男が去ったことに気づいた時には、そこにはハンドガンと男二人だったもの、走った時に落ちたのであろうイヤホンのみが残されていた。
少年がイヤホンを耳にはめると、かすかながらノイズ交じりの音が聞こえる。
「ポイントにまだつかないのか……役立たずが、いい。あのお方にはこっちからしっかりと報告しておく。逃げられると思うなよ?まだ聞いているのであればチャンスをやろう。残り2ポイントのうちどちらかに金とブツを持って来い。それを引き渡せば晴れて契約満了だ」
ブツリ、と一方的に切れる。聞き返す余地をも与えぬ早口の言伝だったが、少年が飲み込むには十分だった。黙々とハンドガンと血濡れの服からスマホを一台拝借する。
「銀行強盗事件……犯人の一人が自首か……自首……」
逃げた男が警察に出頭したという事実を知り、自分のことをあれこれと話されるという危機感を覚えたが、名も明かさずただ情報を聞いただけだったということに、まだ少しばかりの安堵を感じた。
「具体的な位置は……六角形?」
ニュースの切り抜きであろう動画の、キャスターが指し示しているボードには具体的な銀行の位置関係がわかりやすく示されていた。見れば、4つの点が長方形を描くように配置されている。
ニュースの考察では、中心地がどうとか、他府県でもこのような正方形が見受けられるとか、これは偶像崇拝の招いた危機だとか、さまざまな考察が飛び交っていた。が、どの考察よりも少年の中で確かなことがあった。
「六角形だ」
男は、全部で6つあると言っていた。今はまだ4つ。残り二つがこのように何かの図形を描くのだとすれば、おそらくそれは長方形のちょうど上下に1つずつ、配置すれば正六角形になるであろう場所が次の犯行現場だろうと予想する。
裏鳥のためにマップを開いてその位置に当たる場所を確認すると、ちょうどそのポイントの真下に銀行が所在することがわかった。がしかし、近隣の大方の銀行には既に警備体制がとられている。そもそも、プロヒーローの目をかいくぐってこの狭い範囲で連続的に犯行を成功させていることが異例中の異例。
「きっと、何かがあるんだ」
少年はスマホをしまって、2つのポイントのうち近い方を目的地として、移動を開始した。
「私が来た!」
東京都の某銀行にて、一人の男がカメラに向けて笑顔を見せる。
「オールマイトがいればもう安心です!避難区域のみなさんは、速やかに避難所に避難してください」
ニュースキャスターがカメラに向かって真剣に訴え、少し間をおいてキューが出る。
「報道の方々も、安全な場所に逃げるんだ」
「はい。ご武運を!」
仕事を終えたのか、機材を素早くかたずけてその場を速やかに車で離れていく。平和の象徴である彼、オールマイトは件の連続銀行強盗について何かがつっかえたような思いであった。これだけヒーローの目をかいくぐって慎重かつ神業で行われた強盗が、ただ金を盗むだけで終わるはずがないと、警察と連携してこの区域の警戒をすることを買って出たのだ。
「それにしても、目的は一体……」
平和の象徴とて、一般人が誰一人として残っていないこの場所では、笑顔を見せる余裕もなくなっていた。
午後19:05分。都内某銀行二か所上空にて、それぞれ一つ風船が確認される。色は水色とオレンジ。その風船の真ん中には、上空のため肉眼では確認しにくいが、何かマークのようなものが描かれている。
「あのマーク……」
目的地点にたどり着いた少年は、近くの廃アパートの部屋から風船を目視する。視力のいい少年は、マークにも気づき、男が携えていたハンドガンに刻印されていたマークと同じものであると気づく。
「しかも、ヒーローがいる……」
少年は左腕の機械を確認する。表示されているのはOpponent's turnという文字。次に少年は時刻を確認する。
「あと1分」
東京に、邪悪が迫っている。
Tips
少年(榊優香)年齢 ??歳
誕生日 ??
個性 ??
特徴 左腕に謎の機械をはめている。時間経過で表示される文字が変わる模様。
数字は常に1600と表示されている。
肩まで無造作に伸びている髪。その割につやつやしてそう。茶色が勝った黒。
敵名:捜索者(サーチャー)として、先日登録されている。
判明している前歴及び推測されている犯行
先日、都内某路地裏にて男二名を粉砕
二週間前、都内地下鉄駅にて女性の溺死体。左腕に大きな機械をはめた目撃情報有
半年前、午前快晴日に突如雷が発生。性別不詳死体数名。