若干のアンチ・ヘイトを含んでおります。
あと更新遅くてすみません。次回も遅くなりそう。
余談ですが、エデン条約編の4章プロットが変わりました。多くは語れませんが4足歩行の変態なオリキャラが追加されるかも。
感想ありがとうございます。励みになります。
誤字報告ありがとうございます。泣いて喜んで切腹してます。
クロノススクールが報道する生放送は文字通り『阿鼻叫喚』だった。
空中で爆発するミサイル、炎上し墜落するゲヘナの飛空船、所属不明の軍隊がトリニティやゲヘナの生徒を襲う様──地上の地獄がそこに広がっていた。
生中継されている現場で見かけられるガスマスクをした幽霊のような
「サオリっ……!」
とうとう彼女が、彼女たちが動き出してしまったのだと悟る。
実際にアリウス分校に残る全兵力が投入されていることは生中継でも確認できており、時折だけどミサキやヒヨリの姿も確認できた。それならアリウススクワッドのリーダーであるサオリもどこかにいるんだろう。
しかし、彼女の計画通りにいっているのかは怪しい。
サオリが無意味にミサイルを空中で爆発させる必要はないから、あれは
あのマダムがそれを許すとは思えず、アリウスは予想外の苦戦を強いられているのだろうか?
「アズサちゃんっ、待ってください……!」
「どうしたのよ、いきなり飛び出して!」
そこで、私は爆発音を聞いた瞬間に、補習授業部のみんなとファミレスで食事をしているのを放り出して店を飛び出し、ビルに設置されていた大画面の生放送を凝視していたことを思いだした。
ヒフミとコハルの言葉に、短く謝罪を伝える。
「これは……とうとう始まってしまったんですね。アリウス分校による侵攻作戦が」
「ハナコは予想してたのか?」
「軽い予想くらいはしてました。しかし、それを確定した情報として挙げていたのはセイアちゃんとオウカくんです。アリウス分校は調印式で仕掛けてくるだろう、と」
……トリニティのクーデターが失敗したことが、アリウス分校の苦戦を助長させているのだろうか? 私がアリウスを裏切ったせいで、
セイアの誘いに手を取ったことを後悔はしていない。
なのに、この胸の痛みは何なのか。
「……つまり、オウカくんは調印式の会場にいるってことですか?」
「その可能性は非常に高いです」
「そう言えばオーカはちょういんしき?がどうのこうの、って言ってた……気がする。よくわかんないけど」
ヒフミとハナコは渋い顔をする。
あのオウカが調印式の襲撃を黙って見過ごすはずがない。ましてや、サオリはオウカの命を狙っており、彼だって準備はしていると言ったじゃないか。
つまりミサイルの迎撃も彼が関わっている可能性も十分にあり得る。
私が生中継の画面を見つめながらこぶしを握り締めていると、中継の場面が移り変わる。そこに映し出されていたのは、普段のクロノススクールが報道しないような内容であり、生中継だからこそ起こってしまった
それは──サオリとオウカの『死闘』だった。
アリウス生徒とガスマスクの何かが、前にオウカから貰ったジャージと同じものを着た生徒たちと戦闘している中だろうけど、クロノススクールのカメラが向けたのは二人のぶつかり合い。
問題なのはサオリではなく、オウカの方。私の記憶にある通りの動きをしているサオリは、的確かつ冷静に相手を無力化、又は排除するために冷徹に追い詰めようとしている。しかし、オウカは彼女の猛攻をものともせず強引に肉薄する。腕を、足を、肩を、太ももを、腹を、撃たれても撃たれても止まらない。血だらけになった彼は、それでも
『こ、これ大丈夫なの……?』
『あれトリニティの男の子だよね?』
『このままだと死んじゃうんじゃ……』
周囲の生徒が彼を心配するような声をあげる。
サオリとオウカの口の動きから見て、何かを喋っているようだ。内容までは分からないけど。
だけど、これだけは理解できる。
この惨状を作ったのは
『……オウカは、サオリをどうするつもり? サオリは……その……私の『家族』なんだ。難しいことは分かっているけど、それでも──』
『約束はできないが、命まで取るつもりはないよ。だから──』
あんなことを言ったから、サオリを死なせないようにオウカに頼んだから、オウカはずっと撃たれている。撃たれても、それでも前に進み続けている。
本当なら、私が止めないといけなかったのに。
私が──サオリを
このままでいいわけがない。オウカが自身を犠牲にしてまでもサオリを止めようとしているのに、私がこのまま安全圏で過ごしたままでいい筈がない。
補習授業部のみんなとの、甘くて夢のような時間を捨てたくはない。けど、このままだと本当にオウカが死んでしまう。……いや、それだけじゃない。私は、サオリがオウカを殺す姿を見たくない。私の家族が人殺しになってほしくない。私の大切な仲間が死んでほしくない。
そうなるくらいなら、私が。
「アズサ、ダメ」
「……アイリス?」
そこで待ったをかけたのはアイリスだった。
いつもの無表情で、でも瞳は力強く。
「よくわかんないけど、アズサがオーカと同じ目をしてた。それはダメ」
「オウカ、と?」
「ん。覚悟をした目。そんで、私が嫌いな目」
私は今までアイリスのことをよく分かっていなかった。
何を考えているのか、最近は機微をわずかに感じられるようになったが、オウカほど彼女の言動を理解はできなかった。頭は良くないけど勉強熱心で、そして私と同じように『モモフレンズ』が大好きで、私のことを『友達』だと言ってくれた──私とは
……アイリスのことを、私は全然わかってなかったんだろう。その証拠に、私が今からやろうと思っていたことを、アイリスは止めようと服の裾を掴んで離さない。
「アズサちゃんは何を……」
「……私がサオリを──オウカと戦っていた彼女を止める。ヘイローを破壊してでも」
「はかっ……!?」
「私はアリウスでそういうことをするための訓練を受けてきた。ヘイローを破壊するための爆弾もある。……サオリは強い。元アリウスとして、サオリの家族だった者として、私は
サオリを殺す。
その言葉を発そうとして、一瞬だけ口が動かなかった。
「ダメ」
「でもっ! そうしないとオウカがっ!」
「……どうする、ハナコ?」
「……そうですね、このままですと被害は拡大する一方。トリニティやゲヘナの進退に興味はありませんが、先生がテロを鎮圧するために奮闘し、オウカくんが血を流してまで戦っている以上、早急に止められるのであれば動きましょう。危ないことをしているオウカくんにお仕置きをするためにも♡」
アイリスの問いに、ハナコは悪戯っぽく微笑む。
それに追従するようにコハルも、足を震わせながら怒る。
「あの変態だって、わ、私たちの友達なんだから! というか、勝手に死にそうになってんじゃないわよ! 少しくらいボッコボコにしてでも分からせないと!」
「うん。ヘッドバットしてラリアットしてアームロックしてコブラツイストしてジャーマン・スープレックスしてドロップキックして止めなきゃ」
「そこまでする!?」
オーカは無駄に頑固だから大丈夫ってお
ヒフミが決心したように私を見つめる。
「確かに私はアズサちゃんがどんな世界で生きてきたのか分かりません。住む世界が、本当に違ったんだと思います。でも! 私はアズサちゃんが一人で抱え込むのは良くないと思います! あとオウカくんの無茶苦茶を止めたいって気持ちは同じです!」
「ヒフミ……」
「だから行きましょう!
ずいっと身を乗り出しながら強い意志をあらわにする彼女の気迫に、私は思わず首を縦に振るのだった。
♦♦♦
相手に銃口を向けることに躊躇いはない。
人を殺すために躊躇いはない。
私たちアリウスはそういう訓練を文字通り死ぬほどやってきたし、トリニティとゲヘナを滅ぼすためなら、喜んで屍の山を築き上げる覚悟でいた。……覚悟なんて必要ないな、両学校への復讐こそアリウスの大望であり、それを阻むものは何であれ排除するつもりでいた。
「おいおいおいおい、銃口震えてんぞおいぃ! そんなんじゃ俺は殺せねぇぞアリウスさんよぉ!? もっとちゃんとしっかり俺ん脳天ブチ抜けやぁ!」
「うるさいっ……!」
しかし、自身の意志とは反して銃口が定まらない。
ドクドクと心音が激しくなり、相手からの被弾は増えるばかり。
最初のあたりは普通に戦うことが出来た。今まで培った技術を駆使して、この目障りな男を排除するために死力を尽くした。腕を、足を、撃ち抜いて無力化し、ヘッドショットで黙らせる。アズサを誑かした狂人を殺せば、アイツも
だが、実際はどうだ?
撃っても撃っても。
撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても撃っても──止まらない。
「アハハハハハハハははハハハはハハハハハははハハッッッ! いヒひひひひひひヒヒひひひひひひひひひあ神絵師がエチエチ画像うpしてるイイネしとこひゃひゃヒャひゃひャひゃひゃひゃぁ!」
「……くそっ! なぜだ! なぜ止まらない!」
「かすり傷で戦ん辞める
腕や足、腹部や肩、口からも血を流す島津 オウカ。私もダメージと疲労が蓄積しているにせよ、この男の被弾に比べたら軽傷に過ぎないだろう。私と島津 オウカの周囲は血で赤く染まり、男の足元には血溜まりが生成しつつある。私に付着している血だって、自身の負傷よりも戦闘時に飛び散ったこの男の血の割合が大きい。
それでも島津 オウカは止まらない。
嗤いながら、狂いながら、何度でも私に挑んで来る。
その有様が。
その覚悟が。
「あーあ、やっぱり戦は
「ふざけるな! 貴様の狂言で、我らの復讐が潰されるとでも!? 冗談じゃない!」
「冗談じゃねぇわな。事実やし」
──怖い。
血だらけでクククっと笑う島津 オウカに、私は背筋を震わせる。
ヘイローを持たない人間は、銃弾一つが致命傷になると『マダム』から教わった。確かに、この男は頭や心臓など、即死になりかねない部位に被弾は見当たらない。
それでも奴の流す血は尋常ではない。にも関わらず、
「──おぃ! 押されんなら戦線を下げろ! 時間稼げればコッチが優位だぞ!」
この男は冷静に戦局に口を出す余裕がある。
私は……この男を殺せる展望が薄れつつあった。
「なぜだ……この世界は虚しい。努力したところで全ては無価値。どれだけ足搔こうと、どれだけ希望を抱こうとも、全ては無意味であると! それが世界の真実だ!」
「お前の言う『全て』って、教本の世界地図並みに小せぇんだな」
島津 オウカは吐き捨てるように眉を顰める。
「……まぁ、俺がお前に説教する義理も必要性もねぇか。ほら、武器を構えろよ、アリウススクワッドの大将、錠前 サオリ。お前が降伏するのが先か、俺が多量出血で死ぬか、ドキドキチキンレースと洒落込もうぜ?」
「……死ぬ気か?」
「さっきからそう言ってるだろうが。……あぁ、そっか。そういうことか。戦闘技能はピカ一なのに、変な違和感があったのはそのせいか。やっと言語化できたわ」
そう言って、この男はニィっと笑う。
私を馬鹿にするように。
「
「──殺す、殺してやる!」
「自分は人を殺したことねぇクセに、アズサにその役割を押し付けたお前にできんのかねぇ? 言葉じゃなくて行動で示せよアリウス分校。俺一人殺せないようじゃ、トリニティやゲヘナの殲滅なんて夢物語やぞ」
自ら手を汚す気概もねぇ奴にはできねぇか。
その言葉が私を貫くと同時に、私は叫びながら戦闘を続けるのだった。
【簡単な自己紹介】
アイリス・ワルフラーン:キチガイ五人衆の一人。プロレス技は薩摩