TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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30話 【アキノちゃんの登録者はうなぎ登り】2

【ごめんなさい、なんでもないんです】

 

ふむ。

 

これはまずい。

女の子の「なんでもないから!」はなんでもあるんだ。

 

ありすぎるんだ。

 

ほっとくと大爆発するんだ。

 

僕はくわしいんだ。

 

納得するまでなでなでしたげないと、あとでえらい目に遭うんだ。

 

「僕は気にしてないからね? ……で、相手が挙動不審な男の人だったとしてもしたと思うよ? だってああいうのって理屈じゃないでしょ?」

 

うん。

 

たとえ黒木さんの代わりに挙動不審な彼だったりしても、助けたとは思う。

 

瞬間で判断したけど、助けられるって思ったわけだし?

 

ほら、助けられるはずの相手が目の前で――とか寝覚め悪いし?

 

まぁ相手がつぶらな瞳の黒木さんだからってのもあったけどね?

 

【……そう、ですか】

 

【アキノちゃん……神だわ……】

【¥500】

【ナチュラルにこの発言よ】

【その子を助けたのも一瞬だったって言うし……】

 

ふんふん、さっきからの子は……「ブラックツリー」さんね。

 

この子、配信では初めて見るけども、最近になって全部の動画とかにコメントくれてた子だ。

 

コメントの結構長い文章にびっくりしたけど、全部ちゃんと考えて書いたっぽい印象だったから好感度上がった子だ。

 

時期的にはちょうど、黒木さんを助けたあとかな?

 

やっぱメディアに取り上げられると人が増えるねぇ……登録者も一気に何倍だし。

 

【あの、私も  その人助けって……アキノちゃんさん自身を犠牲にしてもって思ってやったんですか?】

 

お、新しいアカウントの子だ。

 

ご新規さんは大切にしないとね。

 

「ううん、一瞬の反射での判断だったけど、まぁできるんじゃないかなって思ったんじゃないかな? いくら僕でもムリだって思ったらやらないよ。 誰だって痛いのとかイヤでしょ?」

 

【無理だと思っても、助けたかったらどうしましたか?】

 

「うーん、あの子の場合はともかく……周囲を巻き込むかな。 いろんな人が居ればできることは多いし。 それに案外みんな、ちょっとなら協力してくれるもんだよ。 きっと君だって、誰かから助け求められたら……ね?」

 

まぁあんな急な場面には合わない返事になっちゃったけど、納得してくれるかな?

 

【……そうですか。 ありがとうございます】

 

えーっと、この子は……「シーニュ」さん?

 

確かフランス語で鳥系の単語だった気がするなぁ……白い鳥だった気がする。

 

え?

 

なんで知ってるかって?

 

だって女の子はフランス語で適当なこと言えばちょろいんだもん。

 

けど……ふむ、白鳥さんで思いつくのは。

 

「誰も、誰かが犠牲になってまで自分を助けてほしいとか……思う人も居るだろうけど、僕は思わないからね。 あくまで力がある人が荷物持ってあげるとか、その程度だと思うよ。 何より、その助ける人にだって大切な人っているでしょ?」

 

【………………………………】

 

「誰彼構わずに助けるってのも良いことだとは思うけど……それやってたら自分が損しちゃうからね。 何事もほどほどに。 誰か他の人に押し付けられそうなら押しつけちゃえばいいんだよ。 少なくとも今の時代のこの国なら、まともな内容の通報ならちゃんと人も来てくれるし」

 

そういや白鳥さんも良い子すぎて「いいこと」しようとしすぎる印象あるかなぁ……あの子、本当、良くも悪くも「良い子」だから。

 

純粋で純真でお胸とおしりが大変によろしいけどさ。

 

【……ありがとうございます】

 

女の子はすぐに熱に浮かされるもの。

 

だから配信でちゃんと言って聞かせないとね。

 

【アキノちゃんってやっぱすごいね】

【ねー】

【考え方が大人ー】

【一瞬ですらすら言っててすごーい】

 

ふふん、伊達に修羅場はくぐり抜けてないよ。

 

え?

 

それから逃走しただろって?

 

それはそう……だから今回はちゃんと距離取ってるし、問題ないよね。

 

【けど、あのニュースのコメント欄で、助けられた子の制服と同じ学校じゃないかって】

【あー、確か――高校?】

【ちょっと、そういうのダメだって】

 

まぁ特定の動きはあるよね。

 

ネットの時代ではごく普通の流れだ。

 

「それも含めてみんなにお任せするよ。 でも、あんまり特定とかしない子の方が僕は好きだな」

 

【じゃあしない!!】

【しません!!】

 

「ん、よろしい」

 

こういうのは当人が気にしてないってのが1番良いって知ってる。

 

だから、あえてどんなコメントにも――うちの高校とか学年とかクラスとかを名指ししてくるような、てか多分同級生の誰かっぽいのが来ても、おんなじ感じでスルー。

 

ムキにならなければ「違うかも……?」って勝手に思ってくれるし、そのうちに興味無くすからね。

 

……けど当分……1ヶ月2ヶ月は「アキノちゃん」な姿で出歩かない方が良いかなぁ。

 

今までも特定の動きはあったけど、しばらくはすごいだろうし。

 

や、女の子たちがわらわらと食べてって来てくれるのは大歓迎だけども、そうじゃない人とかも来ちゃうだろうし。

 

最近目立ちすぎた気がしないでもないし、ほとぼり冷めるまではもっとジャンガリアンハムスター極めた方が良いかなぁ。

 

今のところ、特段有名人になってウハウハとか……思ってはいるけども人生設計的な方向性が違う気がするし。

 

そうだ、僕はジャンガリアンハムスターたちを見習っているんだ。

 

覚えてない前世みたいに、地味なモブになるんだ。

 

【けどすごいね  きっとアキノちゃんならさ、痴漢で困ってる子とか、学校の先生に誤解されて困ってる子とかさ  ――悪漢に襲われてる子とかでさえ見かけたら、ほっとけないんだろうね】

 

あ、この子は最初から見てくれてる「ナナ」さんだ。

 

いつもいつも熱心にコメントくれるから名前で覚えちゃってる。

 

くせっ毛をどうしたらいいのかとか、中学ではそんなじゃなかったけど高校からは派手にしてみたいとか、いろんな相談に乗ったっけ。

 

最近だと「内気な子と仲良くなるにはどうすれば?」って相談も受けたし。

 

……けどなんか最近の出来事がドンピシャな気がするけど……きっと人助けって話題で思い浮かんだだけだよね。

 

ほら、そういう場面からイケメンに華麗に助けられるってのは少女漫画の伝統だし。

 

【女の子なら――誰でも良いの?】

 

「うん、良いよ?」

 

なんだか最近は闇に染まってきてる彼女のコメントへ、ダイレクトに投げ返す。

 

【草】

【ひどw】

【アキノちゃんったらばっさり】

【アキノちゃんってこういうとこあるよねー】

 

【………………………………】

 

「僕が役に立てるならね。 ま、さっきの子にも言ったけど、できる範囲で。 あわよくば感謝されて抱きついてくれたらそれで満足かなって僕自身の欲望で、女の子って言ってるだけ。 そうじゃなくても良いんだ。 男の人でも良いけど、女の子だと僕が嬉しいってだけ」

 

【えーw】

【正直でよろしい】

【アキノちゃん、本当に女の子好きなんだー】

【うちの女子校来たら食べ放題なのにー】

 

「それでさ」

 

僕のジョークな発言に盛り上がるコメント欄。

 

きっとその向こうで見ているだろう最古参の子に、僕なりに真摯に返事をする。

 

「助かった子……じゃなくても、その相手がさ。 1度で良いから、元気で笑ってる姿を見れたらそれで良いかなって。 人助けの報酬って、そういうものでしょ?」

 

【………………………………】

 

「見返りは求めたいけど、それは違うって思うんだ。 僕がこういうことするのは――しちゃうのは、ただ、手の届くところの誰かが泣いてるのがイヤだから。 ただ、それだけなんだ」

 

こんな感じでどうかな?

 

【……そっか  うん、ありがと、アキノちゃん】

 

ふぅ。

 

どうやら一応納得してくれたみたいだし、納得してくれなかったら次の配信でもお返事してあげたら闇も解かれるだろう。

 

いやぁ、今日も完璧にこなせた気がする。

 

それにしても一気に登録者が増えたってことは、現役女子たちが僕のことを――――――――。

 

 

 

 

「……やっぱりアキノちゃんはアキノちゃんだね。 あたしが憧れる、アキノちゃんなんだ」

 

そうつぶやいた彼女は――この春に「彼女」の配信に入り浸って学んだ「ギャル」な自分の映る鏡を見上げる。

 

「……あたしがあたしなのは、全部アキノちゃんのおかげ。 だから、これ以上は……」

 

 

 

 

「……なんだか、分からなくなっちゃった」

 

ぽすっと、ストレートな髪が彼女のベッドで弾む。

 

「でも。 ……アキノちゃんさんの考え方……好き、だな」

 

つい先日に、教室であったある出来事と――その中心の少女を、思い浮かべながら。

 

「……けど……やっぱり助けられちゃったら、そんなに冷静じゃ居られないのは、どうしたらいいんだろう……」

 

 

 

 

「わたしだけじゃない……そ、そうだよね……あんなに輝いてる人、だもん……いっぱい、好きな人が居るんだもん……」

 

カタカタと「アキノちゃん実況」へ文字を打ち続ける彼女が、机に置いてある――耳に掛ける部分が壊れている、厚いメガネを見つめる。

 

「……でも、もし、し、白鳥さんと紅林さんと話したのが本当なら……銀ど、アキノちゃんさんは……わたしなんかより……」

 

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