TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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47話 黒木さんはよくばり

「お、お姉さん……色仕掛けに弱そうだから……」

 

「うん、それは自覚してるし公言してるね、動画とかで」

 

「だ、だから、お姉さんを……か、体で堕としとけば、妹の銀藤さんも離れないんじゃないかって……それで……」

 

「うんうん、動機は理解したけど、それ男相手にやったら好きに使われるだけだからね?」

 

「あ、あわよくば、銀藤さんと姉妹丼……」

「その発想は爛れているからやめとこうね?」

 

「でも、お姉さんが相手だし……ど、道具とか使えばなんとか……?」

「うん! そっちから思考外そっか! あと道具とか言わない!」

 

「だって、アーカイブで道具とかおもちゃとか……」

「あ、うん、教育に悪かったのは自覚してるからごめんなさい」

 

おでこでごっつんした僕たちは、しばらく悶えていた。

 

……いや、さすがに偶然だよ?

 

彼女が真上に乗ってきたから彼女の長い髪の毛が僕のお鼻をくすぐって、だからとっさにくしゃみっていう反射が起きちゃったんだもん。

 

けど、あれがなければたぶんぷっつんしてた。

 

今ごろはぐっちょぐちょだった。

学校生活もぐっちょぐちょだった。

 

そうして数時間してから我に返って頭抱えてたと思うし?

 

それを思えば偶然に感謝しないとね。

もったいなかったけども。

 

『嚔を起こさせた我に感謝せよ』

 

うんうん感謝感謝……え、なんだって?

 

「……けど、ぼ……妹! 妹は、君のことないがしろにしたりしないと思うよ! うん!」

 

「……でも、最近、銀藤さんの周り、いつも誰かがずっと居て……」

 

あー。

 

「……最初の1週間は、話す相手……わたしだけだったのに……わたしも銀藤さんとしか、は、話すことなくって……」

 

あー。

 

「……だから。 心配で……も、もしかしたらわたし……ひとりぼっちに戻っちゃうんじゃないかって……」

 

彼女になんとか付けさせたメガネさんのおかげで、ちゃんと適切な距離を取り、穴の空くほどに光の差さないほどに僕をガン見してくることもなくなっている。

 

「……中学校でも、そうだったんです……お友達、何人しか居なくって……その人たちが休むと、わたし、お昼休みもひとりで……」

 

おっふ。

 

心えぐってくる回想だ。

 

ちなみに僕の前世さんも「分かる」って言ってる。

つまりはそういうことだ。

 

こういう子たちは――紅林さんとか白鳥さんみたいに華やかな学生生活送ってないタイプは、深くて狭い交友関係を持っている。

 

クラスの誰とでも話ができて盛り上がる――逆に言えば、それだけの人数に関心の分散する陽の気を持つのとは違って、少ない人数でお互いにしか分からない話を分散させずにするんだ。

 

その代償として、その友人が休んじゃったり別のクラスになっちゃったりすると……とまあそういうこと。

 

それのどっちが良いとか悪いとかじゃない。

 

ただの性格、ただの気質だ。

 

それに陽の子たちも陰の子たちも口説けばどっちもかわいいけないいけない煩悩退散輪廻転生。

 

「で、でも、うちのクラス、結構仲良くなった……って妹から聞いたよ!」

 

「は、はい……でも、それは……銀藤さん、だから、です」

 

「へ?」

 

 

何言ってるのこの子。

 

僕のおかげ?

 

違う違う、紅林さんグループ、彼女たちと仲が良いやんちゃ男子グループ、白鳥さんグループ、彼女たちと仲が良い真面目グループがジャンガリアンハムスターグループとゴールデンハムスターグループに混ざってきただけだよ?

 

「た、体育でわたしを庇って両腕複雑骨折した銀藤さんを心配して……紅林さんと、白鳥さんがお世話、焼いてて……驚異的な速度で完治したけど、それでも仲良くなったから、銀藤さんのそばにいるわたしたちにも、話しかけてくれるようになって……」

 

あー。

 

……だよね、そもそもの発端はあれだよねぇ……。

 

あのときもっと別のやり方は……なかったかなぁ、あれでもぎりぎりだったし。

 

この子、ひ弱だし、ドッヂボール1発で入院とかありえたからなぁ……。

 

「……しかも紅林さんは、そのお姉さんに路地裏で連れ込まれそうだったのを助けてもらって……白鳥さんは、痴漢から助けてもらって……2人とも、たぶん、すごく感謝してて……だから、その妹の銀藤さんに……」

 

「あー」

 

そうやって列挙されると、いやぁ実にいろいろあったね。

 

紅林さんは僕の放課後のテリトリーに居たからで、白鳥さんは電車が一緒だったからだけどね。

 

偶然って怖いけど、おかげであの子たちが今日も元気――すぎたくらいだから、うん。

 

まぁ、些細な代償ってことで。

 

「……そんなお姉さんが……銀藤さんが……誰かのモノだって思っちゃったら、止まらなくなって」

 

「うん! これは……そう! お揃い! たまたまお店で2個売ってたのを姉妹揃って買っただけだから!」

 

「そう……なんですか」

「そうなんだよ! ほら見て! 別に有名ブランドとかプレゼントされるようなものじゃないから!」

 

「わたし、分かりませんけど……そう言うなら」

「うんうん! ただの姉妹お揃い! それ以上の意味はないから!」

 

眼鏡の奥でまーた光がなくなってた。

 

危ない危ない。

 

「……そういうわけで、お姉さんを襲っちゃって……でも、そういうのも好きって、アーカイブで言ってたし……」

 

「それについてはごめんなさい」

 

本当にごめんなさい。

 

黒木さんの教育に悪いことばっか言ってたわ……メン限で。

 

帰ったらちょっと全部の雑談とか観直そう……んでこういう発言カットしとこ……。

 

「でも友達なんだし、君と妹が離れるだなんて」

 

「か、彼氏、できた友達が……疎遠になったことがあって……」

 

「あー」

 

女子は特にそうだからねぇ……長年の女友達よりも、ぽっと出の彼氏をためらいなく取っちゃう本能あるからねぇ……。

 

「だ、大丈夫! 僕の妹には彼氏なんてできないし!」

「ほんとう……?」

 

「うん! そ、そう! だってほら、僕、女の子好きでしょ?」

 

「え、はい。 …………えっ」

 

「こういうとこも姉妹揃っててさー! だから、彼氏はない! うん!」

 

「………………………………そう、なんですか」

 

よしよし、これで万が一にもないだろう、学校での僕がオラオラ系かゴールデンハムスターの誰かに持ってかれる心配もなくなったはずだ。

 

「……そう、なんですか。 銀藤さんが、…………」

 

よしよし、この子もいつもみたいに何かを考える顔つきになった。

 

これでもう大丈夫。

 

「……ふぅ」

 

「…………女の子が好きなら…………わたしでも……でも、お姉さんと銀藤さんって……」

 

手元の本に目線を落としながら、たぶんその内容をぶつぶつしゃべってるだけだろう彼女。

 

こういうときは気にしないで僕も読書読書。

 

ふんふん……あ、この小説の主人公、かなりのクズだなぁ。

 

たくさんのヒロインたちにちょっかいかけつつ、「いや、俺は誰とも付き合う気はないから」とか、告白されて堂々返してる。

 

いやあ分かるよ?

 

ラブコメは付き合っちゃったらおしまいだからね?

 

でも、そういうのってやっぱ、男として最低じゃない?

 

一応十数年女子やってる僕からしても、ないわーって思うよ?

 

『自覚はあるのだな』

 

自覚?

 

なんのこと?

 

まぁいいや、今日はほどほどに読書大会して――さすがに夕食以降一緒に居て手を出さない自信はないから、適当な理由つけて帰ろーっと。

 

……おふろとかすっごく楽しみにしてたけど、それはまた別の子に。

 

…………いやいや、さすがに偶然が重なりすぎてちょっと怖いし、しばらくはおとなしくしとこ……うぅ、女体……。

 

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