなんです! ペロロ様の愛らしい目を繊細にチョコペンで描かれていて素晴らしいんです! くちばしや足、頭の鶏冠部分はパイナップルを綺麗にカットして表現しているのも高評価ですね! 写真に撮って額縁に飾りたいぐらい──

 

「そういやアズサに聞きたいんやけどさ」(ペロロ様ケーキの首部分をフォークでバッサリ切って一口で食しながら)

 

「ペロロ様ああああああああ!!!???」

 

 

 おっ、白い胴体部分はミルク風味が強いタイプの生クリームか。確かに甘さが目立つが、パイナップルの酸っぱさが調和して、想像以上に上品な味わに仕上がってる。胴体内部もカットパインが入ってるから、甘ったるいって感想も出て来ない。

 コラボケーキと少々侮っていた自分が恥ずかしい。

 

 

「どうしてわざわざ頭から食べたんですか!?」

 

「どこから食おうが俺の勝手じゃん……」

 

「そうですけど! そうですけれども!!」

 

「ましてや造形が良くとも食うことは確定しているじゃん。さぱっと介錯してやらんと、ペロロ様が逆に可哀そうだと思わんか?」

 

「私たちは今、ケーキの話をしてますよね……?」

 

 

 釈然としないヒフミは放っておこう。この話題は話し合いじゃどうにもならん、各々の感性に話になるわけだし、議論しても平行線になるだけだろう。先生以外が俺の言葉にドン引いてるけど。

 

 

「聖園さんに言われたことの件だけど、アズサはアリウスとトリニティ、双方の『裏切り者』である事実に変わりはない。試験に合格したとて、今後はどういう身の振り方を考えてるんだ?」

 

 

 聖園さんはアズサに言った。二重スパイである貴女に帰る場所はあるのかと。

 危害を加えなかったとはいえ、セイアを襲撃したことは事実であり、トリニティとしては表向きは彼女を守ることが難しい。対してアリウスは、自分たちを裏切ったアズサを許しはしないだろう。

 一勢力から身を狙われ、一勢力は彼女を保護できない。となると、聖園さんが言った通り彼女の進む先は険しい道のり。いくら逆境ウェルカム精神の権化であるアズサでも、アリウスの手から逃げ続けるのは非常に厳しかろうて。

 

 そういった意味での質問だったが、全員から返答が帰って来た。

 

 

「私は、トリニティに残る。ナギサやセイアからもトリニティへの在籍を認めてくれたから」

 

「アズサちゃんは私たちの仲間です! 他の人が何と言おうと、です!」

 

「アリウスがなんだか知らないけど、い、いざというときは私が守るんだから!」

 

「えぇ、アズサちゃんがもしアリウス分校に狙われるなんてことになりましたら……そうですね、()()()()をかけて、私たちがお相手します♡」

 

“大丈夫だよ。アズサには仲間がいるから”

 

「アズサは友達。襲われたら抵抗する。拳で」

 

「「「「拳で!」」」」

 

 

 余計なミームをキヴォトスで広めるんじゃねぇぞ脳筋が、と思いつつも彼女らの強い想いに苦笑する。それに、ティーパーティーのお歴々が、苦しい立場であるにも関わらず、彼女の保護を表明したことに少々驚いた。その意味をナギサは知っているだろうに、その道を選んだということは、彼女の『覚悟』が窺える。

 そうだな、アリウス分校がどんな手段を用いようとも、彼女らならハッピーエンドを強引にでもつかみ取ることが出来るだろうよ。

 ……あぁ、()()()()()()

 

 

「いや、トリニティに残れるならそれでいい。行き場所がないってんなら、ウチの会社に勧誘しようと思ってただけだからさ。帰る場所があるのであれば、それが一番」

 

「オウカの会社? それって私たちの援軍に来てくれた……あの?」

 

「そそ。ほら、こっちで保護した(捕虜にした)アリウスの生徒の一部も入社してくれたし、今さらアリウスに狙われてるとかウチの会社的には関係ないからよ」

 

「……みんなは無事だったの?」

 

 

 聖園さんが降参して内紛は終結したが、体育館の外側にいたアリウス生は死屍累々だった。もはや立っている者は一人としておらず、死者は一名も出ていなかったにせよ、身柄は一部を除いてこちらの方で預かった。外部勢力がトリニティのクーデターに関与した捕虜を持ってくなどと、後に正義実現委員会とティーパーティー間で捕虜の身柄に関して一悶着あったらしいが、シスターフッドの仲介もあって一応は解決したらしい。

 そんで猗窩座(あかざ)式勧誘術で「お前もシマヅにならないか?」と高待遇の暴力も用いて説得した結果、大半が薩摩十字を背負うことになったとさ。

 

 なのでアズサの心配は杞憂に過ぎない。

 俺は安心させるように彼女へ微笑みを向けるのだった。

 

 

「あぁ、アリウス生は全員『シマヅ』になって、毎朝早くから奇声あげながら鍛錬に勤しんでるよ」

 

「「「「“………”」」」」

 

 

 どうして全員目を逸らすねん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで先生に前々から聞きたかったんですが」

 

“どうしたの?”

 

「──その『シッテムの箱』に表示されてる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()A()I()()()()()()()?」

 

『“……えぇ!?”』

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

『──アズサ。どれだけ足搔こうと、お前は抜け出すことはできない。お前の身体は覚えている。すぐに思い出すはずだ、真実を』

 

『そして──島津 オウカ、私たちは貴様を絶対に許しはしない』

 

『私たちが真に警戒するのはシャーレではない。あの男だ』

 

『アズサや他の連中(アリウスの生徒)を誑かそうと、全ては虚しく無価値で無意味であると理解しろ。私たちの銃口は常に貴様を向いていると思い知れ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──駄目ですよ、錠前さん。既にそこは私たちの領域(テリトリー)なのですから、盗聴には最善の注意を払わないと。……しかし、想定通りに釣れてくれましたね」

 

「そんな釣り餌にされた挙句、サオリちゃんに狙われた総大将からひと言」

 

「先生が撃たれるくらいなら、いくらでも餌になってやるわ。覚悟しろよ、アリウス分校。原作とは違って、腹部を撃つ程度じゃ()()()()()()()()?」

 

 

 

 




【簡単な自己紹介】

島津(しまづ) オウカ:今作の主人公にして、キチガイ五人衆の一人。先生にしか見えないはずのアロナが見えている男。これが何を意味するのか。

白洲(しらす)アズサ:元アリウス分校出身のトリニティ生。3章で大活躍する予定なので、キチガイ共が著作権に震える。

錠前(じょうまえ) サオリ:アリウススクワッドのリーダー。原作では先生の腹部を撃ち抜いたが、今作では某薩摩兵子を撃ち抜く予定。なお。







 次章適当予告

 エデン条約調印式当日、アリウスは決起する。トリニティとゲヘナに審判を下し、双方を滅ぼさんが為に。
 サオリは叩きつける。全ては虚しく、アズサの足掻きは無意味であると。
 ベアトリーチェはほくそ笑む。自身の計画通りであると。

 ──故に、キチガイ共は嘲笑う。
 これは少女の乗り越えるべき試練ではないと。
 ハッピーエンドこそ至高であると。
 悲劇は喜劇に変えるものだと!
 

 次章『エデン条約編3章 ~俺たちの物語(喜劇)~』。


「原作のような惨事、僕らが許すはずないじゃーん」

「巡航ミサイルが3発!? その程度の誤差、撃ち落としてみせましょう!」

「『マダム』に依存しっぱなして、オレ達に勝てるわけねェだろうがァ!」

エデン条約機構(ETO)がユスティナ聖徒会に命ずる。──穿ち抜け」


 アリウスは理不尽を目の当たりにする。
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