TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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69話 詠唱中(破)

「ただの、『良い子の白鳥さん』」

 

「それが、私の存在意義だったって前に言ったよね」

 

「先生に媚びて、親に媚びて、友達に媚びて、クラスメイトに媚びて」

 

「みんなが好きそうな『イヤミのない程度の優等生』を演じて」

 

「媚びて演じて媚びて演じて」

 

「だから、気がついたら私、なんにも持ってなかったの」

 

「紅林さんみたいに、見た目とそれっぽいしゃべり方からだけでも好きな生き方選ぶ勇気もなくって」

 

「黒木さんみたいに、好きなことに好きなだけ夢中になって、ずっとずっと幸せそうな世界に浸ることすらできなくって」

 

「私はいつも」

 

「いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも他人の目ばっかりを意識していたの」

 

「それが普通だったの」

 

「それが当たり前だったの」

 

「息をするように人の目を気にして人が喜ぶような動きをして」

 

「その結果が『委員長よりも委員長らしい白鳥さん』なんだって」

 

「笑っちゃうよね」

 

「ただ媚び続けてただけなのにね」

 

「もちろんそれに見合う努力はしてきたわ」

 

「運動だって苦手な競技とかは放課後に、先生とか仲良くなったお友達に教えてもらったりして」

 

「勉強だって毎日きちんと予習復習もして」

 

「1番とは言わないけど『さすが白鳥さん/委員長/優花/自慢の娘』だって言われるように」

 

「できすぎるときはわざとポカしたりして親しみやすくしたりして」

 

「最低でしょ?」

 

「こんな私の本性、見抜く子も居るの」

 

「その子たちからの視線が何よりも怖いの」

 

「なんにも言わないけど『分かってるんだぞ』って言う目が怖いの」

 

「だから高校に入ってそんな目がなくなってるから失敗できなくて」

 

「家を出てからううん私の部屋の中以外は一瞬でも気を抜けなくって」

 

「だからかな外で見かけた困っている人とかを私なんかが手を貸さなくても大丈夫かも知れない人にまで手を貸してその結果遅刻が積み重なって」

 

「でもちょっと安心したの安心したんだよだって『優秀だけど朝は弱いんだ』って一面つまり努力じゃどうしようもない部分ならかえって親しみやすい欠点になるかなって思って」

 

「でもね」

 

「そうはならなかったの」

 

「銀藤さんがみんなに言ってくれたから」

 

「言ってくれちゃったから」

 

「おかげで私の評価は上がり過ぎちゃったの」

 

「まさかあんなに私のこと見られてただなんて思わなかったの」

 

「おかしいよね」

 

「笑っちゃうよね」

 

「だってみんなに見られるために良いことをしていたはずなのに気がついたら自分じゃ止められないくらいにやり過ぎてたんだってあんまり話したこともない子に気づかされたんだから」

 

「だから気になったの」

 

「気がついたら目が吸い寄せられていたの」

 

「目立たない見た目だし声も小さくておっかなびっくりなのになぜか気になったの」

 

「ううんそうじゃない」

 

「痴漢から助けてくれたときから気になってたんだ」

 

「そうだよなんとなく分かってたの」

 

「だって銀藤さんううんお姉さん、嘘が下手だから」

 

「最初は違和感程度だったけど1回意識すればちょっとした会話でぽろぽろ銀藤さんが漏れてたんだよ」

 

「それでも私の中での違和感程度だったしそうかもしれなかったとしても素敵な人だからそのままにしておこうって」

 

「でもだめだった」

 

「私、高1になって初めて恋をしたの」

 

「それも女の人に」

 

「ううん同い年の女の子に」

 

「その子は私にないものを全て持っていたの」

 

「学校の休み時間にずっと黒木さんたちと好きな作品で話し続けて盛り上がるほどに熱中できる何かと」

 

「放課後とかお休みの日に紅林さんみたいに派手で輝いてるお姉さんになってみんなに憧れられる存在に」

 

「対して私は何?」

 

「ただの『良い子』」

 

「それ以上のものはなんにもないの」

 

「お姉さんは自分が好きなことを好きなようにやってた」

 

「好きなメイクと好きなファッションと――好きな女の子にちょっかいかけて回って女の子食べ歩いてるほどに悪いことまでしてて」

 

「それだけ『好きで好きでたまらないこと』だらけだったの」

 

「それが素敵だったの」

 

「だってどうしようもないくらいに好きだったから」

 

「お姉さんが女の子を好きで好きでしょうがないくらいに」

 

「お姉さんがたくさんの女の子たちに振りまく愛と同等だって信じたい気持ちをお姉さんだけに向けていたから」

 

「なのにこれは何?」

 

「おかしいよ」

 

「今日楽しかったからたとえ選ばれなくってもしばらく静かに泣いてすっきりして諦めようって」

 

「きっと綺麗で運動もできて明るくてファッションっていう同じ趣味がある紅林さんとか放課後も授業中も隣同士の席でいつも楽しそうに話してる黒木さんが選ばれるんだろうなぁって」

 

「私なんか魅力もなんにもないからどうせ選ばれないんだって」

 

「だからほとんど諦めていたの」

 

「それが『良い子』としての私のすることなんだって」

 

「だから改札に走ってきてくれたときは産まれて初めて嬉しくて泣きそうになったの」

 

「だってこんな『良い子』なだけの私でも選ばれるんだって」

 

「でもそうじゃなかった」

 

「お姉さんは3人を全部選ぶっていう悪い人だった」

 

「――だから私も『悪い子』になるの」

 

「だから許してね?」

 

「ごめんなさい」

 

「でもどうしても諦めきれなくて苦しくて悲しくてもどかしくて吐きそうで泣きそうでどうしようもないの」

 

「そう思ったら痴漢の後に持たされたグッズを手に取ってたのに」

 

「でも大丈夫だよ」

 

「諦めるから」

 

「今世での恋は諦める」

 

「代わりに来世では、ね?」

 

「ごめんなさい」

 

「でも許してください」

 

「私が『良い子』から『悪い子』になった原因は――あなたなんだから」

 

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