TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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61話 楽しいデート(死へのカウントダウン)5

「ア、アキノちゃんっ! お待た――!?」

 

「うん、今来たとこ」

 

少し日が陰ってきた夕方。

 

夜はこれからって時間帯、僕が普段放課後に店長さんとこ行って夜の姿になり始める時間帯。

 

この子と出会った時間帯。

 

それにふさわしいとすれば、

 

「……ホストじゃん」

「うん、それ意識した」

 

3度目の駅前。

 

そこで立っていた僕は――待ってただけで何人かの女の子に声かけられるほどの姿になっていた。

 

髪の毛はエクステを外して最低限の長さにしたところにカラーのエクステを絡ませる感じ。

 

前髪は後ろに流し――オールバックとは行かないけども、少なくとも男装女子たちの演劇に出てくる男役のレベルにはなっているはず。

 

顔は元から綺麗系の美人――自分のことだけども客観的判断だ――だからちょっとばかりのお化粧で男らしさを演出。

 

今どきは男でも簡単なお化粧はするし、こういう場所で見かけるホストさんたちはけっこうハデだから参考になるね。

 

服は――ザ・ホストって感じで、色つきシャツの上に細身のスーツ。

 

……ちょっとやり過ぎた感はあるけども、思ってたとおりにナナちゃんもおい紅林さんもかなり派手なギャルメイクにしてきてるから釣り合ってるね。

 

「………………………………」

 

「惚れちゃったかな?」

「うん……」

 

む、おちゃらけただけなのに、顔を真っ赤にして下向いちゃった。

 

そんな紅林さんは――まさにギャル。

 

派手の極み。

 

でも下品じゃなく、かつ今どきだと「そういう」待ちしてるって思われないように、他の子と被らないブランドとかノーブランドかな?を合わせている。

 

「あ、美容院行ってくれたんだ」

「……うん」

 

「ありがと。 僕とのデートのためにしてくれるだなんて、嬉しいよ」

 

とりあえず全力で褒めて褒めて持ち上げる。

 

紅林さんはなんか怖いからね、上機嫌にさせ続けないとね。

絶対お持ち帰りしたい子に接するように、お姫様扱いしないとね。

 

『此奴……』

『もうヅカ系のホストやりゃあ良いんじゃないッスか?』

『複数の刃物が同時に刺さる光景が目に浮かぶぞ』

 

「じゃあ行こっか。 楽しい夜にしようね、ナナちゃん」

 

「      」

 

動かなくなっちゃった彼女の手を握ると、びくりと跳ねる。

 

けども――拒否のそれじゃない。

 

なら、お望み通りにリードしてあげよう。

 

 

 

 

「……綺麗」

「うん、夜景って綺麗だよね」

 

僕たちは、とある市庁舎――の最上階の展望スペースに来ている。

 

あれから物言わぬ彼女を引っ張って、適度にお店を冷やかして歩いた。

それで日が暮れたのを確認してから――ここだ。

 

「町が、こんなに綺麗に見えるだなんて」

「たまには上から見下ろすのも悪くはないよね」

 

まだ早い時間とあって、お客は僕たちしかいない。

つまりはこの夜景スポットは、僕たちの貸し切りだ。

 

「………………………………」

 

ちらちらと見てくる彼女の視線が心地よい。

 

ああ……今の僕もまた輝いている。

 

あ、さすがに「この夜景も、君の美しさには負けるよ」とは言わないよ?

期待してるっぽいけども。

 

それ言っちゃうとさすがに……ねぇ?

 

『ここに来るまでで手遅れだと思うッス』

 

建て替えてから数年と新しいからか窓も内装もぴかぴか、イートインスペースも自販機もあるっていう至れり尽くせりな最上階。

 

まぁさすがに屋上には出ないけどね……ほら、なんか最近の僕たちってば事故率高いから……。

 

『流石に高層階からの落下からは護れぬ』

 

そうそう、いくら僕が鍛えてるって言っても、せいぜい3階から落ちてもどうにかなる程度。

 

僕はただの高校生女子なんだ。

過度なリスクは取らないようにしないとね。

 

「……ほんと、アキノちゃんってすごいよね」

「そう? ありがと」

 

今日は言葉少なな彼女。

 

うん、そのためにこの子が好きそうなイケメン風にしてるからね。

今日は穏便に済ませるって決めてるから、そのための準備としての格好だ。

 

端から見たらホストとギャルって組み合わせにして、外野から話しかけられづらくしているのも作戦のうちだし。

 

「………………………………」

 

ぽーっと見てくる紅林さん。

 

その視線をさりげなく受け流しておかないとお持ち帰りしたくなっちゃうから控えめに。

 

けども見惚れてくれるおかげで最近の怖い紅林さんは発動しない。

 

僕の作戦は完璧だね。

 

『寧ろ膨らませて先送りにしているのは気のせいか?』

 

うんうん気のせい気のせい。

 

「……これ、あたしだけ? それとも他の……」

 

「君だけだよ」

「ぴゃいっ!?」

 

む、何か要らないことを考え始めたぞ。

 

こういうときは壁ドンだ。

女の子が憧れるシチュ、堂々の第1位。

 

そりゃもちろん擬似的にベッドに押し倒されげふんげふんシチュだからね。

 

女の子はこういうのに弱いんだ。

本能的にも文化的にも。

 

「今は、僕のことだけを考えていてほしいな。 ……ね?」

 

「     」

 

よしよし。

 

今日はとにかく押せ押せ作戦。

ひたすらに押して押して押し続けて、上げて上げて上げ続けて。

 

そうして良い気分になってもらって解散。

 

そうすれば、女の子って生き物は――まぁ1ヶ月くらいは真っ暗な瞳にならないもの。

 

「ほら、僕の目も、君しか見ていないよ?」

 

「     」

 

じっと目を合わせ続けたりして、とにかくあの怖い雰囲気を封印。

 

とろとろにしちゃえば女の子はこっちの思い通りになるちょろい生き物だからね。

 

今日でしっかり溶かさないとね。

 

『悪手では?』

『地獄へダイブしようとしてるッスね』

『我らだけで持つのか……そう願おう……』

 

 

◆◆◆

 

 

ぎりぎり年内に終わらなかったのですが、アキノちゃんの年内投稿は今回でおしまいです。

 

次回は1/6月曜日より、また基本毎日投稿となります。たぶんあと数話です。

 

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