悪の怪人に転生したので美少女戦隊に投降します   作:トマトルテ

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15話:魂の行き先

 

 皆様は転生小説を読んだことがあるだろうか?

 

 主人公が赤ん坊に生まれ変わり、そこから新しい人生を始める。

 テンプレに沿ったものになると、基本的に『知らない天井だ』で始めるか、『おぎゃー(どうなってる!?)』といった言葉で始まる。

 

 そして、もう1つ。必ずと言っていい程の共通点がある。

 それは、出産された瞬間からが主人公の意識の始まりであるということである。

 

 何を当たり前な、生まれる前に意識などあるわけがないだろう。

 

 そう言われるかもしれない。

 だが、皆さまは1つ勘違いをなさっている。

 赤ん坊とは、胎児とは、母親のお腹にいる時点で()()()()()ものだ。

 

 だって、そうだろう。赤ん坊はお腹を蹴るのだ。

 自分に話しかける母親や父親の声を覚えるのだ。

 幼児期ならば、お腹の中のことを話してくれたりもする。

 意識がなければ、当然それらのことは出来ない。

 

 では、ここでもう一度おさらいをしよう。

 

 転生主人公の意識は、()()()()()()()()()()()()

 

 この世に生を受けてからが物語の始まりだ。

 では、そうなってくると――

 

 ―――お腹の中に居た時の意識は()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

『俺は転生者だ。そして、君が生まれる時に君の身体に憑依した』

(は? いや、俺も転生者だぞ? 前世の記憶もある)

『君の場合は、純粋な生まれ変わり、輪廻転生だ。本来なら、生まれると同時に記憶も消えていただろう。だが、俺が憑依したせいで君の魂を追い出してしまった。だから、君は前世を覚えているし、その身体は最初から君のものという訳だ』

 

 衝撃の事実に、俺は言葉を失う。

 どうやら、俺は憑依しているのではなく、憑依されていたらしい。

 そして、今の状態は体を取り戻した状態だ。

 

『生前は分からなかったが、死んでから気づいたんだ。俺が君の魂を追い出してしまっていたことに。謝ってすむことではないが、本当にすまなかった』

 

 どこまでも真摯な謝罪。

 本来なら、文句の1つでも言うべきかもしれないが、何も出てこない。

 それよりも、俺が気になったことは。

 

(なぁ、お前はこの世界のことを知ってるのか?)

 

 竜胆がこの世界、アニメ『ビューティーレンジャー』を知っているかどうかだ。

 

『知っていたら、妻と子を残して死んでいない』

(それもそうか)

 

 しかし、酷く納得のいく理由で否定される。

 ボスの過去なんて、重要なことを知っているなら地震が起こる所には住まない。

 

『君の知る知識は、本来は生まれ変わる際に消されるものだった。だが、俺という転生者が君の魂を弾き出したせいで、君は彷徨うことになった結果、前世の記憶が残ったんだろう』

 

 まさか、俺の身体が転生者(輪廻転生)In転生者(神様転生)だったとは。

 道理で、転生特典なるものが無いわけだ。

 

(なあ、この状況を打破する転生特典とかないのか?)

『転生特典は健康で頑丈な体だ。怪人の素材としては最高のものらしいが、現状ではあまり意味がないだろう』

(ああ、だからこの体は異常に強いのか)

 

 言われて納得する。

 主人公3人の攻撃を無傷で耐えられる怪人が作れるなら、その半分の出来の怪人を量産するだけで、圧勝できたはずだ。

 それだけ、この体は特別仕様の素材なんだろう。

 

(それで、どうするんだ? 説得するのは構わないが、あの様子だと絶対にお前を離さないぞ)

『……何とかするさ』

 

 まあ、今はボスを止めることが先決だ。

 竜胆に任せるとしよう。

 

『じゃあ、少しの間体を借りるよ。大丈夫、今の君と俺なら時間が経てば君の方に体が戻るはずだ』

 

 竜胆に体を譲ると、体のコントロールが利かなくなる。

 だが、意識自体はハッキリしているので、死ぬ心配はなさそうだ。

 そして、竜胆はいとも簡単に片足で立ち上がり、ボスに向き直る。

 

「桔梗!」

「え……思い出したの? あなた」

「何がどうなってるの…?」

 

 竜胆が声をかけると、ボスは声を震わせ、レッドは訳が分からず困惑の表所を見せる。

 まあ、ビューティーレンジャーはこっちの事情なんて知らないからな。

 

「ああ、会いたかったわ、あなた」

「桔梗……」

 

 涙を流しながら、こちらに向かってくるボス。

 それに対して、竜胆は――

 

 

「―――離婚しよう」

 

 

 三行半(みくだりはん)を突き付けた。

 

「………え?」

「君は自分が何をしているか分かっているのか? 多くの人に迷惑をかけて、地震まで起こして……もし、また俺達のような人が出てきたらどうするんだ?」

 

 自分の行動を批判されるとは思っていたボスだが、流石にいきなりの離婚は想定外だったらしい。

 まあ、俺やこの場に居る全員が予想していなかったのだが。

 

「で、でも……あなたに会いたかったから、私は……」

「そのために、他人を殺すような人とは一緒に居られないな。離婚だ」

 

 呆然と立ち尽くすボスに対して、竜胆は言いたいことは言ったとばかりに踵を返す。

 

(さ、流石に言い過ぎじゃないのか? ボスの愛情は本物だぞ?)

 

 それに対して、流石の俺もボスが哀れになりフォローに入る。

 死んだ旦那に会うために、何でもやってきた女だ。

 その愛情だけは嘘ではない。

 

『愛のためなら何でもしていいのか?』

(言い方ってものがあるだろう)

『優しく言ったり、言葉を濁せば、歪んだ彼女の心には届かない』

(だと言っても――)

『―――それに』

 

 俺の反論を断ち切り、竜胆は急に横っ飛びをする。

 次の瞬間、先程まで立っていた場所には無数のゴーレムの腕が生えていた。

 

「……構わないわ。受け入れられなくても、愛されなくても、私はあなたが傍に居ればそれでいい。手足をもいででも、連れて帰るわ」

 

 何かに吹っ切れたように、おどろおどろしい声を出すボス。

 そんな女に対して、竜胆は笑う。

 

『彼女の諦めの悪さは、俺が一番知っている』

 

 ボスには聞こえない声で、確かに愛を込めながら。

 

「状況が全く分からないんだけど、手伝った方が良い!?」

 

 片足で器用にゴーレムから逃げ回る、竜胆にレッドが声をかけて来る。

 だが、竜胆は手助けは不要とばかりに手を振る。

 

「夫婦の問題だ、手出しは無用だ」

「息子じゃなかったの!?」

「それに関しては、俺が聞きたい。後、君達がオメガと呼んでいる子と俺は違う存在だ」

 

 どういうことだと混乱するレッドと会話をしながら、竜胆は素手で容赦なくゴーレムを砕いていく。正直、俺よりもこの体を使いこなしている気がする。

 

(なんで、片足でそんなに動けるんだ……)

『まあ、君よりも長くこの体を使わせてもらっていたんだ。これくらいはな?』

 

 もしかして、転生特典とか言うやつだろうかと思うが、答えは分からない。

 ただ1つ分かることは、オメガは身体能力だけでボスとやり合っているということだ。

 

「……あなたは昔から体育の成績が良かったものね」

「毎回オール5だった君が言うか?」

 

 どこか楽しそうに会話を交わす2人。

 恋焦がれていたボスは勿論、先程までは突き放そうとしていた竜胆も笑顔を隠せない。

 

「私が勝ったら、一緒に生きて一緒に死んでもらうわ」

「俺が勝ったら、君には1人で生きて幸せになってもらうよ」

「私はあなたが居ればそれだけで幸せよ?」

 

 きっと、竜胆が望めばそれだけで戦いは終わるだろう。

 家族一緒に生きていけるのだろう。

 俺の人生を犠牲にさえすれば。

 

「……悪いけど、これ以上人に迷惑をかけるわけにはいかない」

 

 それが分かっているから、竜胆はそう言ってくれる。

 まあ、ボスの言葉に頷いていたら今度は俺が追い出していたが。

 

 

「さあ、桔梗。久しぶりに―――夫婦喧嘩といこうか」

 

 

 そうして、最後の戦いが始まる。

 




ちょっと、忙しくなるので少しの間投稿できないかもしれないです。
次回は気長におまちください。
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