キチガイ共の蒼い空   作:十六夜やと

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 あと数話で全面戦争っすね。
 前に感想頂いたエデン条約5章に対しての疑問点なんですが、正確には『矯正局送りに対してしらばっくれるキチガイ共』VS『彼が不当に拘束されるのは許さないその他』の構図ですね。最終的にはキチガイ共が裏切って、主人公が大変なことになります。




 感想ありがとうございます。励みになります。
 感想書くのはタダですので、ツッコミ等遠慮なくどうぞ。

 2025/2/21 ゴルコンダ&デカルコマニーの口調が逆だったので修正。おいは恥ずかしか。


029 物騒な追いかけっこ2

 拝啓、オヤジ、オカン。

 薬莢が吹き荒ぶ季節となりました。ご家族の皆様方にはますます清祥(せいしょう)のことと存じます。

 さて、オウカはこちらでも現在進行形で五体満足で生きながらえております。新しい出会いと友好を大切にしつつ、薩摩十字に恥じぬ武勲を立て日々精進する所存でございます。そちらと同じ時間の流れを共有しているかは定かではありませんが、益々のご健勝をお祈り申し上げます。

 追伸、賢妹は元気でしょうか? あまり仲の良い兄妹ではありませんでしたが、彼女の健康も重ねてお祈り申し上げます。

 

 

「けいぐうううううううううううううううううううう!!!」

 

「はッ、風紀の連中の大半がこっちに釣られてやがるぜ? 釣り野伏成せり、ってかァ?」

 

「釣ったはいいけど伏兵いねぇから完全に撤退戦なんだよおおおおおお!!」

 

 

 俺はフルスロットルで車を加速させながら、ゲヘナ自治区を爆走していた。後部座席で吞気にケラケラ笑っているバカアホマヌケのド(タマ)にチェストをブチ込みたくなったが、ここで少しでも減速すれば数の差で押し切られるのは目に見えている。

 ので、コイツの処断は後回し。

 ルパン三世のノリで地獄の逃走劇をしているわけだ。

 

 俺とカネサダんアホはいつものようにヘルメットで顔を隠す。

 経緯を超絶ざっくり説明すると、件の調印式での協力の対価として、今回限り温泉開発部の皆さまが安全地帯に逃げ切るまでの時間稼ぎをしているわけだ。

 時間稼ぎそのものは成功していると言えよう。なんたって──後ろから追跡してくる軍事車両の上に、天下無双の風紀委員長様が仁王立ちで君臨されているからだ。ゲヘナの最高戦力を釣り出しているのだから、これで逃げてくれないと俺は泣く。

 

 

「うひょおおおおお!!」(崖っぷちハイテンション)

 

「ほれ」(手榴弾投下)

 

 

 前を走る車がちんたら走ってたので、俺の超絶天才的なドライビングテクニックで紙一重に避ける。すれ違い様にカネサダがその車両に手榴弾を投げて爆発させ、後続の風紀委員会に嫌がらせをする。

 避けた車のドライバーに内心で敬礼をする。

 ドライバーがカイザーPMC理事にそっくりだったのは気のせいだろう。

 

 こっちも逃げるのに必死なのだ。

 つか無事に逃げ切らんとヤバい。

 どのくらいヤバいのかと言うと──

 

 

「──オウカ、次のT字路を右だ。私の予知がそう言ってる」

 

「何でよりにもよって今日この日の助手席にテメェ(セイア)がいるんだよおかしいだろうがああああああああ!! 教えはどうなってんだ教えはああああああ!!」

 

「エボンの賜物だな」

 

「別に模範回答は求めてないわっ!!」

 

 

 隣で黄色のヘルメットを被っているティーパーティーの重鎮が関与しているとゲヘナに知られたら、エデン条約どころの話じゃないってことだ。状況が状況なだけに頭がおかしくなった俺のボケを、セイアは俺の記憶から得た知識にて最適の回答を導き出す。クッソどうでもいい知識とも言えよう。

 セイアが何で俺たちと風紀委員から逃げているのか。

 それは作戦協力に伴って、温泉開発部に誠意を見せるため、トリニティの主要人物代表としてセイアが同伴したのだ。決して、定期健診から逃げたセイアを追っている救護騎士団のミネ団長からも逃げているわけじゃない。

 

 セイア()()ならまだいい。

 いや、全然よろしくはないんだけど。

 そんで一番ヤバいのが──

 

 

「──最近はトリニティから離れることができませんでしたので……ふふっ、オウカさんとの初めてのドライブのせいでしょうか? 物凄くドキドキしますね」

 

「お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ん!! み゛い゛の゛胃゛が限界だ゛に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛んんん!!」

 

「それは大変だ。胃薬と十分な水を摂取した方がいい」

 

「だれ゛の゛せ゛い゛だと゛お゛も゛ってる゛に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛んんん!!」

 

 

 カネサダん隣で優雅に紅茶を嗜んでいるティーパーティーのホストが関与しているとゲヘナに知られたら、エデン条約どころかゲヘナと戦争になりかねんってことだ。セイアが良かれと思ってスポーツ飲料と薬を取り出しているが、そんな気休めじゃトリニティの命運を左右するハンドルを持つ俺の手の震えは治まらん。

 ナギサがどうして俺たちと地獄のランデブーをしているのか。

 そこのセイアが気晴らしと称して連れて来たからである。俺も何言ってるのか分からん。何言ってるのか分からんのに、マンモス校の全てが俺にかかってるの正直言って頭おかしい。

 

 ヘルメット被っているのに紅茶を器用に飲んでいるナギサをミラーで確認しながら、俺は引きつった笑いを浮かべながら車を酷使した。カネサダも悪ノリで一緒に紅茶飲んでやがるし、セイアは音楽を流している。

 いや……ね? ティーパーティーのホストとしての重圧があるのも分かってるし、気晴らししないとやってられないって考えには賛同できるよ? セイアもセイアで暇そうに見えて各方面との調整とかにも積極的に顔出してるし、それだけじゃあ疲れるのも理解できるんだよ?

 

 でもさ、ごめん。

 本当に、ほんっとうに間違ってたら謝るんだけどさ。

 ティーパーティーで実は馬鹿の集まりだったりする? それとも原作ではそうでもなくて、俺が関わったせいでアホになっちゃった? それだったら謝る。すまんかった。だから戻って、お願い。

 

 

「オイ、運転手。風紀委員長が(チャカ)こっちに向けてるぜ」

 

「窮地……圧倒的窮地っ……!」(顔ぐにゃあああ)

 

 

 カネサダが彼女が銃を撃つタイミングで牽制目的で弾丸ばら撒くので、俺は蛇行運転しながら回避するのみ。風紀委員長も俺たちを的確に狙撃しようものなら、カネサダが銃破壊を目的として牽制するために銃弾爆弾を叩き込んで来るので、彼女も彼女で決定打に欠けているのだろう。

 

 

「ほぅ、さすが伊集院家の暴力装置と呼ばれる腕前だ。まさかゲヘナの風紀委員長をこうも抑え込むとは」

 

「ゲヘナにも隠れた猛者がいらっしゃるのですね」

 

 

 おい、聖園さん。聞いてるか?

 お前さんがナギちゃんを裏切ったせいで、そのナギちゃんがおかしくなっちまったぞ。ついでにセイア……はどうなんだろ? 俺の責任割合が大きい気がするが気のせいだな、うん。責任取ってどうにかしてくれお願いします。(責任転嫁)

 

 

「ちなみに次の十字路は左に曲がるといい。交差点付近に放置された戦車があるはずだ。手榴弾で爆破すれば多少の足止めになるだろう」

 

「そいつァ面白れェ情報だ。未来視持ち同伴しといて良かったなァ」

 

 

 その未来視持ちとトリニティのトップがいるせいで、途中で車を乗り捨てて逃走するっていう生存率が高そうな手段が事前に潰されてるんだが?と思わなくもなかったが、俺は右にウィンカー出しながら右に曲──るふりをして左に舵を切る。

 そしてクレイジーフォックスの仰る通り、廃棄された戦車が落ちてたので、すれ違い様にカネサダが手榴弾を投げ込む。

 大爆発を背にわき目も降らず走っているが、どうしてこうも不安が拭えないんだろう。

 

 

「オウカ、良いニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きてェ?」

 

「良いニュースから」

 

「今日は一日中晴れ」

 

「悪いニュースは」

 

「後続車の足止めは出来たが、ロリ委員長が走りながら獲物でこっち狙ってるわ」

 

「今からオットセイの真似しまーす。おうおうおうおうおっうおうおっwwwwwwwwパンッパァンッパァンッ(ヒレを叩く音)おうっっおうおうおうおうおっwwwwwwwwパァンッパァンッ(ヒレを叩く音)おうおうおうおっっwwwwおうおうっおうっおうっwwwおうおうおうおっwww」

 

 

 まぁ、調印式を前にしてヘルメット被った温泉開発部の協力者を何が何でも潰したいんだろう。その意思の表れは敵ながら見事だと評価せざるを得ないし、俺はその不屈の精神に畏怖と畏敬を込めてオットセイの真似をするしかなかった。

 ここから入れる保険とかありませんかね?

 え、ない? そうっすか……。

 

 そこで俺は数百メートル前の歩道橋を前にしてカネサダに叫ぶ。

 

 

「アレ落とすぞぉっ!! 俺は右ぃ!!」

 

「おうらよぉっっと!」

 

 

 それだけで何がしたいのか察したキチガイ。

 カネサダは寸分の狂いもなく手榴弾を歩道橋の階段部分に投擲した。

 

 俺は一瞬だけハンドルから片手を離し、歩道橋とすれ違い様に右方向にあった手榴弾を撃ち抜く。カネサダも左の手榴弾をブチ抜いた。投げるタイミングといい、投擲の角度といい、ゲヘナのキチガイもキヴォトスに来て腕を上げたようだ。これが出来なきゃキヴォトスじゃ生きていけないってのもあるんだろうけど。

 階段部分を木っ端微塵に吹き飛ばした歩道橋は、重力に従って道路をかける部分が落ちる。さすがの委員長様も目前に歩道橋が落ちて来れば、怪我はしないにせよ足をわずかにだが止めるしかない。

 

 後はトリニティ自治区まで逃げるのみ。

 ──なーんて気を抜いたのが誤算だった。

 

 

「うがぁっ……」

 

「「オウカ(さん)!?」」

 

 

 手榴弾を撃ち抜くために路面に出していた腕の血肉が吹き飛ぶ。紫色のビームみたいな弾からして、ゲヘナの風紀委員長が橋が落ちる前に俺の手を狙って撃ったものだろう。

 掠っただけなので致命傷にならずに済んだが、右の前腕の肉をごっそり抉られた。俺は交差点を右に曲がって彼女らの追跡を振り切りながら、表情は自然と笑みを浮かべていた。本当にシャレにならねぇ威力の銃だなオイ。キヴォトス最強格の攻撃とは、銃火器だけとっても違うんだなぁと。

 

 

「お、オウカ……だ、大丈夫かい?」

 

「骨まで逝ってねェからかすり傷だろ。んなことよりトリニティの境を跨いで大丈夫かァ?」

 

「構いません。そのまま戻り早急に治療をしましょう」

 

 

 トップの許可も得たとの事で、俺は笑いながらゲヘナ自治区を後にする。

 怪我に関しては後にティーパーティー組から謝罪があったが、俺は気にする必要はないと手を振った。肉を食ったら次の日には治った。薩摩兵子の神秘である。

 俺が笑っていたのはそんな些細なことより──彼女の力を身で受けたことでの収穫だった。

 

 これなら調印式で存分に役立ってくれるだろうと。

 頭のネジが飛んだ()()()()()()()()()()はそう笑うのだった。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「……ククッ、さすがですね。あの状況を切り抜けるとは」

 

 

 とあるビルの屋上。

 異形の頭を持ったスーツ姿の存在──『黒服』は、逃走しきった少年少女の動向を、さも演目だと言わんばかりに楽しんでいた。それは『シャーレの先生』に向けるものとは違う、そう、研究対象が多大な成果を出した時のような笑みとも解釈できる。

 その黒服に近づくのはコートを纏いステッキを持った頭のない紳士──『デカルコマニー』と、デカルコマニーの持っていた『後姿の男性の生首の絵』──『ゴルコンダ』だった。

 ゴルコンダは黒服に呼びかける。

 

 

「彼らの観察をしていたのですか?」

 

「えぇ、彼らは素晴らしい『研究対象』ですので」

 

 

 普段はヘイローを持つ生徒や『先生』にしか興味を持っていなかった彼が、ヘイローを持たない──それこそ『神秘』や『崇高』とは遠くかけ離れた人間を『研究対象』と言う。

 彼の行動に疑問を持ったゴルコンダは世間話のように理由を問う。

 

 

「彼らは……そうですね、言わばキヴォトスに突如として現れた『特異点』のような存在なのです」

 

「確かに彼らの有する『予言』とも言える知識は脅威で──」

 

「それだけではありません。彼らが口にする『原作知識(ブルーアーカイブ)』は未知数。我々の脅威と言っても過言ではありませんね。しかし、彼らの()()はそこではないのですよ」

 

「本質……?」

 

 

 ゴルコンダはその言葉を吟味するように呟く。

 

 

「『薩摩武士としての矜持』『己に課した法度』『自身に定めた規則(ルール)』『筋を通す』……彼らはそういう認識で生きており、ごく自然と守り抜いている『契約』と言い換えることもできましょう。彼らの世界に存在した武士特有のものなのか分かりませんが」

 

「彼らが無意識に引いているライン、ということですね」

 

「えぇ。彼らの認識ではそうなんでしょう。ですが、このキヴォトスにおいて、彼らの『契約』は脅威どころの話ではありません」

 

 

 だからこそ、黒服はアビドスの件から早々に手を引いた。

 彼らの行動が突拍子もなかった……というのも理由の一つだが、黒服が()()()のは彼らの『在り方』だった。

 

 

「まだ確定とは言えませんがお伝えしましょう。彼らの『契約』は──他の『契約』『儀式』『約束』よりも優先される可能性があります」

 

「……は?」

 

「自身の障害となる全てに、彼らは『そんなの、自分には関係ない』と自身の規則(ルール)を高らかに宣言するでしょう。言うだけなら本来は無害です。ですが──彼らの『自身の契約の為に、他の契約を無視する』行為を、この『キヴォトス』が許容している可能性があるのです」

 

 

 ゴルコンダは唖然とするしかなかった。

 それは『キヴォトス』の根底を覆す仮定だった。『契約』とはキヴォトスにおいて絶大な効力を有する。一方的に破ることなど、基本的には不可能と明言しても相違ない。

 その大原則を自身の認識次第で契約を無視できる?

 冗談にしても笑えない。

 

 

「無論、彼らの型破りも万能ではない上に、裏を返せばキヴォトスで定めていない『契約』に彼らは縛られているようにも見えます。確定かどうかも……ベアトリーチェの計画で判明することでしょう」

 

「ベアトリーチェに伝えていないのですか?」

 

「はい。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 もちろん、仲間として必要最低限の助力はするだろう。

 しかし、先に『契約』を働きかけたのは彼ら(島津)であり、黒服はそれに従って傍観を決め込むだけである。それに、黒服とベアトリーチェの関係は仲間ではあるが、命を賭してまで彼女につく義理はない。

 

 

「それに──いや、何でもありません。あとはベアトリーチェがどう彼らと対峙するのかを見守るだけですので」

 

「……なるほど、私も彼らに興味がわいてきました」

 

「そういうこった!」

 

 

 ようやく自分が喋るタイミングだと声高々に叫ぶのは、胴体とも呼べる『デカルコマニー』だった。

 

 

 

 




【簡単な自己紹介】

島津(しまづ) オウカ:今作の主人公にして、キチガイ五人衆の一人。余談だが、肉を食って次の日に治るのも、彼らのそういう思い込み(契約)のせいだったりする。

伊集院(いじゅういん) カネサダ:キチガイ五人衆の一人。後にゲヘナ風紀委員に加入させられることになる。

桐藤(きりふじ) ナギサ:ティーパーティーのホスト。ヒフミから「あはは……」されて、幼馴染から裏切られ、他派閥の長から詰め寄られ、調印式で奔走し、ストレスを貯め込み過ぎて主人公とのデート(物騒)で発散する可哀そうな人。

百合園(ゆりぞの) セイア:『サンクトゥス派』のリーダー。若干だが主人公経由でミーム汚染を受けている少女。『コネクト』と『ティーダとワッカの曲』だと勘違いしているが、誰も訂正する人がいない。




黒服:ゲマトリア所属で先生ファンクラブのメンバー。主人公たちの『そげなこと、おいは知らぬ! そげな道理、おいには分からん!』で契約を捻じ曲げる姿を目の当たりにし、主人公とは協力関係を築くことを早々に決めた。あれは卑怯だって。

デカルコマニー&ゴルコンダ:ゲマトリア所属。後にベアトリーチェの儀式を足蹴りで解除するカネサダを見て、オイオイオイオイと戦慄する人。
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