福丸小糸は、ボーダー本部の一般公募に落ちた。しかし樋口円香と市川雛菜の合格を思えば、不幸中の幸いと言うべきか。幼馴染四人が本部と支部に引き裂かれる憂いには陥ったものの、樋口円香と市川雛菜は転属願いを届けたので、いつかは四人で集まれる日が来るはず。そのためにも福丸小糸は、天井支部の面接に落ちるわけにはいかなかった。
天井支部のリビングにて、机を挟み、ソファに座って、福丸小糸はプロデューサーと対面する。
「……結論から言おう。君には防衛隊員になる才能がない」
「ぴ、ぴぇ……」
「本部でも全く同じことを言われただろうけど、エンジニアやオペレーターになった方がいい」
「……そ、それは……そ、そうかもしれないんですけど……」
天井支部での面接。それは学力テストも体力テストもなかった。いきなりの面接で、いきなりの不合格を宣告される。そんなことがあるのかと思うが、たしか本部が催す試験会場で面接を受けた時もそうだった。面接室の中には『才能を測る機械』のようなものがあって、それでハッキリと向き不向きが分かるのだと。その向き不向きが、きっと浅倉透が言っていた『トリオンの多寡』なのだろうと、福丸小糸は推理していた。
「……でも、それでも君は、こうして再チャレンジしてきた。その熱意は買いたい。だけど具体策がないことには、なんとも……」
「────じ、じゃあ、お、教えてください……っ! わ、わたしが、面接だけで不合格をもらう理由を……!」
本部試験では体力テストの成績が悪かったから落とされたと思っていた。軍人に体力が必要なのは当たり前だ。そして学力が低くても浅倉透は受かった。問題行動を起こさなければ、体力がある方が受かる確率が高いということだろうか。
しかしそれならおかしい。今この瞬間では、面接だけで落とされた。やはりトリオン。それが合格不合格の最大要因。ならば、そのトリオンについて詳しくなる必要がある。そうすれば『付け入る隙』があるはずだ。
「と、透ちゃんから、聞きました……と、トリオンというのは、ブレードを出したり、弾丸を打つために必要な、エネルギーのようなものだって……」
「……! 一応、トリオンについては機密扱いなんだけどな……」
「あ、ぴぇ!? ご、ごめんなさい! 透ちゃん、怒られちゃいますか……? で、でも、わ、わたしが、わたしが無理やり聞いたんです! 眠そうな時に、根掘り葉掘り、口を滑らせるように……! え、映画を見ているとき、横から話しかけると、適当に返事するの、知ってるから……その時に────だから、あの……!」
「お、落ち着いて! 大丈夫。このくらいで罰したりはしないよ。注意はするけど、君が考えるほど、おおごとにはならない」
「……!!」
福丸小糸はホッとする。
「……そ、それで……その……わたしは、そのエネルギー……トリオンが、少ないんですよね……」
「……そうだね」
「それでも……戦い、たいんです……オペレーターも、最初は、それでもみんなと居られるなら、それでもいいかな? って思ったけど……よく考えたら、ボーダーは軍事施設なわけで……あの怖い怪物たちと、命をかけて戦うってことで……それで私だけ、安全圏にいるのは、いやだなって、思って……」
「……」
「わたしも、みんなと一緒に、横に並び立ちたい……
「……!」
それは、先日の嵐山隊の記者会見の台詞とそっくりだった。嵐山は山のように堂々としていたが、小糸はリスのようにガクブルと震えていた。それでも、彼女の中にある芯は、嵐山と同じものがあると、プロデューサーは見て取った。
「……厳しく険しい道だぞ。誰よりも工夫を凝らし、誰よりも先んじて、誰よりも学び、誰よりも努力しないと……確実に死ぬ世界に、君は飛び込もうとしている」
「ぴぇ……」
「おどかすわけじゃない……と言いたいが、おどかさなければいけない。君の言う通り、防衛隊員は命懸けだ。ベイルアウトという緊急脱出装置というものがあるんだけど、それでも百パーセントの安全は保証できない。君は、それでも、戦うと言ってくれるのか?」
福丸小糸は、青ざめて震えながらも、逃げたくない一心でうなずく。
「……わかった。天井支部にようこそ」
「────え……」
「君がこれからどうなるのかは、俺にもわからない。だけど、本気で頑張ろうとする子を、才能面だけで一蹴することはない。少なくともうちは、そういうところだからね」
「……っ! あ……ありがとうございますっ!! わ、わたし、一生懸命、がんばりますからっ……!!」
かくして天井支部に、小さな仲間が加わった。
【福丸小糸】〔四年前〕
トリオン3 攻撃1 防御・援護1 機動1 技術1 射程1 現場指揮1 特殊戦術1 合計10
機器操作3 情報分析3 並列処理3 戦術1 俯瞰指揮1 合計11 / 経験2 伸びしろ5 人気‐
《トリガーセット》
主武装〔アステロイド:10〕
副武装〔ハウンド:20〕
総トリガー装備コスト30 トリオン残量270
《補足情報》
「わ、わたしだって……やれば、できるんだから……!」
所属:天井支部 地位:C級隊員&オペレーター見習い&エンジニア見習い&雑用係
ポジション:‐ 年齢:12歳 身長:137cm
星座:とけい座 誕生日:11月11日 血液型:O型 職業:小学生
好きなもの:読書、装備コストやトリオン消費の少ないトリガー
家族構成:両親、妹など
《備考》
凡才勤勉型。