ネビュラ・カルテット 作:KQ
--ヴィジョンの監視視点--
「猫又!猫又ってば!アンビー、ビリー、早くドアを開けて!」
「ダメだ、ニコの親分!この車両、窓もドアも信じらんねぇほど頑丈だ!あのパールマンってやつが、わざわざ補強させたに違いねぇ!」
「畜生ッ!絶対にアイツを行かせたらダメだ!大人数相手に一人で交渉なんざ無茶に決まってる!」
そう言うと青龍刀を取り出しドアに向かって振り下ろそうとした瞬間。
「しっ、静かに。外から話し声がする!」
〜〜〜〜
「…はっきり言ったでしょ?今からあたしは、あんたたちのボスを連れて徒歩でホロウを抜ける。目的は、新エリー都の爆破解体本部での交渉だ」
同時刻、外では猫又がヴィジョンの兵士に目的を伝えていた。
「武装部隊は封鎖を解いて、住民たちを解放して。それが終わったら、あたしと一緒にここから立ち去るの。あんたたちのボスはあたしが預かってるんだ。彼に無事でいてほしいなら、耐侵蝕装備と、ホロウを抜ける最短ルートを用意して!」
そして下を向いたまま、静かにこう言った。
「……ニコ、みんなのことは頼んだ…」
「オラァッ!!」
バタンッ!
車両のドアから青龍刀が飛び出すと、そのままドアを斬り裂いた。
「やった!ようやく出られたぞ!」
「ああもう、車両を破るのに随分手こずったわね…猫又とパールマンたちは、もうホロウに入っちゃってるはずよ!」
『Fairy!猫又の位置を教えて!』
『依頼人の現在地を特定。進路によると、依頼人はおよそ30分後にホロウの出口に到着すると推測されます』
「ってことは、もう猫又を止める方法はないのか?」
「そうだとしても…住民の救出なんて大事、猫又ひとりに背負わせるわけにはいかない!ヴィジョンは人命を踏みにじるようなドクズなんだから、きっと一筋縄じゃいかないわ!」
「でもどうするんだ?線路は脱線させられ、住民たちを列車に乗せて避難させることは出来なくなったぞ?」
「ああもう!一瞬で全員にエーテル適性をあげる方法があればいいのに!」
「エーテル適性を上げる、か……」
すると少し考えた後、ゼロはこんな提案をした。
「…ブッチャーを潰す」
「なるほど…特殊個体のエーテリアスを倒してホロウを縮小させるのか…」
「あのデデデ…デカブツのことかぁ!?俺にゃ、色んな意味でデカすぎるぜ…何かあったら、明日の夜モニカ様に会えなくなっちまう!」
『ああ。僕たちだけでは、デッドエンドブッチャーに敵わないだろうね。でも…ここには、ヴィジョンが送り込んでくれた武器が沢山ある』
「クソッタレヴィジョンが置いてった爆薬、コイツら全部使ってヤツの墓跡を作ってやる…!」
「ふふん、いいわ!危険の伴う方法だけど、迷ってる時間はないわ!すぐに作戦開始よ!」
「どういうことだ、小娘ごときにパールマン長官を攫われただと!?」
「詳しいことは知らないがパールマン長官が人質に取られた以上、爆破エリアの兄弟たちも、小娘の要求通り撤退するしかなかったそうだ…小娘はさらに、ここの責任者を出せと言ったらしい。それに応じたサラ長官が、直々に交渉に出向いているとのことだ…」
あの後、猫又はパールマンを連れヴィジョンに交渉をしにいった。目の前にはパールマンの秘書『サラ』と大勢の武装部隊がいる。
「あんたが今の責任者?あたしの要求は簡単…爆破を中止して、閉じ込められた住民たちの救出を約束すれば、こいつを返す」
「はっ、簡単に言ってくれるわね。あなたの言う通りにしたとして、我々ヴィジョンはこの件をどう世間に申し開きすれば?それ以前に、あなたは誰?一人で交渉の場に来た度胸買うけど…狩る側が狩られる側になる可能性だってあるのよ?」
「おっと、自己紹介を忘れてた。あたしは猫宮又奈、猫又って呼んでもいいぞ。何を隠そうあたし、赤牙組の元組員なんだ」
猫又は笑みを浮かべ、自分の名前と元赤牙組ということを明かした。
「せ、赤牙組…!」
「そうだ。こっちから持ちかけたからには、それならの切り札がある。こんな筋書きはどう?赤牙組の残党、今は亡きシルバーヘッドミゲルの爪。旧都の住民を人質にして、工事を妨害した張本人…猫宮又奈を、ヴィジョンは捕らえた」
「自分を犠牲に幕を引くの?なかなか殊勝なことをするのね…」
「殊勝?ははっ…あたしは帰る場所を失くした、ただの野良猫。どこにも属さないあたしには、これくらいがお似合いなんだ…この取り引きでどう?今すぐメディアに連絡して、あたしが言った通りに…」
バァン!
「すべてを公表、すれば…」
突然サラが拳銃を取り出すと、パールマンの眉間を撃った。
「…?」
「安心して、中身は実験中の麻酔薬よ。死にはしないわ…親切で教えてあげる。次は交渉する前に、切り札の価値を確認しておくことね…残念ながら、パールマンさんは…あなたが思うほど役に立たないの」
--デッドエンドホロウ--
「ここ、ヴィジョンの兵士がさっき爆破した線路か…」
一方、ニコ達はゼロをパエトーンのもとに置き、デッドエンドブッチャーを探しにホロウ内を進んでいった。
「何もねぇな…あのデカブツはここに?」
「デカいのはいないわね…チビばっか…」
「身を潜めてるはず…」
すると、雷が鳴り雨が強くなった瞬間…
「ん?雑魚たちが逃げてく…」
突如、周りにいたエーテリアスがその場から離れていった。
「来るわ…」
「!ついにヤツが「BGM」…え?」
「映画なら悪役のBGMが…」
クロウが溜息をつくと、ビリーが前に出た。
「フッフッフ!安心しろアンビー!俺はスターライトナイトとゼロから必勝法を教わった!」
「ゼロから?」
「ああ!悪役相手にルールは無用!開幕必殺キックだ!」
(そういえば前にデュラハン相手に姑息な手使ったとか言ってたな…)
「10秒で倒せば、BGMが流れる隙なんてねぇ!」
すると…
「後ろ!」
「ビリー!!」
空から青い光が現れ、ビリーに向かって突撃してきた。
「お、俺の予想を読まれた!?」
煙が晴れると、寸前でアンビーが攻撃を防いでいた。
「おバカ!エンドロールが流れるとこだったじゃない!」
「映画脳も大概にしろ!来るぞ!」
「さてはスターライトナイトのファンだな!?」
侵蝕されて斧のようになった道路標識を手に取り、ついにデッドエンドブッチャーが姿を現した。
杖を持ち直したクロウは3人の前に出ると杖をブッチャーに向けてこう言った。
「沸るぜ…今日はサービス残業デイだ…!」
大ボスの中じゃツインズが一番苦手