青春のディストーション   作:常谷 優大

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音楽は人によって捉え方は違う。

十人十色の感想を持っていたとしても、それは制作者の意図とは違うかもしれない。

あなたがどう思うかはわからないし、知らないけど、

もし同じように伝わったら、それはとても素敵だよねって話。


もし同じように伝わったら、それはとても素敵なことでしょう。

 

偶然だった。

 

いつものように世界を笑顔にするために街を散歩してた時にふと見かけた人だかり。

なにか運命のようなものを感じてその人混みに足を向けて歩くと、泣き声が聞こえてくる。周りの大人たちも笑顔が無くなって辛そうな表情をしていた。あたしはそんな世界にしたくてバンドを組んだわけじゃないから、少しでも笑顔にするために飛び込もうと考えた。

 

 

でも次の瞬間、綺麗な音色が聴こえてきた。

 

「……ピアノ?」

 

都会の駅や街で見かけるようなストリートピアノ。

いつもの商店街は、そのピアノが置かれたことによって物珍しさを感じた人々で賑やかになっていた。

どうやら誰かが演奏しているらしい。先程まで声やら雑音やらで騒がしかったが、ピアノの音が聴こえた途端に音が消えた。

この場合、黙らされた(・・・・・)と言った方が正しいのかもしれない。

 

「……………」

 

楽器店の前にあるそのピアノを弾いていたのは一人の青年であった。あたしと同い年か、近い年齢の様に思える。特に目立つような容姿ではなく、ぼさっとした黒髪にぴょんと立ったアホ毛。ピアノを弾く姿勢は猫背でとてもではないが上手に弾くとは思えないような男の子が今プロの演奏家顔負けの音色を大衆に向けて響かせている。

彼から紡がれる旋律はまるで魔法のように人々を笑顔にしていった。音色が聴こえたときはゆっくりとした曲調であったが、今では飛び跳ねるような軽快な曲調で老若男女問わず笑顔で彼の演奏を聴いていた。小さな子供に至ってはダンスまで踊っている。

 

 

「ねえあなた!あのピアノを聞いている人は誰かしら!」

 

彼のことが気になって居ても立っても居られなくなったあたしは、近くの男の人に彼のことを聞いてみた。

 

「いや、俺にもわからねえんだがよ、小さい女の子が楽器屋の近くで泣いててな。

あまりにも大きな声だったから人だかりができてよ。そしたらあの坊主が急に出てきてピアノを弾き始めたらあの女の子が泣くのをピタッとやめてな。んで、あの笑顔よ。」

 

男の人はピアノを弾いている彼の近くを指さす。

そこには、にこにこで手をたたきながら彼の演奏を楽しむ女の子の姿があった。

 

 

「…決めたわっ!!」

 

 

あたしはすぐに家へと帰り、美咲に連絡して新しい曲を作りたい旨を伝えた。何か言っていたようだけれど、今のあたしには何も聞こえなかった。

 

ふふっ。楽しみだわ!!

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

「買っちゃたぜ。」

 

今日は日曜日。学校もバイトもない日ってので近所の楽器店にギターやらベースやらの新入荷商品を見てたら思わぬ出会いがあった。俺が買ったのはFenderのSwingerだ。日本製Swingerをベースに大幅なカスタマイズを施した限定モデルである。俺の持論だが、エレキギターってのは粗くて汚いヤツの方イケてる。綺麗で丁寧なんてものはクソだ。(独断と偏見)

いろいろ話しているが、早く弾きたいってのが本音。

 

「ん~~~。Circle行こ。」

 

 

ってことでやってきましたバイト先。フロントでオーナーから部屋の鍵を受け取って部屋に入り、ギターをアンプにつないで軽ーく音を出してみる。

 

「うわっ、なんだこれ」

 

鳴らすために出した音に驚愕する。何重もの音が重なっているような重厚感に、エジェクターのおかげかもしれないが、音の伝わり方が異様に良い。フレーズの切れ味とサステインのバランスが絶妙すぎるから多分アンサンブルの中でも主役級の存在感出せるぞ。

 

「うっし。一曲弾いてみるか。初曲はどーすっかなぁ。」

 

正直気分ぶち上げの曲弾きたい気分だが、最近はゆったり目な曲調の譜面が多かったから速いテンポの曲だと指追いつかなそうなんだよな。まぁなんとかなるか。

 

 

 

「ぁぁぁぁ………これはやばいかも。」

何とか指は追いついたけど、このギターが弾いてて楽しすぎる。さっき言った音の重厚感はもちろんのこと、ピックアップが音のニュアンスをしっかり拾ってくれるからピッキングの強弱がそのまま音色に反映される。わかりやすく伝えると、ギュイーンって感じで音を歪ませた時の存在感が異次元だ。ギタリストにとっては脳汁ドバドバ案件って感じ。

おそらくこのギターを弾いていたら日が暮れるので、小一時間練習した後部屋を出る。オーナーに鍵を返して感謝を伝える。アルバイトの身だが、俺がオーナーに無理を言って空いている部屋を練習用で使わしてもらっているため感謝は忘れずにしている。

この後は普通に家に帰って寝ました。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

「比企谷さん!!ネクタイはしっかり締めてください!ネクタイの緩みは気の緩みですよ!」

 

翌日、学校に登校して早々風紀委員の氷川から小言が飛んでくる。

 

 

「いや、俺の気の緩みからネクタイが緩んでいるのであってな…」

 

「何を訳の分からないことを言っているんですか…。」

 

 

呆れたようにため息を吐きながら氷川はそう言う。氷川とは一年生の頃から同じクラスで、その頃から何かと俺に目を付けている。氷川が風紀委員になってからというもの、遅刻や寝坊が多い俺は氷川にとって格好の的だったようで毎回捕まってしまう。

 

 

「そろそろ朝のHRの時間ですよ。比企谷さんは次遅れたら放課後に掃除でしたよね?」

 

「あ~、そんなのもあったな。危なかった。」

 

「まったく…。しっかりしてくださいね。」

 

 

そんな会話をしながら一緒に昇降口まで向かう。氷川とはあまり互いについて話すことはないが、この前世間話をしたときに羽丘学園に双子の妹がいることが判明した。なぜ一緒の学校ではないのかが疑問だが、これは氷川自身の問題であるため部外者の俺が口を出せるはずもなく、頭の片隅に置きながら接している。

 

 

「てか、氷川って毎日俺のこと待ってるよな。何?俺のこと好きなの?」

 

「…なっ!?ち、違いますっ!!ただ遅刻しないか見張ってるだけです!ほら、行きますよっ!」

 

 

一瞬で顔を赤くした氷川はそそくさと教室へ向かう。俺はそのあとを追って同じく教室へ向かった。

 

 

 

 

「ねぇねぇ比企谷君っ!!聞いて聞いて!!」

 

「あぁ、昨日会った時の丸山のトチリな。めっちゃ笑ったわ。」

 

「私昨日比企谷君と会ってないよっ!?」

 

 

朝のHMにギリ間に合い、一限の準備をしていたところで丸山に話しかけられた。丸山彩。最近Pastel*Palettesっていうアイドルバンドでデビューを果たした駆け出しアイドル。ちなみにあの「まんまるお山に~~」のくだりを初めて聞いたときに「あざといからやりなおし。」といったところ、数時間自主練に付き合わされた記憶がある。んでなんなんだ。

 

 

「それがね!今度お仕事で憧れの人と会えるんだぁ~!」

 

「へえ、そりゃすごいな。」

 

 

普通にすごかった。デビューライブこそ失敗してしまったが、どうやら今はだいぶ好調のようだ。よかったよかった。にしても憧れの人かぁ…プロのアーティストは全員リスペクトしてるから一概に言えないな。

 

 

「そんで、丸山の憧れの人って誰なんだ?」

 

「ふっふっふ。よく聞いてくれたね比企谷君…。」

 

「氷川~~、次教室遠いから早めに行こうぜ~」

 

「うぅ~…!謝るから置いていかないで~~!!」

 

 

そういいながら俺にしがみついてくる丸山。ちょ、近い近い。めっちゃいい匂いするし。てかこいつ、やっぱかわいいよな…。至近距離で丸山の顔を見つめて改めて思う。とか考えてたら氷川にめっちゃ睨まれていたため、急いで丸山を引きはがして質問の続きを答えさせる。

 

 

「えっとね!最近トレンドにも入った人なんだけど……」

あ、これ長くなるやつだ。

 

 

丸山の憧れの人トークは授業開始のチャイムが鳴るまで続いた。移動するタイプの授業でしかも一番遠いと噂の教室だったため、ガンダッシュで向かった。もちろん先生にめっちゃ怒られた。氷川は先に向かっていたようで、授業が終わった後に丸山と一緒に正座で説教された。許さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

普通に学校が終わって今は絶賛バイト中。…なんだが……

 

 

「この前の私たちのライブはどうだったかしら?」

 

「俺今普通に勤務中なんですけど。」

 

「?それがどうかしたの?」

 

「意見できる状況じゃないって言ってんだ気づけや。」

 

 

受付にはもう人がいるので掃き掃除でもしていたところで、さも当然かのように話しかけてきたこの銀髪の少女は湊友希那。Roseliaのボーカルでその歌声はプロとも渡り合えるほどの実力である。ここで働いているとよく顔を合わせるため、成り行きで話すようになった。その話はいずれするとして、なんでこの前のライブに居たのがバレてるんですかねぇ…。

 

 

「たまたま目を向けたところにいたのが印象的だったからよ。」

 

「ナチュラルに心を読むな。」

 

「顔に書いてあるもの。」

 

「八幡、すぐ顔に出るもんねー」

 

 

いつの間にか俺の隣にいて自然と会話に混ざったのはふんわりとしたブラウンのロングヘアが特徴的で、いかにもJKといった少女の名は今井リサ。Roseliaのベーシストで、湊の幼馴染。家も隣らしい。たまに買い物という名の荷物持ちとして付き合わされるので、わりと気軽に話せる仲だ。

 

 

「今井、お宅のボーカル早く連れ出してくれ。俺が怒られる。」

 

「もうっ、名前で呼んでっていつも言ってるじゃん!アタシと八幡の仲でしょ~?」

 

「女子を名前呼びはハードルが高いんだよぼっちにとっては」

 

「とか言いながらこの前紗夜と一緒に出掛けてたの見たよ?」

 

「あれはあれだ。たまたま目的が一緒だっただけだ。」

 

「……女たらしね。」

 

「おいこら湊。人聞きの悪いこと言うな」

 

「今度アタシとも出掛けてくれるよねっ!」

 

「…空いてる日だったらな。」

 

「やったねっ!」

 

小さくガッツポーズをする今井。うん可愛い。湊もそうだが、顔が整ってるやつが周りに多すぎて困る。眼福以外の何物でもないが、どいつもこいつも距離感が近いからドギマギする。

 

 

「八幡、あなたピアノをやっていたのね。」

 

「何で知って……あぁ、白金か。」

 

「えぇ。燐子があなたのことを熱弁してたのよ。」

 

「普段は静かなのに八幡のことになると一気に饒舌になったからびっくりしたよ!」

 

白金とは小さい頃にピアノのコンクールで金賞を競った思い出があるからな。まさか高校でまた会うとは思ってなかったから同じクラスになったときは驚いた。覚えていてくれてありがたいが、そんな熱弁するほどあの頃は上手くなかった気がする。なんなら数回やった中のコンクールで一回しか白金に勝ててないし。あとは全部ボコボコにされた。

 

 

「今はわからないが、白金の実力は小さい頃から異彩を放ってたからな。最高のキーボードを捕まえられてよかったな。」

 

「もちろん。Roseliaのキーボードならそのくらいの実力があって当然だもの。」

 

鼻を鳴らしながら自慢げに答える湊。多分これずっと話すパターンだな…。

俺は後で怒られる覚悟をして湊と今井をテラス席に連れていきそこで話すことにした。

 

「んで、ライブの感想だったか?」

 

「うん。よければ聞かせてほしいな。」

 

今井はいつの間にか頼んでいたカフェラテを机に置いて俺に聞いてきた。湊は……コーヒー頼んでるけど砂糖めっちゃ入れてた。入れすぎてコーヒーの色変わってんだけど。もはやそれコーヒーじゃねえよ。

 

「じゃあ正直に言わせてもらうが…そこら辺にいるバンドより圧倒的に上手かった。終始圧巻されてたよ。」

 

「当然ね。」

 

「あはは…ちょっと照れる…。」

 

さっきから当然が口癖になってるぞ湊。いや、でも贔屓目抜きで見てもRoseliaの演奏はすごかった。今まで数々のアーティストや演奏家たちを見てきたが、それでも上位に食い込んでくるほどの実力。ライブ中めっちゃ飛び跳ねてました。もうヘッドバンキングする勢いで音にノッてたから次の日首めっちゃ痛かった。

その後も引き続いてライブの感想を話した。感想っつってもほとんど誉め言葉ばっかりだったから湊が途中で「…も、…もういいわ……」と照れながら止めてきた。湊の照れ顔なんて見ることなかったから新鮮で可愛かったです。

あ、オーナーには軽い注意で済まされました。危ない危ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

「ひ、比企谷君、えっと、こころちゃんが一緒にバンド組みたいって言ってて…ど、どうかな…?」

 

急すぎない??

 

まずこころちゃんって誰だ。自宅でゴロゴロしながら携帯をいじってたら松原から電話がかかってきた。

松原花音。よく迷子になるクラゲ好きの同級生。クラスは違うが迷子のところを助けたら一緒に水族館とかカフェ巡りとかするようになった。

 

「前に比企谷君がストリートピアノを弾いてたとこ見てたらしくて…それで『私たちのバンドにもキーボードが欲しいわね!』って。」

 

どうやらあの時の演奏を見ていたらしい。いきなり女の子が泣き始めて周りのみんなも気分が落ち込んでいたためその女の子を中心として周りも笑顔にしてやろうと思ってピアノを弾いたのが大成功してほっとした。まぁ学校の近くの商店街だったし誰かに見られてもおかしくなかったが、まさか松原の知り合いが見てたとは…世の中案外狭いな。ん?どうして俺のことが分かったんだ?

 

「…えっと…こころちゃんの家の力…っていえば分かりやすいかな…?」

 

……なんか怖くなってきた。

 

 

「えっと、まずこころちゃんは察するに松原のバンドのリーダーか?」

 

「あ、うん!そうだよ。ごめんね、何も話してなかったね…」

 

電話越しでも分かるくらいに落ち込んだ声が聴こえる。ざ、罪悪感がすごいな…。

 

「い、いや、別に気にするな!んんっ!それで、バンドだったか?」

 

「うん…。やっぱり厳しいかな…?」

 

 

少しの間考える。松原がバンドをやっていたのは知っていたため、知り合いがいるのはありがたい。ただ一つ問題があるとすれば…俺にバンドをする資格があるのかどうか…だな。

 

 

「とりあえずそのこころちゃんと会ってみることにする。」

 

「ほ、ほんとっ?じゃあ伝えてくるね!ありがとっ!」

 

湊たちのライブを見に行って、バンドをしたいと思ったのは事実。普段ならきっと断っていただろう。ちょうど良い機会なのでその誘いに乗り気だった。

松原とはその後世間話で盛り上がり、その通話は夜遅くまで続いた。

 

 

 

 

「今こころちゃんから連絡帰ってきたんだけど、放課後リムジンで迎えに来るって!」

 

 

リムジン…?




はいということで記念すべき初投稿とさせていただきます。
駄文だけど、皆様の暇つぶしになればいいなと思っております。
八幡の設定を下に書いておくのでよかったらどうぞ。


比企谷八幡
誕生日:8月8日
身長:176㎝
体重:73㎏
所属:花咲川学園2年B組(紗夜、燐子、彩と同じ)
好きなもの:家族、甘いもの(特にマッカン)、音楽全般
嫌いなもの:潔癖すぎる社会(つまらねえから)

ギター、ベース、チェロ、コントラバス、ドラム、ピアノ(キーボードも可)などなど、音楽に関しては鬼才と称されるほどの実力があり、並大抵のプロでは彼の足元にも及ばない。元々ソロで1年ほど活動していて、その後バンドを組むがとある事情によって活動休止中。今はCircleでアルバイトをしていて、たまにサポートメンバーとしてライブなどに出ている。


こんな感じで書いていこうと思います。
では皆さん、次回でお会いましょう。
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