次回に先生と楽しく調印式のリハーサルして、次々回で調印式予定です。
あと更新頻度が本格的に下がります。理由は再就職したからです。ニートからの卒業。
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低評価ありがとうございます。ミライの姉をそっちに送りますね。
「……ミカは元気にしてたかい?」
「風紀委員長との鬼ごっこの前に聞くべきじゃねぇかソレ?」
親の顔より見たセイアとの作戦会議㏌夢ん中。
調印式を襲撃して来るであろうアリウススクワッド率いるアリウス分校御一行に対して、どのようなおもてなしをするかの情報共有をしていた。
日の陰で虐げられて生きて来た『ばにたす』と鳴く彼女らに、いかに楽しんでもらえるかを俺たちも考えに考えまくった。兵力も、装備も、金も、人脈もフル活用し、他学区と摩擦を生まない程度に揃えたと言っても過言じゃない。これ以上は叩いても出ないと思われる。
そんな会議を始めようとした段階で、セイアはクーデター未遂を起こした例のあの人を話題に挙げてくる。セイアは彼女との面会が禁止されているので、今の聖園さんがどういう状況なのか知らない。だからこそ、俺が代わりに行ったようなものだが。
まぁ、良くはなかったよ。色んな意味で。
つか聞くの遅すぎと苦言を呈すると、
「私も聞こうと思ったさ。ナギサが『私の好きな紅茶とオウカさんの好きなコーヒーを混ぜて飲めば、実質両想いってことですよね?』とか言い始めたのでね。彼女のメンタルケアを優先した」
「調印式終わったら長期休暇取らせるべきだよあの人……」
セイアの目の届く範囲内にもっとヤベぇ精神状況の少女がいることが判明したわけだ。
まずは手の届く範囲から救っていくスタンスは悪くないと思う。そんだけ限界来てたのなら、立場も何もかも気にしないドライブはさぞかし楽しかったろう。
「で、えーと……聖園さんの様子だっけ? あー、っと。うーん……」
「忌憚のない意見を聞かせて欲しい」
「口うるさくて直情的でメンヘラ気質な箱入り娘。ちょっと現在進行形で現実逃避気味だから、更生には時間がかかるんじゃないかなーって思う」
「君はミカのことが嫌いなのか……?」
俺の評価に彼女はドン引く。
いや、別に聖園さんのことは嫌いとは一言も言ってないんだが? 忌憚のない意見って言うから、どこぞのキチガイ共に対してするような評価を下しただけだが?
「別に悪くは思っとらんよ。むしろ好感は持ってる方」
「好感が持てるタイプに対する評価とは思えないが?」
眉を顰めるセイアに、俺は声を出して笑う。
確かに常識的に考えてもヤバいことをしでかした戦犯なのに違いはない。
だが、彼女のやらかしなんぞ俺から見れば可愛い方だ。
「確かに俺と聖園さんとの出会い方も結末も、んで先の面談でも、互いが互いにいい印象を持ってるとは思えんのは理解できる。実際、俺は聖園さんから良くは思われてないからなぁ。けどさ──
「──っ!」
「アレに比べりゃ、聖園さんどころかキヴォトスの生徒さんなんて無垢な天使と同義だっての」
誰のことを指しているのか、俺の記憶を覗き見たセイアは悟ったのだろう。その女の
俺自身、元の世界で同世代の女の子との関りってのが薄かった。いや、義務教育は男女共学の普通の公立校だったが、それでもキチガイ共と馬鹿をやってた記憶が圧倒的に多い。
そんな異性との思い出が少ない悲しき過去を持つ俺と、特に関係性が強かった女子はパッと思いつくだけでも3名。一人は我らが筋肉姫ことアイリス。二人目は俺の妹。アイリスは馬鹿力でやらかして俺が責任を持つことが多く、妹はそこまで仲が良くなかった。
まぁ、ここまでは許容の範囲内だ。
問題は三人目。
どんだけキヴォトスに住まう生徒が常識的にヤバかろうが、この女を超える人格破綻者は存在しないだろと断言できる問題児。逆に、アレを超える生徒がいるのなら見てみたい。
「アビドスにいる彼の……姉……」
「そそ」
名前はここでは伏せるとしよう。あの名前を呼んで億が一にでもキヴォトスに来た日には、俺とミライは比喩表現なしで腹を召さんといけなくなる。キヴォトス全土の人々に申し訳がなさ過ぎて。
彼女は種子島家の長女。ミライの姉貴。
曰く、『倫理観にステータスを一切振らなかった女』『情を排した卑劣様』『人類史のバグ』『何らかの法で裁きたい悪』『有能な害悪』『来るな化け物』『関わったら何らかの方法で不審死しそう』『県外に出そうとすると他家から懇願が来るレベル』『会津がコイツが薩摩にいる点だけ島津に同情したほど』『郷土愛がなければ島津でも殺してた』『殺したら四大怨霊になりそう』『北朝鮮が核を撃ったらまずコイツを疑え』。
俺は彼女から、どんだけ努力しても分かり合えない人種は存在することを学んだ。
そんなのに比べたら……ねぇ?
「俺が嫌悪感を抱く基準がアレだから気にしないで」
「あ、あぁ……」
「セイアもあんな風にならないことを祈るよ」
「……君は私が人の心がないとでも思っているのかい?」
俺が冗談交じりに茶化すと、セイアが冗談抜きで不機嫌になる。
冗談にすら使えない所業の数々を、俺の2つ上の女子がやったわけだ。世も末やな。
「正直すまんかった。さて、んじゃミライから聞いた調印式の流れを確認しよう」
「了解した」
ちゃぶ台を挟んで地図を出す。
調印式会場の周辺を記したものだ。
「今回はロリコンから詳細が聞けたよ」
『是非とも阿慈谷さんのブルアカ宣言を拝見したいのですが……まぁ、先生と空崎様などの生徒が負傷するリスクを排するのが最優先。今回は諦めましょう』
『せやな』
『今回の敵勢力の作戦は実にシンプル。調印式に巡航ミサイルをブチ込みトリニティとゲヘナを弱体化し、戒律を歪めて不死の軍団を用いて、トリニティとゲヘナに宣戦布告する。以上となります』
何やら意味深げな固有名詞が出てきた。
質問しようと口を開きかけた俺をミナは静止する。
『オウカはトリニティで『ユスティナ聖徒会』という単語を耳にしたことは?』
『うーん……ないな』
『トリニティとして統廃合する際の会議を『第一回公会議』と呼ぶんですが、当時に締結した
トリニティへと併合することを拒んだ当時のアリウス分校を武力で弾圧したのが、ミナが口にしたユスティナ聖徒会らしい。
アリウスとユスティナにはそれ以上のややこしい背景もあるらしいが、今回はそれの説明を割愛することになった。知っても知らなくても大丈夫であり、チェストする分には知らなくても無問題だと。
『キヴォトスにおいて『約束』『戒律』『契約』という概念は特別な意味を持ちます。我々のいた世界とは異なり、口約束であろうと容易にするべきではないと警告しておきます。そうですね……『神と人との約束事』レベルの効力だと想像していただければ』
『あー……なんかミライも言ってたわ。約束はめっちゃ重要って。それがココのルールってわけね』
『今回のエデン条約調印式を『第一回公会議』と見立てて、アリウス分校の権限で条約を書き換え、アリウススクワッドをエデン条約機構と認定し、トリニティとゲヘナを鎮圧対象と定め、『戒律』の守護者であるユスティナ聖徒会に襲わせる。こうやってアリウス分校は物理攻撃無効の不死の軍隊を手に入れます』
『……あれ? でもユスティナってシスターフッドの前の組織なんやろ? え、今回はシスターフッドが敵に回るん?』
『ゲマトリアに所属する『マエストロ』という方が、ユスティナ聖徒会の複製を大量生産しています。その
『……要するに、そのユスティナのパチモンを使役するために、条約の内容を書き換えてエデン条約機構になる必要があったと。最初からんなことしなくても使えるプログラム組めやって思うけど。できたらやってるか』
原作のアリウスが調印式時点でどの程度の戦力が残っているのかは分かりかねるが、トリニティとゲヘナの二大勢力を相手するのに、物理無効するユスティナの戦力が必要だったわけね。大規模爆撃も合わさって、あの風紀委員長でさえも苦戦を強いられたとかなんとか。
ある意味では、第一回公会議でアリウスがやられた迫害を、今度はトリニティとゲヘナが受けるって構図になる。一種の意趣返しみたいなものなんだろう。
それだけアリウスの憎悪は深いと見える。
『アリウスの奇襲は想定の範囲外。つまり予測すらできませんでした。巡航ミサイルの攻撃により調印式会場は大惨事、アリウスに裏切られたゲヘナ首脳部の飛行船も墜落。双方のトップ不在で指揮系統が麻痺』
『うっわ』
『しかも、ですよ。トリニティとゲヘナは襲撃を想定してないため、互いが『攻撃してきた!』と勘違いし、混戦が発生するわけです。同士……とは言えませんが、同士討ちの形になるわけですよ』
『……これアリウス側の脳汁すげぇことになってそうだなぁ。俺だったら絶対に笑うもん』
相手方の戦力を削るだけでなく、二虎競食までキメるか。そりゃあ、調印式の襲撃でトリニティとゲヘナがガタガタになるわけだ。実際にアリウスの半数以上と衝突し、コレがどうやって調印式で圧倒するんだと不思議に思ってたが、ミナの説明を聞いた後だと納得できる。
アリウスの采配に賛辞は惜しまん。見事なり。
『敵対するにあたって一番ネックなのがユスティナ聖徒会なのですが、彼女らを止めるにはエデン条約機構に任ぜられた『アリウススクワッド』……錠前さんたちを止める必要があります。彼女らが存在する限り、効力は残りますからね』
『ふーん』
『この場合の『止める』は『ヘイローを破壊する』と同義です。つまり殺さないと止まらない』
『……へぇ』
『念を押しときますが、彼女らの首は獲らないでくださいね? 絶対にですよ?』
『前向きに検討するわ』
口約束でも容易に破れない世界だと学んだので、俺はミナの忠告に言葉を濁して返答する。
『この後、白洲さんが覚悟を決めて補習授業部の方々と決別し、錠前さんを殺る気で止めに行く場面となります。そして、補習授業部が白洲さんを助けに行くシーンは必見。阿慈谷さんのハッピーエンド至上主義のブルアカ宣言など、もはや言葉は不要。是非とも生で見たかった……』
生徒さんたちや先生を犠牲にしてまで見たいとは思いませんが、とミナは苦笑した。
これは原作知識持ちの総意と言えよう。
人道的観点に目をつむれば、ミサイルで爆破してもらった後に動いた方が、こっちも混戦状況ならシマヅの連中を展開しやすいし、トリニティとゲヘナを餌に包囲網を形成する手段もあった。
だが、ここまで相手の手の内が分かってて見逃すのは悪手だ。
もっと合理的かつ楽な作戦を立てた方がいい。
「ふむ……」
俺がロリコン野郎から聞いた情報をセイアは吟味する。
その表情は芳しくない。
「アリウススクワッドに条約を書き換えられることは阻止するのが難しい、か。物理攻撃を無効化してくるユスティナ聖徒会に対して、君たちはどのように対処する?」
「んなもん気合でチェストすりゃいいだろ」
「一理ある」
形あるもの、いつかは滅びる。
血を流すのであれば、いつかは殺せる。
相手が死ぬまでチェストをすれば、いつか首を獲れる。
ミナもゲーム上は倒せるって言ってたし、ユスティナも完全無欠とまでは言えない兵なんだろうよ。それなら相手がくたばるまで弾丸をブチ込み、刃を振り下ろす。まさかまさか、薩摩兵子が物理無効の敵と相対してビビるとでも思ったか?
俺の回答にセイアも頷く。
さすが示現流を自勢力にばら撒く女だ。名誉キチガイに加えて差し上げろ。
「追加情報あるんだけど聞く?」
「聞こう」
「原作だとユスティナが機能停止するらしいんよ。阿慈谷さんがトリニティの代行、風紀委員長がゲヘナの代行、先生が連邦生徒会長の代行と定義し、エデン条約機構を新たに発足させるって手法で」
「……なるほど、アリウスの行った会議の再現を、今度は彼女らが行うわけだ。アリウススクワッドと補習授業部のメンバー、二つのエデン条約機構が同時存在し衝突することで、戒律の守護者を無力化できるのか。それは盲点だった」
セイアは納得したように感嘆を漏らす。アリウススクワッドを殺さずとも、ユスティナを止める術があると希望を見出したからだろう。彼女もアリウスが『マダム』の駒であり、滅ぼすべき存在だとは思っていない。
しかし、俺はミナからその話を聞いた時、別のことを考えた。
「んで、一つ思ったんだけどさ」
「ん?」
「それで盤面返せるならさ」
アリウスとユスティナ。
これを同時に相手取るとなると骨が折れる。
それなら、
「──わざわざ調印式当日にエデン条約機構を発足する必要なくね?」
【簡単な自己紹介】
ミライの姉:種子島家の長女にして人格破綻者。本作には出ないが、コイツが行った『比較的許容範囲内の謀略』を5章でキチガイ共が行う模様。