TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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40話 紅林さんがこわい

「あかば……奈々ちゃん?」

「なぁにー♥」

 

「えっとさ、この前繁華街で助けたのとか、そんなに気にしなくて」

 

「――――――――忘れたくない」

 

ひぇっ!?

 

「あたしがアキノちゃんに助けてもらった大切な思い出――忘れた方が良いの?」

 

やば、綺麗系のマネキンみたいに固まった顔に光の宿っていないおめめ。

 

これはあかん。

 

「忘れるの? 忘れていいの? 忘れた方が良いの? 私の大切な思い出を? なんで? どうして? アキノちゃんそんなこと言うの? あたしただ1人だけがううんアキノちゃんと一緒の思い出なのになんでどうして」

 

ひぇっ……。

 

『闇が高まっている』『出番は近いな』

 

「……うん! 思い出は大切だね! 忘れるなんてごめんね、変なこと言っちゃった!! 2人の大切な思い出だもんね!!」

 

ヤンのスイッチ入ってるナナちゃん、もとい紅林さん。

 

今はこの子を全肯定しないと……性的な捕食が物理的な捕食になりかねない……!

 

「………………………………」

「………………………………」

 

緊張の沈黙。

 

テレビからは呑気にカラオケのBGM。

 

不釣り合いな一瞬。

 

紅林さんの荒い息。

 

「……だよねー♥ あ、お酒行っちゃう?」

 

「……さすがにダメ。 奈々ちゃんさんも僕も、まだ未成年」

 

「えー、でも制服着てないしー、言わなきゃ」

「バレたら店員さんも捕まっちゃうからね?」

 

ふぅ……心の中でひと息。

 

『慣れているな』

『ああ、詐欺師と同じように口だけは回るらしい』

 

『その本質が他人を騙くらかして不幸に陥れるところもな』

『最後には討たれるところまで実にそっくりだろうよ』

 

ちょっと僕の内なる声、うるさい。

 

一応良心の呵責もあるんだから静かにしてて?

 

『良心……?』

『この時代では自己擁護のことをそう表現するのだな』

 

「んもー、アキノちゃんはそういうとこマジメなんだからー。 地元の子とか、フツーに飲んでるのにー。 でもそんなマジメなところも好きー」

 

「はいはい」

 

僕は監視カメラにすがってみる。

 

なんとかこう……助けて?

 

具体的には、捕食されそうになったら……ね?

 

あ、でも、おじさんおすすめのチョーカーさんならまだしも、店長さんおすすめの矯正下着『漸くに出番か……』『腹は任せた。 我は首を守護る』着けてるの見られるのはさすがに恥ずかしいなぁ。

 

一瞬下半身に任せようと思ったけどやっぱ我慢しよ。

 

スーパーインフルエンサー(自称)が普段から矯正下着でデブらないようにしてるのとか、激推ししてくれてる子に知られたくないもん。

 

「と、とりあえず! 歌おっか!」

「えー、このままナメクジみたいにくっついてたいー」

 

ちょっ、紅林さん!?

 

そういう知識どこで手に入れてくるの!

えっちなのはダメなの、死刑になるの!

 

……あ、冗談交じりで僕言ったわ……ナメクジみたいな交尾とか……だってメン限だから良いと思って……。

 

『馬鹿か?』『馬鹿だ』うるさい。

 

「ぼ、僕、奈々ちゃんの歌声聞いてみたいなー。 歌、上手って言ってたからなー」

 

「今日はこのためにお気にの下着……え、ほんと?」

 

え?

 

お気にの下着?

 

スカートめくりあげようとしてる?

 

……が、我慢だ。

 

「うんうん、なんならノってきたら君の歌声に合わせて即興で踊りたくなってきたかも! ちょうど新曲の踊り付け研究中なんだー!!」

 

「アキノちゃんの踊りを世界で1番先にあたしが!? 歌う歌うー! ちょっと待ってて!!」

 

よし、ちょろ……いや、なんで離れてくれないの……?

 

タブレットとスマホを操作しつつも僕からぴったり離れない紅林さんの素敵な感触がたまらないけど、なんだか落ち着かない。

 

この感じは……うん。

 

中学の最後に大爆発した女の子たちの中で、こういう雰囲気だった子が居た気がするんだ。

 

つまり?

 

……何か知らないけど、どうしてここまでお熱になったのか分からないけど、この子は「食べて♥」だ。

 

 

 

 

「都合の良い女で良いからさぁ」

「うーん」

 

 

 

 

「あたし、体には自信あるんだよ? 見る? どこでも良いよ?」

「!! ……う、うーん」

 

 

 

 

「アキノちゃんの好きって言ってた女の子の発言一覧。 1日かけて全部観直してきたの」

「ひぇっ」

 

 

 

 

「――ねー。 ここまでしてるのに……だめぇ?」

 

何かの弾みで押し倒される形になってる僕。

 

僕の上に馬乗りになって、ふーふー息が荒くって、あ、待って、カーディガン脱いで汗がむわって来てる。

 

あ、これあかん。

 

食べられる。

 

食べられたら気持ちいいし嬉しいしこれからずっと都合の良い子になってくれそうだけど……地味系スローライフが壊滅する……!

 

どっちだ?

 

どっちを取れば良いんだ!?

 

やばい、これはたぶん人生を左右する難問だ。

 

前の僕なら何も考えずにとりあえず据え膳いただいてたけど、ちょっと前に真人間になろうとしたあの決意が……いや、どうでもいいか?

 

いやいや。

 

いやいやいや。

 

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