後日、早速俺は地上に出た。
配属されたのは前回と同じ量産型ニケ3人。
同じ指揮官とニケが組むことは少ないというのが原作の話だが、
現状ではそんなことは無いようだ。
これからの100年で色々なトラブルが起きるのだろう。
1日目
エイブを発見することはできなかった。
成果もあまり上げられなかった。
2日目
エイブを発見することはできなかった。
缶詰を発見した。
3日目
エイブを発見することはできなかった。
量産型が1人負傷した。
急ぎ撤退。
一命はとりとめたが、治療には時間がかかるそうだ。
申し訳ない。
4日目
エイブを発見することはできなかった。
負傷したニケの代わりにスナイパーライフル持ちのネームドが配属された。
紫がかった長い髪に、全身タイツのような服装をしている。
狙撃ポイントを何か所かローテーションしながらラプチャーを撃破。
今までで一番コアダストを持ち帰れた。
5日目
エイブを発見することはできなかった。
前回の成果が認められたのか、スナイパーライフルのネームドが再び配属された。
昨日も思ったが、馬鹿みたいな恰好だ。
なんだその服。
ピッチピチすぎるだろ。
気が散るわ。
戦闘は順調だったが。
6日目
見つけた。
「指揮官」
「どうした?」
「人影が見えます」
「……外見の特徴を教えてくれ」
「プロダクト23のように見えますが、
白衣を着ているようです」
「そうかっ!」
「……指揮官?」
「中央政府から捜索依頼があった要人だ。
接触するぞ」
「なるほど。
かしこまりました」
俺はニケに担いでもらってエイブに接触した。
絶対に逃がすわけにはいかないからだ。
既にアークに捕えられていないか心配していたが、
杞憂だったようだ。
しかも頭を負傷している様子もない。
記憶領域に損傷を受ける前のようだ。
良かった。
本当に。
「初めましてエイブさん」
「ッッ!!
君は……」
エイブが俺とニケを交互に見る。
ラプチャー以外との遭遇に驚いているようだ、
「アークの指揮官です。
あなたを保護するために来ました」
「そうか!
そうだな、封鎖作戦からすでに10年は経過している。
地上に出てきてもおかしくはないか!」
「はい。
ガンマ、席を外してもらえるか?」
「指揮官?」
「これからの会話は機密事項なんだ。
すまない。
ラプチャーの危険もある。
周囲を警戒してくれ」
「……分かりました」
ネームドニケであるガンマが離れた。
量産型もそれに続く。
これからの話は外に漏れて欲しくないのだ。
「機密とはどういうことだ?
私をアークへつれていってくれれば良いだけだろう。
難しいなら部品の提供だけでも構わない」
「オスワルドさんのことは知ってますね」
「……ああ」
質問に答えろよ、って顔をしてる。
申し訳ない。
でも順を追って説明したいんだ。
「彼の手によってシンデレラ含めた第二世代フェアリーテイルモデルの情報は削除されています。
開発者である貴方も同様です」
「なんだって?」
「それによって、シンデレラがアナキオールであった過去は消し去られました。
しかし、だからこそ今の貴方がアークへ行くことは危険です。
後ろ盾が全くない状態なので」
「……それならどうして君はここにいる?」
「私は知人からの情報であなたとシンデレラのことを知る機会がありました。
彼女がすでに人類の味方に戻っていることも含めて」
「知人、か」
怪しんでいるようだが仕方ない。
無理やり話を進めるぞ。
「今のアークは何とか安定しています。
しかし、誰もがラプチャーを恐れている。
地上を、恐れている。
リリーバイスが戦死してしまった影響が大きすぎた」
「なんだって!?」
「知らなかったのですか?
ゴッデス部隊は全滅したと言われています。
……まあ私は信じていませんが。
とはいえリリーバイスが戦死したことは事実です」
「……そうか」
「だからこそ今の人類にはシンデレラが必要です。
彼女が勝利の女神となり、人類の希望になって欲しいのです」
「しかし、シンデレラは……」
「負傷しているのですよね?
彼女が貴方と共に居ない時点で予想はつきます。
修理に必要な部品も足りていない」
「ああ、その通りだ」
「すぐに用意、と言いたいところですが、
一介の指揮官である自分にそんな権限はありません」
「……」
「そこで相談なのですが、アークの技術者が食いつくような何かはありませんか?
シンデレラではなく、ニケが手に持って持ち帰れるサイズのもので」
「……どこに持ち込む気だ?」
「ミシリスです。
エリシオンは軍事。
テトラは市民のガス抜きで活躍してますが、
ミシリスの技術を必要とするまでアークは成熟してません。
軍事力で存在感を出そうとしてますが、エリシオンには及ばず焦っている」
ちょうどガンマもミシリスのニケだしな。
全くの偶然だが。
「そこでシンデレラをミシリス製のニケとして売り込むことを条件に治療させる、
という作戦か」
「貴方もですよ」
「なに?」
「貴方もミシリスの研究員として保護してもらいます。
そして、貴方がシンデレラを開発したと宣言してもらいます」
「……そうか。
ミシリスが作ったと言えば」
「必ず次のモデルが求められますね。
貴方が居ればそれも可能です」
「だが、設備の問題があるぞ?」
「貴方なら【何が足りないか】を明確にできます。
それができれば問題ありません。
課題が明確になれば進む方向が見える」
「……良いだろう。
君の案に乗ろう」
「ありがとうございます」
良かった。
なんとか交渉成立だ。
エイブは頭が良いから想定してないガバを指摘されないか不安だったんだ。
「ミシリスに持ち込む物だが、
アークにはラプチャーカウンターはあるか?」
……あれか。
あれは感動したなあ。
でも知らないふりしなきゃ。
「ラプチャーカウンター……ですか?
ラプチャーの動きを止める機械でしょうか?」
「違う。
ラプチャーの数を計測するメーターだ」
「無いですよそんなの。
どんな原理なんですかそれ?」
「説明すると長くなる。
また今度にしてくれ。
そのラプチャーカウンターがエリシオン第3ニケ研究所にあるはずだ。
ここからそう遠くはない。
ニケを率いていれば到達は苦労しないだろう。
端末を寄越せ。
座標を教える」
「ニワカには信じられませんが、分かりました」
打ち込まれた座標を確認する。
オスワルドさんの教えてくれた座標と同じだ。
そう遠くはない。
「ありがとうございます。
早速明日向かいます。
では一旦お別れとなりますが、武器は必要ですか?」
「ああ、余裕があるのなら」
「はい。
こちらをどうぞ」
俺はニケ用のハンドガンを渡した。
小型のラプチャーにしか通用しないだろうが、
無いよりはマシだろう。
「すまない。
助かる」
「貴方とシンデレラが人類に味方してくれることを考えれば、
安すぎる贈り物ですよ」
「ふっ、そうだな。
シンデレラは私の最高傑作だ。
業腹だが、一度ヘレティックになったことで更に強化された。
その性能はゴッデス部隊を一人で上回るだろう」
「それを聞いたらオスワルドはムスっとするでしょうね」
「ふん、シンデレラも同じだろう。
どうしようもないゴッデスオタクだからな」
互いに笑い合う。
「それではこの端末を渡します。
アークから離れすぎると使えないので気を付けてください」
俺は連絡用の端末をエイブに渡した。
先日購入した物だ。
高性能とは言えないが、今用意できるのはこれくらいしかない。
「ああ、分かった」
「それではご無事で」
「お互いな」
そうして俺たちは一旦分かれた。
明日ラプチャーカウンターを探しに行こう。
エイブと別れた俺にガンマが近づいてきた。
「指揮官?
なぜ彼女を連れていないのですか?
中央政府から捜索されていたのではないのですか?」
「ああ。
だが、彼女の要望でまずはとある機械を入手することになった。
それまではアークに帰れないようだ」
「……なんて我儘な。
私が拉致しましょうか?」
「おいおい、勘弁してくれ。
そんなことしたら俺が指揮官を首になってしまうよ」
「……分かりました」
「気遣ってくれてありがとうガンマ。
なに、その機械はそう遠くない場所にある。
明日取りに行こう」
「どこですか?」
俺は座標をガンマに共有した。
「……遠くはないですが、近くもないですね。
危険ではないですか?」
「君が居れば問題ないだろ」
「……はあ。
分かりました。
ですが大型の目撃情報を確認しておいてください。
遭遇したら終わりですから」
「……そうだな」
既に少なくない指揮官とニケが死亡している。
そのほとんどは大型ラプチャーに遭遇した者だ。
遭遇した場合の死亡率は100%である。
大型ラプチャーであるブラックスミスをラピとアニスで倒した主人公は検査を受けた。
それくらい異常事態だったということだ。
今の俺が遭遇したら死だ。
シンデレラが復活するまでは慎重に慎重を重ねるくらいでちょうどいい。
浮かれ気分を引き締める為に深呼吸をする。
「よし、では一旦帰ろう」
「ラジャー」
ガンマは陰の実力者になりたくて!から外見のみ借りました。
別にポンコツじゃないです。
エイブが見つかるというご都合主義。
しかもラプチャーとの戦闘で負傷してない。
これはチートですね。
間違いない。