TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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71話 詠唱から発動までのラグってあるよね

「ねぇ、あれって……」

「は、離れてよ……?」

 

「あれって、そういうこと……?」

「ってことは、やっぱり……」

 

さっきまで人でいっぱいだった広場は、今や僕たちと――すっごく遠巻きに数人程度。

 

何故か静まりかえってるから、遠いところに居る女の子たちの会話が届いてくるレベルになっている。

 

……おかしいなぁ……ここってば駅から人が流れてくるはずなのに、こんなに広いのに、こんなにポップな飾りつけされてるのに、楽しんでるのは僕たち以外は10人程度だよ?

 

なんでだろうね?

 

みんなが無意識で避けたくなる何かがあったのかな?

 

『せめて現実を見よ』

『恐怖』

『分割とか考えるほどにまで追い詰めたんスか?』

 

うん、分かってる。

 

分かってるんだ。

 

「………………………………」

「………………………………」

「………………………………」

 

紅林さんも白鳥さんも黒木さんも、何分も息継ぎしかしない思いの丈を語ったせいか、すっかり瞳も光を映してないし、表情もなくなってるし、微妙にうつむいてるから怖いことになっている。

 

ていうかこの子たち、今の、同時に語り出したよね?

 

もはや協調性も行き着くところまでたどり着いてるよね?

女の子ってどうしてこんなにもシンクロするんだろうね?

 

僕は男だからさっぱり分からないなぁ……?

 

あと、僕がんばって3人分聞き取ったよ?

 

君たち僕のことなんだと思ってるの?

 

聖徳太子なの?

僕、女なんですけど?

 

教科書には厩戸皇子とかすっごく格下げになってたから前世の僕がびっくりしてた、あのびっくり人間なの?

 

いやまあ、女の子の相手するならこれくらいはがんばるけどさぁ……あと命の危険もあるからさぁ……。

 

「アキノちゃん」

 

「ちょっと待ってね」

 

「………………………………」

 

あ、「待って」ってのは素直に待ってくれるんだ……良かった。

 

さすがの僕でも分かる――これは、1回でもミスったら終わる。

 

いくら僕でも3人同時に飛びかかられて、リミッター外れた状態の女の子たちからすごい力で攻撃されたら――僕からはこの子たちを攻撃できないから、お巡りさんが駆け付けてくるまでに重症を負いかねない。

 

『重症で済みそうッスか?』

 

ごめん嘘ついた普通に3人から首絞められたら死ぬよね……首をこきゃってされたり、おなかとか同時に飛び乗られたりしたら苦しむのは確実。

 

まぁそうなったらそうなったで、もみくちゃにされながらの走馬灯を楽しめそうではあるけども……ふぅ……落ち着こう。

 

焦ったところで、1手のミスでおだぶつなんだ。

 

逆に考えよう、この子たちは僕の答えを待っている。

この子たちは、僕の返事を聞くまでは動かない。

 

そして――「3人とも」とか選ばずに「誰か1人」を選べば、少なくとも1人は我に返って僕を攻撃しないで防衛に参加してくれるだろうから、戦力差は一気に2対2になり、均衡が保たれる。

 

ひっかき傷程度はお互いに残るかもしれないけども、それ以上には――バランス崩して転んだりしない限りは大丈夫なはず。

 

『その選択は惨劇を先送りするだけでは?』

 

そうなんだよなぁ……選ばなかった子たちが今僕を道連れにしなくとも、後日――夜中に部屋に侵入してきたり、学校でとかでサクッとやってきたらもう防げない。

 

僕も日常系の範囲内の人間だ、1日のうち数時間は行動不能になるし、襲撃を気にしながら生活するなんてのは……持って、長くて1週間。

 

それ以上は持たない。

 

はたして選ばなかった子たちが1週間過ぎてからも諦めてくれるかって言えば……ねぇ?

 

『理解しているのなら何とかせよ』

『其れが甲斐性ぞ』

 

分かってる。

 

分かってるって。

 

「アキノちゃんさん」

 

「うん、真剣に考えてるからもうちょっと待っててね」

 

「………………………………」

 

よしよし、少なくともこの場で答え出す雰囲気出してれば待ってはくれる。

 

さて――じゃあ、誰を選ぶか。

 

紅林さんは――選ばないと危険なのNO.2。

 

素で運動神経良さそうだし、ぶち切れてたら何するか分かんないとこあるし、いざとなったらギャルたち焚きつけてチンピラさんたちとか召喚しそうだし。

 

「何者でもない」とか言ってたけど、やっぱ君、普通にクラスの陽の気を持つ人たちと速攻で仲良くなってリーダー格になる素質あるもん。

 

あとさ、たかが高校生が自分の存在に対して強固なアイデンティティー持ってるのはレアケースだからね?

 

社会人の大半だって、なんで自分がその会社でその仕事してるのか分からないレベルなんだからね?

 

……この子、僕を始末するためなら自分の体を使ってでも――とかしかねない気迫があるからなぁ……NTRは本当に脳みそ破壊するからやめよ? ね?

 

一方の白鳥さんは――たぶん、1番安全。

 

闇ってる今だからこそあんなこと言ってたけども、この子は根っこのところが良い子なんだ。

 

じゃなきゃ、教室で先生に叱られても言い訳もしないような人助けを――人に見られてるって思わないで何回もやってるとか、あり得ないし。

 

あそこまで躊躇なく自分を犠牲にしていたんだ、あれは小さいころから言われなくてもしていた行為。

 

そうして損するところも含めての、根っこが善人な彼女。

 

だからたぶん理性が勝っていきなりやばいことを――ってのはないはず。

 

ただし完全犯罪とか思いつけそうだし実行できそうだから、黒い笑顔でさくっとやられる可能性は残り続ける。

 

……ふふ。

 

何がおかしいって、これ、まだ安全な方の2人なんだよね。

 

ふふふ……怖い。

 

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