悪の怪人に転生したので美少女戦隊に投降します 作:トマトルテ
「君達はどうして、いつも無茶をするんだ?」
防衛省直下・神州防衛隊所属・第2美麗部隊。
通称、美少女戦隊ビューティーレンジャーの本部。
その会議室で、大柄で初老の男性は、司令である
「チャンスだと思ったので、敵のアジトに攻め込みました。それから、不利になって囲まれたので下水道を通って逃げました。敵のボスを討つことは出来ませんでしたが、アジトを半壊まで持ち込みました」
「それは分かっている。分かっているが、もう少し
「攻め込むことは報告しましたが?」
「一方的に告げるのは報告だけだ。ちゃんと、こちらと連絡を取り合い、相談して決めて欲しいと言っているのだよ」
あっけからんとした表情で答えるレッドこと茜に
茜の戦闘における勘はずば抜けている。
こちらが指示を出すよりも的確な判断を度々することも分かっている。
だが、自分達はまがりなりにも組織なのだ。
現場の勝手な判断で動かれていいわけがない。
後で、こちらで理由を説明する書類を作成する身にもなって欲しい。
「ですが、事件は現場で起こっているでござる!」
「それは重々承知だ。君達の行動そのものを批判しているわけではない。だが、的確な対処をするためには情報が何よりも大切だ。もし、怪我人がいる・逃げ遅れた一般人が居るなどの状況になれば、力を持たぬ我々とて手助けすることが出来る。そのために、連絡を密に取って、報告して欲しいと言っているのだ」
ブルーこと葵の反論にも、丁寧に説明をしていく
その姿は、戦闘部隊の長というよりも、聞き分けの悪い子供に根気強く説明する親のようだった。
「申し訳ございません。年長である、わたくしがもっとしっかりしていれば……」
「いや、桜花君が可能な限りこちらと連絡を取ってくれているのは分かる。そして、それでもなお、連絡がおざなりにするしかない強行軍だというのも」
ただ1人、真面目に謝罪するイエローこと桜花を
原因は猪突猛進な赤と青のコンビなのだ。
元気が良いのは良いことだが、若干じゃじゃ馬過ぎるなと思いながら、
「茜君。君の判断が私達よりも優れていることは、今までの戦果がそれを証明している。だが、君は少々生き急ぎ過ぎている」
「まだまだ、死ぬ気はありません」
「それは大半の者がそうだろう。いいかね? 生き急ぐと言うのは赤信号のまま横断歩道を渡るということだ。自分が死ぬと思って信号無視する人間はいない。ただ、1秒でも早く目的地に着こうと思っているだけ。それを生き急いでいるというのだよ」
最短、最速。
コスパやタイパを重視する時代になったが、それはルールを無視して良いことではない。
自動車で法定速度の倍の速度で走ったら? テストで100点を取るためにカンニングしたら?
なるほど、上手く行けば誰よりも速く簡単に目的を達成出来るだろう。
しかし、もしそれが失敗したらどうなるかなど、言わなくても分かるだろう。
「目の前の敵を倒したい。1人でも多くの人を救いたい。その気持ちは良く分かる。私も若い頃はそうだったからな。だが、それらの願いは全て自分が生きていて初めてなせることだ。もう少し、慎重に動いてくれ。大丈夫だ、そこで出る後れをフォローするのが私達の仕事だ」
故に
葵はまだいい。彼女は若干志向が幼く、好戦的なだけだ。年を取れば自然と落ち着くだろう。
だが、茜は違う。
(赤井茜……彼女は、神話や歴史で言う所の
特別な家系の生まれでもないのに、天性の戦闘の才を持つ英雄。
まるで日輪のように特別な存在。
埋もれていた、埋もれているべきだった才能を掘り起こしたのは、こちらだ。
だからこそ、
「少々、説教くさくなったが、要するに何か行う前に相談してくれと言っているだけだ。例え、こちらの説得が無視されたとしても、事前に分かっているだけでマシだからな」
まあ、それと同時に増える心労を少しでも減らしたい気持ちもあったのだが。
それは言わないのが花だろう。
「あ、じゃあ司令。相談があるんですけど、いいですか?」
「………相談しろと言ったのは私だが、いざ茜君から相談と言われると身構えてしまうな」
まるで授業で生徒が挙手するような自然さで、相談を行う茜。
その姿に、そこはかとなく面倒ごとの予感を感じながらも、
相談しろと言った矢先の一発目だ。身構えるなという方が無茶だろう。
「それで、どういった相談かな?」
「戦隊の人員を増やしましょう。そしたら、連絡係も作れますし」
「人員の増加か……」
鬼が出るか蛇が出るかと、緊張していた
彼女にしては言っていることが普通だし、彼女の言うとおりに人数が増えればそういう役回りも作れる。
「確かに、茜君の言うとおりだな。しかし、君達と同レベルの戦闘力がある人員を見繕うのは時間がかかるな。だが、必要なのには変わりない。時間はかかるが必ず用意しよう」
しかし、人員不足が叫ばれるこの時代。
即座に人が増やせるわけではない。何より、戦隊に弱い人間を入れれば死んでしまいかねない。
本人の希望も聞きながら、慎重に判断しなければならない。
そう考え、時間はかかると返答する。だが。
「あ、大丈夫です。オメ…候補はもう見繕っているので」
茜はあっさりとそう返して、綺麗な笑みを浮かべるのだった。
モノクロの夢を見ている。
俺じゃない誰かの夢。
きっと、この体の本来の持ち主の夢だ。
何でもない日常の夢。
そして、その日常にはいつも1人の少女が居た。
綺麗な黒い髪の女の子。
屈託なく笑い、月のような瞳を
夢に見る者が印象の深い者達だとすれば、きっとその誰かは少女に惚れているのだろう。
なぜ分かるのか?
簡単だ。他の全てが色あせて朧気になっているというのに、少女にだけは色がついている。
『あなた、話があるわ』
ハッキリと色鮮やかに、鮮明に。
世界には彼女だけ存在すれば良いとでも言うように、どこまでも
映し出される。
『子供が出来たの』
『本当か!? 桔梗』
少女と誰かは幸せの結晶を得て、手を取り合う。
どこまでも幸せな光景。
『名前はどうしようかしら?』
『そうだな……白蓮なんてどうだ?』
『良い名前ね』
永遠に続くかと思われた幸せの景色。
だが、その夢は突如として――
―――真っ赤に染まる。
「………あ、起きた」
「……白蓮、その手に持ったマジックペンは何に使うつもりだ?」
「え!? な、なんのことかなー」
夢から覚めた俺がまず初めに見たのは、月のような瞳。
ついで、ペンを片手に俺に迫る白蓮だった。
「そういう悪戯をするなら、せめてボディペイント用のにしておけ」
「え! 落書きしていいの!!」
「誰がしていいと言った! 俺は冗談ですむようにしろと言っただけだ!!」
意気揚々と俺の顔にペンを近づけて来る腕を掴んで阻止しつつ、記憶を整理する。
たしか、俺はあの後アジトを離れてどこかに移動を開始した。
そして、夜だったので移動に使った乗り物の中で寝たはず。
「あら、起きたかしら」
「母さん」
「ここからは少し歩くわよ」
ボスの声に従い、ゆっくりと起き上がる。
流石は怪人の身体。移動しながら寝ていたというのに、体が硬くなっていない。
今だけなら、地獄のドクター・ゲスに感謝してやってもいい。
「あ、オメガっち、朝ご飯にきのこの山食べる?」
「それが朝食なのか……たけのこの里はないのか?」
「え? きのこの方が可愛いよ」
「……まあ、いいか」
「はい、どうぞ」
流石の俺も精神幼女の相手と一戦を交える気はない。命拾いしたな
渋々と手を差し出し、白蓮からきのこを受け取る。
「あ、チョコの部分が取れちゃってた。ごめんね」
だから、きのこは嫌いなんだよ。
「あなた達、遠足じゃないんだから、程々にしなさい」
「これ食べたら終わりにするから」
「まったく……」
俺達の気の抜けた様子に注意してくるボスだったが、白蓮の無邪気な笑顔には逆らえずに苦笑するだけだ。なんというか……子育てに苦労している母親みたいだな。
「それで、俺達はどこに向かっているんだ? そろそろ話してくれてもいいんじゃないか」
「……そうね。行く前にも言ったけど、目的地はあの世とこの世の狭間、
戦隊物なのに急に日本神話要素出て来たな。
いや、神話要素なんてどの作品にもあるといえば、そうだが。
そう言えば、ビューティーレンジャーも
「私は世界征服を隠れ蓑にしながら、組織を…デビルズイースターを拡大させながら、色々と調べて来たの。死人を蘇らせる方法が無いかを」
ああ、やっぱりと思うが口には出さない。
こんな所で怪しまれても、良いことは1つもないからな。
「調べているうちに分かったのは、死体を生前と同じように動かしても、意識や記憶は生前のものにならないということ」
「……人体ベースの怪人か」
「そう、あなたや白蓮のような人体ベースの怪人は、死者が蘇ったように動くけどそれだけ。記憶や人格まで同じにはならない」
歩きながら淡々と話し続けるボス。
俺はそれに相槌を打ち続け、白蓮は良く分からないのか退屈そうに髪をクルクルと弄んでいる。
「その原因を調べて、私は魂というものの存在に辿り着いた」
「つまり……
「ええ、そして肉体に魂を戻せば、全てを思い出して死者は蘇るはず」
なんつー、ファンタジーな設定だ。
科学の粋を極めたオメガの肉体を持つ俺は思わず、内心で溜息を吐く。
これじゃあ、まるっきり変な宗教に騙された母親だ。
生々しすぎる。日曜朝には絶対に流せない。
「魂なんて本当にあると思うのか?」
「あるという証明は出来なかったわ。でも、あるという前提で理論を組まなければ説明が出来ない。まあ、ドクター・ゲスなどの科学者には非科学的と一笑されたけど」
(ドクター・ゲスの言うとおりに非科学的だな。魂なんてものがあるわけ……あれ? ちょっと、待て)
魂の証明。そんなものがあるわけないと思っていた俺だが、ある重要な事実を見逃していた。
当たり前すぎて気づいていなかったこと。
(お、俺は前世の記憶がある転生者だ……当然、記憶を保存するための脳みそを、前世から持ってきたわけじゃない。だというのに、俺は自分の過去を
そして何より、
ブワッと嫌な汗が噴き出て来る。
「後は
(そうだ、これは何もおかしな設定じゃない。魂という存在がない世界なら、そもそもこの世界に俺は存在できない! オメガという肉体を得て二度目の人生を送れるわけがない!)
魂が存在し、それを肉体に入れれば、死んだはずの人格と記憶が蘇る。
ボスの立てた仮説の正しさを表す存在、それが
そして、何よりも不味いことは――
「やっと…やっと……全てがあの日に戻る。だから、全部を思い出して―――
俺の身体に本来の持ち主の魂が入ったら―――俺が消滅しかねないことだ。
Q:唐突に神話とかのファンタジー設定を入れたのはなんで?
A:主人公が転生してる最初の時点でファンタジー。