約4年半前。第一次
上空に黒い電撃を放つ球体が出現し、怪物がたくさん出てきて、建物やビルが壊されていく。その様子を教室の窓から呆然と眺めていた学生たちは、校庭に侵入してきた怪物──トリオン兵──を見て、パニックに襲われた。
悲鳴に次ぐ怒声。我先にと逃げ惑う生徒。落ち着かせて避難させようとする教師の掛け声も虚しく、屋上から爆撃音。火の手が上がり、廊下の窓ガラスが全て砕け散り、天井や壁に亀裂が迸り、落ちてきた瓦礫の下から少量の血が飛び散る。
集団の逃げ足に巻き込まれて人混みに揉まれていた芹沢あさひは、このままでは潰されてしまうと思ってチャンスを見て横っ飛び。なんとか脱出すると、今まで階段を降りようとしていた集団が、今度は来た道を戻ろうとして揉み合っていた。間に挟まれた生徒たちは潰されてしまう。蜘蛛の子を散らすように逃げる生徒たちだが、廊下の両側と階下から、三体の
地面に転がる生徒は血を流しており、胸や背中に大きな穴を開けていた。それを目にした芹沢あさひは漠然と思う。『まるで何かを抜き取られたみたい』と。
地べたに這いつくばる生徒はぴくりとも動かない。きっと死んでいるんだ。つまりこのままでは、みんな殺される。
(────)
芹沢あさひは、手元に転がっていた小石を持ち上げる。それは天井の瓦礫が崩れて落下し、激突と同時に割れたもの。
「こっちだ化け物!」
階下から降りてきた化け物に投石を当てた芹沢あさひは、年輪のような一つ目に睨まれたことで、自らが抹殺対象と認識されたことを悪寒とともに理解した。あさひは上階に走る。これで廊下の両側を挟まれて逃げ場がない人たちは、全員階下に逃げられるはずだ。そこに新しい怪物がいない場合、なんとか遠くまで逃げられるはずだと願う。
自動車ほどの大きさで俊敏に動く怪物は、四本足のうち前足の二本を素早く振るい、芹沢あさひの逃げ足を切断しようとする。
「よっ! ほっ!」
常人なら目で追うことも不可能な高速斬撃。それを勘だけで跳び躱すあさひは、上へ上へと、怪物を引きつけて逃走し、とうとう屋上に躍り出た。
もう逃げ場がない。フェンスをよじ登って屋上から飛び降りれば流石に無事では済まない。だが飛び降りなければ一瞬で足を切断されてその後は胴体に穴を開けられる。つまり殺される。選択の余地はない。跳躍。フェンスがガシャガシャと音を鳴らす。全速力で
「うわ────ッ!!」
咄嗟に両足を上げていた芹沢あさひは、靴底が擦り切れてペロンと革が剥がれ落ちる。一瞬でも遅れていれば膝から下が切断されていた。
そして、切り裂かれたフェンスとともに────地上へ真っ逆さまに落ちていく。フェンスが邪魔で受身が取れない。こんなはずじゃなかった。頭から落下している。もう助からない。校庭には、さっき助けた
「────旋空弧月」
ふと、空中で板を踏み、高速の斬撃で怪物の目玉を切り飛ばした男性が、芹沢あさひの体を片手で抱き上げて校庭に着地する。
「あぁ、あさひちゃん!」担任の声。
「この子をよろしくお願いします! ────みんな! 一箇所に集まるんだ! 怪物はぜんぶ俺が倒す!」
校舎からゾロゾロと出てくる二体の怪物。それを宣言通り、ほんの一瞬で切り伏せた男性は、すぐさま板を踏んでぴょーんと飛んでいった。大通りではたくさんの悲鳴が上がっている。きっとほかの怪物を倒しに向かったのだろう。
「…………すごい────」
芹沢あさひは感動していた。人間離れした動き。どうやったら、何をやったら、あんなことができるんだろう?
板で飛ぶのはどういう原理? 旋空弧月って飛ぶ高速の斬撃のこと? 一見普通の男性っぽいのに、人間じゃない動きができるのはなんで? スーパーマン? ヒーロー? 本当にそんな人がいるなら、なんでそんなことができるのか聞いてみたい! そして、できるものならやってみたい!
「まって! わたしも行く!」
「え!? ちょっと! あさひちゃん!! ダメよっ!!」
その時は担任の教師に抱き締められて、謎めいた男の人を追いかけることはできなかった。そこへボーダーと名乗る集団が現れて避難を促す。芹沢あさひは渋々従い、ひとまず難を逃れた。
†
後日。芹沢あさひと学校のみんなを助けた男の人が、テレビにちらっと出ていた。その人はプロデューサーと名乗っており、ボーダーという怪物退治の組織を立ち上げることを話している。
芹沢あさひに迷いはなかった。やりたいと思ったらすぐやりたい。そこに光り輝くものがあるなら、是非とも試して楽しんでみたい。マンネリ化して飽きるまで。新しいものが見つかるまで。面白いことが終わらない限り、それに手を伸ばし続ける。
†
後日。芹沢あさひは警戒区域を渡って本部に突撃訪問。プロデューサーという人に会いたいと懇願。すると色々な人から『ボーダーへの質問は電話の受付窓口へお願いします』『警戒区域に入ってくるとは何事だ!』『一般公募がしたいなら街中の公民館でやっているから、そちらへ行くように』などと言われて怒られた。話が通じない。芹沢あさひは一般公募を受けに来たわけではない。そう言うと、今度は自宅まで強制的に送り届けられた。
「むー!」
本部は門前払い。どうすればプロデューサーという人に会えるのか。仕方がないので芹沢あさひは探索を開始した。道行く人に聞いて回って、ようやく天井支部の所在地を聞き出す。そして天井支部に向かい、プロデューサーの顔を見つけた途端、芹沢あさひはずっと疑問だったことを口早に質問攻めした。
「ボーダーってなんすかトリオンってなんすかトリガーってなんすかわたしもできるっすかなれるっすか!?」
最初、プロデューサーは困惑した。しかし芹沢あさひのキラキラと輝く目は真剣そのもの。とりあえず天井支部の客室に通してトリオンを測ってみると、彼女には高いトリオン能力があることが判明。ボーダーやトリガーに興味を示していることから、プロデューサーはスカウトすることにした。
『トリガーに関しては企業秘密だから、今は詳しく説明することができない。でもボーダーに入隊すれば、トリガーの秘密を明かすことができる。なぜなら入隊すれば、君はボーダーの一員となって、トリガーの秘密を知ることができるからだ』
芹沢あさひは即答で入隊を希望した。ならばとプロデューサーは、芹沢あさひの両親から許可を取りに行こうと言うが……当の本人は『そういうのは面倒だから任せたっす! じゃあこれからよろしくっす!』と言ってはばからない。プロデューサーは「そういうわけにはいかない」と返すが、芹沢あさひは既に我が物顔で天井支部を探索。
そして地下への通路を見つけるなり、プロデューサーの静止も聞かず、そこへ駆け下りてしまった。地下室は仮想戦闘モードとして、杜野凛世と幽谷霧子が戦闘訓練をしている。そこで、霧子が撃ったアステロイドが芹沢あさひに命中。だがボーダー規格のトリガーは、生身の人間に当たっても激痛で済むため、芹沢あさひは気絶するだけで済んだ。
数分後。天井支部のリビングにあるソファで「はっ!」と目を覚ました芹沢あさひは、なぜこんなところで寝ているのかと疑問に思いながら、プロデューサーにこっぴどく叱られる。頭には濡れタオル。幽谷霧子が看病しており、杜野凛世がミカンをくれた。そして芹沢あさひは、突として地下室での一件を思い出す。
杜野凛世は刀を振るってキューブみたいな弾丸を弾き飛ばし、そのキューブを飛ばす幽谷霧子と戦っていた。
「かっこいい! わたしもあれやりたい!」
芹沢あさひは興奮して話を聞かない。頭を抱えるプロデューサーは、とりあえず芹沢あさひを説得し、両親の許可を取りに行く。
最初、彼女の両親は、娘が軍隊に入ることに重い難色を示したが、芹沢あさひの
かくして自由奔放なマイペース
†
やがて芹沢あさひの天才性は、ボーダーに幅広く知れ渡るようになる。ほかのC級は無論、B級やA級の隊員を軒並み倒してポイントを荒稼ぎした天才少女は、たった一日でB級に駆け上がった。あらゆるトリガーを平均以上に使いこなす芹沢あさひは、その快活な笑顔を見るに、おそらく誰よりもボーダーライフを楽しんでいるに違いない。
【芹沢あさひ】〔四年前〕
トリオン10 攻撃13 防御・援護5 機動14 技術9 射程2 現場指揮1 特殊戦術1 合計55
機器操作‐ 情報分析‐ 並列処理‐ 戦術‐ 俯瞰指揮‐ 合計‐ / 経験1 伸びしろ20 人気4
《トリガーセット》
主武装 ※その時による
副武装 ※その時による
総トリガー装備コスト‐ トリオン残量‐
《補足情報》
「トリガーも戦闘も面白いっすー!」
所属:天井支部 地位:
ポジション:
星座:かぎ座 誕生日:1月4日 血液型:AB型 職業:小学生
好きなもの:人間観察、人に話しかけること、トリガー戦闘
家族構成:両親
《備考》
将来有望の天才万能型。
†
※自由手・フリーダムとは。
実際にボーダーにある