投稿がかなり遅くなりましたが、再就職して執筆時間が減っただけです。隙を見ては執筆して、最終編までチェストする予定ですのでご了承くださいませ。
感想ありがとうございます。励みになります。
俺はクロノス報道部──キヴォトスのメディアによる生放送を見ていた。
『──本日はついに締結される、ゲヘナ学園とトリニティ総合学園の『エデン条約』の調印式。その現場に来ております! 私は今、『通功の古聖堂』の前にいるのですが……既に現場は熱がこもっており、互いに譲らまいと張り詰めた空気になっております! 誰かが一歩間違えれば、この場が大惨事になりそうなほどの雰囲気です! 感じられますでしょうかこの空気感──』
「……まさに一触即発、ってか? このピリピリ感は懐かしいな」
「我らと
調印式会場は良くも悪くもトリニティとゲヘナの睨み合いが続いているらしいが、そんな双方を置いて、俺たちは某ビルの階段を並んで登っていた。
エレベーターの一つや二つをつけて欲しいと思う反面、治安と物件の築年数と階層から鑑みて、建てた奴はつけようとは考えなかったらしい。まぁ、階段の上り下りで息が上がるような生半可な生き方はしてないので、思うだけ思って律儀に階段で足を動かしているわけだが。
「なぁ、ロリコン。これ原作でもバチバチやってたん?」
「そうですよ。両者の関係は犬猿の仲、水と油、薩摩と会津みたいなものです。たかだか平和条約程度で、互いが歩み寄るとでも本当に思ってます?」
「んなわけ」
彼女らも互いが互いを嫌悪するような事件があったのだろうか? 人の恨みつらみってのは数代を経たところで消え去るようなシロモノじゃねぇからな。
ただ、聖園さんの事件から考察するが、そこまで決定的な亀裂ってのがあった風には見えないんよ。あったら、彼女がアリウスと手を組む際の大義名分として掲げるだろうし。そういった言葉がないとなると……あくまでも快不快の話なのだろう。
ロリコンに聞いてみたが、原作でも理由描写はないのだと。
一種の伝統と呼ぶべきか。
「彼女らが聖書の天使悪魔がモチーフなので、現段階ではゲームの設定以上の理由はないのでしょう。ゲームが今後も続いたのであれば、そのあたりも深掘りされた可能性もあるのでしょうが」
「ゲームの設定上、ねぇ」
そこで、俺はふとミナに疑問に思っていたことをぶつけてみる。
「前々から疑問に思ってたんだが」
「はい」
「ヘイローを持つ彼女らは……
「質問が抽象的じゃありませんか?」
「ここには俺とお前
ミナ視点では俺とコイツしかいないが、俺には後方から抱き着いているユメパイセンもいる。集中しているときは気にも留めない程度の存在感だが、アビドス組と関わるときは主張の激しい幽霊。俺とロリコン野郎の行先の関係上、今回の彼女のテンションは高めだ。
故に、俺は言葉を濁したかったが、それだと相手に伝わらないので飾らずに問う。
天使の輪っかみたいな『何か』をつけて、銃火器では容易に傷つかない身体を持つ彼女らを、言い方は悪いが俺は『人間』だとは思ってない。別に人間じゃないから人権どうのこうのって話ではなく、純粋に他種族的な目線で見ているってことだ。
そんで、ミナやミライが時折だが口にする通り、彼女らには俺らの居た世界の『神話』や『宗教』がモチーフになっていると聞く。アビドスならエジプト、トリニティとゲヘナが聖書の天使悪魔……みたいな。
となると、彼女らってただ頑丈なだけの女子高生ではなく──
「──神話の
「端的に言えば、そう」
「私もシナリオライターやキャラクターデザインに携わっているわけではないので、あくまでも考察の一つに過ぎないのですが」
そう前置きしたロリコン野郎は足を止める。
別に世間話程度に聞いただけなので、足を止める必要はないのだが。
「とある考察ですと──彼女らを『神』だと言う人もおります」
「……随分と大きく出たな」
「確証と呼ぶには証拠の足りない、妄想の類の話ではあるんですがね。彼女らは神話の神々を女子高生として形を押し込めた存在……という考えです。いわゆる、神々の擬人化、と言えば分かりやすいでしょうか?」
つまりキヴォトス人は人ではなく、神々の一片であるとミナは口にする。
コイツの持論ではないが、面白い類の話ではある。
「神々と定義するにはあ、ちぃと物騒が過ぎるアレコレが横行しているように思うが」
「彼女らにモチーフがあること。最終編で『無名の司祭』と呼ばれる者たちが、砂狼さんを『
「キヴォトスそのものが神格を有する女子高生の箱庭ってわけか」
「何度も言いますが確証はないですよ?」
少ない情報で考察したところで、妄想の域を出ない持論に過ぎない。逆説的に『キヴォトスの方が元ネタ』で、俺らのいた世界が後付けの可能性もあるし、純粋にキヴォトスそのものが
自分で話題を振っておいて何だが、考えたところで俺たちの行動理念が変わるわけじゃあるまい。補習授業部のみんなや、ティーパーティーの連中が神様だと知ったところで、キチガイ共の対応は何も変わらん。
……まぁ、仮に『神』だったとして。
その神格の一つを薩摩漬けにしてチェスト狂いに汚染してしまったのは、不敬どころの話じゃないって点は気になるけれども。
「それと、あまり口にはしたくないんですが……」
「なんじゃらほい」
「……彼女らは既に亡くなっている、という説もあります」
これはヘイローを『天使の輪っか』と定義する説。キヴォトスに住まう彼女らは何らかの要因で亡くなった者たちであり、仮初の高校生活を経て輪廻転生するためにこの世界で生きる。要するに『
俺たちがブルアカ世界に転移してきたと思ってたが、本当は忘れているだけで、俺たちはすでに死んでるってことか。なるほど、確かに薩摩兵子ならいつ死んでてもおかしくない。
考察の観点からすると非常に面白い。
しかし、それだと──
「じゃあ何すか。ユメパイセンは別世界で死んだのにもかかわらず、キヴォトスでも死んじゃったって言いたいんすか。ユメパイセンは憑りついてないでサパっと輪廻転生しろよって言いたいんすか」
「いや、仮説だって言ったじゃないですか」
『ひぃぃぃん、わ、私って早く成仏した方がいいのかなぁ? もっとホシノちゃんや、アビドスのみんなを見ていたいけど……本当はダメなのかな……』
──半泣きのユメパイセンはキヴォトス的に存在しちゃいけない可能性が浮上してきた。死んだ人間の霊がその場に留まるのは、神道や仏教では良くないことだとは思うが、キヴォトスだもんなぁってスルーしてきた。しかし、キヴォトス人元々死亡説だと、じゃあ俺の背後霊しているユメパイセンは何ぞやって話になる。
いや、本当は成仏した方がいいんだろうけど、この前もホシノと会ったときに早口オタクしてたユメパイセンを見ていると、このままでもいいんじゃないかって考えたりもする。
「あーあ、ユメパイセン泣かした。謝れロリコン」
「……私的には姿は見えてませんが、軽率な発言をしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
『そ、そこまで畏まらなくても……』
俺の視線の先へ90°の綺麗な礼をするミナ。
真摯な謝罪をするロリコン野郎に慌てるユメパイセンに対し、頭を深々と下げながらミナはポロっと発言を零す。
「……私は梔子さんに消えて欲しいと思ったことはありません。むしろ──ハッピーエンドに必要な鍵だと思っております。梔子さんの魂がここにあり、ユスティナ聖徒会の技術を用いれば、あるいは……」
「んぁ? どうした?」
「いえ、何でもありません」
何やら不穏な言葉を口走っていたような気がするが、そこまで聞こえることはなかった。
逆に俺はカウンターパンチを食らうことになる。
「私のことを非難するのは良いですが、矯正局に行く予定のあなたも大概では? あなたが檻の中ということは、梔子さんの魂も自動的に囚われるということでしょう?」
「……あー」
「あなたは梔子さんと小鳥遊様を引き離すつもりで?」
『……そうだったぁ!』
ミナの指摘は圧倒的今さら感のあるもんだったが、道連れになるユメパイセンはムンクの『叫び』状態になる。現段階では俺とユメパイセンは一蓮托生。俺の住まいが冷たい檻の中になるのなら、心優しき巨乳の幽霊先輩の住所もそこになるわけだ。
その発想に思い至らなかった彼女は頭を抱える。
本当は俺が矯正局送りになる計画を発足する段階で抗議するべきもんだから、てっきりユメパイセンも納得しているという前提で動いてたわ。
「そこは問題なし。飽きたら脱走するから。出所したら真っ先にアビドス行く故に無問題」
『……それなら大丈夫?』
「ユメパイセンも納得したからオールオッケー」
「薩摩式強引交渉術を優しい先輩に行うのは止めなさい」
相応の迎撃準備しながらゴネにゴネまくったら相手が譲歩してくれる。
元祖
あと、俺が脱獄してもホシノなら匿ってくれるだろうという邪な打算もある。あの人……ってか、アビドス高校の面々に言えることだが、彼女らは連邦生徒会に良い感情は抱いてないだろうからさ。
先生が仲介することで連邦生徒会も最終的には動いてくれたが、今まで廃校寸前のアビドスを連邦生徒会が助けてくれることはなかった。一生懸命になって借金の利子を返済してきた彼女らの本音は『今さらどの面下げて出しゃばって来やがったオオン!?』なのだろうよ。
アビドスの反骨精神、俺は嫌いじゃないぜ。幕末の
「話が大きく逸れたな。最初、何の話をしてたっけ?」
「キヴォトスis何、という話題だったかと」
「あぁ、そうやった。アリウスと一戦交える前に話す内容じゃなかったな」
「話題を振ったあなたがそれを言いますか」
俺とミナは足を動かして階段を上る。
「彼女らが頑丈なだけの女の子だろうが、神格の一片だろうが、虚構の存在だろうが、ゲームのキャラクターだろうが、元死者だろうが、俺たち薩摩兵子は己が
「先ほどの会話が無意味だったと?」
「その知識が必要だったか不要だったか、んなのは未来の俺たちが決めることだろう? その無意味かもしれない知識を含め集めるのが、
最上階まで来た俺はバンっと音を立てながら思い切り扉を開ける。
このビルの屋上が調印式の会場をよく見渡せる場所であり、アリウスが飛ばしてくるであろうミサイルを迎撃するのに最適な立地でもある。屋上には迎撃用の対空砲が設置してあり、周囲にいるのはアビドス高等学校のみなさん。オペレーター担当の奥空さんはココにはいないが。
俺はにこやかに本作戦の協力に感謝の意を示す。
「オウカくんの頼みだからね~。おじさん相手にそう畏まらなくていいよ~」
「ん、オウカは実質『アビドス』の一員。遠慮しなくていい」
「私たちは前にホシノ先輩を助けてくれた借りを返したいだけよっ」
「オウカくんはアビドスの借金返済も協力してもらってますから、今度はこちらが助ける番です☆」
『び、微力ながらお手伝いさせていただきます!』
カイザーをちょっとシバいただけで、ここまで感謝されるとは思わんかった。こんな心優しきアビドス高校に、キチガイ共一の冷血漢であるミライを送ったことを謝罪したいくらいだ。
それに──ホシノは普段通りだが、他の対策委員会メンバーは緊張の面持ち。そりゃあ、二大校が滅びるか否かの大決戦前だから仕方ないだろう。
「みんなー、ちょっと表情硬いよー。気楽に行こうよー」
「作戦が失敗したとして、それは総指揮官たるオウカの責任であり、アビドスのみなさまが負うものではございませんので」
ミライとミナが『緊張せずに』と声をかけるので、俺も彼女らを和らげるために言葉を重ねるのだった。
「大丈夫、大丈夫。心配すんなって。今回はアリウスをカイザーするだけだから、全然問題なし。パーッと行って、パーッと潰して、パーッと帰ろうぜ!」
「「「「『………』」」」」
彼女らの瞳は『また誤チェストするの?』と物語っていた。
【簡単な自己紹介】