チラ裏がネタ帳になってきている
いつかにミスティから聞いた話を思い出した。
「なぁ、タロットってカードごとに全部意味があるんだっけ?」
「うん…興味あるなら教えてあげようか?」
「面白そうだな、聞かせてくれ。」
「もちろん。でも一度に全部覚えるのは無理だろうし、今回は大アルカナだけね。
このデッキを引いて、出た順にしてみよっか。」
「…これは『星』。」
「正位置なら、希望の成就とか可能性の象徴だね。」
「…逆ならどうなるんだ?」
「悪い意味なら失意とか、良く取るなら不屈。あとは…目標が高すぎるっていう警告とか。」
なぜ今こんな事を思い出したのかは分からない。
それどころじゃない状況なのは自分でも分かっていた。
「ごふッ!!………あぁ、クソっ」
「よせV!無理に喋るな!」
パナムが俺の右手を握ってそう言った。
ベッドから起き上がることもままならない体に鞭打って、空いた左手で彼女の頬を拭ってやる。
「良いんだ、自分の限界は自分が一番分かってる。」
パナムの背後では、ミッチたちが…たった半年だけど、まごうこと無き俺のファミリーが悲痛なツラして立ち尽くしていた。
「お前らも…ゲホ、なにシケた顔してんだよ…ははは」
「笑ってる場合か!」
「当たり前だろ。皆が居たから、最高に楽しい時間が過ごせた…ぅえ、ゲホっ!ゲホ…」
吐血量が増えてきた、神経回路の損傷が拡がってるらしい。
「V!Vってば!」
「パナム…ミッチ……………」
いい加減限界が近い。せめて、せめてこれだけは言わないと…向こうでジャッキーにシバかれそうだ。
「………ありがとう」
―――私のミスでした。
知らない声が聞こえる。
私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。
結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて…
"いや…私のミスでもあるよ"
男女それぞれ1名、なにやら話しているようだが…内容までは聞き取れない。
"結局私でも…ダメだった。生徒を1人託すので精一杯だったんだ。"
だからまた、全てをやり直すと?別の大人に、その全てを託すと?
"それが私にできる、責任の取り方だからね。"
"大事なのは選択…その点において彼は、最も重要な経験と資質があるはずだ。"
なにやら深刻そうな雰囲気だ、俺みたいな大罪人が来ちまったもんだから天使も大慌てって所か。
分かりました…そういう訳なので、初対面で図々しいですがV先生、お願いします。
今、俺の事を呼んだのか…?
声の主は一体何を……………
この捻じれて歪んだ終着点とはまた、別の結果を―――
声がフェードアウトする。
――――――静かだ。
まるで眠っているような…そんな感じの暗闇と静寂。
「…………さい。」
直ぐに別の誰かの声が聞こえてきた。
でも、やっぱり聞き覚えがない。さっきから誰なんだ一体…?
「…先…!…きて……い!」
結構大声で叫んでるな…ちょっと待て、死んだのに意識があるのか?
「
開いた瞼の先にいたのは…1人の女。
その頭上に浮かぶのは…キロシのバグとかホログラフィックのアクセサリじゃなければ、光輪に間違いないだろう。
"…
「…は?」
だが女は『何言ってんのこの人?サイバーサイコなの?』とでも言いそうな怪訝な表情を向けてきた。
「…
"
「…
翻訳インプラントが彼女の言葉を伝えてくれる。元の言語は…日本語か。
というか『先生』って何だ?俺がそんな敬称をつけられる覚えはない。
そういえば死んだ早々に見た夢…か何かで聞いたような気もするな。
「
"あぁ…"
とりあえず目の前の女が説明してくれると言うので聞くことにする。
今のうちに言語インプラントから日本語を言語野に直接書き込んでおこう、ここの共通語なら直接理解して発話できた方がいいだろう。
「
「
「そして先生には、
「
「ひとまず、付いて来て頂けますか。」
"…分かった。"
俺は見逃さなかった。
彼女の頭上と同じ、奇妙な光輪が空に浮かんでいるのを。
(本当に…何なんだこの場所は。)
………あとリンが小声で「日本語喋れるんじゃないですか」とこぼしたのも聞こえていたが、とりあえず聞き流すことにした。
運命の輪の逆位置…「別れ」とか「解放」の象徴だね。
あと「情勢の悪化」とか「トラブルの到来」を警告することもあるわよ。