シャイニートリガー -多重星界起動遍歴-   作:形のない者

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ボーダー入隊編


社野凛世① 運命の出会い / 幽谷霧子① 看護の少女

 

 第一次近界民(ネイバー)大規模侵攻。それは人類が初めてネイバーの脅威に晒された日。

 

 黒洞々(こくとうとう)のような塊が、稲妻のように降ってきた。

 現れるは異形の奴輩(やつばら)。魑魅魍魎の如し獣物(けだもの)

 薙ぎ倒される家屋。瓦礫は舞い、電柱は折れ、土瀝青(どれきせい)は裏返る。

 

 多くの人が死んだ。凛世の目の前で死んでいく。

 潰されて、殺されて、貫かれて、切り裂かれて。

 

 ────地獄。そう形容する以外なんら思いつかない光景。誰かに助けられる奇跡はなく、誰かを助ける余裕もないと悟った凛世は、悲鳴の濁流を掻き分けて、ただひたすら逃げることしかできない。そんな我が身を恥じるべきか。

 

 つと下駄の鼻緒がちぎれ、転倒。混迷を極める雑踏に踏み潰されぬよう身を屈めて、ただ祈り、祈り────

 

 ────。無音。面を上げる。屍山血河。直視できず振り返る。目を逸らした先には、脱がれた下駄に大きな影が掛かる(さま)。見上げれば、そこには化け物が。振り下ろされる鉤爪は、きっと我が身を貫いて呆気なく命を散らすのだろうと、怖く、恐くて、目を閉じた。

 

 死の闇。覚悟なぞできるわけがない。だが、どうにもならないことは世にあるのだと、現実を忘我して思い知る。

 

 刹那、(ザン)、という音が耳朶(じだ)に響き、巨体が倒れるような轟音が上がった。

 

「大丈夫か!? 助けに来たぞ!!」

 

 勇ましき人の声に驚き、ハッと目を開く。もう、ここに自分以外の命は無い筈。そして、自らの命も無い筈。しかし凛世は生きていた。ふと身が浮くような感覚。熱く迸るような体温。抱き上げられた凛世は羽ばたくように軽くなる。一転、ビルの屋上に着地。

 

「一名救助! はづきさん、あとは頼みます!!」

 

 人の声は、男性のもの。多くの人に声を掛けられて、ようやく自分は生きているのだと実感。虚空を見つめていた瞳が、白いコートの背中を捉える。

 

 地上で単身、修羅と化し、何百何千という化け物を屠る……ひとりの殿方。

 状況終了、という掛け声が届き、殿方はひとっ飛びで地上から屋上に舞い降りた。

 

「……あれ、下駄の鼻緒がちぎれてる」

 

 何かで読んだ、ハンカチを裂いて、5円玉に通して……と、殿方は下駄の鼻緒を結んでくれた。

 

「ちょっとプロデューサーさ~ん? 彼女は今すぐ病院に搬送しなければいけないんですけど~?」

「あ、ごめんなさい、はづきさん。でもすごく動揺しているみたいだったから……。はい、ちょっと不格好だけど、これで問題ないと思う。それじゃあ、お大事に」

 

 殿方は、相手を安堵させるような笑顔を見せると、再び翼を得たかのように空を駆けて、別の戦場に行ってしまった。

 

 それから凛世は応急処置を施されて、病院に運ばれるも、特にケガがないことから一時的な避難場所を勧められる。血まみれの重病者が次々と担ぎ込まれていく真横を通り過ぎ、その後は、あまり、覚えていない……。

 

          †

 

 後日。青天の中、凛世は以前から思っていたことを、ついに実行に移した。

 

(恩返しに……参らなければ……)

 

 ニュースで取り沙汰にされている『界境防衛機関(ボーダー)の創設』……さっそく本部に連絡を入れるが、なかなか電話が繋がらない。各業界からの連絡や、連日の記者会見で忙しい様子。直接本部に出向こうにも、指定された警戒区域は危険とのこと。せっかく救われた命を無駄に散らすのは失礼というもの。なんとか方法はないかと調べる。すると警戒区域外周の放棄区域近辺に、ボーダーの支部たる《天井支部》なるものがあると判明。

 

 すぐに伺った凛世は、そこで運命の再会を遂げる。白いコートを着た殿方は、凛世の顔を覚えていたようで、開口一番「無事で良かった」と添えると、自らを『プロ=デュ・サー』と名乗る。西洋人とも思えない顔立ちだが、どこかの国の騎士なのだろうか。凛世は「プロデュ卿様」と呼ぶが、彼は「全部つなげてプロデューサーでいい」と返す。

 

 そして凛世は、プロデューサーに命を救われた大恩があることについて、感謝に感謝を重ねる。だが口だけで終えるのも忍びない。故に失礼と迷惑を承知で問いかける。

 

「この救われた命、大恩ある身で……いったい、どうお返しすれば……」

 するとプロデューサーは、真剣な表情で告げた。

「だったら、ボーダー……ひいては人類のために戦う気はないかな?」

 凛世は目を丸くする。

「君が戦争被災者だということは承知している。戦争にトラウマがあってもおかしくない。もう誰かが死ぬ姿は二度と見たくないだろう。その上で、聞いてみたい。……どうかな? 自分がネイバーと戦う姿を想像して、もし無理そうでも、エンジニアやオペレーターという道がある。ボーダーは常に戦力を求めている。こういうスカウトの仕方は卑怯だと分かっているけど……うちとしても、隊員がゼロ人のままじゃ、外に示しがつかないんだ。そういう下心もあってのスカウトなんだけど……いちどじっくり、考えてみてほしい」

 

 凛世は考える。時間が欲しいと願う。もちろんだとプロデューサーは返してくれる。

 

 帰宅した凛世は熟考に熟考を重ねる。そのためにボーダーやネイバーについて調査を重ねた。そして決意し、覚悟する。

 

「この社野凛世、無くすはずだった命を救っていただいたプロデューサー様と、全ての人々のために……恩返しすべく、ネイバーの脅威から皆を守るべく……ネイバーに立ち向かうことを誓いましょう。……ふつつかものですが、どうぞ、よろしくお願いいたします……」

 

 かくして社野凛世は、天井支部において初のC級隊員(訓練生)となった。

 

          †

 

 約4年半前。第一次近民界(ネイバー)大規模侵攻により、人類は未知の脅威に晒された。少なくない犠牲者の数に胸を痛めた幽谷霧子は、病院で負傷者の介護に勤しみながら、ボーダーについての情報を調べる。結果『生身の人間やトリオン体を治療するトリガーが未だ開発されてない』という情報を掴むなり、その足で一般公募を受けた。

 

 本部面接で『治療系トリガーを作りたい』と打診するが、面接官から『予算や技術開発の難しさによって今すぐには難しい。だがもし興味があるなら、その高い志をエンジニアになって活かしてほしい。その代わり防衛隊員にはなれない』という返答を受けた。

 

 幽谷霧子は一応、本部面接には合格したが……防衛隊員・エンジニア・オペレーターの三職のうち、好きな職を一つしか選べないことに不満を持っていた。そこで本部の近くに天井支部があることを思い出した幽谷霧子は突撃訪問。偶然その場に居合わせたプロデューサーに打診する。

 

『エンジニアとして治療系トリガーの開発に着手したい。その上で防衛隊員にもなりたい。なぜなら将来的に看護兵(ヒーラー)というポジションを生み出したい』────と、熱心な自己PRを交えて懇願した。

 

 その相談を受けたプロデューサーは、『幽谷霧子という人間は、意識が高く、優秀で、トリオン量も充分、さらに革新的で具体的な将来設計がある』という理由から、彼女の転属願いを本部に打診。本部との会議の結果、天井支部への転属が決定し、幽谷霧子はC級隊員兼見習いエンジニアとなった。

 

 さっそく幽谷霧子は、トリガーの基礎知識を勉強し、本部開発室と協同して治療系トリガーの開発に取り組む。そうして天井支部のエンジニアとして働く傍ら、C級隊員としても個人(ソロ)ランク戦や各種訓練をこなして着々とポイントを稼いでいった。

 





【杜野凛世】〔四年前〕
 トリオン6 攻撃3 防御・援護3 機動5 技術4 射程2 現場指揮1 特殊戦術1 合計25
 機器操作‐ 情報分析‐ 並列処理‐ 戦術‐ 俯瞰指揮‐ 合計‐ / 経験1 伸びしろ10 人気6
《トリガーセット》
 主武装〔弧月:20〕
 副武装〔アステロイド:10〕
 総トリガー装備コスト30 トリオン残量570
《補足情報》
「この命、プロデューサー様のために……」
 所属:天井支部 地位:C級隊員
 ポジション:‐ 年齢:12歳 身長:151cm
 星座:みかづき座 誕生日:10月19日 血液型:B型 職業:中学生
 好きなもの:プロデューサー様、芸道全般
 家族構成:両親、姉、いとこ等
《備考》
 将来有望の優秀多芸型。

          †

【幽谷霧子】〔四年前〕
 トリオン7 攻撃1 防御・援護1 機動1 技術2 射程3 現場指揮1 特殊戦術1 合計17
 機器操作2 情報分析6 並列処理8 戦術1 俯瞰指揮1 合計20 / 経験1 伸びしろ9 人気7
《トリガーセット》
 主武装〔アステロイド:10〕
 副武装〔ハウンド:20〕
 総トリガー装備コスト30 トリオン残量670
《補足情報》
「みんなを治せたら、いいな……♪」
 所属:天井支部 地位:C級隊員&エンジニア見習い。
 ポジション:‐ 年齢:13歳 身長:156cm
 星座:みかづき座 誕生日:9月23日 血液型:AB型 職業:中学生
 好きなもの:かわいいもの全般の収集、手芸、献血、トリガー、トリオン兵
 家族構成:両親、兄など
《備考》
 将来有望の秀才勤勉型。
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