来年ものんびりゆっくりチェストしてく所存です。
感想お待ちしております。
俺がセクシーフォックスと楽しく夢の中でお話した次の日。
夢の中であんだけ話をしたのに、全く疲れを感じないことに違和感を覚えながらも、俺は朝早く起床して朝飯を用意し各員に振舞う。補習授業部から文句等は受けていないので、とりあえず満足していただけたのだろう。
そうじゃなかったら泣く。
余談だが、ここで補習授業部のメンバーから聞かれないところで、俺と先生とでのちょっとした会話があったことは明記しておこう。どうやら阿慈谷さんと先生で、昨日の夜に話し合って次回の学力試験の対策を練ってきたと。それを俺とも共有してくれるらしい。
途中、話が桐藤さんの案件に変わったが。
“……オウカはナギサから何か言われた?”
「何の話っすか? 補習授業部の中にエデン条約を妨害しようと企む奴がいるって話ですか? それとも特別学力試験の第三次で合格できなければ全員退学って話ですか?」
“知ってたんだ”
「前者は桐藤さんから聞きました。後者は別口から耳にしました」
“ここで何日かみんなと交流したと思うけど、オウカは誰が『裏切り者』かとか疑ってるの?”
「確かに桐藤さんからはそう依頼されましたが、俺の最優先事項はアイリスの学力向上です。それに、裏切り者がどうだとか、俺にとっちゃ心底どうでもいいですもん」
“補習授業部のみんなを信じてるんだね”
「いえ、全然。裏切り者がどうとか難しく考えなくても、敵だろうが味方だろうが、銃向けてきた奴をチェストすりゃ問題ないでしょう?」
“………”
最後には俺にジト目を向けてきた先生。
何か間違ったことを言っただろうか? 単純明快かつ、一番効率的なモノの考え方だと思ったんだがなぁ。
話を戻して、合宿の2日目となった。
部長である阿慈谷さんが主導の元、もう一度模擬試験を行うことになった。合宿で闇雲に勉強したところで全員合格できるのか、んなことよりテストで重点的に学び直さなきゃならんところを浮き彫りにするべきでは?という話になったのだ。
確かに前回の模擬試験から時間は経過しており、現段階での苦手項目を洗い出したいというのは理にかなっていると言えよう。
そんなわけで第二次模擬試験が行われたのだが──
ハナコ:4点 不合格
アズサ:33点 不合格
コハル:15点 不合格
ヒフミ:68点 合格
アイリス:12点 不合格
不合格どうのこうのという話よりも、前回の散々たる結果であったアイリスがマトモに点数を取れたことに、補習授業部のメンバーは歓喜の声を上げた。既に補習授業部のマスコットキャラクター扱いされているアイリスは、年下であるはずの下江さんにナデナデされながら、ふんすと仏頂面でドヤってた。
先生のご指導ご鞭撻の賜物と断言できる。
「っ。オウカ、私きづいた」
「どした急に」
そして各々の
「──せんせの授業を受ける、頭が良くなる、良い点数が取れるっ」
「……永久機関が完成しちまったなァァ~! これでノーベル賞はお前んモンだぜ~!」
今までの学校生活何してたんや、勉強して点数獲れないと困るんだよ、永久機関じゃなくて当然の因果関係やろがい、ノーベル賞の意味わかってる?
などなどツッコミどころ満載の掛け合いだが、このまま「アホか」と切り捨てて勉強へのモチベーションを下げられても困る。ので、目覚めたアイリスをヨイショしておく。徐々にテストの点数が上がっていること自体は良いことなのだから。
「これが今の私たちの現実です。ここから後1週間、みんなで合格点の60点をとるには、残りの時間を効率的に使わなければならないのです!」
テストの結果を確認した阿慈谷さんが役目を割り振ろうとする。
「まず、コハルちゃんとアズサちゃんは1年生用の試験ですので、私と──ハナコちゃんが、お二人の勉強内容をお手伝いします!」
「あら……?」
阿慈谷さん曰く、浦和さんは1年生の時は成績が良かったらしい──って話は、事前に桐藤さんが言っとったなぁ。今の成績がアイリス以下であろうと、1年生ん時の内容は頭に入っとるやろ!との阿慈谷部長のお達しで、彼女も『教える側』に回ることになった。
「そしてオウカくんはハナコちゃんに2年生の試験範囲の勉強のお手伝いをお願いします! 特別学力試験のテスト、オウカくんはほぼ満点でしたよね!? 私もサポートするので頑張りましょう!」
「オウカくん、手取り足取り、じっくりねっとり、お願いしますね?」
「……おけおけ、了解した」
点数1桁の生徒を同学年の人間が面倒みるってハードとかそういう次元を超えているが、おそらく阿慈谷さんは浦和さんの低学力には裏があると睨んでいるのだろう。
俺も
「先生はアイリスちゃんの勉強を全力でサポートしてあげてください!」
“うん。アイリスも頑張ろうね”
「らじゃ」
長年アイリスの勉強を見てきた者として、コイツの学力を向上できるのは先生しかおらん。
同郷のキチガイ共も同様の見解を述べている。
「今日から定期的に模擬試験を行い、進捗状況も確認していこうと思います」
「阿慈谷さん、とりあえず2回できるくらいには、模擬試験の問題のストックは用意してある。もし必要になったら教えてくれ」
先生にはアイリスの教導に全力を注いでほしいので、俺の言により、テスト問題等は今後俺が提供することになった。俺が用意している風に話しているが、実際に問題制作をしているのはミレニアムで暇しているロリコンなのは内緒だ。
これで阿慈谷部長の考える布陣は決まった。
「それだけではありません、何とご褒美も用意しちゃいました!」
彼女は何やら後方でゴソゴソし始めたかと思えば、今回の『ご褒美』とやらを机の上に広げた。
斬新なデザインかつ、個性的な造形の人形たち。彼女が必死になって彼女たちのモチベーションを上げるために考え抜いた結果。
「良い成績を出せた方には、この『モモフレンズ』のグッズをプレゼントしちゃいます!」
「モモフレンズ……?」
「……何それ?」
彼女の言葉に、浦和さんと下江さんが疑問符を浮かべる。
俺はグッズ群に紛れている見覚えのある人形を見つけて、明後日方向を見ながら苦笑する。
阿慈谷部長が力説する『モモフレンズ』。本人曰く、キヴォトスで最近流行っている現代のサンリオ的なキャラクターブランドらしい。と言うもの、この地に転移してきてから数か月、このキャラクター群を見たことがほとんどないからだ。
おそらく特定のファン層に愛されているカテゴリーであると認識している。
そんでアビドス自治区から『カイザーグループ』の文字が跡形もなく消えてしまった要因の1割くらいは、『モモフレンズ』を崇拝する阿慈谷氏の暴走にある。後の9割は俺たち。
しかし、悲しいかな。阿慈谷さんは必死にモチベーションを上げる建前のもと、自身の愛するキャラクターの布教活動に勤しむのだが、浦和さんや下江さんにはあまり響いていない様子。
アビドスの一件の時も、俺たちキチガイの野郎共に布教しようとしてたもんなぁ。カネサダが「なにこの気持ち悪ィ鳥、薬キメてンの?」と素直な感想をこぼし、そのまま帰らぬ人となってしまったのは記憶に新しい。俺も内心はキチ鳥と呼んでいるが、こっちには『イーサキング』という伊佐市の何とも言い難いゆるキャラを知っているので、それよりは可愛いかもしれんと自分に言い聞かせている。
キャラクターの好みは千差万別、人それぞれだし、阿慈谷さん的には可愛いのだろう。うん。
「………」
「あ、アズサちゃん?」
「か、可愛い……!!」
その証拠に、俺は『モモフレンズ』の新たなファンが生まれるのを目の当たりにした。
彼女の持ってきた人形はぬいぐるみの生地で構成されているのだろう。可愛くてモフモフして、何考えているのか分らんラリった目を好ましいと感じたそうだ。
「………」
「お、おい?」
これだけなら微笑ましい光景だねって感想で、それじゃあ全員頑張りましょーで次の話に持ってく予定だったのだが、俺の横にいたはずのアイリスがてくてくとモモフレンズの山に近づく。
しかし、彼女を止めようとしたところで、そういえばアビドスの時に阿慈谷さんが俺らに紹介した際、アイリスは『誤チェスト』に忙しく、モモフレンズのキャラクターを見るのは初めてだと気づく。そんで我らが脳筋姫の特性として、
「可愛い……フワフワ……!」
「あ、アイリスちゃんもペロロ様の可愛さに気づいてくれたんですね!」
こういった『
アイリスがキチ鳥を仏頂面でモフモフする姿に、俺は大きなため息をつく。
別に彼女がモモフレンズにハマることに対して苦言を呈したいわけじゃない。さっきも言った通り、キャラの好き嫌いは個人の自由だし。……俺たちのアジト、モモフレンズのぬいぐるみ展示会場になるんやろうなぁ。
「おぉ、
「ペロロ様です」
いくら新たにできた同志だろうと、いや、同志だからこそ、アイリスのキャラの言い間違いをした瞬間、すんと真顔になった阿慈谷さんが修正する。
その変わりように人形に夢中の2名を除いて、空気の変容具合に戦慄する。
歴戦の猛者でもここまでの気迫は出さない。「ロリババアって年齢的に見ればババアのカテゴリーじゃね?」と質問されたときのロリコン野郎に匹敵する。万人にとっては心底どうでもいい間違いだとしても、本気でそれを愛している者にとっては、看過できない差異なのだろう。
いつもは当たり口調の強い下江さんが震えながら口を押え、浦和さんも「あら……?」と口に出しながらも冷や汗をかいている。
「うん、ペロペロ様。覚えた」
「ペロロ様です」
「ペロペロ様の人形、勉強頑張ったら貰える?」
「はい、あげちゃいます。あとペロロ様です」
「ペロペロ様、私頑張るっ」
「………」
でも兀突骨は一度名前をインプットすると、それ修正するのにかなりの労力と根気が必要なんよなぁ。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も阿慈谷さんは修正しようとするが、これを直そうとすると年単位の時間が必要になってくる。経験者からの談だ。
確かに推しの名前間違いは言語道断だろうけど、本人に悪気が一切ない上に、自身と同じものをめっちゃ気に入っている様子なのだ。最終的には阿慈谷さんサイドが根負けして、物凄く渋い顔をしながら「………………………………………………………………………………………そうですね」と自分に必死に言い聞かせていた。
「ヒフミ、約束しよう。必ずや
「ペロペロ様欲しいから、私も絶対に合格するっ……!」
「………………………ふぁ、ファイトです!」
阿慈谷さんの名称間違いを指摘したいけど、モチベーションが上がることは良いことだし、モモフレンズ仲間が増えて嬉しい、という超絶複雑な感情を抱えながらも、応援の言葉をかける。
そんで彼女は助けを求めるように俺を見てくる。……はい、ウチでも名前の矯正を頑張ってみますね。
「んじゃ、全員頑張ろうか。下江さん的には褒美に魅力は感じんだろうが、正実のエリートとして不合格は格好がつかんやろ」
「う、うるさい! アンタに言われなくてもやるわよ!」
「そうそう、その意気だ。……思い出した、昨日買い出しん時に羽川さんに会ってさ、下江さんのこと心配しとったで」
「……はぁっ!? ハスミ先輩っ、えぇ!? アンタ知り合いなの!? ねぇ、ちょっと!?」
下江さんに襟首掴まれてシェイクされながら、俺の耳は確かに
「……えぇ、一緒に頑張りましょう。オウカくん♪」
【簡単な自己紹介】
アイリス・ワルフラーン:キチガイ五人衆の一人。ペロロ崇拝者2号となる。
Q.各話にサブタイトルって必要ですか?
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いる。そっちの方が見やすい。
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いらん。数字だけでOK。