TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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15話 紅林さんにロックオン

「~♪」

 

あー。

 

1人の時間って良いよね。

 

誰にも気にしなくて良くって、気になった場所にふらっと入って。

 

そういうのは誰かと一緒だと味わえない時間。

特に群れをなす性質を持つ「女子」だとなかなか味わえない極楽。

 

そんな休日。

 

僕はのこのこと、あてもなく駅前をうろうろ。

 

ビルとかに映る僕の姿は、普段のどれとも違うもの。

 

きちんと手入れをして後ろをポニテで縛っている髪の毛。

 

ナチュラルメイクをほんのちょっぴりにパーカーにズボン、スニーカーに帽子。

 

ジャンガリアンハムスターでもインフルエンサーでもない、ごく普通の女の子。

 

ダテ眼鏡もかけてないし野暮ったくもないし、派手でもお洒落でもない、どこにでも居そうな学生。

 

ダサいと普通のギリギリを攻める服装だ。

 

「♪」

 

パーカーって良いよね。

 

今の僕にもなると結構ぎりぎりだけど、それでもぶかぶかのを着れば胸も気にならないし、まるで前世の男に戻った気分。

 

がんばって声低くすれば男に思われないこともない気がするし、きっとそう。

 

記憶は無いけどもすっごく安心するあたり、前世もこういうラフな格好が好きだったんだろう。

 

あー。

 

こうやってお昼代+αのおこづかいを手に、のんびりするのってさいこー。

 

最近はちょっと高校デビューのためにいろいろがんばったし、今日くらい――

 

「……あ、あのっ。 もしかして……アキノちゃん、ですか?」

 

――そっかぁ、同じくらいの背だと帽子で顔も隠れないかぁ。

 

まぁしょうがない、サインとかせびられるのはもう何回かあったし、さっさと――って。

 

「あ、ひょっとしてオフ? だったらごめんっ! あ、なさいっ! あた、私、この前助けてもらった奈々って言うんですけど! 覚えててほしいんですけど!」

 

顔を上げた先には――なんで紅林さん?

 

「え、この人がアキノちゃん? ……わ、ホントだ、マジ気がつかなかったわ」

「マジだー、え、こんなに気がつかないもん?」

「すっぴんですよねー? え、めっちゃ美人ー」

「とりま、写真難しい感じ?」

 

――と、取り巻きの女子たち……クラスの子たちだ。

 

え?

 

なんで君たちがここに?

 

ここ、僕の地元なんだけど?

少なくとも紅林さん、君は電車で反対方向のはずだよね?

 

 

 

 

「へー、1歳上だったんですかぁ」

「そういや歳とか……マジだ、書いてないわ」

「現役JKとしか書いてないね。 私てっきり3年生って……」

 

「うん、そうなんだ。 だからここだけの秘密、ね?」

 

「「「はーい!!」」」

 

まぁ秘密とか、この子たちに通じないだろうけど。

 

なんなら今日中に拡散されるだろうけど。

もしや今いじってるスマホで現在進行形で拡散されてるかもだけど。

 

まさかの地元、まさかの無対策の状態で、しかも紅林さんに会うとは想像もしてなかったから、とっさに年齢だけずらした。

 

この子たちの歳だと1歳差でも相当のもの、ごく自然に上の学年だって考えるだろう。

 

え?

 

そうだよ?

 

学年変わってすぐに誕生日あっただけだよ?

 

だから嘘は言ってないし。

 

この子たちが勝手にそう思うだけだし。

それで勘違いするのはこの子たちのせいだし。

 

あと、その場限りの嘘ってそのうち忘れて後でやらかすからね……そうなるよりは嘘でもほんとでもないこと言っとくのが正解だよね。

 

「で……」

「内緒話なら聞いても良いんですよね?」

「カレシとか!」

「きゃー!!」

 

うん、そういう話好きだよね君たち……ほんとに。

 

「あ、それはね」

 

「――アキノちゃんは女の子もイケるって、最初の頃の雑談で言ってましたよね?」

 

「えっ」

 

「え?」

「奈々……?」

「どしたの急に」

 

紅林さんに、いきなりド直球のを投げつけらさた僕。

 

まるでこの前のドッヂボールみたいに、予測不可能なタイミングで。

 

「カレシ作ったことはないけど、カノジョは何人か居たって。 言ってましたよね?」

「え……あ、うん……よ、よく覚えてるね……」

 

「はい。 あたし、最初の動画から観てるんで」

 

「えー!? 彼女居たんですかぁ!?」

「あ、でも分かるかもー」

「さっきのぱっと見、ポニテで長髪の男子学生かって思ったしー」

「ゲームとかアニメに出てくるイケメンって感じよねー」

 

じっ。

 

紅林さんの鋭い目線が僕を包む。

 

「そ。 カノジョ、居たんだって」

 

目線が冷たぁい……。

 

「あー、そういやそんなこと言ってたね」

「え、いつのいつの?」

「けど奈々、そんなときからずっと観てたんだ」

「けどなるほどぉー、確かに話し方とかタラシ風味あるー」

 

彼女の暴露で、僕はいきなり窮地に突き落とされている。

 

なぁんでぇ……?

 

「今は居ないとも。 前に刺されそうになったからって」

「う、うん……そうだね……」

 

「作ってないんですよね? それから」

「う、うん……怖いからね……」

 

ついでに君の目線も怖い。

 

他のギャルたちは興味だけの視線なのに、君のは妙に……。

 

「――あたしたちの中なら、誰選びます?」

 

「ゑ?」

 

あの、何か話、急すぎない??

 

「あ、あたしたち、全員フリーですよ? 今」

「まぁねー」

「クラスと学年のイケメンは水面下の競争激しいしー」

 

もっとさ、こう……イケメンの話とかしない?

 

僕、女子たちとの会話のために仕入れてるよ?

 

「ちなみにあたしは」

 

ちなみにここはカフェ。

 

この子たちに捕まったんだ。

 

だって思わないじゃん!

 

こんな展開になるだなんて!

 

「アキノちゃん……さんに助けてもらった分くらいなら、なんだってできますよ?」

 

「え? 奈々の言ってたあれ、マジだったの?」

「うそぉー、てっきりウソだって思ってたー」

「アキノちゃんさんの顔見る限りマジかぁ」

 

「うん、ほんと。 ほんとですよ? ――あのときのあたしがひどい目に遭うはずだった、貞操も命も救われたくらいなら――なんだって、尽くせますよ?」

 

「ひゅっ」

 

変な声が出る。

 

冷たい。

 

視線も声も冷たい。

 

そういや気がつかなかったけど、ここはお店の奥の席で、さらに言えば僕はこの子たちに囲まれたもっと奥の席。

 

そして正面には紅林さん。

 

……あれ?

 

これ、逃げられない?

 

もしかしてこれ――詰んだ……?

 

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