TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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21話 3人の様子がおかしい

「ねぇねぇ銀藤ちゃん、この動画ちょっと見てよ! めっちゃおもろいから!」

 

「ひ、ひぃ……」

 

僕のほっぺたに、紅林さんのくるくるとした髪の毛がふわふわと触れる。

 

僕の肩に自然に手を置くどころか手を回してるし顔も真横に来ている。

 

そしてすっごく良い匂い。

そしてすっごく柔らかい。

 

「この次のもおもろくてねー? ほらほら、ちゃんと見てよー」

「ひ、ひぃ……」

 

僕は縮こまるしかない。

 

だって、ギャルが真横からはぐはぐしてきてるんだもん。

 

「銀藤さん、髪の毛お手入れしてないのかと思ったら案外ちゃんとしているのね……朝、梳かしてないだけなのかなぁ」

「ひ、ひぃ……」

 

――その反対側。

 

白鳥さんのさらさらとした髪の毛が、ふわりとほっぺに触れる。

 

「あ! メガネも曇ってる! 銀藤さん? 女子なんだからせめてメガネくらい拭かないと!」

「ひ、ひぃ……」

 

じーっ。

 

白鳥さんの顔が、すぐそばでこっち見てる。

なんならメガネのスキマから見えちゃいそう。

 

てか見えてないかな、これ?

 

「ぎ、銀藤さん……っ、き、昨日のあれの更新読んだ……んだよねっ」

 

真正面。

 

黒木さんのぼさぼさの髪の毛――だったものが通りすがりの白鳥さんに修正されたもの――が、机に乗っている。

 

「ど、どうだった……? おもしろかったと思うんだけど……」

「ひ――じゃなくて、う、うん……」

 

――こちらも通りすがりの白鳥さんに指摘されて修正されたビン底メガネが曇りひとつない感じに。

 

おかげでビン底ではあるけども透き通ってて――黒木さんのつぶらな瞳が、じっと、30センチくらいの至近距離で、僕の目を見ようとしている。

 

「ねぇねぇ銀藤ちゃん!」

「銀藤さん?」

「ぎ、銀藤さん……」

 

――どうしてこうなってるの?

 

なんで?

 

なんで紅林さんと白鳥さんはこんなに近くってくっついてきて、紅林さんに至っては抱きついてきておっぱいふにょんってしてて、白鳥さんも白鳥さんで良い匂いだし鼻息がかかるくらい顔近づけてきてるの?

 

黒木さんも黒木さんで、いつもなら70センチからは近づかないのになんで最近こんなに距離近いの?

 

僕さぁ、言ったよね?

 

人の目線苦手って言ってたよね?

 

「銀藤さんが……」

「遠い世界の人に……」

「で、でも、困ってるみたいだしまだ大丈夫じゃないかな……」

「俺だけが知ってた地味系女子がにわかに注目されて……」

 

「ぎ、銀藤さんってすごいね……」

「明るい人たちと話、合うだなんて……」

「いいなぁ……けど、銀藤さんって私みたいなのに話しかけてくれるし……」

「次の祭典の内容はこれよ……ふへへ……」

 

なお、ここはハムスターたちの巣穴。

 

本来なら十数人が群れるクラスの隅っこで、本来なら実に静かで居心地良くって――本来なら始業式から1週間で完全に固定されて他のグループの男女ともにそんなに近寄ってこない聖域のはず。

 

なのに僕は、他の生徒のイスを借りて座ってて。

 

――ここまでは普段通りなんだけど――そんな僕の周りに3人がぴったりくっついてて。

 

さらに、僕たちの周りに人だかりな形になってて。

 

……なぁんでぇ……?

 

「最近さ、クラスの雰囲気良いよね」

「フツーに落ち着いたクラスだったけど、最近は特にね」

 

「あれだよな、委員長の白鳥さんに派手な紅林さんが仲良くなって、ずっとクラスに居るようになったからだよな」

「確かに」

 

「あの囲まれてる人って誰だっけ?」

「確か銀藤さんとかだった気がする」

「そうそう、名前順で結構前の」

「あー」

 

もはやクラスの4分の1の空間にクラス全員がたむろしてるレベル。

 

……いや、毎回の休み時間こうなるってちょっとおかしくない?

 

密集具合、おかしくない?

 

「なー、銀藤ちゃーん、ホントにオシャレきょーみないのー? 絶対モテるよー?」

「むぇぇぇ……」

 

「そっかー、残念。 あ、このネイル講座、送っとくね」

「むぇぇぇ……」

 

ぐいぐいむにゅむにゅとパーソナルスペースゼロの紅林さんが離れない。

 

「ねぇ……本当に嫌じゃないのね? 私たちがこうしてるのとか」

「むぇぇぇ……」

 

「そ、良かったぁ。 銀藤さんが嫌って感じない距離感、だんだん分かってきたかも」

「むぇぇぇ……」

 

机に座る僕の真横から腰を下ろし、マジメな彼女にしては珍しく床に膝をつくという、彼女的にはだらしないはず格好をしながら僕を向いたままで話している白鳥さん。

 

「ぎ、銀藤さんっ! この後の展開って、正ヒロイン一筋とハーレム、ど、どっちが良いと思う……?」

「むぇぇ――え、えっと、ヒロインは多い方が良いんじゃないかな……」

 

目の前でスマホの画面を見せながら、彼女のハマっているらしい小説の続きを予想している黒木さん。

 

「……銀藤ちゃんって、黒木ちゃんたちに対しては普通に話すよな……?」

 

「ほら、銀藤さんたちって落ち着いた話し方するから……私たちのはまだまだ引かれちゃうのよ」

 

「……ふふ、わたしたち……わたしにだけは普通に……そうよ、だってわたしが1番……」

 

そうして3人は、予鈴が鳴るまでへばりつく。

 

うーん……これはまずくない?

 

ほらさ、黒木さんはともかく他の2人は本来クラスで最も目立つ花なわけだし?

 

そんな子たちがハムスターたちの巣穴に籠もってるのは良くないんじゃないかなーって。

 

そう思わない?

 

ねぇ?

 

僕みたいなのに構ってないでさ?

 

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