TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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32話 紅林さんは健康的な柔らかさ 2

「ね。 銀藤ちゃん。 あたしみたいなのって、嫌いかな」

「……むぇぇ……」

 

「………………………………」

 

「………………………………」

 

緊張感の漂う沈黙。

 

ほんと、何が起きたの??

 

「あ。 その……さ。 怖がらせてるんじゃないかなーって」

「い、いぇぇ……」

 

「そのどもりっぷりは?」

「気質なのでぇ……」

 

「敬語なのは?」

「あ、これはですますだから敬語じゃないです」

「あ、うん」

 

ついエラーを指摘すると、きょとんとしてる紅林さん。

 

おっと危ない、黒木さん黒木さん。

 

「……むぇぇ……」

 

「……まぁいいや。 そういや銀藤ちゃん、お姉さんの――アキノちゃんの話とか、して大丈夫系?」

 

「た、たぶん……?」

 

よし、「むぇぇ」のおかげで助かった。

 

「むぇぇ」は正義だね。

これからも存分に鳴こう。

 

「そっか。 ――あたしさ、アキノちゃんに何回も助けられててさ」

「え、1回じゃ――むぇぇ……」

 

やばい、至近距離のJKギャルの健康的な汗の匂いと制汗剤と立体美で脳が溶けている。

 

黒木さん黒木さん黒木さん。

 

「うん。 アキノちゃんに――あはっ、お姉さんのことだけど、きっといつも似たようなことみんなにやってるだろうから言わなかったかもしれないけどさ。 あたし、アキノちゃんに助けられたんだよね」

 

「へ、へぇぇ……」

 

クラスで聞いたよ。

 

なんなら毎回その話するたびに5割くらい増しになってたよ。

 

なんなら累乗だよ。

1.5×1.5を何回かやってたよ。

 

「けど、その前。 春休みの――まだアキノちゃんが始めたての、それこそ今からは信じられないほど初心者感丸出しで、配信アプリ付けるとスクロールした最後に居るくらいだったとき」

 

あー、そうだったね。

 

女の子ってだけで伸びるのが配信者だけど、本当の初期ってそもそも視聴者が0からひとケタだから、女の子目的の鼻の下とか伸ばしてる男からすら見つけられないっていう状態だったね。

 

「でもオシャレとかセンスは本物だったからさぁ。 あたし、いろいろ相談、乗ってもらったんだよね」

「むぇぇ……」

 

「たとえば……そうねぇ。 今のあたしって……あたしが言うのもあれだけどオシャレじゃん? けど、中学卒業したくらいじゃフツーだったの」

 

あー。

 

「高校デビューしたいんだけどどうしたらいいんだろ」ってふわっとしたの丸投げされたっけ。

 

でも当時はコメントすらぽつぽつだったから、暇つぶし兼女の子との会話兼配信を途切れさせないってので――あれ?

 

「そっからあたしのくせっ毛とか活かす方向性とか教えてくれてさー。 地味な自分変えたいんなら、いっそのこと、ど派手にギャルやってみればって言ってくれたりしてさー」

 

あっ。

 

「……でもちょっとやり過ぎた結果が、このまえアキノちゃんに直接助けられたときみたいなピンチになっちゃったんだけどねー」

 

え?

 

この子、あの相談相手……え?

 

いやいやそんなまさか。

 

まさかね。

 

大丈夫落ち着こう、そんな偶然はそうそう無いもの。

 

きっと気のせいだ。

 

「……てかお姉さんのこと、アキノちゃんって呼ばない方が良いかな?」

 

「むぇ? ……べ、別にぃ……」

「そ。 ならいいや」

 

そうだ、似たような相談は何人も居たんだ。

 

そもそも春休み、女の子の悩みと言えば大体似たようなもんで、それに1個1個答えてたらなんだか「ファッションとか教えてくれるらしいよ」ってことで女子中心に登録者が増えていって。

 

だから今の「アキノちゃん」が居るんだもんね。

 

あ、けど、あの中の1人ってことは……むむ。

 

この子のアカウント名さえ知れれば……いや、黒木さんの同類の僕がそんなこと聞くのはおかしいから無理だ。

 

ああ残念。

 

分かったらこの子の悩みだったのとか、もっと思い出せるのに。

 

「勇気出して聞いてみて、勇気出してその通りにしてみて、勇気出してギャルになり切ってみたら、これが意外と楽しくてさー。 お母さんなんか、もうすっかりあたしが中学からこんなだって思い込んでて、おかしくって」

 

1人でしゃべって1人で笑って1人で脚をばたばたさせているギャル。

 

……この子が中学までは地味……や、さすがに嘘でしょ……丸っきりの嘘じゃないにしても、あれだ、クラスの人気者でお調子者ポジだったでしょ。

 

そうじゃなければこんなに楽しそうじゃないもん。

 

僕はそういうのにくわしいんだ。

 

つまり、この子はギャルの幼虫だったんだ。

 

僕はただサナギにさせてあげただけ。

 

そこから羽ばたいたのはこの子自身の力なんだ。

 

「そんで、最初はキラキラした感じになろうとしてた。 だから、余計に黒木ちゃんたちみたいな子は目に入らなかった。 ……ううん、ムシしようとしてたのかな。 あたしは、こんな子たちみたいじゃないって」

 

「………………………………」

 

「けど、やっぱ友達は多い方が楽しいもんね。 ほら、黒木ちゃんからあたし、おすすめのネット小説とか教えてもらったし? あたし、そういうの疎くってしらなくって新鮮でさー。 あと、しゃべってると意外とおもしろいし」

 

どうやら紅林さんはギャル見習いだったらしいけども、なんか良い子だった。

 

そうだよね、見た目で決めつけは良くないよね。

 

でも見た目と言動で決めつけちゃうのは人の性。

 

大体の人が、それだけで人を決めつける。

 

しゃべり方とか距離感で、どういう人間だって判断する。

特に思春期、しかもしがらみの多い女子なら余計にね。

 

僕だって、それを利用してジャンガリアンハムスターになってるんだから。

 

「――だから、ありがとね。 あのとき助けてくれて。 ずっと言いたくって。 ……重くない、かな? 大丈夫?」

 

「え? うん、大丈夫」

 

「………………………………」

 

じっと僕を見てきている紅林さん。

 

彼女の活発な明るさを秘めつつも、少しだけ不安そうな顔が――じゃない。

 

「……だと思いますぅ……むぇぇ……」

「……そっか。 そうだよね、お姉さんのことだから分かるよね」

 

あっぶな。

 

なんかこの子と話してると「まるで僕と『アキノちゃん』を同一人物みたいに認識してる」って思わせられて、ナチュラルに返事しちゃったじゃん。

 

「あー、こっぱずかし。 あ、これ、お姉さんに言わなくて良いからね? あーでも……どっちでも恥ずいわー」

 

くせっ毛に囲まれた元気な顔つきが赤みを帯びている。

 

両手でほっぺたを包んでいるせいで、おてての下のおひじがふにょんと柔らかい2つを変形させている。

 

「………………………………」

 

ふむ。

 

……とりあえず至近距離で拝めたからよしとしよう。

 

「………………………………」

 

そうだよ、この子と話すまでは僕の机さんがじかに太ももに触れるだけの関係だったんだ。

 

「………………………………」

 

そっかー、あのときのアドバイスの中にスカート丈についてもあったなぁ。

 

「スカート丈は短ければ短いほどオシャレ!!」って力説した成果があの素敵な光景だって思うと、僕もなかなかやるじゃんって思う。

 

「………………………………」

 

「……?」

 

彼女のふとももの下の面と机さんとの接地面についての映像を展開していた僕は、ふと視線を感じて――深遠な思考のために床に落ちていた目線を上げる。

 

「……銀藤ちゃん、センセ、集合だって」

「あ、はいぃ……」

 

なんだ、てっきりメガネ越しに僕を見てたのかって思ったけど、僕の先に居る先生見てただけかぁ。

 

「あ、そうそう、銀藤ちゃん」

「むぇ?」

 

「あたしね。 好きな人、居るんだ」

「むぇ」

 

「たぶん、相手にとってはいつものことでも、あたしにとっては違くてさ。 あたしにとっての、1番なの。 だから――――誰にも渡したくないんだ」

「むぇぇ?」

 

「――あと、色仕掛けも試してる。 配信で言ってたの、本当なんだね」

 

そう言って彼女は僕を置いて先に行く。

 

………………………………。

 

「……むぇ?」

 

え?

 

何その急な告白……ダメだ、僕は生粋の女子じゃないから今みたいな急な話題転換には追いつけても理解はできない。

 

けど、なんで急に?

 

今そんな話、してたっけ?

 

あと、色仕掛け?

 

する必要ないくらい健康的じゃないの?

特に女同士だからっていろいろ甘いし。

 

「……むぇぇぇ……?」

 

んー。

 

……うん、気のせいだろう。

 

この子はどうやらギャルに適性あったみたいだし、ギャルな思考回路に染まっている副作用で話題が飛び飛びになるんだ。

 

なんかちょっと紅林さんの健康的なボディで思考回路にぶってたおかげで良く覚えてないけど、きっと関係ある話題も出てたんだろう。

 

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