VRSAO アインクラッド 100%RTA 実績【誰が為の明日】獲得まで   作:クソ煮込みうどん

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水着シュヴァちと水着ヴィブロス引けたので初投稿です。


ヴィルシーナお姉ちゃんで天井した以外は半天井前に来てくれるんすよねヴ姉妹。なんでお姉ちゃんだけ200連したんでしょうか(白目)


話は変わりますがいつの間にかお気に入り500件超えてました()
流石に消化遅すぎるので、次のほんへ前に200件記念の話上げます。また2週間くらいでうp予定です。計画性グダグダ予定ガバガバですいません_(:3 」∠)_


『悪逆の(いざな)い』 2/2

 時刻は少々巻き戻り、20:10頃。

 

 

 

 午後8時を告げる鐘の音を背に、僕の足は表通りを外れて裏路地へ向かっていた。

 

 人気の少なさに合わせてか表通りのショップ類は軒並み閉店状態だ。必然、道具類の補給はそちら以外で済ませる必要があったが、幸いにもSAOは命がけのクソ仕様とは言え元々ネットゲーム。真夜中も攻略に励むゲーム廃人の為か、夜間専用のNPCショップなどは平然と置いてある。

 値段設定がやや割高ではあるものの、時間帯のおかげか変わった品揃えの店が多くて楽しい。健康的な睡眠習慣を持ってるストーカーどもを避けて生活した結果の発見だった。

 

 

「ランタンよし。ダガーよし。一応ポーションと松明も買って──」

 

 

 高いながらも値段設定は店ごとにややバラつきがある為、こうして少しでも安く済ませる為にハシゴすることもある。奥まった店に向かうたびに僅かな表通りの喧騒が遠退き、まるで夜闇に取り残されるかのような静寂が辺りに満ちる。

 

 そうしてただの買い物客の独り言を垂れ流し続けることしばらく、いい加減誤魔化すのも飽きたので、僕の足は歩くことをやめた。

 

 

「……意外だね。てっきりキリトたちの方行くと思ってたのに」

 

 

 唐突に立ち止まって呟く。返答はない。

 暗がりに置かれた様々なオブジェクトに干渉するせいか、風の音は低く不気味に流れていく。そんな中に見つけたかすかな気配を頼りに、再度、暗闇に向けて声を投げかける。

 

 

「そこの雑貨屋裏に隠れようとしてる奴に言ってんだけど。僕の買い物なら2件前で終わってる。お行儀よく待ってたご褒美に相手してやるから出てこい」

 

 

 返答はない。……が、控えめな衣擦れの音が聞こえた。

 じっと視線を向け続けると、今までただの暗闇が見えただけの裏路地に人影が浮かび上がってきた。間違いない、《隠蔽》スキルを使っている。

 何度か相棒に使われたおかげでこのスキルの対処は慣れている。まぁ僕の場合は元々いじめられっ子だったせいで他人の視線や物音に敏感だったのが、SAOに来てからストーカー被害に遭ったせいで顕著になったのだろう。素直に喜べない特技だった。

 

 

 

──オーケーオーケー、良い勘してるじゃねぇか

 

 

 

 噛み殺した不満を嚥下(えんげ)していると暗闇にそんな声が響く。

 声の主は当然視線の先の《隠蔽》使い。もはや逃げも隠れもしないと言わんばかりに壁に寄りかかったまま、くつくつと笑い声を漏らした。次いでじゃり、じゃり、と靴底を鳴らして通りまで出てくる。

 雲の隙間から差した月光が僕とそいつの姿を映し出す。

 

 そこに居たのは一人の男だった。頭の位置が予想よりわずかに高い…恐らく180cm前後。

 しかし分かったのはそれくらいだ。何故なら眼前の人物は、たった一つの強烈な個性で他をすべて覆いつくしていたから。

 黒い外套。フード付きのそれが頭部も、上半身も、なんなら脚も膝下くらいしか見せずに覆い隠している。しかもその材質はとても見覚えのあるものだ。

 

 

(……表面に反射光、かなり滑らか。キリトの革コート(コート・オブ・ミッドナイト)とも、アスナの赤ずきんとも違う。エナメルの材質)

 

 

 つまりあれは雨合羽(ポンチョ)──僕の羽織ったレインコートと同様の雨具。その奇妙な共通点に謎の嫌悪感が湧いた。

 

 

「勘じゃなくて耳なんだけどね。…で、あんた誰?」

 

「俺が誰かなんて重要じゃねぇだろ。俺がお前を知ってて、今こうして二人っきりで喋れる。それが全てだ……そうは思わないか?」

 

 

 こちらの非友好的な返答に対し、黒ポンチョは特に気分を害した様子もなくそう返した。

 芝居がかった仕草や煙に巻く物言いだというのに、妙に様になっている。

 

 

「僕の国じゃ小さい頃から『知らない人についてっちゃいけません』って教わるんだよ。あんたのとこは違うみたいだね。訛り方からして…英語圏の人間?」

 

「──ハハ!いいねぇ、日本人でその辺聴き分けできるなんてしっかりしてるじゃねぇか。確かに耳が良いらしい」

 

 

 英語圏の人っぽいエギルの旦那が知り合いに居たおかげで感じた程度の違和感。それが無ければ気付けないほど自然な日本語だった。

 

 

「じゃあ自己紹介から始めようぜ」

 

 

 ばさりと黒ポンチョの裾が広がる──恐らく両腕を広げたのだろう。

 ただそれだけの仕草だというのに、暗闇の中で尚存在感を放つ男の仕草は、悪魔が羽を広げるかのような不吉さを孕んでいた。

 

 

 

「Good evening, friend.俺は《PoH(プー)》──プリンス・オブ・ヘル。よろしくな」

 

 

 

 表向き親し気で、気負った様子のないその挨拶に僕の警戒心が上がったのは、今まで他人の顔色を窺えなかったからだろう。

 どれだけ笑顔でも、声が穏やかでも。声色を窺って人を区別してきた僕には関係ない。

 

 声の位置が高くなった。喉を曝け出すほどこちらを見下しているからだ。そういう人物はどれだけ言葉と仕草で誤魔化しても、こちらを決して対等には見ない。

 恐らくは侮蔑の感情。

 

 アクセントも無駄に強く発音している。生来の攻撃性が滲み出ているのだろう。我が身を顧みて断言できる。

 多分だが敵意。

 

 何より英語圏の人間と看破したからか、日本語のイントネーションが急に雑になった。嫌々使ってやってました感が露骨すぎる。

 嫌悪感をひしひしと感じた。

 

 歴代いじめっ子共にすら向けられたことのない純粋な害意の数々。いっそ感動的ですらある言葉の牙に対し、僕の煽りカス魂が着火したのは必然と言える。

 

 

「地獄の王子w…なに?ヴァサゴとか名乗りたいの?」

 

 

 半分衝動的、半分は打算での言葉だったが先ほどまでのにやけ笑いを消し、PoHと名乗った黒ポンチョは急に静かになった。

 同時に初めて目が合った。くすんだ赤銅色の視線に、今まで見えた嘲笑などの感情に代わって、興味の光が見えた気がする。

 

 

「……なかなかいいセンスだろ。これでも大切な人に付けてもらった名前由来なんだぜ?」

 

「人間関係もうちょっと選んだほうがいいよ。どんな関係の誰に付けれた名前か知らないけど、由来が悪魔絡みの段階で嫌われてるだろソレ。近づきたくない奴のあだ名にバイ○ンマンとか付けるのと同レベル」

 

「────」

 

 

 口撃(こうげき)二回で無表情になりやがった。キバオウの方がまだ根性あるぞお前。

 やや拍子抜けな感覚を抱きつつ、今度はこちらから声をかける。

 

 

「で?そのプーさんが僕に何の用なんですかね。言っとくがハチミツは持ってないぞ」

 

「……用か。あー、そうだな」

 

 

 調子が戻ったのか、勿体ぶるように一呼吸置き。

 

 

 

 

「さっきの出し物は気に入ってくれたかい?」

 

 

 

 

 広場からずっと続いた気配の主が口にしたそれが、何を指しているか。理解した瞬間、僕の何かが振り切れた。

 

 故に、返答は一言だけ。

 

 

 

「くたばれ」

 

 

 

 ノータイムで《投剣》スキルを起動、フードの奥のにやけ面目掛けて引き抜いたダガーを二連射。当てたらどうなるか、という思考は頭の片隅にも残っていなかった。

 しかし……その結果を観測することはなかった。

 黒ポンチョは口笛を鳴らすと、あろうことかその場から動くことなく体捌きだけで避け切ってみせたのである。軽く首を傾け初弾を、続く二発目を軽快なターンで。身に纏った雨具にすら掠らず、二本のダガーが夜闇に消えていった。

 

 エギルの旦那並みに大柄なのに、その実動きはキリトのように無駄がなく(はや)い。咄嗟に追撃の手が止まる。男はそんな僕を見ておかしそうに肩を竦め、大仰に怯えたふりをしてみせた。

 

 

「おぉ怖い怖い…そうカッカすんなよ」

 

「……クソポンチョ。テメェがアレを仕組んだのか」

 

 

 回答が気に入らなかったのか、チッチッチッとリズミカルな舌打ちが聞こえた。

 

 

「良くねぇ良くねぇ、そうやって言いがかりをつけてくるのは良くねぇなぁホルン?証拠は?監視カメラなんてないぜ?俺はただ、偶然居合わせた同じ場所で起きた小さなhappeningの感想を聞いただけだ。短絡的にキレんなよ兄弟、be coolで行こうぜ?」

 

「偶然…?わざわざ広場の陰からこっち見て、アスナの剣が砕かれるのをケタケタ笑ってたのが……?冗談も休み休み言えよ」

 

「Wow……あの距離でも聞こえてやがんのか。こいつは、尚更イイな」

 

 

 僕が次にいつ手を出すか思案する程の激情に駆られているというのに、目の前の男は飄々とした態度でこちらを眺めるだけだ。

 

 

「で、話を戻すが感想はどうだ。強気なお嬢ちゃんが弱々しく泣いてるのは。そそられただろ」

 

「口閉じろ下衆が。こちとらお前のせいで今晩の夢見最悪なの確定してんだよ、これ以上ごちゃごちゃ喚くなら前歯へし折るぞ」

 

「……本当に、そう思ってるのか?」

 

「…………何が言いたい」

 

 

 急に声のトーンを落として尋ねてきたせいか、こちらの気勢が僅かに削がれる。

 

 

「いい気味だ、とは思わなかったのか」

 

「なん」

 

「遅くまでこき使われて、折角GETした素材を搾取されて、武器の強化が終わればお疲れさんと言ってお終い……あんまりな扱いじゃあねぇか。お前さんが健気すぎて俺は泣いちまいそうだ」

 

 

 どうやらこちらが気づいていなかっただけで大分前から尾行(つけ)られていたらしい。ストレアの《隠蔽》より遠くで見つけられたのにコイツが広場で嗤い声を上げるまで気付けなかったのは、街に入って僕の警戒心が下がっていたからか。

 

 

「……暇だったから手伝ってやっただけだよ。損得で考えてなんかいない。仲間ってそういうもんだろ」

 

「仲間か。お友達の方もそう思ってくれてると良いな。口先だけなんとでも言えるだろ?行動がそいつらの本音じゃねぇのか……ボス部屋で、お前が嫌われ者になるのを黙って見てたのが」

 

 

 続く言葉が出なかった。心臓を鷲掴みされる感覚とはこういうのを言うのだろう。

 

 違う、あいつらは僕のしたことを理解してくれている。邪魔しないでくれただけだ。勝手なことを言うな。

 

 言い返したかったはずなのに、僕の口はまるで、奴の言葉が図星を突いたかのように真一文字に結ばれて動かない。

 そしてそれは、奴にとって狙い通りの状況だった。

 

 

 

「俺はな、知ってるんだぜホルン。必死こいて戦ったことも、最後に周りの猿共に裏切られて孤立したことも、そんな中で健気にお友達の為に嫌われ者に甘んじていることも」

 

 

「あんまりじゃあねぇか……仲間だと思って戦った連中尽くに裏切られるなんてのは」

 

 

「『なんで僕が』、『どうして助けてくれないんだ』、『他の誰かでも良かったじゃないか』……思ったことがあるだろ?」

 

 

「そんな奴らの為に、なんでそこまで頑張ってんだ。おめぇが馬鹿見ても助けない奴らなんて、そんな大切か?」

 

 

 

 騙されるな、腐った果実のような甘ったるい誘惑だ。コイツはきっと心の片隅にもこんな考えは持ってない。

 忘れたのか、今まで僕に都合のいいような言葉だけを飾って来た連中がどんな仕打ちをしたか。

 

 だというのに。

 

 

 

「──俺と来いホルン」

 

 

「頑張って、頑張って、その結果が猿共に都合のいいHeel(悪役)……そんなの納得できねぇだろ」

 

 

「悪い子やれって言うなら、悪い子らしく好き放題してやろうじゃねぇか」

 

 

「いい子以外楽しんじゃいけないなんてルールはねぇ。誰しも楽しみ方って奴が必要だろ。俺が教えてやるよ」

 

 

「だってここはゲームの中だぜ?楽しんじゃ悪いなんて誰が言うんだ。……最高にthrillingな遊び、一緒にしてみねぇか」

 

 

「さぁ」

 

 

 

 差し伸べられた右手に、どうしようもなく縋りたくなってしまう。悪魔の誘いだと分かっていながら、抗いがたい魔力がある。

 

 頭がふわふわとしてくる。まるで今僕の内側が発しているの危険信号が、ただの勘違いに思えてくるような。

 耳はただ男の言葉を聞くだけに。口は反論を上げず浅い呼吸をするだけに。

 揺れているのは視界だけか……僕の心そのものか。

 

 脚がひとりでに動き出す。己の意思に反し、ふらふらと、炎に誘われる蛾のように。

 

 一歩、また一歩と吸い寄せられていく。こちらを嗤う悪魔の元へ。

 そして僕はその手を──

 

 

 

 《Strea》より1件メッセージがありました

 

 

 ──払い除けた。

 

 

 

「あ?」

 

「ッ!!」

 

 

 想定外の挙動だったのか黒ポンチョの反応が一瞬遅れる。

 払い除けた動きのまま右手が曲刀の柄を掴み、抜刀。緩く弧を描いて振り抜かれた刃は男の首を捉える寸前、いつの間にか握られていた大ぶりなナイフに阻まれる。

 動きの素早さとは裏腹に本当に不思議そうにしていた男の顔が、次第に怜悧に歪んでいく。

 

 

「──いきなりご挨拶じゃねぇか」

 

「……髭の剃り残しが気になったんでね」

 

「ハ…なら仕方ねぇか」

 

 

 軽口を返しつつも両者が得物に込める力は微塵も緩まなかった。押し負けた方が切られる、シンプルな力比べ。

 しかし拮抗はすぐに崩れる。黒ポンチョの男が握る刃がジワリ、ジワリとこちら側に押し込まれていく。僕と違ってちゃんとSTR(筋力)にステ振りしてるらしい。ゴリラ感ない武器のくせに生意気な。

 

 

「ぐ…ッ!?」

 

「おぅどうした。威勢がいいのは最初だけか?」

 

(まだ…もう少し……!)

 

 

 爛々と瞳を輝かせながらにじり寄ってくる。もはや吐息を肌で感じるほどに押し込まれた。

 

 分かっていたことだ。キリトたちみたいにまともに戦えるほど僕が強くないことぐらい。

 

 

「もう少しデキる奴だと思ってたんだが……見込み違いだったか」

 

 

 勝手に値踏みしといて偉そうに。そう返してやりたかったが、右手に力を込めるので精一杯だ。

 そんな僕の焦燥を正しく読み取ったのか、悪魔の名を持つ男は笑みを深めて一気に体重をかけてきた。このまま押し切る気らしい。

 膝が僅かに折れ、後幾ばくもなく競り負ける。耳元に囁くように顔を寄せる奴は、弱者をいたぶる喜悦に歪んだ表情をしていた。

 

 

「トモダチは選ぶべきだったな」

 

 

「……ありがとよ」

 

「あ‟?何言っ──ッ!?

 

 

 僕の零した要領を得ない感謝に反応した男の声が途切れた。先ほどまで余裕たっぷりだった黒ポンチョの顔が驚愕を浮かべ、視線が僕の顔を滑って下に……己の腹にめり込む、左拳を捉える。

 

 

「テメェ…!」

 

「僕の間合いまで来てくれてさぁ!」

 

 

 《体術》スキル正拳突き──《閃打(センダ)》。

 薄い赤のライトエフェクトを放ちながら繰り出されたそれが、男の一回り大きな身体を僅かに浮かび上がらせる。

 まともにやっても喧嘩で勝てないのは、嫌と言うほど思い知ってきたが。現実世界では絶対力負けするであろう相手でも、このゲームの世界でならやり方次第で戦えるのだ。

 

 拮抗状態が完全に崩れ去り、武器を払った勢いで黒ポンチョの男が押し退けられる。

 

 たたらを踏みながら後退したその顔が忌々し気にこちらを睨むより早く、拳を振り抜いた挙動のまま前進しつつターン。思い切り膝を曲げながら右脚を腰の辺りまで持って行くと、システムが予備動作(プレモーション)を感知して更なるスキルを発動させる。

 

 

「息がくせぇんだよ、チンピラが!!」

 

 

 今までの鬱憤を存分に晴らすように繰り出された《体術》スキル裏回し蹴り──《乱月(ランゲツ)》がガードの崩れた胴体を打ち抜く。鈍い音を立て、男の身体が完全に宙に浮いて後方へと吹き飛んだ。

 散々不快な思いをさせてきた相手がもんどり打って転がるのが見え、僅かに胸がすくような感覚がする。あのハゲ師匠の下で岩を殴った日々は無駄ではなかったようだ。サンキューハゲ。フォーエバーハゲ。

 

 

 しかしながら虚勢が持ったのはそこまでだった。

 どっと先ほどまでの精神的負担を身体が訴え始め、肌に浮いた玉のような汗が顎先まで伝って不快感を与えてくる。

 相手がまだ起き上がってこないのを確認し、そっと袖で拭う。

 

 

(あっ……っぶねー、ストレアのメッセなかったらあのままやり込められてた)

 

 

 どうやら僕は宗教勧誘やテレアポに踊らされるタイプだったらしい。ゲームから生きて帰れたら気を付けるようにしよう。

 それにしても良いタイミングだった。通知音のおかげで我に返れた。当方の相棒は普段アレな癖に必要な時はちゃんと頼りになる。どうせなら普段から真人間でいてほしいのだが。

 

 

 仮想の心拍数を落ち着けるようにとりとめのない思考を浮かべていると、薄闇の向こうから奴の靴音が聞こえてきた。

 やはり不意打ちで二発食らわせた程度じゃ倒せないか、と男の方を睨んでいると。

 

 

 

「……びっくりするじゃねぇか。このゲームは足まで光んのか?」

 

 

 

 ぼりぼりとフード越しに頭を掻きながら、無傷の男が現れた。不満げな表情こそ浮かべているが、ダメージらしいものを全く見受けられない。

 この光景に僕は大いに焦った。

 

 

(嘘だろ、直撃入ってノーダメ?いくら僕のステータスがカスでもそんなことないだろ…!?)

 

 

 二度はないであろう不意打ちのチャンスを使い、対処されないであろう隠し札(体術スキル)まで切ったというのに。これではカスダメだろうと体力有利を取って第二ラウンド、ともいかない。

 そしてそんな中見つけた、妙なポップアップ。男の胸の辺りに浮かぶ、紫色のそれに目が吸い寄せられた。

 

 

(《Immortal Object》…?オブジェクト…は確か、物って意味のはず……イモータルは…イモータル……不死身?だっけ?)

 

 

 英語の授業はもっぱらリスニングしかできないせいで響きで覚えるしかなかったのだが、ここに来て盛大に足を引っ張っていた。こういう状況でパッと意味を調べられるからGoo○le先生は偉大だった。SAOの中で使えないポンコツだけど。

 しかし状況を見るに多分合っているようだ。

 不死身の物体……ゲームに則した訳し方をするなら、『破壊不能オブジェクト』と言ったところか。つまりあれは、ゲーム的に保障された無敵状態ということなのだろう。

 

 

(いや…それはズルじゃん……頑張っていじめっ子lv100みたいなのに喧嘩売った僕が馬鹿みたいになるやんけ…どうすんだよコレ)

 

 

 先ほどと別種の汗が大量に浮かんできた。大ピンチである。

 今更思い出したがあのポップアップに似たもの、《圏内》に入った時に表示されていたような。なるほど、これが《圏内》で喧嘩する馬鹿が居ない理由なのか、と遅まきに気づいた。

 そして僕は馬鹿側だった。とっても悲しい。

 

 過去イチ思考を加速させているこちらを嘲るように、黒ポンチョの肩が大げさに竦められた。

 

 

「オイオイ……そんな目で見ねぇでくれよ。怖くてブルっちまうぜ」

 

「……お前が4人目のストーカーなんだ、睨むくらいで文句言うな。…………ねぇマジでさぁ…なんで僕ばっかこんな目に遭うわけ……?

 

 

 本当にどうしてこうなった。実力行使で解決できない問題ばかり僕に降りかかっている気がする。疫病神に求婚でもされてるのだろうか。キリトの方に行けよ。

 

 

「ご愁傷サマ、って奴だ。じゃあ続きだ……情熱的に口説き落としてやるよ」

 

 

 口調とは裏腹に、暗がりで分かるほど青筋が浮かび上がっていた。

 

 

(い、嫌すぎる…!悪霊退散!ポマード!ポマード!!)

 

 

 ダメージが無くても精神が(やすり)掛けされるような感覚がするのでこいつと対峙したくない。もう久しくしていなかった神頼みまで始めつつあった。

 そして意外なことに、運は僕を見放していなかった。

 第二ラウンド開始直前、僕と黒ポンチョが揃ってそれに気づく。

 

 

──やっぱ物音したよな

──誰かいるのか?

 

 

 フードの奥から短い舌打ちが聞こえた。どうやら衝動的に行った喧嘩の物音で人が集まり始めたようだ。

 恐らくこれが最後のチャンス、と覚悟を決め、全力のペラ回しを開始する。

 

 

「みなさーん!ここに変態が居まーす!!タースーケーテー!!」

 

「…………Shit(クソが)

 

 

 恥を捨てた渾身の嫌がらせはしっかり刺さったようだ。今日イチ強烈な敵意がこちらに向けられた。

 冷や汗だらっだらなのを悟られぬよう、無理やり笑みを作って黒ポンチョを睨み返す。

 

 

「……さて、口説き落としてくれるんだっけ?やってみなよ。衆目の前でフッてやるから」

 

 

 黒ポンチョの口から先ほどより気持ち強めに舌打ちが鳴る。

 しばしそうして睨み合っていると、遂に諦めたのか、男は右手のナイフをくるくると器用に回しながら腰の鞘へと納めた。

 

 

「……………………オーライ、嫌われちまったみてぇだし今日のとこは帰るわ」

 

「おー帰れ帰れ。何遍来ようが答えは変わらないけどね。……僕は僕のやりたいようにやる。お前の手は取らない」

 

「身持ちの硬い奴だ」

 

 

 最後に嫌味を残し、身を翻して歩き出す。無防備に見えるのに手が出せないのは、先ほど植え付けられた恐怖のせいか。

 瞬きすら惜しむように黒ポンチョの背を睨んでいると、唐突にその足が止まる。

 

 

「……ああそうだった。一つ忘れてたな」

 

 

 日常の一コマのような気やすさで男が取り出したのは見慣れたスローイングダガー。僕も愛用している武器だが、柄頭に謎の赤い紐飾りが付けられている。

 何故あんなものを付けているのか。投擲時に安定性向上などの効果でもあるのか。

 

 訝しんでいると男が無造作に腕を振り、それらが勢いよく射出される。しかし飾りのせいで非常に目立つ。軌道がバレバレだ。飛来する2本のダガーを曲刀で弾き飛ばす。

 恐らく牽制だろう、と当たりを付け、次の挙動を見落とさない目を凝らす。

 

 すると何故か、左目側の視界が真っ黒になった。

 いやこれは、何かに視界を遮られて──

 

 

「ッ!!?」

 

 

 ズガン、と。そこまで思考した僕の顔に新たな飛来物が直撃する。今度は急に紫の光が散り、視界を埋め尽くした。

 ノックバックで後方に傾く首を懸命に支えつつ、無事な右目を動かすと、飛来物の正体はすぐさま判明した。

 新たな飛来物も同じ投擲用のダガーだったが、こちらは逆に、切っ先から柄頭までを真っ黒に塗り潰されている。左目側の視界を遮ったのは、暗闇に紛れて同じ軌道で飛んできたこの武器の刃だった。

 

 初撃の目立つ飾り付きは囮か……そう気づいた時には、黒ポンチョの男は目の前まで詰めてきた後だ。

 

 

「しまっ──」

 

「──さっきのお返しだ」

 

 

 咄嗟に振るった曲刀はリーチ不足で空を切り、代わりにがら空きの胴体に黒ポンチョの強烈な前蹴りが突き刺さった。

 《体術》は持ってないはずなのに、体格差と巧みな重心移動のせいか、僕の蹴りよりずっと強力な一撃。強制的に息を吐き切らされながら、僕の身体は5mほど吹っ飛ばされて木箱の山に着弾する。

 

 

「がはッ……」

 

「キックってのはこうやるんだよnerd(がり勉くん)。テストに出るぜ?」

 

「……この、クソポンチョ…!」

 

 

 僕の醜態で留飲を下げたのか、一通りケタケタこちらを嗤ってから、改めて黒ポンチョ──PoHはこちらに背を向けた。今度こそ帰るようだ。

 

 

「俺にばっか構ってねぇで、お友達の方を気にしてやったらどうだい?今頃めそめそ泣いてるだろうからよ」

 

 

 誰のことを言っているかは明白だった。なけなしの虚勢を振り絞り、男をきつく睨みつける。

 

 

「あいつらに、何する気だ…!!」

 

「それを知りたかったら、俺の手を取るべきだったな。その気は無いんだろ?じゃあ答えはお預けだ。次に会った時にでも教えてやるよ」

 

 

 

──じゃあなホルン。また遊ぼうぜ

 

 

 

 次の瞬間、また《隠蔽》を起動したらしい奴の姿は見えなくなった。まるで初めから悪い夢を見ていたかのように、呆気なく。

 だが間違いなく居たのだ。あの粘りつく声の中に、底なしの悪意を潜ませた『敵』が。

 

 

「……くそッ」

 

 

 木箱の山から這い出た僕の口から、そんな情けない悪態が漏れ出る。

 認めたくはないが、相手の方が格段のやり手だった。僕が生きているのはダメージの入らない《圏内》での小競り合いだったからでしかない。もしあれがフィールドで突然仕掛けられた戦闘だったら……僕は頭蓋を貫かれて死んでいた。

 本当に、遊ばれただけだ。

 

 不甲斐なさに強く拳を握りしめ、すぐさま頭を振って切り替える。

 まだやるべきことがある。

 

 

 

 裏路地から顔を出すと、周囲の宿を取っていたらしいプレイヤーがちらほらと暗がりを覗き込んでいた。大回りして脱出しなかったらあの連中に奇異の目を向けられたことだろう。

 一瞬人込みの中にPoHの姿を探しそうになるのを堪え、そのまま裏路地を通って駆ける。目指す先はアスナとストレアの本日の宿。

 

 つい先ほど《圏内》でプレイヤーを害せないと知ったはずなのに、PoHの脅しともとれるあの言葉が妙に耳にこびりつくのだ。どうしようもない、一つの可能性が思い当たるが故に。

 謎にボス部屋での出来事を知っていた黒ポンチョの男だが、僕の記憶する限り奴はあの戦闘に参加していないはずだった。装備を変えた可能性は、とも考えたが、周囲の身長を思い出してそれはナシになった。何よりあの声を一度聴いたら忘れないだろうと思う。

 

 又聞きしたにしては情報が鮮明に知られ過ぎている節がある──恐らく奴の手駒に当たる誰かが、あの40数人の中に居るのだ。今無防備な、アスナに危害を加えるかもしれない、奴の手先が。

 アスナたちと別れてから既に30分近く経っている。もし僕が奴に気を取られていた間に、何かあったのだとしたら。先ほどストレアから送られた来た【今いい?】とだけ書かれたメッセージが、SOSと続けられる物の途中だったとしたら。そんな悪い想像ばかり膨らむ。

 

 

「間に合え……!」

 

 

 夜道を散歩するプレイヤーたちの視線も無視し、全力疾走の勢いのまま宿に突入する。スイングドアが壊れんばかりの勢いで開くが、受付のNPCは特に驚いた様子もなく設定通りのテキストを読み上げた。

 

 

「いらっしゃいませ。宿をお探しで「僕のパーティーメンバーの部屋は!?」はい、お連れ様の部屋は207号室です」

 

 

 セリフを遮られても嫌な顔一つせず応対してくれたNPC店員に礼を言い、横の階段を駆け上がる。折り返しのカーブがまどろっこしく、周囲の目が無いのを確認して《体術》スキルで壁や手すりを蹴ってなんちゃってパルクールを披露。5秒足らずで1階から大体4mほど高所にある2階の床へと到達した。

 ……確かにこれは忍者たちも欲しがるかもしれない、と思ったのは余談だ。

 

 

 そうして駆ければ目的の部屋はすぐそこだった。ドアノブがあっさり開くことに最悪の予感が想起され、つい大きな声が出る。

 

 

 

「アスナ!ストレア!!」

 

 

 

 

「それだ!《Completely All Item Objectize(所有アイテム完全オブジェクト化)》!ゴー!!

 

「ご~!」

 

「ご、ごー……?」

 

 

 そこにはこちらに背を向けたまま盛り上がる、僕以外の3人の姿があった。

 どうやらあちらも操作に夢中なのか、僕がドアを開けたことなど気づきもしないようだ。

 

 

「イエーーーーーーース!!」

 

「いえ~す♪」

 

「い、いえーす……え、これ何の操作なの…?」

 

 

 謎のハイテンションを発揮している陰キャ(キリト)と、それに便乗している天然ちゃん(ストレア)と、ただ一人テンションに追いつけないアスナ。最高に混沌としている。どういう状況だコレ。

 

 そんな問いを口にする暇もなく、状況は更に一段ギアが上がったらしく。

 操作完了と同時に、アスナの目の前に強烈な光が迸る。一瞬目を庇いながらよく見てみるとそれは一つの巨大な光ではなく、見覚えのある──アイテムをストレージから取り出した際に生じる、小さな青い光の集合体だった。

 次の瞬間。

 ドンガラガッシャンだの、パリンガチャンチャリーンだの、フワリポスフサだのと、様々な重量のアイテム群が床の上で物音を立てていた。

 

 そしてよく見るとそうして出来たアイテムの山の大半は、軽い音を立てて落ちた最後のグループのようで。ゆっくりと天井付近から舞い降りたそれ……三角形の布地のようなものが、同じように降り積もった白やらピンクやらの布地の山の上にパサリと落ちた。

 

 

 パンツ!パンツです!!

 

 

 ……などと正気を手放せればまだ楽だったのかもしれないが。残念なことに常識も正気も手放せなかった僕は、面白みも何もない言葉を呟くのが精いっぱいだった。

 

 

 

「…………あの。どういう状況なんです……?」

 

 

 その声にようやく僕の存在に気付いたらしい3人が、ばね仕掛けのような勢いでこちらに振り向いた。ちょっと怖い。

 

 

「……ホルン、いつから」

 

「……ゴー、の辺り…?」

 

 

「ほ、ホルンくん違うの!これは…違うの!!?

 

「違うかどうか以前に、何が正解なのか教えてください……」

 

 

 キリトもアスナも正気っぽくない。どうすればいいんだろうコレ。

 必然的に頼みの綱は相棒である少女になるのだが、不思議なことに、普段穏やかに笑う彼女はこちらを見るなりキッと柳眉を吊り上げた。

 肩を怒らせながらずんずんと歩み寄ってくる少女は謎の迫力があった。黒ポンチョとはまた違う圧を放ちつつ接近してくるストレアが何を考えているのか、僕には全く分からない。

 

 

「あの、ちょっ…スト」

 

 

「ホルンは見ちゃダメぇぇぇ!!」

 

「なんかデジャヴ」

 

 

 直後、ストレアが勢い良く閉めた樫のドアは、僕の身体を強かに打ち据えて意識を刈り取った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ……誰かの話し声がする。そうだ、僕はあいつらの部屋に行って…。

 

 

「…………知らない天井だ」

 

 

 鼻っ面に残る痺れを感じつつ目を開けると、奇妙な光景が広がっていた。

 何と言うか……天井が半分見えなかった。顔の真上に何かがあるのか、上半分が遮られて真っ暗になっている。なんだコレ。

 

 

「お。ホルン起きたのか」

 

「……キリト?大丈夫なのそれ。なんか…顔半分無くなって見えるんだけど」

 

「怖いこと言うなよ……」

 

 

 げんなりしたように呟く黒コートの少年の顔も、何かに遮られたかのように欠けて……あ、首下げた途端全部見えた。

 つまりなんだ。この謎の影の正体は僕の頭上にしかないのか。

 

 

「アスナ…はそこに居るみたいだけど、ストレアは?」

 

「…………きみのすぐ近くに居るわよ」

 

「ホルンごめんね…まだ痛い?」

 

 

 アスナに合わせてそんな声が聞こえたがどこに居るんだ。この謎の影の向こうから声がしたんだけど。

 状況を確認しようと身じろぎをすると、急に今まで枕だと思っていた物が暴れた。

 

 

「ひゃっ!?……もー。ホルン急に動かないでよ!髪の毛くすぐったい!」

 

「…………なんでストレア僕の頭上に居るの?」

 

「なんでって、膝枕してるんだから当然じゃん」

 

「ひざまくら」

 

 

 よいしょっと、という鈴の鳴るような声と共に頭が解放され、ゆっくりと身体を起こす。視界を遮っていた謎の影はもうない。

 ……つまり位置関係から察するに、あの謎の影はストレアの──

 

 邪念を払うように首を振る。忘れよう。ただでさえ今日はいっぱいいっぱいなんだ、余計なことは考えるな。

 

 

「……そうだ!アスナ、この部屋変な奴来なかった?」

 

「君とキリトくんなら来ましたけど」

 

「おかしい。キリトはともかくなんでストレア(ストーカー)を差し置いて僕のこと変な奴認定したんだ」

 

「俺を敢えて擁護対象から外した理由なに?」

 

「だってお前変じゃん。今どき陰キャでももう少し差し色あるコーデするのに黒一色とか」

 

「表出ろ。てるてる坊主みたいに吊るしてやる」

 

 

 キリトがなんかピキっているものの、懸念した最悪の事態は訪れなかったらしい。つまりあれはただのクソポンチョの嫌がらせの一言だったわけか。また一杯食わされてしまった。

 

 

「ホルンくんどうかしたの?何か焦ってたみたいだけど」

 

「あー……まぁちょっと色々あっ……て…………?」

 

 

 1時間ほど前まで辛気臭い面をしていたはずのアスナが妙に落ち着いてることに疑問を感じつつ、彼女の方を見てみると……不思議なものを抱えたままこちらを見ていた。

 両腕でしっかりホールドされたそれ──淡い水色を帯びた、銀色のレイピアを。

 

 

「…………アスナ、さん?その剣は…?」

 

「なんで敬語なのよ、もう。見ての通り私の《ウィンドフルーレ》よ」

 

 

 いや、そう見えたから気になったんだけど。

 なんであんの?目の前でさっき砕かれてたよな?見間違いだった?しかしあの音は絶対壊れた音してたし…?

 

 

?????????

 

 

「ホルン壊れちゃった」

 

「そういう反応にもなるよなぁ……実際巧いトリックだと思うよ。この『強化詐欺』は」

 

 

 ピタリと、キリトの口にしたそれをきっかけに場の空気が一気に引き締まった。

 あのお人好しの口から、詐欺という明確な悪意を持ったロジックであることが告げられたのだ。さもありなんと言ったところか。

 特に、被害を受けたアスナは視線だけで人を殺せそうなほど目が鋭かった。

 

 

「……説明、してくれるのよね」

 

「そ、それは勿論!……でも俺自身全貌は把握できてないんだけど…」

 

「大丈夫。三人寄れば文殊の知恵って言うし、私たち4人ならもっと多角的な考察できるもの。それに夜はまだ長いわよ?」

 

 

 ……持ち直してくれたのは結構なんだが、笑顔が少々素敵過ぎるんだよなぁ。多分、悲しみを振り切って怒りに到達してる。

 

 この状態のアスナを刺激するだけの勇気はないので、いち早く僕は逃走を選択した。

 

 

「じゃあ下の売店でなんか買ってくるから、ごゆっくりどうぞ」

 

「アタシも行ってきま~す」

 

「見捨てられた!?」

 

「キリトくん?それどういう意図で言ったのか、教えてくれるかしら???」

 

 

 あうあうとアスナを前にたじろぐキリトを横目に、僕とストレアはそそくさと207号室から脱出した。……できるだけ早めに戻ってやることにしよう。

 そして丁度よく彼女と合流できたわけだし、少しばかり気になっていた疑問を消化してしまうことにした。

 

 

「そういやストレア、さっきのメッセなんだったの」

 

「あ~アレ?アスナをくすぐってたら多少持ち直してくれたから、気晴らしに女子会しようと思って。アタシ部屋から離れられないからホルンに何か買ってもらおうかなぁって」

 

 

 

 ……つまり、ただパシらせたかっただけ、と。

 

 

 

「……もう一ついい?なんか鍵簡単に開いたんだけど、あれは?」

 

「宿の鍵って初期設定だと同じギルドやパーティーに居る人だと簡単に開けられるんだよ。アスナ設定変えてなかったのかな」

 

 

 

 …………つまり、それ以外の誰かはあのドアそもそも開けられなかった、と。

 

 

 いやいいんだ、結果的にアスナは立ち直ったし、剣も戻って来た。

 その上全員無事なんだ最上の結果と言っていい。

 

 

 

「…………」

 

「あれ?ホルンどうかしたの?」

 

 

 

 ただまぁ、それはそれとして。

 人が真面目にやってた時に、ちょっと不穏な途切れ方のメッセージで、そんなふざけた用事で呼ぼうとしてたんだ。

 一言くらい言わせてほしい。

 

 

 

「はっ倒すぞ」

 

「なんで!!?」

 

 




 何時か、どこかでした会話。


『もしあそこで私の剣が出てこなかったら、キリトくんのこと窓から放り出してたよー』

『ハ…ハハハ。冗談、だよな?』

『じゃあその時はアタシがキリトを窓から高い高いする係だったかもね~』

『……冗談ですよね?』

『ストレアがやったら他界他界(人力ログアウト)になるんじゃね』

『一人くらい冗談って言ってくれないか!!?』




[Next Episode.『偽りの英雄たち』]
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