一時間後。社野隊は内部通話による定時報告で情報を共有。
杜野凛世は、地形から有効な戦術を発案。セプテ軍迎撃のため小宮果穂を呼び出す。
小宮果穂は、バルゼ湖に向かい、運良くセラシアナと邂逅。バルゼ湖について聞き込みし、バルゼの湖底とピグロウ山の地下空洞が繋がっている可能性を知る。これは迅悠一が言っていた“天地東西南北”の“地と東”に該当すると発想。そして杜野凛世に呼ばれて急ぎ、ダノン王国の東端に向かう。
マメ丸は、野性の勘で嵐が来ると予感していた。小宮果穂の役に立つべく追随。
大崎甜花は、隊員から送られてきた情報を整理し、遠征艇含むキャラバンを安全圏まで避難。
アルファは、ダノン王国の北と東が中央にかけて戦場になる事を見越し、杜野凛世が発案した戦術に沿うよう、狙撃や防壁、転移や敵軍の進路変更に適した地形情報を送信。
マルティナは、ダノン外壁の出城たる“不眠の塔”に登り、北と東から来るはずの敵軍を警戒するよう見張り番に忠告。そしてさっそく、北にあるルデア山脈方向から高速で迫り来る少数の集団を発見。マルティナは急いで、アルファから持つように言われていたボーダー製のトリガーホルダーを使って換装。内部通話で社野隊に、接敵警戒の合図を送る。
《マルティナだよ! 北から全力疾走してくる人間の数は四人! つーか本当に敵なのかい? ただ蛮族から逃げてきた人族の冒険者って可能性もあるけど!》
《ダノン側はそのように判断しても構いません。社野隊は警戒体勢を取り続けます。敵味方の識別は────アルファさん》
《既に不眠の塔の真下にいる。もし攻撃してきたら、作戦通り交戦しつつ国の中心部まで後退。指定ポイントで東に曲がる。敵が釣れるかどうかは果穂に掛かってる。頼むぞ》
《はいっ! がんばりますっ!!》
《ワンッ!》
《果穂ちゃん。敵の攻撃が始まったら、スイッチボックスを使って、甜花がマーキングしたポイントに、一斉にトラップトリガーを仕掛けてね……! 果穂ちゃんのトリオン量なら、いちいち移動しなくても、かなり広範囲に、たくさんのトラップを設置できると思う……!》
その時、ダノン王国の上空に黒い稲光が発生。敵の襲撃だと国民はどよめく。しかし黒い孔から出てきたのは、ボーダー製の
「ちょっと! いきなり国の頭上に現れるとか、完全に敵ですって言ってるみたいじゃない! 攻撃されたらどうすんの!? 迅!」
「そうだけど、とりあえず幸先のいいスタートを切れた。これでダノン王も避難命令を出すはず。この国に軍隊はいないから、俺たちが攻撃されることはない。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。いつ降りて戦うかは隊長のレイジさんに任せるよ」
「……今は待機だ。社野隊が戦闘を始めたら様子を見て割って入る。全員の配置を見るに、何か作戦があるようだ。それの邪魔をするわけにはいけない。……ゆりさん。遠征艇を南側に移動させて着地してください」
「了解」
「えーっ! わたしは降りて、凛世ちゃんたちと合流したいっすー!」
芹沢あさひは小南桐絵の脇下から顔を出してダノン王国を見下ろす。そのまま跳ぶか、あるいは落ちてしまいそうと思った小南桐絵は「こら危ないでしょ!」叱り、慌てて彼女の首根っこを引っ掴んで遠征艇の中に引き戻した。
そこで迅悠一は、木崎レイジにお願いする。
「ところでレイジさん。衛宮隊は、主に国民の避難誘導に当たらせてほしい」
「……分かった。だが、この国の人々が俺たちを信用すると思うか?」
「そこはほら、襲い来る敵をセイバーちゃんがぶった斬ってくれれば、それだけでお釣りが来るでしょ?」
「……そう上手くいけばいいがな。聞いていたか、衛宮隊。主に人命保護を優先して行動しろ。そう緊張するな。防衛任務と同じ要領でいい」
「は、はいっ! レイジさん! ……よし、やるぞ! セイバー、イリヤ!」
「はいっ! お任せくださいっ!」
「オペレートはまっかせてー! 気をつけてね、お兄ちゃん!」
そして戦いの火蓋は、黒騎士ランスローの跳躍によって、切って落とされた。アルファは弧月を抜いて剣戟を交わし後退を始める。
《襲ってきた、やはり敵だ!》
《社野隊、戦闘開始です! ──果穂さん!》
《はいっ! スイッチボックス、一斉起動!》
《────トラップ設置確認! 果穂ちゃん、次のポイントに移動しながら、エスクードをお願い……!》
ダノン王国の北部から中部に掛けての中央通りに、大量の《
「■■■■■■────!!」
《狂戦士かよコイツ! 会話が通じねぇ! しかもプロデューサー並みの技量だ! 最初から逃げ前提じゃなかったら捌ききれなかった……! この敵はマズい……まともにやりあったらまず勝てない!!》
予定より数秒早い後退。急いで小宮果穂はエスクードを起動。北と東の中央通り沿いに敷き詰めた転移罠の上に、順次エスクードを生成して、万里の長城のような防壁の連なりを作成する。
《アルファさん!
《果穂! 黒騎士は無視してほかを撃て! 経験上わかる! たぶんコイツは狙撃なんか斬って捨てる! 砲撃すら斬撃で捌く剣豪だ!!》
小宮果穂は掘っ建て小屋の中でアイビスを起動生成。アルファと黒騎士に追随する三人の人間を目視。
《────東、軍靴の音……砂塵が立ち……目視! ダノン王国に行軍してくる未知の勢力です! 所属国は不明ですが、セプテ連合軍と推定! アルファさん、耐えられますか!》
《無理だ! ワンミスで殺され────》
アルファの頭上を覆う影。黒騎士の剣が一閃する。されどアルファの戦闘体は一刀両断されなかった。刃と刃が激突する轟音。アルファの傍らに、白い少女が降り立つ。翻るはスコーピオンが二本。
「危なかったっすね! アルファさん!」
「お前は────プロデューサーのところの……!」
芹沢あさひの乱入。迅悠一のお願いで木崎レイジからゴーサインが出た芹沢あさひは、南側に移動していた遠征艇2号機から途中下車。全速力で駆けつけて、アルファの窮地を救った。
《────白髪の女。よく聞け。この黒騎士には、最高の攻撃手が二人揃っても勝てない。だが社野隊の目的は、北勢力を東勢力にぶつけることだ。このまま果穂の作った防壁に沿って後退し、東に逃げるぞ。それに成功すれば俺たちの勝ちだ!》
《りょうかいっす! でも後ろの三人がきな臭いっす! なんで何もしてこないっすか!?》
《それは俺も思ってた。だがそんなことに意識を割けば────死ぬぞ!! 割り切れ!》
黒騎士の一刀は、芹沢あさひの頭蓋を割る一撃。防御すら間に合わない正確無比な斬撃を、まるで知っているかのようにアルファは弾き、死線を共にする仲間の死を防いだ。そしてアルファと芹沢あさひは、ダノン王国の東門を目にする。後退しているうちに国外へ出たのだ。周囲は草原。そして後方からは行軍の地響き。
小宮果穂は、東門の上部にも同様の掘っ建て小屋を作成。狙撃地点に着き、隊長を待つ。まだ小宮果穂は狙撃技術に関して素人。下手な鉄砲数打ちゃ当たるとは言うが、敵軍を最短最速で蹴散らすためには、狙撃手が必要不可欠だ。
杜野凛世は転移罠を使って、小宮果穂がいる掘っ建て小屋の中に転移。自らアイビスを起動生成し、小宮果穂が背中に触れることでトリガー臨時接続。小宮果穂から莫大なトリオンを供給してもらい────時を待つ。
東側から侵攻してくるトリオン兵の軍団。その中で射程持ちの弓兵がトリオン弾を放った。明らかなるダノン王国への攻撃。それを目にした途端、引き金を引く。それは大地を抉る爆破となって、セプテ連合国のトリオン兵軍団を逐次一掃。敵軍を壊滅状態に追い込んだ時点で────二つの本命が現れた。
「────我が名は戦勝女王ポアディシア! セプテ連合軍の将軍だ! いきなりのご挨拶ご苦労様! ここからは倍返しだ! 野郎ども、進撃開始ぃいいい!!」
『────GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』
『ギギッギガガガガガッ!!』
『ギギィイイイイイ!!』
東から迫るセプテ連合国の将軍による咆哮。さらに南のバルゼ湖から突として大量出現した、動物バルゼサペンの群れの絶叫と、蛮族の軍勢の雄叫び。
東からは、少女アクタ、戦勝女王ポアディシア、
南からは、幻獣ピグロウ山ドラゴネト型ウログ。動物兵器バルゼサペント型の群れ。自律型指揮用トリオン兵フォルミチフの少数集団。自律型戦闘用トリオン兵フォルミソルジの大集団。さらには彼らと示し合わせて行動するゼムルプス、アタローンツ、エリック。
ボーダー、セプテ、オルレア。戦局は三つ巴の様相を呈す。
バルゼサペントの口から発射される熱線は街を焼き、自律用トリオン兵フォルミ族の軍勢は、ダノンの国民と激突。逃げるのをやめて戦い始めたダノン国民は大量のトリオンで応戦しつつ、敵の攻撃を受けて血しぶきが舞う。その劣勢を、木崎隊と衛宮隊が覆した。
「
一番槍を飾るはセイバーリリィ。二本の弧月を
「────
袈裟斬りの振り抜き。射程長大の一撃が大地を割り、敵軍の一割を屠る。何人かのダノン国民も巻き込んだが、ボーダー製のトリガーは生身の人体に無害。また、穢れがなければ改造人間であっても効き目は薄い。激痛程度に留まる。
「今のうちに避難を! ……つっても、俺たちも別の惑星国家で、漁夫の利しに来たとしか思われねぇか……」
「だったら働きで分からせるまで! 行きますよ、士郎!」
衛宮隊の空を飛ぶ幻獣ドラゴネト型ウログ。巨大なトカゲの背中に二枚の大翼、それは見るからにドラゴンと言う他ない姿。バルゼサペンの群れを率いて火を吹き、ダノン国の南側の街を焼き尽くす邪竜の落し子。
それを撃ち落とすべく、衛宮士郎は《スコーピオン(改:スパイダー)》を起動。弓の形に変形し、スパイダーを弦とする。もう片側のトリガーで二本目のスコーピオンを起動、矢の形状に変化。弓を引く。衛宮士郎のサイドエフェクトは強化視覚。さらに射出物を目標に
「GGGAAAAAA!!?」
「衛宮隊! あとは
「はい! 街中に入っていった奴らを倒しに行きます!」
衛宮隊は国民護衛に当たり、木崎隊はドラゴンやフォルミ族を相手取る。そこで小南桐絵が、
「ところで迅はどこいったの!?」
「迅は自分の仕事をやりに行った。ここは俺たちに任せたってわけだ。気合入れていくぞ、小南!」
「あーもう! まぁ私一人でも十分なんだけどねっ!!」