TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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25話 やけに弾力性があって頑丈な矯正下着を手に入れた

「んぁぁ……」

「おっと、やりすぎた。 起きて起きて」

 

黒木さんの頭の撫で具合を把握しつつあった僕は、とろけそうになってた彼女の肩をぽんぽんと叩いて復帰させる。

 

女の子はこうされると安心するからね。

 

とろけちゃうからね。

 

撫で続けると子供みたいに寝ちゃうことすらあるんだ。

 

特にケンカのあととか、一戦交えたときとかに――おっと。

さすがにこんな場面で不埒な回想は良くない良くない。

 

え?

不埒?

 

なんのことだろうね?

 

じゃないない、今はこの子だ。

 

対人関係が希薄なこの子のことだ、今回のだけで何ヶ月も感謝されっぱなしってのも普通にありえる。

 

ほら、友達とか少ないとさ、ちょっと親切にされただけで嬉しくなっていつまでも好印象持っちゃうじゃん?

 

それが異性だと簡単に惚れちゃうじゃん?

あんな感じ。

 

その予防措置だ。

 

僕はそういうのにくわしいんだ。

 

「あと、負い目とかほんっとうに感じなくて良いからね? むしろ感じられると私が負い目とか感じちゃうから」

「……はいぃ……」

 

「どうしてもって言うんなら、妹と仲良くしてやって。 や、普通に友達として。 友達としてね!」

 

「はい……ぜったい……! 一生涯の……!」

 

「や、普通にだからね? 普通によ?」

 

なんか話聞いてなさそうだけど、念は押してあるからたぶん大丈夫だろう。

 

頭撫で続けたおかげで溶けそうになってるジャンガリアンハムスター。

 

眼鏡さんの壮絶な討ち死にのおかげでつぶらな瞳と小動物系美少女……中学生みたいな顔つきの彼女の赤らんだ顔を見れて大満足な限り。

 

うむ。

 

やっぱ人助けは良いことだよね。

それが女の子ならなおさらだ。

 

え?

 

男?

 

……まぁ、うん……元同性のよしみで普通の範囲でなら助けるけどさ。

 

ほら、その……そういうことすると大抵惚れられてえらい目に遭うからさぁ……無駄に僕の気を引こうとすごい人になっちゃったりするし……。

 

女の子相手なら嬉しいけど、男はなぁ……対象外だからなぁ……。

 

「はぁ……」

 

どっかに女の子相手「が」良くって、さらに言えば将来養ってくれそうな有望株はないかなぁ。

 

 

 

 

「明乃ちゃん?」

「あ、両親の対応マジありがとうございま――」

 

「ひとつ、良いかしら」

「え? あ、はい」

 

……ぱたん。

 

ドアの閉まる音。

 

「確か――同じクラスの女の子も助けたのよね? この前」

 

「え? あ、はい、ギャルの紅林さんですね」

 

後ろ手にドアを閉め、つかつかと近づいてくる店長さん。

 

「あのときの悪い子たちは修せ――お説教したけど、結構悪い子たちをたったひとりで制圧して」

「あれは周りにお兄さんたちがたくさん居てくれたからですよ」

 

そう、あれは僕の見た目で油断してくれる素人相手だからできたこと。

 

それに、あれは二度目は通用しない。

1回ミスったら逃げるしかないんだ。

 

しかもあのときはミスっても援護してくれる味方が居たのも大きいし。

 

じゃなきゃ、まず通報だもんね。

 

「しかも、またまた同じクラスの女の子を痴漢から救ったって」

「あー、こっちもたまたま。 いいんちょ的な白鳥さんですね」

 

あれは挙動不審な彼の功績あってのものだけどね。

 

あとついでに彼が目に入ったから様子のおかしい白鳥さんも見つけられたんだし。

 

「………………………………」

 

スーツを着ていたら間違いなくやり手のキャリアウーマンって感じの店長さんが僕をじっと見てくる。

 

やー、すごい美人さん。

 

骨格が男でもここまでできるんだって感心するレベル。

これで高校までは普通の男子学生してたって信じらんないね。

 

しかもここに来てからずっと、病室に入ってきたお巡りさんとかお医者さんとか両親をなだめてくれてたんだ。

 

ほんと、頭が上がらないね。

 

「………………………………」

 

「いやー、こんな短期間でこんなことになるとは。 偶然ってすごいですね!」

 

なんか空気が暗いから適当に笑ってみる。

 

僕はそういうのが得意なんだ。

 

「……ええ、すごいのよね……その一切がその場のとっさでのもので、少なくとも下心とかは一切に無いないところが……」

 

「?」

 

ぽつりと自分に言い聞かせるようにうつむいている店長さん。

 

どうしたんだろ、急に。

 

「いえ……あのね、明乃ちゃん」

 

真剣な面持ちをした店長さんが、すっと――なぞの物体を取り出す。

 

「? なんですかそれ」

「……暑い時期以外は、これをおなか周りに巻くことをおすすめするわ」

 

とさっとベッドに置かれたそれを手に取った僕は、しげしげと見つめ。

 

「……矯正下着使うほどデブってます? 矯正下着プレゼントされるほどって。 僕、体重は毎日――」

 

「違うけど……命に関わるかもしれないから」

 

命?

 

なんのこと?

 

いや、落ち着こう。

この人が意味のないことをするはずがないんだ。

 

そうだ、どう見てもその筋の人たちと知り合いなのに息は掛かってないみたいっていう奇跡みたいなバランスでお店経営してる人なんだもん。

 

きっと何か考えが……そっか!

 

「あー、なるほど!」

「良かった……明乃ちゃん、ようやく」

 

「確かに僕、中学まで運動してたのにいきなりやめましたからねぇ。 久しぶりに走り込みして予想以上に疲れましたし、食事量減らさなきゃって思ってたんですよ! あ、この話さっきしたばっかなのにもうこんなの! すごいですね!」

 

「………………………………」

 

「筋肉って脂肪になると体積増えちゃいますもんね! 健康な範囲だけど、確かにそろそろ絞った方が良いかなって思ってたとこなんです! いやぁ、そんなにぴちぴちの服着てないのによく分かりましたね!」

 

「………………………………………………………………」

 

おなかのお肉をつまんでぶにぶに。

 

これ、男的には大好物なんだけども、女子視点になると憎い代物に早変わりなんだ。

 

腹筋は軽く割れる程度にしてたけど、そういや最近見てなかったし。

当面はこれでサイズを意識しないとね。

 

「……それで良いから、外出時は付けてちょうだい……その件を少しだけど、ご両親にも相談しておいたから……」

 

え?

 

なんで両親に?

 

……まぁいいや、中学までのこととかいろいろ軽く話してあったし、今世の両親たちも打ち解けてるみたいだし。

 

「はーい。 おー、これおなか周りにフィットしますね。 これならなるほど、ちょっとでもウェストデブったらすぐ分かりますね!」

 

僕は感心した。

 

さすが店長さん、大部分を自力で完璧な美女になった人だ。

 

普通、男性のウェストは女性のそれよりも太いはずなのに、今も普通に細いワンピとか着こなしてるし。

 

きっと彼女も矯正下着とかで見えない努力をしているんだろう。

 

そういう努力が大切なんだ。

僕はまたひとつ賢くなった。

 

「女にとって美しさは命と等価。 勉強になります!」

 

「……ええ、そういうことだから……」

 

眉間をぐりぐりと、相当お疲れの様子の店長さん。

 

何時間も僕に代わって聴取とか手続きとかしてくれてたからね……今度からも頼みごととかあったら積極的にお手伝いしないとね。

 

「……明乃ちゃん?」

「?」

 

新品の矯正下着を身につけてなんだか嬉しくなっていた僕に、彼女がぽつりと言う。

 

「……釣った魚に餌をやらないと、どうなるか知ってる?」

 

「そりゃあ死んじゃいますよね」

 

「……惚れさせた相手が、惚れさせたくせに他の子に目移りしてたらどうなるか知ってる?」

 

「そりゃあつきまとわれて最後には刺されるんじゃないですか? そういう事件、よくありますよね? 特に最近は頻繁に」

 

「………………………………ええ、それが分かってたら良いの」

 

「?」

 

お、薄いのに妙に体を補正する圧力をかけてきて、それでいて呼吸もそれなりに楽。

 

これってひょっとしてお高いやつ?

 

ふーむ……また店長さんに借り作っちゃったなぁ。

 

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