でもそもそもカサネちゃんを殺すべきかどうか悩んでいます。
後、アリス、ケイ、リオに関してはデカグラ終わんないと書きづらいところあるのでもうワカモくらいしか書けるキャラが居ないのも悩んでます。
大人も子供も関係なく、人はみんな仮面を被って生きている。
仮面の厚さや形は人によって、正確にはその人の価値観によって違いがあれど、結局誰もが仮面を被っていることには変わりない。
それが悪いことだとは思わないんだ。誰かにとって誇れる自分で在りたいと、そう自分を取り繕って努力する事は、寧ろいい事ですらあると思う。
あの時だってそう思って、そして被り始めた私の仮面は、気付けば沢山の想いと願いに縛られて、いつからか被った本人でさえ、特別たれと其れを呪ってしまって。
そうやって生き続けて、足掻き続けて、いつの日か、ふとした時。
つまりは、例えば今日みたいに。
呪われた装備が外せないなんてよくある話でしょ。
私の通っているクロユリ学園は、本来なら廃校になる予定だった。
中高一貫校であるこの学校で、当時の私は中学1年生だった。
私はまだまだ心が幼くて、自分を繕うことが、なんだか大衆に嘘をつき、まるで騙しているようにさえ見えて。
それで仮面を被ることを拒否してボサボサの髪で目元を隠し、誰にも話しかけないで本の虫になっていた。
当然の事だけど孤立した。けれど辛いとは思わなかった。いい成績を取り続けていれば、それで良いと。寧ろ私は周りの連中と違って自分を偽ったりしないと、そう誇りにすら思っていたのかもしれない。
そんな退屈な日々を送っていたら、ある転機が訪れたんだ。
ある日、いつもの様に、一人で使うには広すぎる広場でお昼ご飯を食べていたら、見知らぬ先輩に話しかけられたんだ。
私と同じくらいに長い髪を後ろに流した、背が大きく不健康そうで、それでいて凛とした先輩。
最初は世間話だけだった。お昼ご飯の度に何度も何度も話しかけられて、最初はセールスマンのように鬱陶しく思って適当にあしらっていたけれど、根気強く何度も話しかけられて、なんだか素の自分でも適当に会話出来ていることに気付いて、いつしか他愛のない雑談にも付き合うようになっていた。
そしてある日、普段のように内容の薄い雑談をしながらご飯を食べていたら、先輩の口から思いもよらない話が飛び出したんだ。
クロユリ学園が廃校になる。という話だ。
それだけじゃない。先輩はこの学校が好きだと、そう語ってくれた。友達も殆ど居ないし勉強も別に好きじゃない。それでもこの学校は、今この青春は自分の手で護らなくちゃならない。最近はそう思うようになれたんだ、と。
普段の無気力さからは想像もつかないその強い思いに、私は同意して、その日から自分に出来ることを始めた。
幸いにも中高一貫校の自治には中学校の生徒会も介入する事が出来た。
だから私は、その日から、あれだけ煙たがっていた仮面を被ることにしたんだ。
目元を隠していた髪はおでこを出さない程度に整えて、黒色のカラコンで隠していた、ワインレッドの瞳を惜しげも無く晒すようになり、俯き猫背だった姿勢も正して。
そして用もないのに沢山の相手に話しかけるようになった。
笑顔を絶やさず、人との仲を深めることに全てを注いで、時には相談に乗って真摯に悩み、時には喧嘩を仲裁して大怪我もした。
それでいて、成績は以前の順位をキープするどころか、更に上を目指し、苦手だった戦闘も沢山の相手から技を盗み、
そうやって、文武両道で交友関係も完璧な、人格者且つ優秀な生徒を演じた。
特に苦労もせずに半年もしないで私は生徒会に推薦されることになった。
そうして生徒会としての権力を手に入れた私は、より一層自分を取り繕うようになった。
学校の中だけでなく、外に向かってもだ。
廃校になる原因。元凶。それらを取り除く為に沢山の伝手を活用する必要があった。
大人相手にも積極的に利益や展望をアピールして協力を勝ち取り、他学園の重鎮にも精一杯理想の存在を演じ続けた。
そうして更に1ヶ月程度経って、私は気付けば生徒会長になっていた。それもクロユリ学園史上最高の生徒会長なんて大層な肩書き付きでだ。
沢山の学園で特別扱いを受ける程に、多くの人々に気に入られて、利益に煩い大人にすら一目置かれる存在になれた。
そうしてクロユリ学園は廃校になること無く、寧ろ益々の発展を遂げるようになって、めでたしめでたし。
…って、そうなれば良かったんだけどね。
…あの時は、丁度1週間ぶりだったかな。
昔は毎日会ってたんだけど、生徒会に入ってから、……いや、自分を演じて先輩以外ともご飯を食べるようになってからは、毎日とは行かなくなって。
生徒会長ともなれば更に忙しくて、それで1週間ぶりだった。
けれどその日はいつまで待っても先輩は来なくて、もう昼休みが終わっちゃうって時に、先輩から電話がかかってきた。
直接話せば見当違いの恨み言を吐いてしまいそうだから、全てスマホにメモった。パスワードは外してある。
要約すればそんな内容のことを一方的に告げられ、そして電話は切れた。
…なんとなく想像がついてしまって、そんな想像するなと、自分に言い聞かせてもソレを拭えなかった。青ざめながら駆け出して、先輩の教室に突っ込み、そして彼女が居ないことに絶望して、それでも諦めずに学園中を探し回った。
結局、先輩は自殺していた。
遺されたメモを見るに、どうやら先輩は私が思う以上に私とそっくりだったらしい。誰1人として居ない友達。仮面を被っている周囲を不気味に思う感性。そして唯一できた、自分を繕わずに話すことの出来る後輩。
思えばこの学校を廃校にしたくないと最近はそう思う、というのはきっと、先輩が私という存在を見つけたからだったのかもしれない。
だけど、そんな大切な後輩も、いつの間にか自分を演じることを覚えてしまって、そのうえで、学校中の人と、それどころか他学園の生徒とすらも仲良くなった。手の届かない人になってしまった。自分といる時は殆ど笑わない癖に、ろくに会話したことない相手にだっていつも愛想のいい笑顔を浮かべて過ごしていた。
世界に、そして大切な人にすら
私は取り残された。
…そう思ってしまうのも無理は無い。
そう。つまるところ、
私が殺したも同然だ。
私のせいで先輩は死んだ。
そもそも私がいなければ、先輩は死なずに済んだかもしれない。
そんな後悔に苛まれて、私は、昔のように塞ぎ込んだ。髪は思い出したかのようにボサボサに乱れ、姿勢は老人のように俯き、周囲の声なんて聞こえてないかのように虚空を見つめるようになった。
けれど、昔と違うこともあったんだ。
同じクラスの友達が、
同じく廃校に悩まされていた他校の生徒達が、
私を目にかけてくれた大人達ですら、
昔の私じゃ想像も出来ないくらいの沢山の人達が、私を案じ、そして励ましてくれた。
なんでこんなことになってしまったのか。それだけを考え続け、しかし終ぞそれは分からなくて。
それでも、誤った道を行こうとする生徒に、それは違うんだよと、そう導けるようになりたい。
そう、強く願うようになった。
…時々思ってしまうことがある。
結局、私が先生に憧れ、そして其れを目指す動機なんてこんなくだらないものだ。
自分がもう、苦しい思いをしたくないからに過ぎなくて、本気で誰かの幸せを願うような人格者ではないんだ、私は。って。
…きっとこの独白は、間違いじゃなくて酷く的を射ている。私はどこまで行っても、或いはこの先大人になって先生になれたとしても、私の本質はきっと「偽物の先生」だ。
でも、偽物だから、誰も救えないんだと、例え世界そのものにそう定められているとしても、私は絶対に諦めない。絶対に。
どんな手を使っても、この身体が文字通り引き裂かれることになったとしても、みんなの事を必ず護って見せる。それが自己満足に過ぎなかったとしても。必ずだ。
外せない仮面なんて、そんなの言い方次第だ。
長い時間を掛けて、沢山の努力と愛の最中、たまたま昔被っていた仮面の形となんとなく似ている顔に成長できただけなんだよ。
そうやって言い聞かせて、私はきっと立ち向かう。何が相手だろうと。
理不尽にも終末にも絶望にも現実にも策謀にも屈さずに、或いは何度も屈し膝を折ることになろうとも、最後にはもう一度立ち上がり、例え両手足を喪ったとしても、その不条理の喉元に飛びついて喰らいついてやる。
そうだ、私はこの世界が好きだ。
この世界で生きる人々が好きだ。
この世界で紡がれる青春の物語が大好きだ。
だから、もう二度と、其れを喪うことの無いように。
二度と事を誤つ生徒がいないように。
…どんな生徒も、そんなことを思わないで済むようにしよう。
そう誓って、足掻き続けた。
…私は、ちゃんと先生になれてたかな。
鏡に映る私をぼんやりと眺め自問自答する。
先輩のように、或いは私のように塞ぎ込み、思い悩む生徒の傍に寄り添えるような。
生徒の事を心から想い、そして其れに一喜一憂しながらも本気で悩んでくれるような。
先輩にとって、本当に必要だったような。
そんな先生に、なれてたかな。
口元から溢れる血を拭い、冷や汗の伝う顔を丸ごと洗う。死体のように真っ青な顔と死相の浮かぶ目元を誤魔化すように、小刻みに震える手で慣れない化粧を貼り付けた。まるで、仮面を被るように。
「カサネー?急にどこいったのー?」
シャーレの執務室から聞こえてくる声。その優しげな声を聞く度に、打ち明けるべきかどうかとても悩む。
…いいや、どう考えても打ち明けるべきなのは分かっているんだ。このままじゃ、いつか背負うと決めた責任すらも、先生に押し付けたまま私は逝ってしまう。
かと言って、打ち明けたところでどうにかなる話でもない。結局のところそれが全てなんだ。
借金も、生まれも、過失も、自己定義も、すれ違いも、先生に打ち明け、そして助けて欲しいとそう願えば、優しく寄り添って、そうして透き通った青空を見つけられる。
けれど私の生命に残り僅かな時間しか残されていない事に関しては、打ち明けたところで、先生を困らせて、そして周りの者すらも暗く曇らせてしまうだけだ。
これでいいとは思ってない。
けれど、他に道もない。
沢山の後悔がある。
救えなかった人もいる。
きっと子供が大人の代わりを務めるなんて無茶だった。
私じゃきっと役不足だった。
それでも、先生としてここまで足掻いてきたことは、絶対に無駄ではなかった筈だ。
だから、これでいい。
鏡をいま一度眺める。
仮面に覆い隠された死にかけの顔。
震えの止まらない手で、力の入らない表情筋を優しく解す。口角を無理やり持ち上げるように、両頬を指で持ち上げてみれば、鏡には見慣れた優しげな表情が映った。
大丈夫、まだ笑える。
少なくとも、シロコが新たな人生を見つけるその時まで、意地でも死んでやるものか。
いつかこの世を去る今際の際でさえ、私は笑って逝ってやる。
ただそれだけの想いを胸に、傷だらけの心臓と朽ちかけの身体で今日も生き足掻く。
私はもうすぐ死んじゃうけれど、
千回時を巻き戻したとしても、
私はきっとまた、先生になるよ。
だってみんなが、大好きだから!