なのでもっと暴走した結果がコレです。
感想どしどしお待ちしております。
アビドス編で何かあったのか気になる等の要望を頂きますが、少しずつ情報開示していこうかと。結論から言うとホシノが「や、やり過ぎじゃない?」って同情するくらいには、カイザーグループがドえらいことになってます。
「……お前ら、これを見てほしい」
「なンだその紙切れ」
補習授業部での第一次試験が数日経過したあたりだろうか。何やら補習授業部での勉強合宿の話も出てくる中、俺は
キチガイ共はそれぞれ各々のやりたいことをやっており、ミライはスマホを操作しながらヘルメット団から鹵獲した武器をモモトーク相手に横流し、カネサダは自身の銃の手入れ、ミナは『ゲーム開発部』から依頼されたBGM作成を、アイリスは参考書を開いて自習している。
俺が提示したのは模擬試験の結果。
第一次試験では同胞が無様な点数を取ってしまったが、これはその数日後に行われたものだ。模擬試験で下江さんが第一次試験より点数が低かったのは良き思い出。
つまり俺が所有しているのは、そこで頑張って勉強している奴の答案用紙なのだが、実はこの数日間はシャーレの先生がアイリスに勉強を教えていたのだ。つまりはその結果である。
カネサダは怪訝そうにその紙を覗き込む。
そこに記載されていたのは、
アイリス:10点 ──不合格
衝撃的な内容だった。
一見すると悲惨な結果だと思われるが、この結果は同郷のキチガイ共には別の意味を持つ。
ゲヘナのキチガイは紙をブン取り、穴が開くほど解答用紙を舐め回すように睨む。呼吸が僅かに荒くなり、魔導書読んでSAN値チェックに失敗して不定の狂気に陥った探索者のように、その視線の先の内容をいくばくかの時間をかけて脳で理解しようと試みている。
そして最後に「う……そ……だろ……?」と呟きながら、その回答を乱雑にミナへ渡す。
仕事を邪魔されて気分を損ねた様子のミナは、眉をひそめながらアイリスの解答用紙を手に取り、普段は開かれることのない目を限界まで見開く。
そして一字一句逃さぬと言わんばかりに、わざわざ指で文字をなぞる徹底さ。そして解答用紙を持って立ち上がり、別の部屋へ姿を消す。数分後、信じられないと首を傾げながら戻り、モモトークに集中していたミライの目前に紙を突き出す。
マイペースにボケーっといつものようにアホ面を晒していたミライだったが、紙の内容を理解した瞬間に爆速で立ち上がる。紙を持った手はわなわなと震えていた。
「……え、エイプリルフールって今日じゃないよ?」(震え)
「ところがぎっちょん。正真正銘、アイリスが獲得した点数だ」
「ま、まま待って、え? は? えぇ? ちょ、これ本物?」
アビドスのキチガイの困惑に答えたのは、ミレニアムのキチガイだった。
「先ほど、その解答用紙を筆跡鑑定で照らし合わせてみましたが、彼女の答案用紙で間違いないとの事です。機械の不具合かも調べてみましたが、正常でしたよ」
「カンニングした可能性は?」
「ありえねェ。採点したのは先生だろ? カンニングなンか許すかよ」
それでも信じられないと首を横に振る面々。
「マジかァ。おい、こン馬鹿が大小問わず『テスト・試験』のカテゴリーで点取ったの、最後はいつだったよ」
「えー、僕は覚えてないなぁ。オウカは?」
「確か中学のどこだっけかで、社会科の教諭が設問ミスやらかして4点全員貰えた時が最後じゃね?」
「となると中学1年での学期末考査のときですね」
あの時はお情けで貰えた点数だったので、彼女が自力で点数を取ったのはいつ以来だろうか。ぶっちゃけ、小学生のガキだったころでさえも、二桁の点数が彼女の名前の横に記された記憶がない。
ましてや、解答用紙から分かる通り、今回は彼女が自分の力で点数を取ったのだ。地獄の両親も陰で泣いて喜んでいるだろう。
「先生も『10点も取れたんだね。次も一緒に頑張ろう』って比較的普通の反応だったし、補習授業部のみんなも生暖かい目だったから、この天変地異を俺たちで共感したかったんよなぁ。あ、やべ。気ぃ抜いたら涙出てきたわ」
「い、いやぁ。そりゃキヴォトスのみんなは知らないのも無理ないけど、これ控え目に言って『偉業』よ? 小中で数多の先生共が『この馬鹿に何を教えても無駄』って匙投げてたじゃん。オウカも時折勉強見てたけど、学習するよりも授業の進行ペースの方が早くてテストで点数獲らせるの無理だったじゃん」
やっぱキチガイ共の反応が『普通』だよなぁ、と安心した瞬間、俺の涙腺が決壊して無意識に水滴が頬をとめどなく流れる。幼少期から知っていただけに、コイツがいかに勉強できないことを知り尽くしていて、その馬鹿が頑張って自力で点数がとれた事実に、俺の目が耐えきれなかったわけだ。
拭っても拭っても止まることはない。
解答用紙を見て仏頂面でぴょんぴょん跳ね回ってたアイリスを思い出したせいなのか、彼女の学力を一番気にかけていた俺の両親に伝えることのできないやるせなさのせいなのか、馬鹿の頑張りを正当に評価されたことへの喜びなのか。
「先生がわざわざアイリス用に専用の学習用プリント作ってくれたんだぜ?」
「……あァ、認めるわ。最初は『良い大人の見本』とか『聖人の擬人化』とか言う
「これは先生に足向けて寝られない案件ですよ。最終編の先生も十分すぎるほど『先生』でしたが、まさかここまでとは……」
なお、先生の目のクマが酷いことになってた。
それでもアイリスの勉強を今後見ていくと先生は仰っていたので、こちらとしては親族歴代祖先一同で五体投地で拝み倒したい心境だった。
ここまでお膳立てしてもらったのだ。何としてでも補習授業部の面々の退学を撤回したい。
「受けた恩は岩に刻め、か。──よし、決めた。ミライ、ミナ、今後起こるエデン条約編で先生が困るような事態ってあるか?」
「むしろエデン条約編そのものが先生の悩みの種感あるけどねぇ」
ミライが思い出すように首をひねるが、ミナが最初に先生の受難を挙げてくる。
「エデン条約の調印式、トリニティとゲヘナをアリウス分校が襲撃するんですが、その時に先生がアリウス分校の生徒さんに撃たれて重症になるんですよね」
「それは前にミライからチラッと聞いた気がする。その件はカネサダを肉盾にしてでも止める予定」
「はァ、死ぬのはテメェなンですけど?」
というか、調印式の襲撃は知っているので、それは何とかして止めようとキチガイ共が文殊の知恵しながら調整している段階だ。余談だが、俺がゲヘナの風紀委員から狙われるリスクを負ってまで『温泉開発部』に協力した要因はそこにある。
「かと言って、エデン条約編は最後のベアトリーチェ戦が一番ネックなところだし、アリウスの面々がいないと何ともならない点が多いし、手助けが難しいというか」
必死にストーリーを思い出しながら、ミライが苦虫を嚙み潰したよう言葉を紡ぐ。
俺たちが先回りしてベアトリーチェを示現でチェストして誉にしたとして、それはアリウスに所属する某生徒の為にならないので、先生ありきの行動が重要になって来るらしい。
「……悩み、に関して述べるとすれば、エデン条約編の後日談がありますね」
「詳しく」
「アリウスの外患誘致、エデン条約の襲撃。前者に関しては首謀のミカさんが責任を負い『魔女』と貶められ、後者の件でアリウス分校の主要キャラが指名手配犯として追われることになるんですよ」
「あらら」
まぁ、やってることは切腹モンだしなぁ。
そりゃそうだと内心思いながらも、あの全生徒の味方スタンスの先生が困らないはずがない。いや、それとも『それはそれ、これはこれ』の理論で、やらかした分は償うように叱咤するのだろうか?
「そして困ったことに、この双方が彼女らの成長に必要なプロセスを踏んだ結果な上に、今の私たちでは止めようがないんですよねぇ。外患誘致はオウカがそもそもティーパーティーに睨まれてますし、襲撃は今の彼女に言ったところでどうにも……」
「襲撃……あァ、言い忘れてたンだが。万魔殿の近辺がきな臭ぇことになってるンだとよ」
どうしてゲヘナの生徒会がここで出てくるのか気になったが、その言葉に原作履修勢が「あー……」と妙に納得した反応を示す。
「それアリウスと接触してますね」
「そのココロは?」
「ゲヘナの風紀委員長はエデン条約には賛同しているけど、ゲヘナの生徒会は納得はしてないってこと」
「これがゲヘナとトリニティの絆(笑)っすか」
加えて、ゲヘナとアリウスの取り決めに関しても、アリウス側は守る気が一切ないらしく、文字通りエデン条約の調印式はぐっちゃぐっちゃになるんだとさ。知った俺はこれからどんな顔して補習授業部のみんなと先生に会えばいいのかな?
ミライの無慈悲な未来予測にグロッキーな表情になる俺。
そりゃあ原作知識持ち勢は口揃えてトリニティに行きたくないって言うわ。
「つか風紀委員会と万魔殿の双方から睨まれてるお前が、よくそんな生徒会の内部情報を入手したな。国家機密レベルの情報だろ? 信憑性はあるのか?」
「イブキから聞いた」
「その命、神に返しなさい」
情報の出所にミナが狂乱する。
あんまり聞き馴染みのない名前に一瞬だけ首を傾げたが、確か万魔殿に飛び級で入学した幼女の事だと理解した。その幼女と内部機密を交換できる仲になっていることに嫉妬したロリコンが錯乱している理由も。
言動が暴力的なカネサダだが、なんか知らんけど小さい子に好かれるんよな。
そしてロリコンと度々衝突しているのは恒例行事とも言える。
「まぁ、オウカは補習授業部の百合を楽しむしかないんじゃない? アイリスに学力を叩きこんでくれたお礼は、次のカルバノグで返せばいいじゃん。あれはあれで先生も面倒事に巻き込まれるし。特に連邦生徒会の防衛室長とか、ヴァルキューレ警察とか、SRTのFOX小隊とか、カイザーグループ……は、あれ? これどうなっちゃうんだろ?」
「俺は百合を楽しむために補習授業部に巻き込まれたわけじゃねぇんだが? お前と一緒にすんな豚
と吐き捨てたところで、俺は言葉を止める。
その様子にミライは怪訝な顔をしているが無視する。
『ヴァルキューレ警察』。キヴォトスの治安維持に携わっており、特定の自治区は持たないが、各地に拠点を構える組織だったはず。連邦生徒会長の指揮下にあった特殊部隊並みの練度を持つ『SRT特殊学園』とは違い、各自治区の法に制限されて治安維持に支障をきたしていると耳にした気がする。そして、ヴァルキューレには閉校したSRTの生徒も在籍していると。
ミライの言うカル何たらっつーのは詳しくは知らんが、そのヴァルキューレも大きくかかわってくるのだろう。
ふむ。
「質問いいか?」
「え、ヤダ。……ごめん、嘘だから
「七囚人って矯正局にブチ込まれてたじゃん。それ見張ってるのって連邦生徒会? それともヴァルキューレ?」
「うーん、確かヴァルキューレだった気がする」
ミナも頷いていたので確定情報と判断しよう。
「次の質問。矯正局ってどこにある?」
「……どこってゲームで明記されてたっけ?」
「なかった気がします」
彼らの回答に「そうか……」と短く返して思案する。
時間にして30秒にも満たない。
「……欲しいな」
「トリカス、なんか変なもンでも食ったか?」
カネサダが茶化してくるが気にしない。
俺は一つの面白い考えに至り、笑いながら全員に問う。
「なぁ、エデン条約襲撃事件、俺が仕組んだことに出来ねぇかな?」
「「「……はぁっ!?」」」
馬鹿共が素っ頓狂な反応を見せるが、即座に吟味する。
「……でもベアトリーチェが犯人だし無理じゃない?」
「いいえ、黒服氏の協力を仰げば、エデン条約の4章で証拠を捏造できるんじゃないでしょうか? ゲマトリアとしても、エデン条約の流れを他者に転嫁できるのであれば、黒服氏に限っては手を借りられるのではないかと」
「イブキ経由で万魔殿とも交渉できそうだなァ。アリウスとの繋がりを疑われたくねぇだろうし、トリニティの一般生徒に押し付けられるンなら嬉々としてやりそうだわ」
「できなくは……ないのかなぁ。絶対に先生が納得しないだろうけど。あ、でもそうなるとミカちゃんの件やアリウススクワッドのやらかしも、オウカに全部押し付けられるね」
他人を貶めることに関しては他の追随を許さない面々が、俺という生贄をどう料理するのか、英知を集結して話が盛り上がる。
複雑な気持ちではあるが、俺の目的としては喜ぶべきなのだろう。
素直に喜べないのはなぜか? 気持ちの問題か?(自問自答)
「しかし、どういった風の吹き回しで?」
「あぁ、ちょっとな」
俺はスマホで各方面と調整を開始しながら、今日の献立を伝えるかの如く零すのだった。
「──ヴァルキューレの人員、引き抜きたくなった」
──後に『八囚人』に数えられる男のキチガイじみた宣誓だった。
【簡単な自己紹介】
アイリス・ワルフラーン:キチガイ五人衆の一人。今回のテストは額縁に飾ってる。
Q.各話にサブタイトルって必要ですか?
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いる。そっちの方が見やすい。
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いらん。数字だけでOK。