TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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18話 様子のおかしい3人

「! ぎ、銀藤さん! あのっ……あ、あれ……マスク……?」

 

「ごめんねー黒木さん。 ちょっとノドがね」

 

普段通りの朝。

 

ガラガラと教室に入った僕を見つけた黒木さんがハムハムって近づいてきた足が、ぴたりと止まる。

 

「だ、大丈夫……?」

「うん、念のためだからさ」

 

「銀藤さんがカゼ……?」

「き、昨日は風が冷たかったし……」

「気をつけないとね……」

「お、お見舞いイベ……」

 

後ろのハムスターたちもちょっとばかりの警戒顔。

 

うん。

 

こうなってもらうために、教室でもマスクつけたままだからね。

 

――昨日、僕は反省した。

 

あやうく僕の身元がバレそうなところでうっかりで名字呼ばれて返事しちゃうとかいう、どうしようもないまぬけさに。

 

……今どきの子からすればネットで有名人ってことを隠す意味は無いんだし、昨日のことが嘘だとは思っていないだろう。

 

けども、万が一はある。

 

あとやっぱ昨日の紅林さんの目が怖かった。

 

そんなわけで僕はしばらく顔を隠す。

 

ぼさぼさの前髪、少し曇ってるデカ眼鏡、そして追加でマスク。

これで僕の印象は、どこからどう見てもか弱いジャンガリアンハムスターだ。

 

「あら銀藤さん、カゼ? 大丈夫?」

 

「し、ししし白鳥さん……」

 

「おっとと……こ、このくらい離れてたら大丈夫、かなぁ……?」

 

――そんなハムスターの集団に、突如としてわんこの出現。

 

黒木さんに釣られてハムハム来ていたハムスターたちが、さっと引いていく。

 

で、取り残された僕――と、なぜか逃げない黒木さん――から1歩2歩下がってくれるものの、会話をするつもりらしい白鳥さん。

 

普段はプリントとか係関係とかでしか目すら合わないのに、なんでだろうね。

 

今日も明るくて長い、手入れされた髪の毛と、安心できる優しい目が素敵だね。

 

あとはお胸と腰も……うむ。

さすがは高嶺の花、男を惹きつけて止まない見た目だ。

 

けど離れててね?

 

教室の視線を無駄に集めちゃうからね?

 

「銀藤ちゃん、昨日なんだけどさー……あれ? マスク?」

「……ひぃぃ……紅林さん……」

 

「紅林さん、私くらい下がらないと銀藤さんたち怖がらせちゃうみたい」

「えー……このくらい? 机3つ分も離れるとかやりすぎじゃない?」

 

……なぁんで紅林さんまで来るのぉ……?

 

いやまあ、離れてくれるんなら良いけどさ……。

ほら、ひっついてきてる黒木さんの震えが止まらないからさ……。

 

「お姉さんから聞いてるかもしれないけど、私たち、昨日銀藤さんのお姉さんと会ったのよ」

「へ、へぇぇ……」

 

そして始まる昨日の話。

 

もちろん想定していたからこそのマスク姿なんだけどね。

 

「そーそー! ぐーぜん会っちゃってさー! てか銀藤ちゃんのお姉さんがあのアキ――」

「ちょ、ちょっと紅林さん!? それはダメだって!」

 

「え? ……あ、ごめーん。 素で忘れてた」

「もうっ、一応教室内なんだから」

 

「……ぎ、銀藤さん……わ、私たち3人、お、お姉さんと会って……」

 

ぼそぼそと昨日の経緯を耳打ちしてくれる黒木さん。

そして紅林さんをキャンセルしてくれた白鳥さん。

 

もしかして3人とも……僕の設定上の姉のことを秘密にしてくれようとしてる?

 

「……ぎ、銀藤さん、お姉さんの話、したことなかったから……」

「って聞いたから言わないって言ったでしょう?」

「めんごめんご、マジ忘れてたわ」

 

ふむ、なるほど。

 

この感じ……どうやらあのあと白鳥さんが紅林さんに釘刺してくれたと見た。

 

ほんと何でもできるね、白鳥さん。

 

……けどなんだか眼鏡越しなのにじっと僕の目を見てくるし、それは紅林さんも同じだし、なんなら横斜め下からもさらなるメガネ越しの視線をすっごく感じる。

 

高校デビュー以来の視線の数だ。

 

これが黒木さんだったら気絶してるね。

 

「……か、顔見られるの、恥ずかしいから……」

 

「わ、ごめんなさい! 失礼だったわ!」

「……だよねー、銀藤ちゃんはそういうキャラだよねー」

 

さっと黒木さんマインドをインストール。

 

おかげで正面の2人からの視線が緩和される。

 

「……みんなも居るし、予鈴も鳴りそうだし、昨日のことはここまでにしときましょう。 銀藤さん、お大事にね」

「あ、あぃ……」

 

「今年のカゼはしつこいらしいから気をつけてねー銀藤ちゃん」

「あ、あぃ……」

 

「……じゃ、早く席に行こ……銀藤さん……」

「あぃ……あ、うん」

 

気遣いの白鳥さんと優しい系ギャルの紅林さんが退散。

 

代わりにジャンガリアンハムスターな黒木さんがぐいぐい引っ張ってくる。

 

「……さんは……と最初に仲良くなってくれたのに……」

 

なんかぶつぶつ言ってるけどもうまく聞き取れない。

 

まぁ「にゃんことわんこが居なくなって良かった」とか言ってるんだろう。

 

「ぎ、銀藤さん……体、大丈夫……?」

「む、ムリしない方が良いよ……?」

 

「うん、ありがと。 マスクは念のためだから」

 

そうして無事にハムスターの群れに引き入れられた僕は、ほっとする。

 

この子たちは僕の顔、あの2人みたいにじーっと見て来ないし。

 

「………………………………」

 

……黒木さんは見てきてるけど……この子はほら、最初からこうだから。

 

あれだよね、特にしゃべることないから見てるだけってやつ。

 

ハムスターたちは良くも悪くも視線に鈍感だから、見なさすぎるか見すぎるかの2択なんだ。

 

この子は最初から見てくるタイプのハムスターだし、僕は別に気にしないし。

 

なによりお互いの眼鏡越しだし、ただ見てるだけだろうから大丈夫大丈夫。

 

「………………………………」

 

「ね、ねぇ銀藤さん……昨日の、あの配信者さんの配信……」

「あ、うん。 あれ、まさか最後であんなことになるなんてね」

 

「ぎ、銀藤さん……この前貸してくれた本の……」

「返すのいつでも良いよ。 けど、どこまで……」

 

そうしてクラスは平和を取り戻していく。

 

紅林さんはギャルギャルしてて、白鳥さんは高嶺の花花してて。

 

そして僕は黒木さんたちとハムハムするだけ。

 

うん。

 

この調子で1週間くらい静かにしてればみんな忘れてくれるでしょ。

 

「………………………………」

 

「白鳥さん?」

「さっきの子……えーっと、銀藤さんだっけ? となんかあったの?」

「紅林さんがちょっかいかけようとしたの抑えただけじゃない? あの子に」

 

「………………………………」

 

「奈々ー、ガン見するのやめときなー」

「そうそう、嫌われちゃうよー?」

 

「あ、けどいいんちょちゃんも見てる?」

「昨日の修羅場は楽しかったねぇ」

 

「今度は銀藤さんがターゲット……あ、でもなんか雰囲気似てる……?」

 

「ねぇねぇ、次爆発するのいつ? いつ?」

 

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