悪の怪人に転生したので美少女戦隊に投降します   作:トマトルテ

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14話:憑依

 

 卵が先か鶏が先か。

 

 体が出来てから魂が宿るのか。魂があるからそこに肉体が出来るのか。

 先に居たのはどちらが先か。居場所を奪ったのか、奪い取られたのか。

 その答えを知っているのはきっと―――神様だけだろう。

 

 

『何かに引き寄せられたと思ったら……何でもう1人の俺と桔梗が居るんだ?』

「地震は止まった! そして、俺は依然、俺のままだ! 母さんの計画はここで破綻したんだ!」

 

 片足がないので、地面に転がったまま俺はボスに向かって吠える。

 オメガという肉体に()()()()俺の魂は簡単に入ったというのに、あれだけ魂を引き寄せても何も入って来ていないのだ。

 俺の身体にはボスの夫の魂は来ていない。それどころか、夫の魂すら出て来ていないのだろう。

 状況的にはそうであるはずだ。

 

 

「そうね、確かにあなたの魂はまだ来ていないのでしょうね」

『いや、君の隣に居るけど。体を奪いたくないから魂のままでいるだけで』

 

 ボスも状況からそう判断し、諦めるように静かに目を閉じる。

 そこにイエローが呼びかけていく。

 

「どういう状況かは分かりませんが、諦めて投降してください。こちらは4人で、そちらはデスウィンドを入れても2人。数の上ではこちらが有利です」

「ああ、そうだ。俺を操れない以上は、黄泉から魂を引き寄せる力が向かうベクトルは母さんだ。容赦はしない」

「確かにそうね……でも」

 

 だが、ボスが次に目を開いた時、その目には妄執の炎が宿っていた。

 

 

「それだけでしょう? あなたを操れないのなら、あなた自身にやってもらうだけよ。あなたの魂が戻ってくるまで何度でも、何日でも」

『桔梗……俺が死んだせいで君は』

 

 ボスが杖を取り出し、振り上げる。

 すると、黒いオーラが地面に降り注いでいく。

 

「それに数の不利なんて関係ないわ」

「何をする気だ?」

(たい)より(いず)る者よ、生を得ず土に埋もれる者よ、我が下で偽りの真理を示せ」

 

 ボスが何かの呪文を唱えると、ボコボコと大地のあらゆるところが隆起していく。

 そして、地面の中から―――腕が這い出てくる。

 

「ま、まさか、引き寄せた魂で死人を蘇らせているのか…?」

「そんなにも簡単に魂が()()()()()()()に入るわけないでしょう。これはゴーレムよ」

 

 大地からゴーレムがその姿を現す。

 背丈は3メートル程。だが、恐ろしいのはその体躯ではなく数だ。

 ボスと白蓮を囲うように、ありとあらゆるところからゴキブリのように這い出して来る。

 

 

「さて……卑怯と言ってくれて結構よ。だって、私は―――悪の組織のボスだから」

『やめてくれ、君にはそんなことは似合わない』

 

 ゴーレム達がその体躯に似合わぬ速さで、俺達の方に、否俺の方に駆けて来る。

 片足を失い立ち上がることのできない俺に向かって。

 

「みんな! 狙いは多分、オメガだよ!」

「防衛戦ということでござるな! 苦手でござる!」

「言っている場合ですか! とにかく、オメガさんを守りながら敵を壊していきますわよ」

 

 怪我をした味方を庇う敵を集団で叩く。

 近代戦争において、最も効率的な手段の1つだ。

 

「あ、見た目に反してそこまで硬くないござる」

「ホントだ。これなら…!」

「何とかなりそうですわね」

 

 だが、そんなゴーレムの集団も一騎当千の英雄の前では無意味。

 拳で砕かれ、刀で斬られ、槍で貫かれる。

 容赦なく砕かれてただの土塊と化す。

 

「無駄よ。私のゴーレムは不滅よ」

 

 しかしながら、土から生まれたゴーレムは何度砕かれようと、再生を繰り返す。

 クソ、こんなものがあるんなら怪人なんて要らないだろ!

 いや、ボスにとっては怪人は戦力ではなく、夫を蘇らせるための練習台でしかないのか?

 

「おい、ビューティーレンジャー」

「なに、オメガ?」

「埒が明かないから―――動けなくする」

 

超重力圧縮能力(オメガ・グラビティ)―――10倍」

 

 俺の周り一帯を10倍の重力でゴーレム共を押し潰す。

 当然、俺以外の存在、ボスや白蓮、ビューティーレンジャーは膝をつき動けなくなる。

 

「お、オメガ殿、それがし達だけでも動けるようにすることは」

「細かい操作は出来ん。しばらく耐えてくれ」

「ですが、あなたも片足では歩けないのでは…?」

「両方動けないなら、俺は時間がかかっても這っていけばいい」

 

 ビューティーレンジャーや白蓮には悪いが、しばらくは膝をついていてくれ。

 後は100倍の重力でも耐えられる体の俺が、這いつくばってでもボスの下に行けば――

 

「……馬鹿ね」

 

 瞬間、地面が隆起し―――ビューティーレンジャーを下から叩きつける。

 

「カハ…ッ」

「お腹が…!」

「下から……」

 

 俺の重力で縛られていた彼女達には当然避けるすべはない。

 大地からの力を()()()にもろに食らい、苦悶の表情を浮かべる。

 不味いと、すぐに判断して俺はすぐに能力を解除する。

 

「あなたは私が作ったんだから、こうしたことをしてくるぐらい分かるわよ」

「だとしても、あの重力の中をどうやって!?」

「ゴーレムを作るということは、土を操れるということ。10倍程度の重力なら一瞬だけでも攻撃することは出来る。それにあなただって、大地の力は身をもって知っているでしょう?」

 

 どこか自嘲するように告げるボスに俺は唇を噛む。

 やったことは簡単。俺達の足元に超高速でゴーレムを作る。

 もちろん、時間が経てば重力で潰れるだろうが、それまでの間に浮き上がった威力で動けない人間を狙えば、簡単にダメージを与えられる。

 

 それに何より。

 

「最初から俺達の足元に出せばいいものを……」

「それだと不意をつけないでしょう? まあ、あなたは昔から争いごとが苦手だものね」

『違う、彼は俺じゃないんだ。気づいてくれ桔梗』

 

 俺が能力を使うのを待っていた。

 俺以外が動けなくなる瞬間を待ち、そこでビューティーレンジャーに一撃を入れた。

 完全に俺のミスである。

 

「すまない……俺のせいで」

「謝るのは後。今はどうにかする方法を考えよ?」

 

 このままでは、3人からの好感度がガタ落ちすると思い、俺は3人に謝罪する。

 だが、レッドは全く気にしていないように、次の事だけを考えている。

 

「しかし、どうするのでござるか? 自由に動ければあの程度の奇襲は喰らいはせぬが……数が余りに多い」

 

 俺が重力を解除したために、再びわらわらと湧いてくるゴーレム。

 これで、全てが振出しに戻る。全てではない。いや、俺達の体力だけは減っている。

 

「相手が力尽きるまで持久戦をしますか? ゴーレムは不滅でも、相手の体力までは不滅ではないでしょうし」

「難しいな。今は白蓮が戸惑っているから戦闘に参加してこないが、参加してきたらこっちは無数のゴーレムを相手にしつつ、不可視の弾丸を回避する必要がある」

 

 白蓮は母親の方に付いたと言っても、弟分の俺を攻撃するまで覚悟を決めているわけではない。

 だが、ボスがピンチになればこちらに立ち向かってくるだろう。

 そうなれば、苦戦を強いられることに間違いはない。

 

 

「ここは、お前達に一旦引いてもらって、俺の全力の重力で一撃で潰すのが一番だ」

『……これは流石に止めないと桔梗が危ないか?』

 

 

 100倍の重力で潰せば、反撃のチャンスも与えずにボスをミンチに出来るだろう。

 

「ダメだよ!」

 

 しかし、それはレッドの強い口調に否定される。

 

「何故だ? これが一番確実で、お前達にも被害が及ばない」

「ダメに決まってるよ。だって、あの人は……君のお母さんなんでしょ?」

「それは……」

『ど、どういうことだ? なんで俺の身体が桔梗の子供に?』

 

 正直に言うと、母さんと呼んではいるがこちらには微塵もそんな気持ちはない。

 何ならレッドの方がよほど親しいぐらいだ。

 

 

「子どもが親を殺すなんて……辛いよ」

『と、とにかく、何とかして止めないと不味い。一時的な憑依なら何とかなるか?』

 

 いや、ぶっちゃけほとんど情がないので殺せるが?

 心の中でそう思うが、勿論口には出さない。

 だって。

 

「そうでござる! それがし達もそなたの母君を殺す気はない」

「ええ、罪は勿論裁きますが、私達は止めに来たのであって殺しに来たのではありません」

 

 善意100%のこの少女達の前で、そんなことを言ったら絶対好感度が下がる。

 さらに言えば、親殺しを真顔で出来る危険人物だという評価がつきかねない。

 そうなると、今後の俺の立場が悪くなる。

 

 せっかく、善人だと勘違いしてもらえているんだ。

 チャンスを逃したくはない。

 

 

「ええ、そうよね。優しいあなたは私を殺すことなんかできない。分かってるわ」

『その通りだけど、流石にお仕置きしないとダメだな、これ』

 

 そして、後方嫁面のボスが何故か満足そうに語りかけて来る。

 うるせえな、俺にはお前と過ごした記憶はないんだよ!

 

 大体、お前がオメガなんて作らなかったら俺は……どうなってたんだ?

 そのままこの世界を魂のまま彷徨っていたのか、それとも別の遺体にでも入っていたのか。

 

(あれ? でも、さっきボスは自分以外の遺体には簡単には入れないって言ってたな。オメガの身体が特別なせいか?)

 

 まあ、ともかく。

 そう考えると、いつまでも彷徨ってたかもしれないと思うと、少しだけ感謝の念が湧いてきた。

 遺体にしても日本は火葬がほとんどだから、見つけるのも苦労するだろうし。

 

「……なら、別の方法で行くだけだ。お前達は俺の後ろに居てくれ」

 

 仕方ない。この手は使いたくなかったが……一気に決めるしかない。

 

「母さん。母さんは、あの世に行けないならこっちに魂を引き寄せるって言ったよな」

「ええ、そうね」

「だから、俺もそれに倣って、俺がそっちに行くんじゃなくて―――こっちに来てもらうことにする」

 

 腕をボスに向ける。

 

 

「―――万有引力(オメガ・ホール)

『! そうか、俺はこれで引き寄せられて、現世に来たんだ。なら!』

 

 そして、この世の全てを引き寄せていく。

 ボスを、大地を―――あの世の魂を。

 

「また地震が!?」

「やっと、使ってくれたわね。これで、今度こそ昔のあなたに……」

 

 本当は魂は引き寄せたくないんだが、ボスがいる方向に放つと嫌でも引き寄せることになる。

 頼む! 前にこの体に居た魂! 来てくれるな!!

 

 

 

『すまない。さっきからそこに居たんだが、流石に不味そうだから少し体を借りるぞ』

 

 

 

 ………え?

 

『大丈夫だ。ちゃんと、返す。だから、少し俺と桔梗(ききょう)に話をさせてくれないか?』

 

 突如として、脳内に響く声に俺の思考は停止する。

 慌てて、ビューティーレンジャーの方を見るが口を開いている様子はない。

 というか、そもそも男の声だ。

 

『ああ、その前に自己紹介しないとだめか。俺は竜胆(りんどう)。君も、もう気づいているかもしれないが、桔梗の夫――』

「お、俺に近づくなぁああッ!?」

 

 俺は悲鳴を上げて能力の発動を停止する。

 

「オメガ!? 急にどうしたの!」

「近づくっなって、まだ誰も君の傍には来てないけど」

 

 ボスとレッドが心配そうな声をかけて来るが、そんなことを気にしてる暇はない。

 また、死んでしまう。乗っ取られてしまう。

 本来の身体の持ち主がこの体に入ったら、俺は弾き出される!

 

『……怖がるのも分かる。拒絶される理由も凄まじくある、だが、少し落ち着いて聞いてくれるか? 桔梗と白蓮に誓って、俺は君を傷つけることはしない』

(……本当だな?)

『うわ、急に落ち着くな。まあ、話が早くて助かるが』

 

 相手がかなり友好的な態度を見せて来たので、もう1人のボク的なポジションは取れそうだと判断し落ち着く。家も戸籍も仕事もないのに、肉体まで取られたら堪らないからな。

 

(俺はお前が入っても、弾き出されることはないんだな?)

『ああ、なるほど……』

 

 俺が脳内で問いかけると、竜胆(りんどう)はそういう事かとという声を出す。

 なんだ? その謎が解けたみたいな声は。

 

 

『まず君は―――勘違いをしている』

 

 

 勘違い?

 俺はこの体に憑依して乗っ取っている存在に過ぎないはず。

 いつ、この体を追い出されるか分かったものじゃない。

 

『魂が引き寄せられるのは、自分の身体だけだ。そうでなければ、この世はゾンビで溢れかえっている。だから、()()()()は正真正銘、君のものだ。むしろ――』

 

 どこか後ろめたそうな、竜胆の言葉が脳内に響き渡る。

 

 

 

『―――君の身体を乗っ取っていたというのなら、俺の方かもしれない』

 

 

 

『少し話そうか、君と俺のことを』

 

 




2話のタイトルは勘違い。

あ、それから全然関係ない話ですけど、夜間モードって面白いですね。
見え方が全然違って、新しいものが見えてくる気がします。
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