悪の怪人に転生したので美少女戦隊に投降します 作:トマトルテ
軽度の地震描写あります。苦手な方は注意してください。
「全てを思い出す……か」
深呼吸をして心を落ち着かせる。
そして、努めて冷静に、どうすれば俺に魂を入れるのを止められるか。
① 素直に自分が前世持ちの魂だと告げる→ボスには俺とかどうでもいいので消される。
② 現在の意識が消えるかもしれないのが怖いという→やっぱり関係ないので消される。
③ 本当に可能なのか、計画に問題はないのか確認する→時間稼ぎぐらいは出来る。
よし! こうなったら、取りあえず③番の確認作業だ。
基本、この手の死者蘇生はデメリットがあるので、そこで何とか時間を稼ぐ。
そもそも、何のデメリットもない死者蘇生があるなら、正義の味方と争う意味がないからな。
「だが、どうやって
「ええ、その通りよ。イザナミから逃れるために、イザナギが
「そんな神話の産物をどうやって動かすんだ? まあ、大岩ぐらいなら動かせるとは思うが」
動かすのは、少し微妙かもしれないが、壊すのならオメガなら可能だろう。
まあ、全力で拒否するが。
「残念だけど、それは無理ね。あなたは岩をイメージしているのでしょうけど、実際はそんな生易しいものじゃないわ」
ボスが歩くのを止めたので、俺と白蓮も足を止める。
ここが目的ということなのだろうが、あるのは小さな鳥居だけ。
てっきり、神社とか祠とかがあるものだと思っていたんだが。
「どこに岩があるんだ?」
「あなたが今立っている場所よ」
言われて足元を見る。
普通の地面だ。岩ですらない。
「まさか、ここ一帯が岩山とかか?」
「いいえ、もっと大きいわ」
「えーと、もしかして地球?」
「白蓮、流石にそれは幾ら何でも」
「正解よ、白蓮」
白蓮のスケールのデカすぎる答えに笑おうとしたら、ボスが真顔で正解だと答える。
え、マジで?
「まあ、正確には岩盤というのが正解ね」
「地球…岩盤……まさか…
「ええ、その通りよ」
よく出来ましたと褒めて来るボスに、俺は頬を引きつらせる。
プレートを動かすだと? そんなこと出来るのはまさに神しかいない。
もしかして、千人って人間じゃなくて神様が千人居るってことか?
「無理だ。プレートを動かす力なんてあれば、それだけで世界を征服できる」
「そうね、でも動かす必要は無いわ。こじ開けて……いいえ、岩盤を砕いて隙間を作ればいい」
「岩盤を砕く? それだって、無理だ。10㎞から200kmもあるんだぞ。いくらこの身体でも限界がある」
「それは承知よ。でも、安心して方法はある……というより、そこはもうクリアされているわ」
ボスがゆっくりと地面に手を触れながら答える。
「ねえ、あなた。どうして、私が日本に組織の本拠地を置いてると思う? 冥界下りなんて、どこの国にもある話なのに」
言われて、俺は答えられなかった。
だって、この世界は日本のアニメの世界。だから、舞台は日本としか思っていなかった。
でも、言われてみれば法治国家である日本よりも、動きやすい国は幾らでもあるはずだ。
「それは日本が私の目的を達成するために、もっとも都合の良い条件が揃っていたからよ」
「条件?」
「この場所では、昔大きな
地震とは
そんな前世の学校で習った知識が思い出される。
「大地は人を飲み込み、住宅は火の海と化し、やがて最後は水が全てを押し流していった」
僅かな隙間かもしれない。
だが、開けてはならぬ扉が確かに開いてしまった。
「当然、多くの人が死んだわ。もしも、閻魔大魔王がいるのなら忙しさで目を回していたでしょうね。ただでさえ、少子高齢化の日本は生まれる人間より、死ぬ人間の方が多いのに」
「……話のつながりが分からないな」
地震で多くの人間が死ぬことぐらい、身をもって知っている。
俺は前世も今世も日本人なのだ。
だが、それがどうして、魂を取り戻すことに繋がるかが分からない。
「『愛しい夫よ。私はあなたの国の人を1日千人、殺しましょう。』『愛しい妻よ、あなたが千人殺すのなら1日に千五百の産屋を建てよう』……かつて、この地でイザナミとイザナギが交わした最後の言葉よ」
それは知っている。有名な話だ。
だが、それとさっきの話がどう繋がって――
「……今の日本は1日に千五百人が死んで、千人しか生まれていない」
そうだ。今の日本は
生まれる数よりも、死ぬ数の方が多い。
「ええ、その通りよ。生まれる数よりも死ぬ数の方が多いこの国は、他の国よりもあの世とこの世が近くなっている。簡単に言うと、地獄の釜の蓋が軽くなっているのよ」
それがイザナミが力を増しているということなのか、それとも単純に黄泉の門が開かれている時間が長いということなのかは分からない。ただ、1つ分かることはあまりいい状況ではないということだけだ。
「そうか、理屈は分かった。だが、結局の所どうやって魂を呼び戻すんだ? 岩盤の隙間を広げようにも人間にはどうしようもない」
しかし、疑問も残る。結局の所、魂を呼び戻す方法が無いということだ。
隙間が空きました。そこから全部漏れ出てきましたとかなるんなら、日本はとっくの昔に幽霊の国になっているだろう。
「そこであなたに与えた能力を使うのよ」
「俺の能力…?」
「
「引力?」
引力と重力の違いは、まあそこまで詳しくないが地球の重さで起こるものが重力。
引力は引き寄せる力そのものを表しているんだったか?
まあ、よくよく考えると重力を倍にするってそのままの意味だと地球の重量を倍にするってことだから、ある意味当然か。
「オメガの身体の本質は引き寄せることよ。全てはこのための能力。
「なるほど……こっちから、行けないならあっちに来てもらうということか」
結構現実的な案が出てきて、俺は冷や汗を流す。
計画に穴があったら、そこを指摘して改善する間にトンズラをしようと思っていたのに、これだけ用意周到だと指摘するところがない。
それと。
(なんで、俺が憑依したんだろうと思ってたけど、魂を引き寄せる能力だから多分それに引き寄せられたんだろうな。黄泉の門に隙間が空いてるなら、魂も少しは溢れ出ているだろうし)
思いがけず判明した憑依理由に、内心で頭を抱える。
完全に事故だ。俺にも相手も全く意識せずに起こった事故。
これやっぱり、元の魂が戻ったらはじき出されるな。
最悪、『もう1人の僕』として居候できないだろうか。
「しかし、魂を引き寄せると言っても、自分の魂だけ都合よく引き寄せられるのか? そんなに上手くコントロール出来ないぞ」
だが、『もう1人の僕』と『相棒』の関係になるのは、最終手段だ。
というか、出来る保証もないので保留にするしかない。
「大丈夫よ。黄泉の国の住人が居なくなるぐらい、片っ端から引き寄せてそのうち出て来ればいいわ。こっちに出れば体に魂が引き寄せられるでしょうし」
ここに来て急に脳筋戦法に変わったな。
いや、それしか方法がないのは分かるんだが。
「……大丈夫なのか? それ」
「今までの死んだ人間全ての魂が
揺れる。
その言葉が、比喩表現でないのはボスの表情を見れば明らかだ。
「……地震が起きるのか?」
「私の理論上ではね」
「揺れはどれくらい?」
「少なくとも、小さくはないことだけは確かよ」
明らかな計画の穴。
いや、倫理を無視すれば穴とは言えないかもしれないが、正義の味方ならば必ず止める内容だ。
これで説得内容が見つかったと、俺は内心で喜――
「―――ふざけるなッ!!」
―――べる訳がなかった。
話に飽きて、Swit〇hで遊んでいた白蓮が驚いているが、今の俺にそれを気にする余裕はない。
「
酷く個人的な理由で俺は地震が嫌いだ。大嫌いだ。
思わず、自分の身の安全も忘れてボスに怒鳴りかかる程度には嫌いだ。
「お前は俺がここで止める! あんなもの…! あんなものを…ッ!」
能力を全開にしてボスを押し潰す。
こいつは、ここで殺さなければならない悪党だ。
慈悲などない。
「………分かってるわ」
だが、攻撃することは出来なかった。
「なっ!? ―――俺の足が!?」
ボンと、どこか気の抜けた音が響き、突如として重力に逆らえなくなり崩れ落ちていく中、自分の片足が
「まさか……俺を自爆させたのか…!?」
「これであなたはここから逃げられない。抵抗を続けるなら、次はもう片方の足を爆発させるわ」
「ま、ママ! オメガっちが!?」
白蓮の悲鳴もボスには届かない。
正直あれだけ、執着していたこの体を爆発させるとは思っていなかった。
それともボスにとっては、自分のものだから自由にして良いという認識なのか?
もしくは、もう狂いきっているのか。
「優しいあなたがこの方法を否定することぐらい……分かってたもの」
手に持ったコントローラーのようなものを弄りながら、ボスが目を伏せる。
まるで、非難する俺の目から逃れるように。
「私が愛したあなたは、決して他人を傷つけることは望まなかった」
嚙みしめるように静かにボスが語っていく。
「だから、あなたを無理やりにでも従わせられるように、
「ふざけるな! 脅し程度で俺が屈すると思うな!!」
普段なら脅しで簡単に屈するが、地震だけは絶対に認められない。
あれだけは起きてはならないと俺の魂が拒絶するのだ。
「知っているわ。だから、あなたの意思関係なく能力を発動させる装置も付けた。もっとも……あなたにバレないように、一度だけの特別仕様だけど」
「なッ!?」
瞬間、俺の意思に反して能力が発動され、引力により
そして―――大地が少しずつ揺れ動いてくる。
「やめろ! やめてくれ!? 母さんッ!!」
「ごめんなさい……私も本当は
何とか止めさせようと、叫ぶがボスは動きを止めない。
ただ、うつむいたままの状態で。
「―――もう一度あなたに会いたい」
静かに涙を流すのだった。
ボスはなんだかんだ言って、悪の組織のボスなんですよね。
ボスと白蓮の過去は明日書きます。