TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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77話 ハイエース(風評被害)

「君たち! 大丈夫か!」

「もう大丈夫だから落ち着いて、あなたたち! 大丈夫だから!」

 

完全に人の波で占領された、夕日も沈んだ繁華街。

 

警官たちに保護された3人と、制圧された「チンピラさんたち」、大取物に協力した興奮で騒いでいる、善意で動いた人々が喜びを分かち合い、声も聞き取れないほどの状況。

 

「ち、違うんです!」

「アキノちゃんが……アキノちゃんが!」

「つ、連れてかれて……」

 

「そ、そうです! この子たちを守るように抵抗していた子が、なぜか一緒に走りだして……」

 

「いえ、抱えられていたわ! かわいそうに……」

「そうだったかも! 私、見たし!」

「そうよ、一瞬の隙を突いて抱え上げられてたわ!」

 

人は他人のことを真剣に見ていないし、記憶なんて瞬時に変わるもの。

 

ゆえに、当初は「少女3人をしつこくナンパしていた不良たちを成敗した」だったこの事件。

 

――数分後には、「卑劣な誘拐犯たちが、友人たちのために抵抗していた少女を痛めつけて動けなくし、数人がかりで拉致したという大犯罪」へと飛躍していた。

 

その「事実」はその場に居た人々の伝言ゲームに、SNSでのつぶやきで不確実が噂を呼んで、大騒動へ。

 

善意のデマが拡散し、もはや収拾はつかない。

 

「アキノちゃん……どうして……」

「あの痴漢に、恨まれてたって……」

「ま、まさか、わたしたちのためにって……」

 

――そうして、中心の3人は――銀藤明乃に連絡を取ろうとして失敗し、そのままスマホを覗き、SNSでつぶやかれている拡大解釈に妄想が混じった現状を「真実」と思い込み。

 

「――許せない許せない許せない許せない許せない許せない」

 

「お姉さんを酷い目に遭わせたら、私……ふふ、ふふふ……そっか、これが、人を殺したいって気持ちなんだ……」

 

「か、過剰防衛でも、きっとそこまで責められない……やっぱり、分割……お姉さんへとは違って、泣き叫ぶくらい痛くしてから……」

 

静かに――闇を拡大させていた。

 

 

 

 

「……嬢ちゃん」

 

「………………………………」

 

「……聞こえてるか?」

「え? あ、はい」

 

そっか、僕ってそう呼ばれる性別だったね。

 

「攫っておいて言える立場じゃないが……というか、攫わされたと言うべきか……」

 

「そこは攫ったってことにしないと、おじさんたちの報酬無いんじゃないです?」

 

「……おじさん……」

 

「? ……あ、ごめんなさい、お兄さんですね、お兄さん」

 

ぶろろろろ。

 

四角い車の中で、僕の隣に座っている――スタンガンでびびびびってなってた、リーダー格のGさん。

 

「おじいさん」でも「おじさん」でもなく「お兄さん」……うん、まだ20代か30代だもんね、君たち。

 

「男っておじさんとか言われるのは精神的ダメージ来るものですからね。 忘れててごめんなさい」

 

「いや、いい……確かに高校生の嬢ちゃんに比べたらおじさんも良いところだからな……そうだ、もう俺たちはとっくに……」

 

あ、凹んでる。

 

かわいそう……でも言っちゃったものは取り消せない。

 

「というか、本当に良かったのか? ……俺たちは」

 

「あのおじさん――悪い人の方ね、に雇われてるんでしょ? 最低でも、僕1人は連れて来いって」

 

チンピラさんたちも、そう言ってたし。

 

「……肝据わってるな……」

「しっかりした女子高生だ」

「だからこそアイツに狙われたんだろうな」

「惜しいな……仕事でさえなければ……」

 

大きな車の中には、H以降の人たちも――もちろん「お兄さん」たちが。

 

つまり僕は、ハイエースされている。

 

あ、念のためだけども、この「ハイエース」は僕が適当に考えた言葉だからね?

 

どっかのすごい会社のベストセラーだけどもすっごい風評被害に遭ってる、あの「ハイエース」じゃなくって、たまたまぐうぜん思いつきが不思議な確率で重なっちゃっただけだからね?

 

「で、だからお前さんは自分から」

「乗せてもらいましたね」

 

あと、縛ってもらうために手と足差し出したね。

 

「……怖く、ないのか?」

「怖いですよ? けど」

 

僕は、優しい手つきだったけどもしっかりと結ばれて、ちょっと試したけども全然外せる気配のない手首と足首の紐を眺めながら言う。

 

「僕の見えないところで、あの子たちがこういう目に遭う方が怖いですから」

 

「……そうか」

「はい」

 

ぶろろろろ。

 

――僕は、紅林さんたちがお巡りさんたちに保護されそうな気配を察したあと、お兄さんたちと逃げた。

 

途中までそれに気がついてなかったお兄さんたちは、かなりの全力で走って逃げていた。

 

だから――鍛えてる成人男性の脚力に、重いボストンバッグ背負いながら着いてきてる現役JKな僕を見てぎょっとしてた。

 

併走してる僕を、しばらくぼーっと見て「なんだこいつ」って顔してたもん。

 

あのときの顔、すごかったね。

 

「え? ……え?」って、二度見三度見してたもん。

 

で、「せっかくなので攫ってください」ってお願いして、路地に待機してた黒いハイエースにハイエースされて、縛られて抵抗できなくなったってわけで。

 

うん。

 

客観的に見れば、この場で漏らしても許されるレベルの恐怖だろう。

 

まぁ僕は、中身男だし。

 

まぁ、うん……いろいろされちゃうにしても、生粋の女の子とは違って「犬に噛まれてるなー」って諦めるだけだからね。

 

もちろん嫌でしょうがないけども、それでも白鳥さんたちが同じ目に遭うより何百倍もマシなはずだ。

 

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