TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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1話 転生してモテた結果は修羅場

「――ねー、銀藤ちゃん。 これ、どういうことか説明してくれなーい? なんでここにこの子たちが居るんだとか――どうして銀藤ちゃんのこと、ううん、アキノちゃんのこと、そこまで良く知ってんのとかさー?」

 

ただでさえ怖い系美人なギャルの紅林さんが、僕にすごんできている。

 

怖い。

 

誰か助けて。

 

「ねえ銀藤さん? どうして紅林さんと黒木さんがここに居るのか教えてくれないかなぁ? ……黒木さんはともかく、紅林さんなんかと」

 

普段は穏やか系美人な学年の高嶺の花、白鳥さんが冷たい視線で刺してくる。

 

やっぱり怖い。

 

誰か……みんな目を逸らしてる。

 

「……ぎ、銀藤さん……最近、白鳥さんと紅林さんと、仲……い、良いよね……? な、なんで……どうして……?」

 

度の強いメガネで表情が見えなくなってる黒木さんが怖い。

 

小さいはずなのに怖い。

 

「ていうかぁ白鳥ちゃんさぁ? 最近休み時間のたびに銀藤ちゃんに話しかけてなーい? 銀藤ちゃん、あんま注目されたくないって言ってたから話しかけないであげて欲しいんだけどー?」

 

「あら、それを言うなら紅林さんこそ。 銀藤さんが迷惑そうにしているわよ? あなたたちみたいな女子につきまとわれて、変な噂も立っているし」

 

「ぎ、銀藤さんは……私だけのものだったはずなのに……最初から、ずっと……なのになんで、他の子、見ちゃうの……?」

 

ぴしっ。

 

「は? 黒木ちゃん、銀藤ちゃ――ううん、アキノちゃんが何だって? あたしのを盗ろうって……?」

「ひぅっ!?」

 

「ちょっとやめなさいよ、私はあなたのそういうところが……」

 

びしっ。

 

僕の前で――高校デビュー先のクラスの女子たちが、どう見ても険悪なムードをしている。

 

世界が、凍り付いている。

 

この空間そのものが、見えない氷で固まっている。

 

凍りすぎてそのまま砕け散りそう。

 

いっそのこと砕け散ってくれたら楽になるのにね。

 

僕?

 

僕はそんな3人に囲まれてるよ?

 

なんなら彼女たちの、普段より低いトーンの声が360°から届くよ?

サラウンド修羅場だよ?

 

いやぁ、女子って怖いね。

 

やっぱ僕は男の方が良いや。

 

多分今、この瞬間、僕がこの世界で最も寒気感じてるよね。

 

……いやぁ、ほんと、男として生まれて男友達だけだった方がしあわせだったよ……もう遅いけど。

 

「ね、ねぇ銀藤さん……説明、してくれる……?」

「そうね、説明してくれるかなぁ銀藤さん」

「ねーアキノちゃん。 いつもみたいに無関係装うの、そろそろやめよっか」

 

「えっ」

 

サラウンド低音女子ボイスが僕を襲う。

 

「銀藤さん……ううん、明乃ちゃん……わたし、明乃ちゃんが居たから、こ、こうして他の人とも話せるように、なってきたのに……お友達、できてきたのに……」

 

おどおどと僕を見上げてきている、黒木さん。

 

長い黒髪にビン底――じゃなくなったけど厚いメガネ、小動物系で臆病で背も低くって、今でも分厚い本を――自分を守るように抱えていて。

 

サイズが大きめの制服を着てるせいで余計に小さく見える、隣の席の女の子。

 

「私、銀藤さんのことを誤解してたわ。 もっと真面目な良い子だって思っていたのに……放課後とかお休みに派手な格好とか。 いえ、それは良いの。 けど、私たち3人を同時に口説いてただなんて……」

 

腰に手を当て、基本笑顔な普段から一転、きりりとにらんできている……んだろうなぁ、それでもそこまで怖くないけど……明るい色の長い髪に、きっちりと制服のシャツを首元まで閉めていて。

 

同級生たちの憧れなぼんきゅっぼんが、校則を守りきってる着こなしの制服からでもはっきりと分かる、白鳥さん。

 

「――アキノちゃん。 前、言ってくれたよねー? あたしのこと、真剣に考えてくれてるって。 なのにさー……」

 

前よりはマシになってるけどやっぱり派手なメイクに染めた――ように見えて実は地毛の、ウェーブのかかった燃えるような色の髪の毛。

 

制服の上着の代わりに厚手のカーディガンを腰に巻いていて、それでおしりが隠れる分スカートを短くしている、よく僕の席を占領している、紅林さん。

 

「ねえ」

「ちょっと」

「せ……つめい、して……?」

 

いや、君たち仲良いじゃん……や、僕っていう共通の敵で団結してるだけなんだろうけどさ。

 

「はぁ……」

 

僕は、涙を浮かべながら空を見上げる。

 

夕暮れ、駅前、人混み、好奇の視線。

 

――ああ。

 

僕はどうして――まるでべったべたなラブコメみたいな展開になってるんだろう。

 

どうして――今世の僕は女の子なのに、なぜに女の子たちにラブコメみたいな詰め寄られ方してるんだろうか。

 

僕、女なんですけど?

 

なんでこんなことになってるの?

 

や、多分この子たちはただ「友達だと思ってた相手と仲良くしていたクラスメイト」に嫉妬してるだけで、恋愛感情なんか――女の子同士だし――ないはずだって……思いたいなぁ。

 

それでも――ああ。

 

人生ごとってのはもう勘弁だけども。

 

期日を指定して、ついでに記憶も持って同じ人生の望みの時間まで巻き戻したい。

 

そう。

 

それは、TS転生先の人生でやらかした中学から離れ――新鮮な高校デビューした先の新鮮なクラスで、目立たない女子のグループに紛れ込めていた、無害な女子生徒Bだった、あのころへ。

 

「銀藤さん?」

 

「……ごまかそうとすると……」

 

「すぐそうやって周り見たりするの、知ってるからムダよ?」

 

あ、無理っぽい。

 

僕はもうダメだ。

 

……さらに次の来世に期待しとこ。

 

 

◆◆◆

 

 

新作です。

 

修羅場に襲われるTS主人公明乃ちゃんのおはなしになります。

 

無自覚に女の子たちを絡め取っていく明乃ちゃんを眺めるだけの中編の予定です。ただただおはなしがこの場面へ向かうのをお楽しみくださいませ。

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