次回で調印式襲撃事件は収束するかな?
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誤字報告ありがとうございます。介錯は任せました。
曇天の下、俺と錠前さんとの物騒なダンスパーティーも佳境に差し掛かる。俺の血液残量もイエローゾーンを突破して久しいけれど、俺が死んだ訳でも錠前さんが諦めた訳でもない。
双方の『援軍』が駆けつける、という形で終わってしまったということ。薩摩兵子から見れば肩透かしのような結果だが、ある意味では
アリウスからの援軍は仮面の少女が率いる分校生徒とユスティナ聖徒会の人形たち。
トリニティ側からは補修授業部の愉快な仲間たちと先生──
「ぶーん」
“うわああああああああ!!??”
恩師の腰をガッと掴んでガキの飛行機ごっこのように運ぶ金髪のアンポンタンを視界に捉え、チベットスナギツネのような目を同郷に向ける俺。移動速度から鑑みると速いのかもしれないが、どういう心境で補修授業部の皆は
ほら見ろ。本来の抹殺対象が阿保みたいな方法で来るもんだから、錠前さんが口開いて唖然としてるじゃねーか。俺の目的は彼女の首を取ることじゃないので、彼女の隙を俺は許すけどさぁ。
俺も驚いたし錠前さんも驚いた訳だが、援軍として馳せ参じた両軍の主要人物も目前の惨状に目を見開く。
血だらけの戦場なんぞキチガイ共の間では見慣れた光景。しかし、頑丈過ぎるキヴォトス民には刺激が強すぎたのだろう。敵であるアリウス分校の面々でさえ、血だらけの俺の身体に顔を青くしている。
……いや、俺もここまでダメージを負うのは久方ぶりか。今回は諸事情により錠前さんの銃弾をライフで受けたが、普段の猪突猛進型な薩摩兵子でも、ここまで防御を無視して相手に突貫したりしない。純粋にパフォーマンスが下がるからな。
俺はそんな彼女たちの反応をガン無視し、先生を連れてきたアイリスに苦言を呈する。
「おいおい……紙装甲のセンセを連れてくるんじゃねぇよ。ここ曲がりなりにも紛争の激戦区やぞ? 銃弾当たったら死んじまうぞ?」
「是非とも姿見を前にして同じセリフを言ってください♡」
ハナコの返しからは形容し難い圧のようなものを感じ、他の補修授業部のメンバーは同意見だと言いたげに首を縦に振った。
俺は何か間違ったことでも言ったのだろうか?
正論だと思うんだが。
「オウカっ……!」
「よっ、アズサ。こんなとこ来てどないしたん話聞こか──ちょちょちょちょ待待待待なんでいきなり泣いてるん!? は、え、コハルも泣くんじゃねぇよ! ハナコもニコニコしてねぇで助けろぉ! ヒフミも──ヒフミさぁんっ!?」
駆け寄って来たアズサは何かを堪えながらボロボロ涙を流し始めるし、コハルも負傷してない俺の背後をポカポカ叩きながら泣いてるし、ハナコはニコニコ微笑みながら超絶不機嫌そうなオーラを纏ってるし、ヒフミは頬を膨らませながら俺を睨んで来る。
言わば四面楚歌。何なら楚の項羽よりも詰んでる。
唯一味方してくれそうなアイリスはハナコの
周りはいまだに戦闘の真っ最中なのに吞気なものである。
……まぁ、敵の増援程度で
「私が……私がっ……本当はサオリを……止めないといけないのにっ」
「バカバカバカバカバカぁ! なんでこんなに怪我して死にそうなのよぉ! 少しは心配するこっちの身にもなってもみなさいよぉ!」
「別にこっちが勝手に馬鹿やって怪我してんだから、お前らが泣く必要は──」
「オウカくんシャラップです」
薩摩兵子の言い訳も補習授業部の部長により一蹴される。
今の俺に発言権は存在しないようだ。
「オウカくん、私たちが何でこんなに怒ってるのか分かりますか?」
「──え? あー、うーん……えーっと」
ヒフミの詰問に俺は少しだが思考し、そういえば何で俺は怒られているんだろう?と眉を顰める。
勝手に怪我をしたから?
いや、俺自身が怪我しようが俺の勝手じゃん。
錠前さんと
そもそも錠前さんを止めることはアズサに伝えてたじゃん。
お茶の間にR18Gを提供したから?
そんなんクロノスの不手際であって、勝手に撮られた俺は関係ないよね?
しかしながら、他に心当たりがなかったので、上記の内容をそれとなくヒフミに挙げてみる。これが理由なのだとしたら、俺には俺の言い分があるので弁明を聞いてほしいのだが。
「……それも確かにあります、が! 一番大事なのはそこじゃありませんっ」
「そのココロは?」
「私たちが怒っているのは──オウカくんが
「……は? いやいや、除け者も何も……お前ら関係ないじゃん」
どうやら補習授業部の面々は、アリウス分校からの奇襲に対する防衛戦において、自分たちが蚊帳の外であったことにご立腹なようだ。
……これトリニティとゲヘナ、アリウスの確執から生まれた
正直に言うと、補習授業部の介入は想定の範囲内だった。つかそれを望んでいた。アリウススクワッドのメンバーを止められそうなのがアズサだってのは、原作履修しているキチガイ共の見解だったし、実際にこうやって来てくれた時点で俺の目的は達成されたも同義。あとはアズサが何とかして錠前さんを説得して投了してもらうのみ。他力本願なのは否めないが、説得してもらわんと俺がアズサとの約束が果たせなくなる。
そういった思惑もあり──どうして自分たちを巻き込んだと責められる覚悟はあったが、どうして自分たちを巻き込まなかったと責められるとは思わんかった。
「関係あります!
「一般人を巻き込めるわけねぇだろ……」
「ブラックマーケットを火の海にした私が一般人だと思いますか?」
「自称普通の学生設定はどうした?」
ヒフミのカミングアウトは初耳だったようで、補習授業部の面々(除:アイリス)はぎょっと目を見張る。確かに一般人には危険だからと排除した理論は、アビドスの一件で一緒にカイザーをチェストしたヒフミには通用しないだろう。
……あれ? 元アリウスのアズサ、正義実現委員会所属のコハル、シスターフッドに太いパイプを持つ才女ハナコ、同郷のアイリス。一般人だから黙ってたというには、一般人要素が少ないな。
「私たちに黙ってこんな危険なことをして、オウカくんが大怪我をする──そんな暗くて憂鬱な話、私は嫌です。私たちがオウカくんたちほど荒事に慣れてなくても、危ないから関わるなって言われても、私は好きじゃないです!」
俺の前で仁王立ちするヒフミはこぶしを握り締める。
「私には、好きなものがあります!」
「ペロロ様か?」
「平凡で、大した個性もない私ですが……好きなものについては、絶対に譲れません! 友情で苦難を乗り越え、努力がきちんと報われて、辛いことは慰めて、お友達と慰め合って……! 苦しいことがあっても……誰もは最後は、笑顔になれるような! どっかの誰かさんが勝手に血だらけにならないような!」
「なんだろう、勝手に俺をディスるのを辞めてもらっていいっすか?」
「そんなハッピーエンドが私は好きなんです!!」
俺の発言をガン無視してヒフミ氏は語る。
「誰が何と言おうと、何度だって言い続けてみせます! 私たちの描くお話は、私たちが
彼女は俺を指さす。
「私たちの物語……私たちの
刹那、雲は晴れ、日は照る。
彼女の宣誓によって起こった快晴は、タイミング的には奇跡が起きたようにも見え、ここで戦闘を行っていた意志ある者は天を仰ぎ見る。彼女はキヴォトス基準で言えば『普通の女子高生』に分類され、普通に考えれば偶然の産物だろう。しかし、学びの機会を奪われ続けたアリウスの生徒には、ヒフミの宣誓は奇跡の具現化に見え、「奇跡だ……」と呟く者もいる。
俺はヒフミの言葉を吟味し、そして自然に「あ゛……」と汚い喘ぎ声を出しながら、表情を引きつらせて笑う。全然笑い事じゃないのは承知の上だが、笑わずにはやってられない。
ミレニアムのキチガイ曰く、ブルアカ宣言は人を殺める覚悟を決めたアズサに対して、全ては虚しいと連呼する錠前さんに対して、否であると声高に反論するシーンで用いられた。何が何でもハッピーエンドを掴んでみせると言う、普通の女の子が叫ぶ夢想。皆で幸せを掴むんだという気概に、覚悟に、夢に、薩摩のロリコン野郎は感動したのだ。
だが、今回のブルアカ宣言は
その証拠に、
「というわけで! 私たちを除け者にして危ないことをして大怪我をしたオウカくんは、後でみんなで説教しちゃいます! 怪我が治ったら覚悟しておいてください!」
「んな大怪我なんて大袈裟な。こんなの地元じゃ日常茶飯事で……」
「ここはオウカくんの地元じゃなくキヴォトスです!」
「確かにそうかもしれんが。いや、補習授業部の皆さまの青春を壊したくないっていう、俺たち同郷共の配慮なんすよ。巻き込む気満々だったけど」
「……それならオウカくんのお友達も連れて来て下さい。一緒にお説教です!」
「…………あの、若干1名がゲヘナ所属なんで情勢的に来れなさそうなんですが」
「じゃあ、全員シャーレでお説教です!」
泣き止んだアズサ&コハルも、終始一貫ニコニコなハナコも、いつもの仏頂面のアイリスも、ヒフミに同調するようにウンウンと首を縦に振る。
俺は助けを求めるように先生へと視線を移すが、
“……私もヒフミと同意見だよ。みんなの為にって下準備してくれてたことは嬉しいけど、それでオウカが傷つくのは看過できないよ。『大人』である私をもっと頼って欲しかったかな”
「……うす」
“補習授業部のみんなからのお説教、私も参加させてもらうよ”
「…………うす」
悲しいことに先生も
お説教されたとて俺の根の部分が変わることはないだろうけど、ここは大人しく先達の裁決に首を垂れる。キチガイ共VS補習授業部の価値観の違いによる論説合戦が確定してしまった。
そう遠くない
俺ならガン無視してチェストするわ。
「アズサっ……なぜだ、なぜなんだ」
「サオリ……」
「私たちは一緒に苦しんだはずだ。世界は虚しいと、この灰色の世界に意味はないと。全てが虚しいこの世界で、なぜお前だけが意味を持つ……? なぜお前だけが青空の下で生きられる……?」
クソババアによって歪みに歪んだ英才教育を受けて全てに絶望した少女は、同じ環境下で育ったはずなのに真逆の生き方を突きつける少女に問いかける。
アズサはどっかの薩摩兵子のせいで流した涙を拭きながら、彼女の問いに応える。
「確かに、全ては虚しいのかもしれない。私たちの『生』に意味はないのかもしれない。──でも、それは私が足搔くことを諦める理由にはならない」
それは白州 アズサが掲げる不変の理念。どれだけ世界が恐ろしかろうが、どれだけ世界が残酷だろうが、それが彼女の進む足を止める理由にはならない。反骨心旺盛、喧嘩上等、治安維持を司る者には厄介な存在ではある。が、何度も言うが俺は彼女のスタンスは嫌いじゃない。
そんで彼女は言葉を続ける。
「あと──私には友達がいる。ヒフミも、コハルも、ハナコも、アイリスも、オウカも、先生も。どんなに虚しくても、支えてくれる友達がいる。私の心は、大切な友達と繋がってる。友達がいれば、私は虚しい世界に負けたりはしない」
「……ん? アズサちょっと待
「つながる心が、私の力だ!」
数十発の銃弾に耐えてきた男は、とある少女の言葉に崩れ落ちた。
【簡単な自己紹介】
アイリス・ワルフラーン:キチガイ五人衆の一人。基本的には主人公の味方だが、今回はヒフミたちの味方。
次回、『
お楽しみに。