改めて自分の身体を検分します。
切断された身体は五体満足復活し、手足も自由に動かせます。自分でも惚れ惚れするロリ巨乳は当然として、破いた気がするバニーガールの衣装までもが新品同様に健在です。
ちゃんと人の形を取り戻して、情報過多で脳がオーバーヒートしている様子もない。ひとまず元通り、なのでしょうか?
内心の不安や恐れは隠せないもので、私は無意識に、自分を冷徹に見下ろす褐色肌のバニーガールを見つめます。
「……セキシス、私は――」
「ストップ」
私と目線を合わせるように膝をついたセキシスは、その人差し指で私の口を塞ぎました。
指先で軽く唇を圧された感触に、心臓の鼓動が早まります。でも、眼の前の鉄面皮は私の心情など気にも留めていないでしょう。事務的に話を進めます。
「混乱しているのは百も承知。けど説明はメンド……時間に余裕がありませんの」
「ねえ、今メンドいっつった?」
「なので、直接『視て』いただきますの」
「ねえ、今メンドいって――ひっ!?」
セキシスの言葉尻をつつく私の気力は、大きく開いた彼女の喉の奥から見つめてくる、金色の眼球に打ち砕かれます。
思わず身を引くも、彼女の左腕がとっくに私の腰に回され外れません。
万力のような怪力が、互いの隙間を強引に埋めてきます。爆乳とロリ巨乳が押し合いへし合い潰れるほどの密着状態に、すぐ隣から陛下の食い入るような視線を感じました。見てないで助けろ。
「口、開けるですの」
「はぃ!? むぐっ!? むちゅ――――ッ!?!?!?」
恐ろしく強引な接吻に遠慮も容赦もなく。いきなり舌先が唇を割ってくるのは(良くないけど)まだいいとして、明らかに触手的なヌラヌラを口に突っ込まれては色気もクソもありませんっつーの!!
「ゴッ!? ガボッ!!」
本能的に食いしばるも、ヌラヌラの何かが前歯を圧し折りかねない力を加えてきて、何秒も持ちませんでした。あっさり抉じ開けられた口内に、今度は固くてヌルヌルした球体が押し込まれてきます。
多分これ、眼球です!!
「オゴッ!? ゲボッ?!?! オエッ!!」
「お、おい!? 半端なくえづいとるようじゃけど!? 本当に大丈夫!?」
涙と鼻水を逆流させ、息苦しさに顔が真っ赤であろう私の悲惨な有り様に、さすがの陛下も戸惑っています。
だって、キスって普通は「ちゅる」とか「ネロン」って感じの水温でしょ? けど今の私からは「ゴリッ」とか「ガコッ」とか関節傷めそうな音がしまくってるんです。
半ばパニックに陥って手足をバタつかせるも、セキシスと私じゃ地力が象と蟻ぐらい違うので何にもなりません。やがて眼球が喉まで達して、私の呼吸が完全に塞がれました。
激痛すら伴った酸欠状態は、ほんの十数秒が無限にも感じられる生き地獄。それを過ぎると、眼の前がグリンと暗くなり――、
次の瞬間。私はドゥーベルの職安組合の入り口を、俯瞰視点で眺めていました。
……幽体離脱? いいえ、違います。
私のすぐ真下を陛下……いえ、その変装した姿であるステラちゃんを先頭に、セキシス、タウラさん、そしてリブラさんの三人が街の出口へ急いでいました。
先にセキシスは言いました。『説明がメンドいから見ろ』と。と言うことは、これは過去の映像! 陛下達が私の下へ到着するまでの経緯を、追体験しろってことですね!
「理解力の高さはあなたの数少ない長所ですの」
「セキシス!? そこにいるんですか!! ……いえ、長所多いですよ、私!!」
周囲を見回しますが、ドゥーベルの上空に彼女の姿はありません。ついでに私自身も実体を伴っておらず、自分で自分の手や胸を認識出来ていない状態です。
「わたくしの記録を観せるのですから、わたくしがいるのは当然ですの。あ、プライベーツでセンスティブなシーンは割愛しますがご容赦ですの」
「センスティブどころかショッキングなキスシーンがさっきあったんですけど!? 今生でのファーストキッスがあんなんとかふざけんな!!」
「何を乙女みたいなことホザきますの。ほらほら、ぼんやりしてると大事なセリフを聞き逃しますのよ?」
背中を叩かれたような気がします。問い詰めたいことは山程ありますが、この状況は何度も経験している、暗黒空間に閉じ込められた時にソックリ。大人しく従うしかありません。
「マジで!? それご飯に掛けるんじゃろ? グロくない?」
「いや、それが美味いんだって。ま、帝国だとまずお目にかかれない食材だかんね。知らないのも無理ねーって」
……色んな意味で気になる
次回も明日6時に公開します