TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!   作:あずももも

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90話 管理調教される生活は、愛が重くておしまい

「……うん、そんな感じで今日は短いけどおしまいにするね? ほら、僕ってばこれでも一応1ヶ月入院するケガしたわけだし。 あ、でも、本当、配信見て通報してくれてた子たち、ありがとね! 今度DMでも――」

 

――ぷつっ。

 

配信していた画面が、突如として終了。

 

「……え?」

 

振り返った先には――。

 

「――アキノちゃん」

「――お姉さん」

「浮気……拘束……」

 

「……あっはははいやだなぁみんなー! DMで個別にお礼の言葉言うだけ! ほんとそれだけだってばー!」

 

ふぅ、危ない危ない……この子たち、一気に怒りゲージが上がるからなぁ。

 

ちなみに、この1ヶ月間拘束された上でおはようからおやすみまで尊厳を破壊し尽くされた経験から、そのゲージは平常時→ヤン発動といきなり上がるし、その先のオシオキを過ぎると……たぶん死が待っている。

 

危うく何回か踏みそうになったけども、まだかろうじて無事なのは僕の話術のたまものだね。

 

「……明乃ちゃん……あなた、彼女を3人侍らせてよく配信できるわね……あと、別の女の子を釣ろうって……」

 

「してないんですって、店長さん」

 

そういうこと言われると3人の目が据わるからやめて!?

 

スタジオ貸してくれてるのは本当にありがたいんですけどね!

 

「あ、お邪魔してます、店長さんっ」

「ええ、好きにしてね」

 

「それにしてもすごいですよね、ここ。 まるで本物のアイドルの楽屋みたいで」

「明乃ちゃんの衣装とメイク用品であふれているものね」

 

目にハイライトが戻った紅林さんと白鳥さんが席を立ち、店長さんにあいさつしつつ話しかけていく。

 

白鳥さんは普通にお礼を言いつつ、大人な「彼女」へ興味津々。

 

紅林さんはおしゃれな「彼女」のメイクとかこの部屋の設備とかに興味津々。

 

「……コメントで、明らかにぎんど……明乃ちゃんにアプローチしてたのは32人……全員のアカウントからSNSも特定したよ」

 

「うんうん、彼女たちは大切なファンだからね! ほら、配信者とかって好きっていう感情を与えて喜ばせるお仕事だから!」

 

備え付けのパソコン――僕が来てからは、事実上僕の配信専用の機材――でかたかたしてた黒木さんが、なにかのリストを作成し、自分のスマホに転送して見せつけてくる。

 

……君、なんか能力覚醒してない?

 

「でも、あなたたちは良いの? 明乃ちゃん、学校ではあなたたちのこと、騙していたのよ?」

 

う゛ふぇっ!?

 

「そこの、黒木さんみたいな――おしゃれに興味ないどころか、人目を避けるような格好をしてまで。 あとたぶん、しゃべり方や態度まで完全に変えて。 だってこの子、演技上手すぎるもの」

 

ちょっ、店長さん!?

 

あなた、この場へなんでいきなりデスワード(死の宣告)してるんですか!?

 

「――ええ、良いんです」

 

「し、白鳥さん……!」

 

「優花」

「ア、ハイ、ユウカチャン」

 

あっぶな。

 

名字で呼ぶのが癖になってるから、まーた危うく地雷原を思いっ切り踏み抜きそうになった。

 

「……私たち。 私たちだけが」

「――本当の明乃ちゃん――アキノちゃん、知ってるってことになるもんね?」

 

「紅――奈々ちゃんも……」

 

ハイライトを付けたまま、けども声のトーンは半臨戦態勢な2人が言う。

 

「あ、明乃ちゃんは、普段のわたしみたいな格好、してないと……1週間で、学校中の女子を、虜にしちゃうから……」

 

「そんなことはないと」

 

「美緒」

「ア、ハイ、ソウダネー美緒チャンノイウトオリダネー、ハンセイシナイトー」

 

黒木さんは普通に臨戦態勢だった……だから真っ黒な瞳は怖いんだって。

 

「なるほど。 それもそうね。 明乃ちゃんだもの」

 

涼しい顔をしている店長さんは、どこか楽しげだ。

 

……さてはこの状況を楽しんでいますね……?

 

ほら、こうなった以上、今夜は激しくさせられるのが確定してるっていうのに……僕の負担も考えてくださいよ?

 

『自業自得』『因果応報』『100%自分のせいッスよ?』

 

「……でゅふふふふ……濃厚な百合……女癖の悪い総受けを独占しようとする3人、でもその実惚れてる矢印は……ああ……ああ……しかも憂いを帯びた美女まで……」

 

――そんな僕たちを、部屋の隅っこで、なぜか体育座りをしながら満喫しているお兄さん。

 

「……お兄さん、大学はいいんですか?」

 

「今日のは、オンラインで受けられるやつだから、ここで百合楽しみながら受けるんだ……」

「そうですか」

 

……ちなみにこの場の3人と1人は、誰も店長さんのことを男だと疑ってすらいない。

 

どころか色気もありすぎるせいで「バーとかのママ」って思い込んでるし。

 

まぁやってる仕事としては合ってるんだけどね……性別以外は。

改めて店長さんの女装スキルの高さがうかがえるね。

 

こんこん、と、入り口のドアがノックされる。

 

「おじゃまするよぉ」

「あ、おじさん」

 

ぬっと入ってきたのは、おじさん(善)。

 

けども、なにやら顔の下にいろいろと――

 

「明乃ちゃあん……うちの住所、ラブレターとか花束とか小包み?の受け取り先にしないでよぉ……」

 

「あっ」

 

――おじさんは、両手にこれでもかと抱えている。

 

「――明乃ちゃんさん?」

「――アキノちゃん?」

「――明乃ちゃん……?」

 

「ひゅっ」

 

あ、もうあかん。

 

僕、また死にそうになるかも。

 

『我らの加護はもう無い』

『話術か、然らずんば死か』

『てか俺たち、いつ成仏できるんスかね?』

 

ああ。

 

頭の中で僕を罵倒してくる人格たちだけが癒やしだ。

 

……1、2時間で済めばいいなぁ……。

 

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