RE付けるほど変わってないけど百花繚乱2章読んだ時にもしかしてプレナパテス世界線って最終編抜きで百花繚乱1章の後、多分カヤのクーデターが発生せずにアビドス3章で分岐???だとするとカサネちゃん百花繚乱1章経験しとるやんってなって急遽書き足しました。そこ以外も気になったとこちょっち手直ししますた。3話のメインストーリー回収シーンの百花繚乱ターンはまた後で書き足します。
方舟が崩壊する。
周囲を埋め尽くす大小様々な爆発と共に、巨大な地震が起きた時のような、地の底から唸るような轟音が辺りに鳴り響く。
まるで御伽噺の一説を謳うかのような有様は、
しかして、現実のこと。
そこら中でおきる爆発はさらに大きな爆発へと共鳴し、化け物の咆哮にも聞こえる轟音と共に、辺りを無茶苦茶に蹴散らして、そしてその間隔すらも次第に狭まっていく。
この世界を侵略せしめんとした恐ろしき方舟の壮観な姿はもはや見る影もなく、
それはさながら堕ちる小惑星の様に燃え盛り、明滅し、今はそこかしこに亀裂や欠損が目立っている。
本船から放たれた視界を埋め尽くすほどの光の奔流が徐々に晴れる。
神話の一撃はシッテムの箱による防御も、ヘイローによる加護も何も無かったかのように容易くぶち破り、私の体を貫かんとしたが、それでもひたすら歯を食いしばり、最後の意地でその全てを受け止めた。
私は身体中を焼く経験したことの無いような痛みと、体内をぐちゃぐちゃに掻き分けられたような不快感に蝕まれ、堪らず膝をつく。
今、私の目の前に正真正銘本物の先生が居て、
偽物の私が庇う背後には最後の生徒がいる。
あの日、あの時、言葉に出せなかった。
どれだけ足掻き、願っても彼女に伝えることの出来なかった伝えるべき言葉。
身体を走る痛みとは裏腹に私の意識は澄んでいく。
やるべき事を、やらなくてはと。
あぁ…どれだけこの時を望んだことだろう。
ようやくこの時が来た。
ようやく伝えれる時が来た。
主砲の直撃を貰い、無様に倒れる私を心配そうに抱き締める彼女に向けて、私はゆっくりと言葉を紡ぎ始める。ただひたすらに彼女のこれからを祈って。
「貴女のせいじゃないよ……シロコ」
「っ!……せ…んせい……?」
ひたすらに、この時を待っていたんだ。
彼女の代わりに色彩を取り込むことでもう終わった命を無理矢理に引き伸ばして、そうして数え切れない程の世界を滅ぼすその中で、やっとの思いで彼女を託せるような本物の先生がいる世界を見つけ出した。
例え世界を滅ぼそうとした悪者として定義されようが、世界にそう刻まれようが、そんなことはどうだっていいんだ。
罪人として裁かれ、死の淵へ再び陥る事によって司祭たちによる支配が解けるこの瞬間。もう一度だけ、彼女に私の声を伝えることの出来るこの瞬間。
全てこの瞬間の為だった。
ただ、貴女のせいなんかじゃないよと、その一言を伝える為だけに、数多の終焉を齎すだなんて、随分大それた遠回りをして、そして随分時間が経ってしまった。
それでも、そうまでしても、君に伝えたい言葉があるんだ。
教えてあげたいことがあるんだ。
ゆっくりと言葉を紡ぎ続け、大粒の涙をボロボロ零しながら私に謝ろうとする彼女の、その、捻れて歪んだ呪いを優しくほどいていく。
これは、優しい綺麗事に乗せて贈る、私の精一杯の想いと悪足掻きだ。
「自分の生を悔やんだり、責めないで……」
手を伸ばす。彼女の頬に。
青空を掴みたくて傷だらけの手を精一杯伸ばしていたように。
今際の際に遥か遠くで色彩豊かに縺れる星々、その先にすら思える何かに触れようと手を伸ばしたように。
「幸せになりたいと願う気持ちを…否定しないで」
震える手で寄り添うようにゆっくりと撫でる。
涙伝う頬。
後悔と自責に塗れたその雫に、
親愛を込めて訴えるように。
「生きることを諦めて…苦しみから解き放たれただなんて、……そんな悲しいことを、言わないで…?…」
か細い声で祈るように乞うた。
それはきっと悲しいことだから。
私の我儘かもしれなくても、
誰にも、そう思って欲しくないから。
「苦しむ為に生まれてきただなんて、……思わないで…」
血に溺れた声で詠い、そして伝える。
「そんなことは……絶対に無いのだから…」
そんなことは絶対に無いのだと。
「……わた…っ…しは……!せん…せ…ぇ……っ…!!」
壊れかけでも確かにそこにある福音を、
まるで読み聞かせるように優しく伝える。
私なりの精一杯のキリエを彼女に贈る。
彼女の溢れ出る涙を拭ってあげたくて、その美麗な顔に手を伸ばそうとしたその瞬間、一際大きな爆発音が、不快にがなり続ける空気を叩いた。
空気の読めない方舟の崩壊は、待ったなしに早まり続け、爆発は無慈悲な結末を齎そうと凶暴な嘲笑をあげ続ける。
……もう、時間が無い。
きっとこれが、最期のチャンスだ。
私は、何かから逃げるように私を抱き締める彼女の腕から、どこかこなれた様子でするりと抜け出し、
そうして、ボロボロの身体で、
もう一度だけ、
最期にもう一度だけ、立ち上がらんとする。
死の淵を這いずり、
色彩によって無理矢理に立ち上がったかと思えば、
無数の弾丸と、シッテムの箱による防御すら穿く、本船の主砲を受け止めて、
それでも尚、立ち上がり、
そしてただひたすらに彼女を守らんとする、今だけはちょっぴり誇りに思える、その小さな身体で、
骨の露出する千切れかけの手脚に鞭を打って立ち上がり、煙のように朦朧とする意識を全身全霊で繋ぎ止め、嗄れて掠れた声を、これが最期の仕事なんだと、一世一代の大仕事なんだと、ただひたすらに張って。
私はゆっくりと、不格好に頭を下げた。
「生徒、たちを…っ…よろ…しく…おね、がっ…ぃします………!」
そうして、私は本物に全てを託した。
まるで交奏曲でも演奏するかのように連鎖し
加速する爆発と崩壊の中、惨めに負けた偽物の私は、最後の力で、赤子のように蹲り座り込む彼女を優しく撫で、そしてゆっくりと抱きしめる。
すると、まるで神話に出てくる奇跡の様に美しい蒼白く透き通った光が彼女を祝福するかの如く辺りを包み始めた。
優しい光はヴェールのように彼女をみるみる包み込んでゆく。
直感的にそれが別れを意味するらしいことに気付いた彼女は一心不乱に私を求め、抱き締めてきた。
「いやだっ!…カサネせんせぇっ!」
こんなことになってしまう前には想像すら出来なかった彼女の泣き喚く姿。
そんな姿を晒させることになってしまった自分の無能さに嫌気がさす。いや、だからこそ、この最悪な結末を変え、そして、その責任を一身に受ける必要があったんだ。
だって、私のなりたい先生はきっとそうするから。
私の夢は、そんなかっこいい先生になることだから。
私は、駄々を捏ねるように痛々しく藻掻く彼女を優しく抱きしめかえし、その頬に、壊れ物に触れるように優しく手を添えた。
もはや何も写していなかった、彼女の濁りきった曇天を映す瞳が不安げに此方を見つめてくる。私は光を閉ざした氷のように暗く揺れるその瞳を見つめ返し、
そしてその瞳によって覆い隠されてしまった、彼女の心の奥底まで、
想いよ、どうか届きますようにと、
ふわりと、優しく微笑みかけて見せた。
私は大人じゃないから、
私が本物じゃないから。
最後の最後で、彼女の全てを、その責任を代わりに負うための力がなかった。
大人である私が全ての責任を背負うからねと、自信を持ってそう言ってあげれなかった。
先生代理はどこまで行っても代理に過ぎなかった。
偽物だって、演じ続けて行けばいつかは本物に成れるんだと、虚飾だって美しければ本物と変わらないんだと、そしてそれはいつの間にか美しい本物の装飾になるんだと、そう高々と言い放ってみせたというのに、
結局、私は彼女の心を完全には救いきれなかった。
毎度の事ながら、全く、我ながら、本当に最期まで格好がつかないなぁ……
…でも、やらなくては。
彼女のこれからに、私という存在をあまり残したくは無い。彼女のこれからは鮮やかで透き通った物語に綴られるべきだから。
だから、私という罪人の言葉に、願いに縛りたくない。
それでも、そうするしかないのなら。
やらなくては、ならないのなら。
きっと、これは呪いの言葉でもある。
彼女のこれからの生きる道を狭めてしまうかもしれない。
彼女のなりたい自分を縛ってしまうかもしれない。
それでも、彼女のこれからに少しでも生きる意味を、目標を作ることができるのなら、
ただ、生きてさえいてくれるのならば、
あとは本物の大人が、
私の憧れた本物の先生が、きっと何とかしてくれるから。
どれだけ強がって、頼りになる先生を演じ続けても、結局最後の手段は大人に泣きつく子供のそれで、
でも、悔しさと情けなさ、それらを凌ぐ無力感以上に、嬉しい気持ちもあるんだ。
私の憧れた大人は本当に居たんだと、
私のなりたい自分は、夢は、本物だったんだと、そう教えてくれる大人が目の前に居るのだから。
…覚悟は出来た。あとは、伝えるだけだ。
決意を固め、ゆっくりと口を開き、
そして私は、彼女に最後の授業をする。
「シロコ…アヌビスはね、…ただの……死の神じゃないんだ…よ」
震える声を言葉と為す。もうひと仕事だと自分を奮い立たせる。
彼女が私をより強く抱き締めてきた。
どこか呆然としつつも、それでも私の言葉に全神経を注ぐように耳を傾けている。
視界は霞み、身体には今にも引き裂けそうな痛みが走り続けた。全身が燃え上がるように熱く、そしてどこか冷たい。
それでも彼女の瞳に、その心に、
子供なりに、偽物なりに、ほんの少しでも光をもたらさなければならないのなら、取り戻さなければならないのなら、
「あの世で…絶望の中を彷徨う……そんな魂を、……明るい来世へと……導き……」
どれだけ滑稽でも、どれだけ虚しくても、
最期まで演じ、そして足掻き続けてみせる。
「そして……その来世を守る…守り神なんだ……」
「っ!!…せんせ……!」
彼女の腕の力がより一層強まる。私の胸に顔を埋め、もはや言葉にならない嗚咽を漏らし続けている彼女に優しく話しかけ続ける。
身体はとうに限界を迎えていた。声は引き攣り、手足どころか身体中の感覚が無くなっている。それなのに全身がバカみたいに痛くてしょうがない。
それでも。
あと少しでいい…ほんの少しでいいから…もう少しだけ頑張るんだ。
痛みと寒さに震えて強ばってしまう声を気力で押さえつけて、笑う。
千切れた雲のように霧散しようとする意識を気力でつなぎとめて、笑う。
ヒビの入った折れかけの心を気力で保ち続け、笑う。
もう少しだけ頑張ってよ。
あと少しだけでいいんだ。
だって、
これが、彼女に伝えれる最期の言葉だからさ。
「強くて……かっこよくて……そして……」
「…優しい君に……ピッタリの神様だね…?」
私は朽ちかけの身体で、笑ってそう問いかけた。
彼女の瞳が、何か眩いものに照らされ、そして何か思い出したかのようにゆらりと揺れる。鋭く息を飲み、そしていま一度、何かに気付いたように、或いはしがみつくように私を強く抱きしめてくる。
……あぁ、やっと届いたのだろうか。
私は何とか届かせることが出来ただろうか。
……らしくない弱気な考えかもしれないけれど、仮に届いてなくたって、後は本物の先生がいるのだから、これできっと大丈夫だ。
うん、きっと大丈夫。
命が零れるような、浅く、それでいて長い嘆息。彼女のこれからを想い、そして安堵する暇もなく、いつの間にか彼女を包む光のヴェールは見違えるように強まり、力強い高音も少しづつ大きくなっていた。
彼女を守ろうとしてくれるその光芒は心強いくらいに眩く美しいのに、どこか寂しげだ。
……いいや、単に私が寂しいだけかな。
どうやらお別れの時が、ついに来てしまった。
何か考えがあった訳でもなく、不意に、私は彼女の頭を少し乱暴に撫でた。
……いつか、彼女にそうしていたように、
「いやっ!!!……せんせえぇっ!!!」
「シロコ……どうか身体には…気をつけて……ね…?………」
まるでその言葉が合図だったかのように、シュン!という、小気味のいい音が響く。
必死に藻掻く彼女を、光は容赦なく包み込み、連れ去っていく。
そして、日の出を包み込むさざ波をかき分けるように、
ゆっくりと光が霧散すれば、
もう、そこに彼女は居なかった。
「……っはは……なんと…か…うま……く…いっ………」
身体が、ぐらりと崩れる。
どシャリと、みっともない音を立てて地に伏す。当然の結果だ。限界なんてとうの昔に捩じ伏せて、ただ子供じみた意地と憧れを以て無理矢理立ち続けていたのだから。
沈むような赤色の灯に埋め尽くされていた視界が、今度は照らすことの出来ない闇に覆われていく。
もう冷たい身体から、命が零れ落ちていく。
あぁ、これで終わりなのか。
とうに無くなっていた身体の感覚が、今度は凍えるような寒さを訴えかけてくる。
痛みはあるのかないのかすら分からないほどに全身そのものがもはや曖昧で朧げだ。だと言うのに自分を包む気体すら知覚できてしまいそうな程に鋭敏ですらあって、そして、そんな思考には、或いはそれにすら晴らすことの出来ない靄がかかり始めている。
死ぬ覚悟は出来ていた。実際、私という存在が消滅してしまうことに対してそこまでの恐怖はない。ずっと前から自分が死んだ後のことを考えそして備えてきたし、そもそもこの、狂気すら感じる大それた悪足掻きを思いついた時点で、私は死んだようなものだったから。
それでも、いざ死という概念を目の当たりにすると、
……
………あぁ、
今更かもしれないけれど、
もっともっと、みんなと居たかったなぁ…
或いは、みんなのこれからを、ほんの少しでも、もう少しだけでも、
見てみたかったなぁ…
僅かな後悔と、数え切れない思い出が頭をチラつく。ここに来るまで沢山の生徒と、沢山の旅をしてきた。小さな奇跡も、大きな奇跡も沢山探し、そして見つけてきた。
先生代理としての自分も、一人の生徒としての自分も、いつの間にか数え切れない程の人々に出会い、そして認められていて……
気の利いた走馬灯の最中、それらを彩る「私達の青春の物語」は、いつも色鮮やかで、煌びやかで、そしていつも笑顔に溢れている。
勿論、その全てが楽しいことだけだったとは言わない。出張から帰れば、正気を疑うほどにうずたかく積まれている書類の山脈も、
結局一向に減らない借金も、
小さな勇者に宿り続ける魔王も、
忘れられた少女達のこれからも、
虚ろな正義の存在証明も、
春仕舞いに抗う演者達の心傷も、
世界は残酷だ。
不安なことも、心配なことも沢山あって、
どれだけ努力したって変えられないこともたしかにある。
時には生きることすら辛く思うことだってたしかにある。
それでも、ふとした時に、この世の全てを包み込んでいるとさえ感じるそれらの一切が、
いつの間にか、呆気なく霞んでしまうほどに、
やっぱりこの世界は、どうしようもなく美しい。
……あぁ、やっぱり、もう少しだけ、みんなの行く末を、
この先に進んだ、これからのみんなを、
少しづつ、大人になっていくみんなを、
もう少しだけ、あとほんの少しだけでいいから、
見てみたかったなぁ……
……
…………
………………実は別れ際に、彼女の懐に小さな折り鶴を忍ばせた。元々はシャーレで催されたちょっとしたパーティの時のもので、これを折った本人にとっては、その辺にあった紙を手慰みに折っただけのものだろう。
それでも、いつもありがとう、というそれだけの言葉が、私にとって何より大切なものに他ならなくて。
それでずっと、大切にもっていた。
あの日、病室で起き上がった時、この時のためだけに、折り鶴の裏面に幾つかの言葉達を書き留めておいたんだ。
別れの言葉なんかじゃないし、呪いの言葉でもない、言うなれば祝福の言葉。
私の精一杯の悪足掻きは。
滲んだインクにのせた、偽物の私が綴った本物の想いは。
いつか、君に届くだろうか。
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…シロコへ、
一つだけ、約束するよ。
例え1万年だろうと、私は祈り続ける。
どんなに時間が掛かっても良い。
どれだけ遅くなったって良い。
それでも、いつか、
いつの日か、君が
初めて会ったあの時のような、
優しげな笑顔を携えて、
そうして、また前を向けますようにと。
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数え切れない思い出と溢れる回顧に溺れ、
親愛なる君へ贈る約束、その永遠の彼方を希う。
方舟が崩壊する。
御伽噺の一節を謳うかのような祈りは、
しかして、現実のことなんだ。
暗く輝く意識は、堕ちる小惑星の様に明滅し、溶けて沈んで行く。
鼻腔は血の匂いで溢れ、辺りには救世の喧騒が嘘のように、ただ灰色の埃だけが舞っていた。
貫くような沈黙と薄暗い視界の最中、天窮から見下ろす遥か地平のその向こうには、夜の隙間をただ差すように、或いは目が痛む程に明るい朝日が、祝福するかのように顔を覗かせている。
...綺麗だ。
もし続くとしたら、ロリ先のカルバノグ1章までを書くか、なんの間違いか最終編を生き残っちゃったロリ先の日常を書くかをするかもしれないけど書くの大変すぎてたぶんしない