TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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65話 とりあえず笑わせて落ち着かせよう

ひとしきり走って、何やらのイベントが開かれていたらしい広場に。

 

あ、黒木さんはジャンガリアンハムスターだから走れないって知ってたし、あれから普通に抱き上げてお姫様抱っこして僕が運んだよ。

 

この子に走らせたら呼吸困難と過呼吸とその他いろいろを発症しそうだったからね。

 

そんなわけで、3人と僕は円形の広場を囲むようにして設置してあるベンチにまでたどり着いて、きょとんとしてされるがままだった黒木さんを下ろし、急に走って息の荒い紅林さんと白鳥さんも促して座らせて。

 

「はーっ、はーっ……あ、アキノちゃん……」

 

「これ以上は逃げないから、まずは息、整えてね」

「ほ、本当だよ? じゃないとあたし……あー、苦しい……」

 

ギャルが真っ赤な顔してハァハァ言って胸元はだけてるもんだから、彼女持ちの野郎どもが紅林さんにくぎ付けになっている。

 

そして彼女に見とがめられている。

 

ざまぁ。

 

男の体で彼女作ってる時点で君たちはそれくらいの罰を受けるべきだ。

 

「……け、けど、どうして……」

 

「3人の誰かを選ぶくらいなら、3人全員か、誰も選ばないかしかなかったんだ」

「……ふふっ、すごい言い訳ね……はぁっ、急に走ったから息が……」

 

白鳥さんは、昼に別れたからか、紅林さんほどには疲れていないらしい。

 

けども白鳥さんの胸で上下するでっかいのに野郎どもがまた引きつけられて――あ、何組かケンカになってる……あ、1人ほっぺ引っ叩かれてる。

 

ざまぁ。

 

こんな休日の夕方にデートとかしっぽりするつもりだったんだ、それくらいの罰を受けるべきだよね。

 

「……あ、あの……ぎ、銀藤さん……」

 

「バレてるのは分かってるけど、この格好のときは『お姉さん』でお願い。 じゃないとアイデンティティー的に……こう、頭が混乱しちゃうんだ」

「え……あ、はい……」

 

そういえばこの前もだったけども、お姫様抱っこすると両手をきゅっと胸元で握って脚もしっかり曲げて「さぁ運んで♥」ってなるの、本当にハムスターみたいだね、君。

 

唯一運ばれたおかげで平気な顔してる――まぁ総HPとかスタミナは他の2人の半分以下なんだろうけども――黒木さんは、新しいメガネさんが慣れないのか、くいくいと動かしながら僕を見上げてきている。

 

彼女は、メガネを外して拭こうとして一瞬だけ前髪を上げてメガネも取って素顔が出て、んでそれを見ていた野郎どもの1人が……あ、ビンタされてフラれてやんの。

 

ざまぁ。

 

この子の素顔を見た代償としては安いもんだ、それくらいの罰は当然だよね。

 

「……そろそろ良いかな?」

 

「ふぅ……ん。 まずは逃げなかったのは偉いよアキノちゃん」

 

息を整えた2人が、顔を上げてくる。

 

「ええ、そうね。 動機はともかく、あのまま逃げだそうとしていたら、銀藤さんのお家に3人で行くことにしていたもの」

 

「ひぇっ」

 

身バレって怖い。

 

女の子の結束ってもっと怖い。

 

「け、けど、本当にどうして……」

 

「まずは紅林さん、バッグ、持ってきてくれてありがと」

 

まずは荷物の回収。

 

紅林さんの貴重なふとももが押し潰されるのを見ているのは心苦しいんだ。

 

「あ、うん。 けど、これめっちゃ重いんだけど」

「今日の着替え3着分とか、お化粧道具とかその他いろいろが詰まってるからね」

 

「……もしかして、私たち3人と、毎回別の格好で……?」

「うん。 これでも紳士で真摯に向き合ってたからね」

 

「……あたしのとき、男の格好してたんだけど」

 

「嘘!? 私のときは、今とはちがうけど女の子の……」

「わ、わたしのときは、もっと安心できるスカートで……」

 

紅林さんのスポーツしてる腕力でも重そうにしているボストンバッグは、確かにずしりとしている。

 

この重さが安心感を与えてくれるんだよ?

 

「……アキノちゃん、体幹すごいよね……あと腕の筋力も」

「一応鍛えてるからね」

 

1日2時間くらいは、何かしらね。

 

「……それも、もしかして女の子のため……」

「男は腕力だからね。 肉体は女だけどさ」

 

素直に感心して僕の腕と脚を眺めてくれる2人の視線が心地よい。

 

ふふ……やっぱ男は筋肉だよね。

 

鍛えてるのを褒められると男は嬉しくなっちゃうんだ。

 

「で、でも、今着てるの、この前見た……」

 

「この格好での普段着。 適度に目立たないから好きなんだ。 家を出るときはこの格好だったんだよ」

 

おしゃれすぎない範囲で「アキノちゃん」としての威厳を保てるぎりぎりのラインを見極めたシャツと上着にスカートと靴を見てくる3人。

 

そしてちょっとだけエクステで伸ばしてる髪の毛。

 

やっぱこれだよね。

 

ポイントは、分かる女の子にはひと目で分かるってこと。

 

イヤリングは穴を開けない痛くないやつだし、最近もらったチョーカーもよく馴染むようになったし、それ以外のは服の下だから目立たないし。

 

「……じゃーさ、そろそろ」

「聞いて」

「良い……かな」

 

「いいけど、その前に」

 

僕は、黒くなり始めようとした3人の目を順に見て、手を差し出す。

 

「はい」

 

「……?」

「え?」

 

「こ、こう……?」

 

……ぽすん。

 

……僕が差し出した両手に、なぜか立ち上がってきた黒木さんが――両手を丸めて、載せてきている。

 

「………………………………」

 

ああ。

 

黒木さん、君っていう子は。

 

「………………………………?」

 

「……ぷふっ。 黒木ちゃん、あんたわんこなの?」

「え? え?」

「……あはははっ。 黒木さん、かわいいわよあはははっ」

 

それを見てけらけらと笑う紅林さんにくすくすと笑う白鳥さん。

 

そんな2人を見て、きょとんとしている黒木さん。

 

……ああ。

 

やっぱりこの子たちは、かわいいね。

 

できればこのまま笑って解散したいところだけども――まぁ、さすがに無理だよね。

 

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